カ 行
茶色のタイトルをクリックすると、感想へ飛びます♪

カーヴァー (レイモンド) アメリカ 1939-88
 Carver’s Dozen  レイモンド・カーヴァー傑作選中公文庫
 僕が電話をかけている場所中公文庫
 夜になると鮭は…中公文庫
 頼むから静かにしてくれ中央公論新社
 愛について語るときに我々の語ること中央公論社
 必要になったら電話をかけて中央公論新社
カーシュ (ジェラルド) イギリス 1911-68
 壜の中の手記晶文社
ガーニィ (エリック)  アメリカ
 ぬけめのない猫の大行進昌文社
ガーネット (デイヴィッド) イギリス 1892-1981
 狐になった人妻/動物園に入った男 ガーネット傑作集1河出書房新社
 アスペクツ・オブ・ラブ (1955) ガーネット傑作集2河出書房新社
 水夫の帰郷 (1925) ガーネット傑作集3河出書房新社
 ビーニー・アイ (1935) ガーネット傑作集4河出書房新社
 イナゴの大移動 (1931) ガーネット傑作集5河出書房新社
カフカ (フランツ)  ドイツ 1883-1924
 カフカ短編集岩波文庫
 審判 新潮文庫
 変身 新潮文庫
カポーティ (トルーマン) アメリカ 1924-84
 あるクリスマス文藝春秋  
 おじいさんの思い出文藝春秋
 かなえられた祈り新潮社
 カメレオンのための音楽早川書房
 カポーティ短編集 (無頭の鷹ちくま文庫
 草の竪琴新潮文庫
 クリスマスの思い出文藝春秋
 ティファニーで朝食を新潮文庫
 遠い声、遠い部屋新潮文庫
 夜の樹新潮文庫
カミ フランス
 エッフェル塔の潜水夫筑摩書房
 ルーフォック・オルメスの冒険 (短篇集)出帆社
カミュ (アルベール) フランス 1913-60
 異邦人新潮文庫
カルヴィーノ (イタロ) イタリア 1923-85
 まっぷたつの子爵晶文社
 木のぼり男爵白水社
 冬の夜ひとりの旅人が松籟社
 魔法の庭晶文社
 パロマー岩波文庫
 宿命の交わる城 (1973)河出文庫
ガルシア=マルケス コロンビア 1928−
 エレンディラちくま文庫
 予告された殺人の記録 新潮文庫
ガルシン (フセヴォーロド・ミハイロヴィチ) ロシア 1855-1888
 あかい花 他四篇岩波文庫
キイス (ダニエル) アメリカ 1927−
 アルジャーノンに花束を早川書房
キーツ (ジョン) イギリス 1795-1821
 キーツ詩集白鳳社
ギッシング (ジョージ・ロバート) イギリス 1857-1903
 ギッシング短編集岩波文庫
 ヘンリ・ライクロフトの私記 岩波文庫
ギャスケル (エリザベス) イギリス 1810-65
 ギャスケル短編集岩波文庫
ギャリコ (ポール) アメリカ 1889-1976
 猫語の教科書ちくま文庫
 ポセイドン・アドベンチャーハヤカワ文庫
 幽霊が多すぎる創元推理文庫
キャロル (ルイス) イギリス 1832-98
 不思議の国のアリス角川文庫
 鏡の国のアリス 角川文庫
クラインバウム
 いまを生きる新潮文庫
グリーン (アレクサンドル) ロシア
 消えた太陽  (短篇集)国書刊行会
クリストフ (アゴタ) ハンガリー 1935-
 悪童日記早川書房
 ふたりの証拠早川書房
 第三の嘘早川書房
グリム ヤーコプ 1785-1863 /ウィルヘルム 1786-1859
 白雪姫新潮文庫
 ヘンゼルとグレーテル 新潮文庫
グリルパルツァー  オーストリア 1791-1872
 ウィーンの辻音楽師 他一編岩波文庫
グルーム (ウィンストン) アメリカ
 フォレスト・ガンプ
ケイ (テリー) アメリカ
 白い犬とワルツを新潮文庫
ケイニン (イーサン) アメリカ 1960-
 宮殿泥棒文春文庫
ゲーテ ドイツ 1749-1832
 若きウェルテルの悩み新潮文庫
コエーリョ (パウロ) ブラジル 1947-
 アルケミスト地湧社
 星の巡礼角川文庫
ゴーゴリ ロシア 1809-52
 外套・鼻岩波文庫
 隊長ブーリバ
ゴーチェ (テオフィル) フランス 1811-72
 死霊の恋・ポンペイ夜話 岩波文庫
ゴーリー (エドワード) アメリカ 1925-2000
 弦のないハープ (1953)河出書房新社
 うろんな客 (1957)河出書房新社
 不幸な子供 (1961)河出書房新社
 ギャシュリークラムのちびっ子たち (1963)河出書房新社
 ウエスト・ウイング (1963)河出書房新社
 敬虔な幼子 (1966)河出書房新社
 まったき動物園 (1967)河出書房新社
 優雅に叱責する自転車 (1969)河出書房新社
 THE IRON TONIC (1969)Harcourt
 題のない本 (1971)河出書房新社
 キャッテゴーリー (1973)河出書房新社
 華々しき鼻血 (1974)河出書房新社
 蒼い時 (1975)河出書房新社
 おぞましい二人 (1977)河出書房新社
 雑多なアルファベット (1983)河出書房新社
ゴールズワージー (ジョン) イギリス 1867-1933
 林檎の樹 (1916)新潮文庫
コッパード (アルフレッド・エドガー) イギリス 1878-1957
 郵便局と蛇 (短篇集)国書刊行会
 天来の美酒/消えちゃった (短篇集)
コッローディ (カルロ)イタリア 1826-90
 新訳 ピノッキオの冒険 (1883)角川文庫
コリンズ (ウィルキー) イギリス 1824-89
 恐怖の女・夢のベッド岩波文庫
 月長石創元推理文庫
ゴルデル (ヨースタイン) ノルウェー 1952-
 ソフィーの世界NHK出版
コンラッド イギリス 1857-1924
 闇の奥岩波文庫
 ロード・ジム (1900)講談社学芸文庫




「頼むから静かにしてくれ」 レイモンド・カーヴァー/村上春樹 訳(中央公論新社 91.2.20)
THE COMPLETE OF RAYMOND CORVER レイモンド・カーヴァー全集 1
レイモンド・カーヴァー(米 1939-1988)の作品の中から、初期の短編のみ22編を収録。
収録作品……「でぶ」、「隣人」、「人の考えつくこと」、「ダイエット騒動」、「あなたお医者さま?」、「父親」、
「サマー・スティールヘッド(夏にじます)」、「60エーカー」、「アラスカに何があるというのか?」、
「ナイト・スクール」、「収集」、「サン・フランシスコで何をするの?」、「学生の妻」、
「他人の身になってみること」、「ジェリーとモリーとサム」、「嘘つき」、「鴨」、「こういうのはどう?」、
「自転車と筋肉と煙草」、「何か用かい?」、「合図をしたら」、「頼むから静かにしてくれ」

 これは中央公論新社(元、中央公論社)が全7巻を予定してる(7巻は未刊)、レイモンド・ カーヴァー全集の第1巻です。すべて翻訳は村上春樹、装丁は和田誠。他に傑作選などが出てるので、 よほど好きな人でなければ手にすることもない本だと思います(^_^;) 私もこの本の中に、 一度ならず再読の短編が5、6編ありますが、それでも…(^_^;) 先に読んだ第2巻の感想でも 書きましたが、カーヴァーは好きです。大好き、というのではないけれど、とてもひかれてしまう 作家です。以下にお気に入りの短編など。

「でぶ」
 閉店間際のレストランに、奇妙なしゃべりのとても太った客がやってくる。次から次へと注文をする 男を仲間たちは面白半分で見るのだが、注文を受ける「私」はその出来事に何か言葉で言い表せない ものを感じる……。
 ただそれだけなのに、そこには何か言葉にできそうでできないものがある、っていうのは カーヴァーの話には多いんですが(^_^;)、感想もどう言っていいか分からないという……。でも、 好きです(^_^;)

「隣人」
 ミラー夫妻は幸福だったが、なんとなく仲間うちで取り残されているような気がしていた。 どうしても、隣人のストーン夫妻と自分たちを比べてしまう。ある日、ストーン夫妻が旅行に 行くことになり、留守中猫と植木の世話を頼まれたミラー夫妻は…。
 勝手に家の中を物色して、夫のビルに至ってはストーンの奥さんの下着をつけてみたり するという(^_^;) でも、いつも自分の隣にあこがれている人達がいて、その家に入れるとなったら 物色まで行かなくても、なんとなくいろいろ見てみたくなってしまうかも。この後どうなった のかな〜(^_^;)

「ダイエット騒動」
 妻のドリーンの働くコーヒーショップへ行った失業中のアールは、客がドリーンの容姿について悪口を言っているのを耳にし、 彼女にダイエットを強要する…。
 哀しくもおかしいストーリーです。自分の妻をほめてもらいたくて仕方ないアール、情けない けどいじらしい(笑) こういうストーリーは好きです。

「学生の妻」
 どうしても一人で起きていたくないナンは、なんとかして夫を眠らせまいといろいろなお願いを するのだが……。
 この二人、いつか駄目になってしまいそうな気がします(^_^;) 始まりはこんなに 小さなことなのに…。

「他人の身になってみること」
 クリスマスの夜マイヤーズの元に、以前家を借りたモーガン夫妻の家へ行ってみようと ポーラから誘いの電話が。歓迎されたかに見えた二人だったが……。
 妙なことになってしまうんですね(笑) モーガン夫妻とマイヤーズたちのずれみたいな ものがおかしいです。

「ジェリーとモリーとサム」
 引っ越したばかりなのに会社はレイオフを始め、おまけに浮気もしているアル。 そこへさらに金の無心ばかりしてくる妻の妹が、二人の子供に犬をくれた。山積する 厄介事を片付けるべく、彼はまずこっそりと犬を捨ててくることにしたが…。
 家族の悲しみにたじろいで、再び犬を探しに行くアル。すごく情けない〜(^_^;)  最後には犬にさえ見放されてしまうけど、なんか妙に憎めない人…。

「頼むから静かにしてくれ」
 ラルフには、ずっと気になっていたことがあった。妻のマリアンが2年前に浮気をしたのでは ないかという疑惑を払いきれないでいたのだ。ある日ふとしたきっかけでマリアンを問い詰め、 本当のことを聞き出したラルフ。絶望に駆られ、家を飛び出してしまうが……。
 もう気にしないから言えって自分で言ったくせに、いざ聞かされるとショックなラルフ。 家を飛び出して酔っ払って殴られて……情けないけど、笑えないですね(T_T)


「愛について語るときに我々の語ること」 レイモンド・カーヴァー/村上春樹 訳 (中央公論社 90.8.20)
THE COMPLETE OF RAYMOND CORVER レイモンド・カーヴァー全集 2
アメリカの小説家、レイモンド・カーヴァー(1939−88)の短編集。
収録作品……「ダンスしないか?」、「ファインダー」、「ミスター・コーヒーとミスター修理屋」、「ガゼボ」、
「私にはどんな小さなものも見えた」、「菓子袋」、「風呂」、「出かけるって女たちに言ってくるよ」、
「デニムのあとで」、「足もとに流れる深い川」、「私の父が死んだ三番目の原因」、「深刻な話」、
「静けさ」、「ある日常的力学」、「何もかもが彼にくっついていた」、
「愛について語るときに我々の語ること」、「もうひとつだけ」


 カーヴァーは好きな作家の一人です。訳者の村上春樹も好きですし、この本の装丁をしている 和田誠の絵も大好きなのです。ストーリーとしては、普通の人たちの生活や普通の会話が、 ちょっとしたことから取り返しがつかないことになってしまう、という話が多いです。 でも登場する人々は、それについてうまく語ることができない。そういうのがとても 居たたまれないというか、切なくてよいです。以下に好きな短編を。

「ダンスしないか?」
 庭に家財道具すべてを並べて売りに出している男のもとに、若いカップルが現れて品定めを始める。 三人はやがてウィスキーを飲み、庭でレコードをかけてダンスを始める…。
 …あらすじにはそれほど意味がないです(^_^;) この出来事をカップルの女性の方が会う人 ごとに語ろうとするのですが、語りきれない何かが残る。でも彼女はそれを伝えることができない…。 もどかしいと思いながら、結局彼女は語ることをあきらめてしまう。そういうお話です。この 語られなかったことを考えると、とても切なくなってきます。でもたとえ語ることができても、 言葉にした瞬間に意味がなくなってしまうんでしょうね。短いお話なのですが、心に残ります。 この本の中ではこれが一番好きです。

「菓子袋」
 本のセールスの仕事をしている“僕”は、母と離婚して以来会っていなかった父に会いに行く。 父と再会した飛行場のラウンジで、父は“僕”に母と離婚するきっかけとなった浮気の話を語り 始めるが…。
 これも“僕”と父親の温度差が切ないお話です。子供へのお土産にといって父親から貰った お菓子の袋さえ、“僕”はラウンジに置き忘れてきちゃうのです。……カーヴァーの作品の タイトルって、ひねってあって最後まで読まないとなんだかよく分からない(^_^;)

「風呂」
8歳の誕生日を迎えるスコッティーのために、パン屋へケーキを注文した母親。 だが誕生日の当日、スコッティーは車にひかれて意識不明になってしまう。長時間の看病に 疲れて風呂へ入りに家へ戻った父親のもとに、何も知らないパン屋からの催促の電話が執拗に かかってくる……。
→救いのないお話です(T_T) スコッティーはいつまでたっても目を覚まさない。パン屋さんは そんなこととは知らず、ケーキを取りに来ない彼らにほとんど嫌がらせに近い電話をかけてくる。 ひどい状況だけど、誰も責められない。しかもこのあとどうなったのかは謎のまま…。 このお話にはもうちょっと長い別のバージョンがあるんですけど(『ささやかだけれど、 役に立つこと』)、私はこの長いのの方が好きです。こっちはこのあと、母親が嫌がらせ電話の 主がパン屋だと気付いて、父親と二人で早朝のパン屋へ乗り込み、腐りかけのケーキを持って 行けと言うパン屋に事情を話します。そして……。いいお話なので、読んでみてくださいね(^_^)  中公文庫の『Carver’s Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』に収録されてます。

「出かけるって女たちに言ってくるよ」
ジェリーとビルはハイスクール時代からの親友で、今は二人とも結婚して幸せな家庭を 持っている。ある日曜日、ビルは家族を連れてジェリーの家に遊びにきていた。なぜか 沈みがちだったジェリーとビルは、息抜きに車で家を出る。やがて二人はハイウェイで 出会った二人連れの女の子たちに声をかけるが……。
→怖い……。どこで何がおかしくなってしまったのか書かれてないだけに、余計怖い。 このタイトルもけっこう謎…。

「何もかもが彼にくっついていた」
自分の小さい頃の話を聞きたがる彼女に、父親は若い頃の話を始める。十八歳と十七歳で 結婚した少年と少女。やがて二人の間には子供が生まれる。ある日少女は、赤ん坊の様子が いつもと少し違うことに気付く。赤ん坊を放っておいて狩りに出ようとする少年を、少女は 必死に引き止める…。
→回想の物語の中では少年と少女は仲直りするんですけど、でも少年だった父親は20年後 大きくなった娘と二人だけだし、彼の語り口調からして何かあったのですね。想像するしか ないのだ(^_^;) これも語られてないところに悲しさのある切ないストーリー。読み終わると なんだか自分の周りにも雪がふりつもっているような気になりました。


「必要になったら電話をかけて」 レイモンド・カーヴァー/村上春樹 訳 (中央公論新社 2000.9.7)
1988年に亡くなったアメリカの作家レイモンド・カーヴァーの未発表短篇集。5編収録。
収録作品……「薪割り」、「夢」、「破壊者たち」、「必要になったら電話をかけて」、「どれを見たい?」


 ここに収録されているのは、どれもカーヴァーが亡くなった後に発見された短編で、きちんと 完結してるものです。とは言っても生前に発表しなかった(するのを控えた)作品ですから、 もちょっとかな、と感じる部分も多少あります。でも、未発表短篇集を読む前に読む本がたくさん 残ってる私などはともかく(^_^;)、この短篇集はカーヴァーの愛読者にとっては、序文でテス・ ギャラガーが書いているように、ホントに「最後の最後」なのです。自分の死後に未発表の作品を 発表されるってどんな気持ちかな〜、と考えると、やっぱり複雑な気分。以下にお気に入りの短編。

「薪割り」
 禁酒施設で一ヶ月ばかり過ごしてきた失業中のマイヤーズは、浮気した妻に家を追い出され、海の近くに部屋を借りる。家主のソルとその妻ボニーはとても気のいい夫婦だった。マイヤーズは部屋に引きこもり、家主夫婦と行き合わないように静かな生活を送る。ある日彼は家に丸太を積んだトラックが訪れたのを見て、無償で薪割をさせて欲しいと申し出る…。
 マイヤーズと家主夫婦の間の、静かで親密な空気がとても好きです。マイヤーズのつけてる日記も、さりげないけど胸にしみいるような文章。5編中ではこれがいちばん好き。

「必要になったら電話をかけて」
 お互いに別の相手と関係を持っているダンとナンシーは、息子のリチャードを祖母の家に預け、しばらく二人きりで暮らしてみることにした。しばらくの間はとてもうまくいくように思えた二人だったが…。
 二人がカフェに入って、ハミングバードを幸運のしるしだといって喜ぶシーンがあるのですが、何にせよ幸運のしるしを求めるようになったらもうおしまいなのかな、と思ったりしました。深い意味はありませんが(^_^;) 真夜中にどこかの牧場から逃げ出した馬が庭に入り込んできたのを二人で眺めるシーンが好きです。離れて暮らすことに決めた二人が、一時うまくいくように見えて、次の日は静かに別れていくという。しかし、ここで物語が終わってたらそれもできすぎてるし、そのあとこんな風に続くのもちょっと皮肉すぎるような気がしますが…。でもそういうことを言い出すと、きりがないのでやめますけど。

「どれを見たい?」
 緒に暮らしていた家を出て、しばらくの間別々に暮らしてみることに決めたサラとフィル。彼らは出発の前日、家を貸してくれたレストラン経営者のピートとベティーに夕食に招待される。
 なんだかんだいっても、人は自分の抱え込んだトラブルだけで手いっぱいなのだな、と寂しくもあり…かといってそういう彼らを責めることもできない…。ほのぼのとしたいいお話に見えて、なんともいえない気分になるラストです。


「ぬけめのない猫の大行進」 エリック・ガーニィ 絵/ナンシー・プレヴォ 文/犬飼智子 訳
 (昌文社 79.4.25)
 猫に“飼われている”人に贈る、猫との付き合い方絵本。

 アメリカの漫画家エリック・ガーニィの、とぼけた感じの猫たちが笑わせてくれます。どこの国でも、猫を飼っている人の考えることは同じなんだな、と苦笑してしまいますね。それにしても、“猫を新しい家に慣れさせるには、猫の足の裏にバターを塗るといい”なんて、初めて聞きました。「足をきれいになめおわるころには、ねこは感じるはずなのだ。ずーっとここに住んでたのだ、と」…だそうです。ホントかな?(笑) そういえば外国の小説なんかではよく、猫にバターをやったりする場面を見かけますけど……なんだか気持ち悪そう(^_^;) 怖くて試せないし……。


  
「狐になった人妻/動物園に入った男」 ガーネット傑作集1 ガーネット/池央耿 訳(河出書房新社 2004.5.30)
 英国の作家デイヴィッド・ガーネットの短編2編を収録。 本の詳細
 収録作品…
  「狐になった人妻」(1922)、「動物園に入った男」(1924)


 ガーネットは日本ではあまり有名ではないのでしょうか、私も作品を読むのは初めてですが、 どちらもとても面白かったです。軽く楽しく、なんも考えずに読めます。 全体としてはなんか滑稽なんだけど、底を流れるものは哀しみ…あるいはその逆というか、 そんな感じの話ですね、どちらも。それぞれ感想は以下に。もうちょい読んでみたいので、 傑作集2「アスペクツ・オブ・ラブ」に続きます。 中身と関係ないけど、この傑作集、装丁がとても素敵です(^_^;)

「狐になった人妻」
 ある日の昼下がり、結婚したばかりの妻を連れ森を散歩していたテブリック氏は、 傍を歩いていた妻が突然狐になってしまったことに驚愕する。うろたえながらも 狐となった妻を家に連れ帰り、今までどおり一緒に生活しようとするテブリック氏だが…。
 これガーネットの処女作なんですね。妻が狐になってしまうなんて フツーに考えてありえない事件なんですが、そんなことがどうでも良くなるほど、 テブリック氏が妻を守ろうとする一途な姿勢が…悲しくも滑稽です。妻がどんどん 狐っぽくなっていくのを必死に何とかしようとする様子、狂人呼ばわりされてるのも構わずに 妻を愛しぬく様子がとてもいじらしいのですが、なぜか常に滑稽さが付きまといます。 衝撃的な事件の割に淡々とした描写で、それも哀れさとおかしさを誘ってますね。 こんなことを言うのはテブリック氏に申し訳ない気がしてしまうんですが、 とても面白いお話でした(^_^;) 

「動物園に入った男」
 クロマティは恋人ジョゼフィンと動物園で喧嘩をし、売り言葉に買い言葉で 自ら動物園に展示されることを決意する。彼はやがてロンドン動物園に展示されることになり、 世間の耳目をさらう。だが彼はやがて、恋人がやってきたらどうしようという不安に悩まされる ことになる…。
 こちらもいいですね、ばかばかしくて…。思い余って動物園に入ってしまったものの、 後のことは何も考えていないクロマティ。なんだかんだあるけど、 結末もそれでいいのかって感じですね(^_^;) 大山鳴動してなんちゃらって 感じがしないでもないですが、面白かったです。こんな二人、 正直どっちも恋人にしたくはないタイプです。二人はどうでもいいけど(笑)、 カラカルはどうなったんだろう…。



「アスペクツ・オブ・ラブ」 ガーネット傑作集2 ガーネット/新庄哲夫 訳 (河出書房新社 2004.6.30)
 パリでの公演が打ち切られて途方にくれていた女優ローザは、自分を崇拝している学生 アレクシスに誘われるまま彼の叔父ジョージ卿所有の別荘へ赴き、共に生活を始める。 だがやがてそれはジョージ卿の知るところとなり、二人の関係は終わりを告げることになる。 それから数年後、軍役から戻ったアレクシスがパリで見たのは、 女優として成功し、ジョージ卿と生活を共にするローザの姿だった…。1955年。 本の詳細

 劇団四季が上演したミュージカルの原作だそうですが、知らなかったのでそれはいいとして(^_^;) 
 愛の諸相というタイトル通り、若いアレクシスとローザ、ジョージ卿その他の男女をめぐる、 様々な愛の形が描かれています。舞台はフランスなので、若い愛人とか不倫とか 特に珍しいとは思えないんですが(偏見か…?(^_^;))、 それにしても彼らの色恋模様は、淡々と描かれていますね。 どろどろと濃密に情熱的に官能的に描こうと思えばどこまでもそうできる作品なのに、 本当に淡白に徹してます(まぁ、時代もあったのでしょうが…)。 そのせいかなんだか、みんなどこか滑稽に見えますね。真剣なのかそうでないのか。 真剣だからおかしいのか……。その辺が物足りないと思われる向きもあるかと思いますが、 この妙にしらけた感じは個人的にけっこう好きです。
 みんな好き勝手やっていて、感情移入できる登場人物はほとんどいないといってもよいです。 だから若い頃読んだらつまらなかったかなと思うけど、今は…今だから分かるおかしさと いうか哀しみというか、そんなものをしみじみ感じる気がします(^_^;)  まぁ、色々考えなくても、さらっと読めるので軽く楽しめた作品でした。
 傑作集3「水夫の帰還」に続きます↓



「水夫の帰郷」 ガーネット傑作集3 ガーネット/池央 耿 訳 (河出書房新社 2005.10.30)
 アフリカの王女テューリップを妻にし、その息子サンボと共にイギリスへ 着いた船乗りのターゲットは、田舎町メイドゥン・ニューバロウに居酒屋を開く。黒人の妻子に対する中傷や差別が絶えない中、 居酒屋は繁盛し続けたが…。1925年。 本の詳細 

 ガーネットの3作目の小説です。人種差別どころかよそ者にさえ厳しい田舎町にやってきた 奇妙な一家と、敵意と居酒屋を歓迎する気持ちとが奇妙に入り混じった村人たちの交流…。 何も起きないわけはない状況ですが、出来事はわりと淡々と語られてます。
 その分というか、元船乗りのターゲットやテューリップとか、 人物はとても生き生きと描かれていて印象が強いです。人気がありながら 色々揉め事の堪えない居酒屋の行く末もとても気にはなるのですが、 どちらかといえば人物に引っ張られてしまいますね。 風景や出来事の淡々とした描写とのバランスがとてもいい感じ。色々深く考えることなく、 ただそこにあるものを楽しめます。それだけにというか、なかなか切ない結末ではありますが。
 うーん、数編読んだだけの感想ですが、ガーネットは初期の作品の方が好みかも しれませんね。もうちょい読んでみたいので、傑作集4「ビーニー・アイ」に続きます↓  本が借りものでなけりゃ、も少し間を置いてのんびり読みたい作家ですが(^_^;) 



「ビーニー・アイ」 ガーネット傑作集4 ガーネット/池央 耿 訳 (河出書房新社 2006.1.30)
 文筆家の父と翻訳家の母と8歳の僕の暮らす家に、ビーニー・アイと呼ばれていた 前科者の男が下働きとして雇われることになった。村でも厄介者扱いされていた ビーニー・アイだったが、僕の家にもやがて不穏な空気が漂い始める…。1935年。 本の詳細 

 自伝的小説ということで、ガーネットの家族構成や子供時代の境遇は そのままの物語となってるらしいです。でも、どっちかといえば父親の視点で話が進みますね。 作中で見る限り、何かちょっと変わった人みたいですが…。
 田舎で静かに暮らす文学一家に、なんとなく成り行きで雇われることになってしまった ビーニー・アイ。その異様な眼光からそんな あだ名がついてるのですが、僕の家でもひどい騒ぎを巻き起こします。 傍目にもかなり恐ろしい事件、あるいは一歩間違うと喜劇なんじゃないかと思うんですが、 やはり淡々と描かれているのと、父親の妙に冷静な考察がなんだか現実味がないのとで、 独特の雰囲気が漂ってます。変わってるというか、不思議な感じの人です(^_^;)  自伝的なせいか、他の小説とはまた違った感じ。中篇でさらっと読めますので、 違いを楽しむのもいいかも。個人的には、自伝的でない方が好きな気がしますが。
 次は傑作集5『イナゴの大移動』に続きます↓



「イナゴの大移動」 ガーネット傑作集5 ガーネット/池央 耿 訳 (河出書房新社 2006.8.30)
 有閑夫人のミセス・ビーンランズとシャップ中佐は、リークスの操縦による飛行機で 長距離飛行の世界新記録樹立を目指しロンドンを飛び立った。 順調に思えた3人の旅だったが、モンゴルの上空付近で期待のトラブルで 不時着を余儀なくされる……。1931年。 本の詳細 

 この時代、もう誰も興味を示さないような、長距離飛行の世界新記録樹立に乗り出す3人。 冒険を求めてわくわくしているミセス・ビーンランズと、妙に冷めたリークスのずれが 皮肉な感じです。操縦士リークスの視点で描かれてるので、全体的にはさばさばしてますね。 最後にはあんなことになってしまうし…。イナゴとか虫が嫌いな方は、この作品は読まない方が よいかと思われます(^_^;)
 まぁイナゴのことはともかく、飛行機からの風景の描写がとても美しいです。 ガーネット自身はこの作品の執筆中、飛行機の免許を取得すべく奮闘してた最中らしいですが、 そんなことは全然感じさせませんね。いつまでも空からの眺めを楽しんでいたいと 思えるような作品。後半もまぁ、個人的には悪くないとは思うんですが(^_^;)

 …ということで、ガーネット傑作集は5巻でおしまいです。一番好きなのは1巻で、次が 3巻ですね。短編をもう少し読んでみたいです。まぁ、マイナーな作家なようなので、 また翻訳が出ることをひっそり願っています。



「無頭の鷹」 トルーマン・カポーティ (「夜の樹」新潮文庫、「カポーティ短編集」ちくま文庫、収録)
 ニューヨークで画廊を営むヴィンセントの元に、一枚の不思議な絵を持ち込んだ少女D・J。彼はその奇妙な絵にひかれ、やがて二人は一緒に暮らし始める。だが、いつも“デストロネリさん”を恐れる彼女の言動に、おかしなものを感じはじめる…。

 トルーマン・カポーティ(1924〜1984)は、アメリカの小説家。 映画「ティファニーで朝食を」の原作者などとしても有名。 でも「ティファニーで朝食を」だけ読んでカポーティを読むのをやめる人って多いのかなぁと、 その辺がよく分かりませんが…。私自身は「ティファニーで朝食を」(原作)は そんなに好きでもないんですが…。本当は長編「遠い声、遠い部屋」を ご紹介する予定だったのですが、いつまでたっても再読ができないので、 好きな短編に切り替えました。好きな短編…と考えたら、このタイトルがまず ふっと浮かんできました。え゙え゙〜?  と思われる方もいらっしゃるかもれませんが(笑)。 壊れやすいガラスのように透き通って硬質な、 内側から崩壊していきそうな感じの(この辺自分でも意味不明) カポーティの作品はとても好きです。「無頭の鷹」はここだけの話、 ちくま文庫の訳の方が好きです。好きな短編は、 「夢を売る女」、「楽園への小道」、「ローラ」、「窓辺の灯」、「銀の酒瓶」、 「クリスマスの思い出」……など。


「エッフェル塔の潜水夫」 カミ/吉村正一郎 訳 (筑摩書房 S52.11.21)
 エッフェル塔で働くファンファンとラノワは、最近セーヌ川で起こった不思議な身投げ事件について 語り合っていた。引き上げられた死体は幽霊船の乗組員として雇うという奇妙な契約書が 縛り付けられていた上、ふたたび川の中へ自然に転げ落ちてしまったのだ。しかもその死体を 探しに潜った潜水夫が、水死体となってエッフェル塔内で発見されたのだった。
 二人はふとしたことから、次第に事件に深く関わってゆくことに…。1929年。


 面白いです〜(^o^) エッフェル塔や海を舞台に繰り広げられる、ちょとオカルトっぽい 不思議な物語です。世界中の海やパリの町中(!)に神出鬼没な幽霊船「飛び行くオランダ人」号と、 その呪われた船長ペテル・マウス。大富豪のイギリス人スコットと、そのお抱え霊媒師(?) サムュエル・ヴァン。怪しくもおかしい人物がどんどん出てきて、謎も深まります。エッフェル塔 内の追跡や幽霊船の探索なんかはけっこうスリルもあっていいです。でもすごいのは最後に すべての謎がきちんと明かされるところですね。ユーモア小説だと思ってたんですが、ミステリ としても良いと思います♪ ず〜っと怪奇な雰囲気で来ていただけに、このトリックはかなり 意外でした。でもやっぱり、最後に不気味な謎がひとつ…。とても楽しめた小説でした(^_^)



「ルーフォック・オルメスの冒険」 カミ/吉村正一郎 訳 (出帆社 1976.9.10)
 フランスのユーモア作家、カミの短編集。
 収録作品…
  「プシット、プシュットの人生サーカス」、「ルーフォック・オルメスの冒険」、「怪盗と名探偵」、
  「モダン錬金術」、「不景気解消!」、「衣装箪笥の秘密」


 ナンセンスなユーモアてんこ盛りのカミの短編集です(^_^;) これってフランスの ユーモア小説に共通なんでしょうかね〜。ホントばかばかしくて読んでる時は楽しくて笑ってても、 読み終わった瞬間全部忘れてしまうよーな話ばかり(^_^;) 読後には見事なまでに何も残りません。 それでいいのでしょう、たぶん。だからいちいち感想書くほどのもんではないかな〜。 読んでる時だけ楽しきゃそれでいいという感じなので。
 う〜ん、私自身ナンセンスは嫌いじゃないですし、数編をちょこちょこっと読むにはホントに 楽しくていいんですが、これだけの数をまとめて読むと、さすがに最後のあたりはあまりの くだらなさに嫌気が差してきました(^_^;) 一気に読まない方がいいかもしれません。 しかし、どちらにしてもこの本は絶版です。
 私が好きな作品は…元サーカス団員のプシット、プシュットのコンビが珍妙なる騒ぎを巻き起こす「プシット、プシュットの 人生サーカス」、名探偵ルーフォック・オルメスが迷推理で不可能(すぎる)事件に挑む 「ルーフォック・オルメスの冒険」などです♪ 



「木のぼり男爵」 イタロ・カルヴィーノ/米川 良夫訳 (白水社 79.2.15)
 ディ・ロンドー男爵の長男コジモは、十二歳の時、お仕置きに反抗して木に登ってしまう。家族は皆、そのうちに降りてくるだろうと思っていたが…。

 なんてゆーか、コジモがすごいですね。結局死ぬまで木から降りなかったのは何故だったんだろうなぁ、と、妙に考えさせられてしまいました。それにしても楽しい。ストーリはもちろん、登場人物がいいです。怪しげな料理(カタツムリぃ〜 )を作る姉のバッティスタ、実用的でないことばかりに情熱を燃やすカッレーガ、ちょっと抜けてるフォーシュラフルール老師…。コジモの周りの人々が本当に魅力的です。 終わりのほうで起こるフランス革命も、イタリアから見るとこんな風なんですね。何か新鮮でした。突飛なストーリーに、そんなことってあるのかな〜(笑)と思いつつも、どんどん引き込まれてしまう本でした。


「まっぷたつの子爵」 イタロ・カルヴィーノ/河島英昭 訳 (昌文社 71.7.31)
 「僕」の叔父、メダルド子爵は、トルコ人との戦争で、体を真ん中から縦にまっぷたつに裂かれて帰郷した。以来テッラルバの人々は、子爵の悪業に震えながらの生活を強いられる。しかしある時から、子爵の人が違ったような善行のうわさが聞こえ始めて…。

 読み始めたら面白くて、すぐ読み終えてしまいました。まっぷたつに引き裂かれた子爵の、正反対の性格の半身が、互いに逆の事をしてどっちも人々に迷惑がられるとゆーのがなんだかいいですね。ストーリーが面白いのでそれだけでもう十分なんですけど、まっぷたつになった子爵の不完全な存在に、妙に共感を覚えてしまったりするのでした。もうちょっと若いうち、せめて学生時代に読んでいたらなぁ〜(^_^;)とか。そーゆーことはまあ一人で考えるとして(笑)、最後になりましたが、この本を薦めてくださったSSさんに多謝です。ありがとうございました。


  
「冬の夜ひとりの旅人が」 イタロ・カルヴィーノ/脇功 訳 (松籟社 1981.12.15)
ある一人の“男性読者”が読み始めた新刊の小説が乱丁だったことから、彼はその本をめぐるいくつもの物語に振り回されることに。始まったと思うと中断される物語に翻弄されながら、“女性読者”ルドミッラとの出会いを通して、彼は予期しなかったような冒険に巻き込まれてしまう…。伊、1979年。

 「あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている。」という書き出しからして、何か面白そうなことが始まりそうな感じなんですが、実際読書好きにはとても楽しい本です♪ “男性読者”は、乱丁で中断された物語の続きを読みたいがために、本を探していろんな出来事に巻き込まれます。“男性読者”の行動と、その結果彼が発見した10篇の物語が交互に書かれる形式になってますが、これがもう文句なしに面白いんですよね〜(*^^*) 結び目を作っては解くような、不思議な感覚。“男性読者”が発見する物語は、そのたびに前の物語とは何の関係もないんですが(^_^;)、始まってはいいところで中断される物語に翻弄されつつ、いつの間にか引き込まれて、それが楽しくて仕方なくなってしまいます(^_^) “男性読者”の行動も、読書好きなら笑いながらも納得してしまう(笑) “女性読者”のルドミッラも良いですね〜。知的分析なんかいらない、自然で、無邪気で、素朴な読書。彼女みたいな読書の仕方は、私の理想でもあります(*^^*) “男性読者”と“女性読者”の出会いも微笑ましい。こーゆーのも、理想かな〜(笑)  本を読むことと、文字通り物語を追う至福がぎゅっとつまった、ホントに楽しい本です(*^^*)


『魔法の庭』 イタロ・カルヴィーノ/和田忠彦 訳 (晶文社 91.9.10)
イタロ・カルヴィーノの初期短編集。11篇収録。1946〜1958年。
収録作品…「蟹だらけの船」、「魔法の庭」、「不実の村」、「小道の恐怖」、「動物たちの森」、「だれも知らなかった」、
       「大きな魚、小さな魚」、「うまくやれよ」、「猫と警官」、「菓子泥棒」、「楽しみはつづかない」


カルヴィーノの短編は初めてなのですが、これは長編(あるいは後期の作品)とかなり違った趣のような 気がします。ちょっと不思議な話ばかりだけど、幻想的というよりも、なんとなく魔法に かけられたようなストーリーばかり。最初から最後まで現実の話ではあるのですが。この奇妙な雰囲気が、 好きな人間にはたまりません(^_^) とても想像力を掻き立てられるストーリーばかりで、しかも とても楽しいのです♪ 以下にお気に入りの短編をご紹介。

 「魔法の庭」
二人で遊んでいたジョバンニーノとセレネッラは、ふとしたことから 美しい庭に迷い込んでしまう。見つかることを恐れながらも、庭で遊び始める二人…。
美しい花と、プールと、用意されたお菓子…。子供たちにとっては魔法の庭なんですが、見つかる んじゃないかという不安が漠然と付きまとって、どこか非現実的なんですね〜。短いんですが、 きれいな庭のイメージが心に焼きつきました(^_^)

 「動物たちの森」
ドイツ兵が、村にパルチザン狩りにやってきた。大切にしている雌牛を奪われそうになった 農夫の“役立たずのジュア”は、下手な猟銃でドイツ兵に狙いをつけるが…。
こういうお話は大好きです(笑) ドイツ兵の略奪から救おうと、森の中は村人が放した動物でいっぱい。 目移りするドイツ兵と、それに翻弄されるジュア。動物の持ち主の村人が次々現れて、 ジュアに勝手なことを耳打ちしまくり(^_^;) とても楽しいお話です♪

 「大きな魚、小さな魚」
海の中では人が違ったように水中銃を操るゼッフィリーノ。彼がいつもの ように海に潜っていると、岩場で泣いている一人の女性に出会った。失恋したと言う女性になんとか 泣き止んでもらおうと、次々に魚をとってみせるゼッフィリーノだが……。
一生懸命魚に興味を持ってもらおうとするのに、女性は泣き止まない(当然だ(^_^;)) それで、 彼女にタコを捕ってあげるんだけど……。ショック療法(^_^;) 海の中の光景がとても きれいです(*^^*)

 「菓子泥棒」
“ヤリテ”と“ボウヤ”と“イ・イマダ”の三人は、菓子店に強盗に入る計画を実行に移し始めた。 すると、そこには大量においしそうな菓子が並んでいた。たまらなくなった“ボウヤ”は、次々に 菓子をむさぼり始めてしまう…。
甘い匂いが今にも漂ってきそう。そんな馬鹿なぁ〜(^_^;)と思いつつも、なんだか妙に ほのぼのしているお話です。

 「楽しみはつづかない」
戦争ごっこをして遊んでいたジョバンニーノとセレネッラは、夢中になって遊んでいるうちに 本物の軍隊の作戦区域内に入り込んでしまう。慌てて逃げ出し、遊びを再開する二人だったが…。
突然現実に引き戻されて、白けてしまう二人の気持ちが分かる気がします(^_^;)。しかしこの短編集の最後に この作品というのも心憎いというか、無情というか(^_^;)



「パロマー」 イタロ・カルヴィーノ/和田忠彦 訳 (岩波文庫 2001.11.16)

 中年男性、職業不詳で、妻と娘が一人いるパロマー氏。彼はあらゆるものを観察し、世界を 見つめる。絶えず寄せる波を、亀を、昼下がりの月を…。不連続な連続短編小説27編。1990年。

 短編のタイトルが多すぎるので省略します(^_^;) 小説、というよりは、パロマー氏の観察と 思索を物語風にまとめたものという感じでしょか。後半になればなるほどパロマー氏の考えることは 私には訳がわからなくなってきます(^_^;) でも、パロマー氏もいろいろ考えているわりには、 現実とのギャップが奇妙に滑稽で皮肉なんですね。頭の中では深く考えてるかもしれないけど、 外から見ればただの人、みたいなところが……(^_^;)  一編一編は短くて本も薄いんですが、 中身はとても濃いです。あんまりいろいろ考えたくない時にはおすすめしませんが、パロマー氏と 一緒にちょとずつ思索の迷路に迷うのもいいかも。



「宿命の交わる城」 イタロ・カルヴィーノ/河島英昭 訳 (河出文庫 2004.1.20)
 深い森の中で行き暮れた者たちを迎える、ひとつの城。広い客間にはたくさんの人々が テーブルを囲み、晩餐の席についていた。奇妙にも言葉を失った人々の前には、 城主と思しき人物の投げ出したひと束の美しいタロット・カード。会食者たちは 黙ったままカードを並べながら、一人づつ自分の物語を語り始める……。
 収録作品……「宿命の交わる城」、「宿命の交わる酒場」


 収録作品が二つありますが、舞台は違うけどどちらも趣向は同じです。客人が一言も発しないまま 並べるタロットカードの絵柄の暗示だけで物語を綴る、奇妙なストーリー。それぞれ8篇ほどの 物語を内包しています。タロットカードを知らなくても、カードの絵が物語の進行にそって 示されているので大丈夫。
 ……と、ちょと変わった本の概要を書いたところで感想を。なんて複雑な物語なんでしょ(^_^;)  ほとんど実験的といってもいい気が。限りなく想像が膨らんで、それはまた別の物語の予兆を はらんで…。これタロットカードを持ってたら実際に並べていくと面白いでしょうね。実は本の 絵柄と物語を見比べるたびに集中が途切れて、ちょと読みにくかったです。
   タロットカードの意味、というよりは絵柄にちょっとこじつけっぽい解釈もあるので、深く考えたり せずにもう作者の解釈をすべて受け入れる気持ちで読むしかないかも。とはいえ、構成の妙はさすがです。 よく考えるなぁ〜、という感じ。あまり複雑な事を考えたくない時には向かない本かもしれませんが(^_^;)



「あかい花 他四篇」 ガルシン/神西 清 訳 (岩波文庫 1937.9.15)
 ロシアの作家、ガルシン(1855-88)の短編集。5編収録。
  収録作品……「あかい花」、「四日間」、「信号」、「夢がたり」、「アッタレーア・プリンケプス」


 本当に短い短編集なのですが、どれもなんとなくこの世のものではない不思議な 雰囲気が漂ってます。暗く長く寒い冬を思わせるような、ロシアの文学ですね〜。もうちょっと翻訳が新しいと 嬉しいんだけど……(^_^;) 「夢がたり」と「アッタレーア・プリンケプス」はちょっと童話っぽいお話です。 以下にお気に入りの感想を♪

「あかい花」
 発作を起こして精神病院に連れてこられた青年は、花の咲き乱れる美しい花壇に 驚いた。だが彼の心を惑わせたのは、雑草の茂みの中にぽつんと二つ咲いている、 真っ赤なけしの花だった…。
 精神の均衡を失い、夜も眠れず、やせ細ってゆく青年のお話。二つのけしの花を悪の象徴とみなし、 必死に摘み取ろうとします。病んだ頭から出た妄想と切り捨てられないほど、神々しささえ漂う彼の最期が 哀しい。

「四日間」
 トルコとの戦いの最中、銃弾を受けて動けなくなったイヴァーノフ。自分の殺したトルコ兵の 死体から離れることもできずに、自分の身の上に思いを馳せる…。
 だんだん死体が腐っていくそのすぐ隣で、イヴァーノフは戦争について考えます。 恨みもない人を殺すこと、自分がじりじりと死に向かうこと。残してきた愛しい人たち…。 あまり深く考えずに志願したものの、彼は現実におびえます。彼は思想は何も語ってないけど、 彼の感じる恐怖が、有無を言わさず戦争を否定していますね。でも彼はたぶん今後も、戦争は いけないなんて言わないし、言おうとも思ってないのでしょうね。ただ自分が見たもの、感じた ことを語るだけで…。

「信号」
 戦争から帰ってきたセミョーンは、元上官の計らいで線路番の仕事に就いた。特に不満もなかったが、 隣の線路番のヴァシーリィは不自由な生活に嫌気が差しているらしかった。そんなある日、事件が…。
 上司にひどい目に合わされて、客車を脱線させてやろうとレールを外してしまうヴァシーリィ。 それを見たセミョーンは…。そこまでしなくても……とは思うけど、運命を受け入れてただその日 暮らしの小さな生活を送ってきたセミョーンらしいといえば、彼らしい……。哀しいお話です。

「アッタレーア・プリンケプス」
 とある大きな町にある植物園では、窮屈な思いをしながらも、さまざまな植物が育っていた。 だが一番背の高いしゅろの木は、本当の空と風を感じたくて、ついに温室を壊そうと決心するが…。
 アッタレーア・プリンケプスというのは、この植物園の学者がしゅろの木につけた名前で、 学名ではないと思いますが、何か意味があるのかなぁ。どんどん育って、やがて温室のガラスを 突き破ったしゅろの木。でも、外はロシアの冬…。とても皮肉なお話です。



「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス/小尾芙佐 訳 (早川書房 ダニエル・キイス文庫 99.10.15)
ドナー・ベイカリーの店員、32歳のチャーリイ・ゴードンは、幼児と同じくらいの知能しかない精神遅滞者だった。だが、彼はある研究チームから思わぬ提案を受ける。脳の手術によって、頭をよくすることができるというのだ。その動物実験の成功第一号であるねずみのアルジャーノンに、テストで何度も負けてしまうチャーリイは、手術を受ける決心をする。やがて、チャーリイは常人の何倍もの知能を持つ天才へと変貌を遂げるが……。1959年作の中編『アルジャーノンに花束を』を1966年に長編化。

 …この本をこれから読む予定のある方は、私の感想は読まない方がいいです(笑) 変な先入観がない方が。 これもチャーリイの抱えた問題に似てますね。言葉で感動を表現しようとすればするほど、感動はどこかに行って しまう、という(^_^;) 読んで、ただ涙する方がこの本には似合ってます。一応、以下に味気ない感想は書き ましたが(笑)。
 天才じゃなかった時には、馬鹿にされてはいたけど友達がいたチャーリイ。でも、高い知能を得て、傲慢に なった彼は孤独になっていく…。読んでると、人間てなんて残酷なんだろうな〜と思ってしまいます…。 自分にないものに憧れて、持ってないものを欲しがるのに、それを持っている人を憎んだり妬んだりした挙句、 それを手に入れた途端に持っていない人を嘲るようになる。天才になってからチャーリイは過去の愚かだった 自分だって「人間なんだ」ってよく言ってたのが印象に残ってますけど、それと同じくらい、天才になった 自分のことも一人の人間として扱ってもらいたがってるんですよね。過去のチャーリイには知能が欠けていて、 天才のチャーリイには心が欠けてる(私にはそれほど欠けてるようにも思えませんが…)のかもしれません。 でも、どっちにしても人間であることには変わりがないということを思い知らされた上で、人間にとって 一番大事なことはなんだろう、と考えさせられました…。まあ、こういうのは後から考えたことで、読み 終えたら訳も分からず涙が出てきました。


「ギャスケル短編集」 ギャスケル/松岡光治 訳 (岩波文庫 2000.5.16)
イギリスの女流小説家エリザベス・ギャスケル(1810〜65)の短編8編。
収録作品…「ジョン・ミドルトンの心」、「婆やの話」、「異父兄弟」、「墓掘り男が見た英雄」、
「家庭の苦労」、「ペン・モーファの泉」、「リジー・リー」、「終わりよければ」


 この時代のイギリスの小説はいいですね〜♪ ギャスケルのことは恥ずかしながらほとんど知りませんでしたが、 面白いので機会があればもっと読んでみたいと思います。訳者の松岡光治氏が ギャスケルのHP(http://www.lang.nagoya-u.ac.jp/~matsuoka/gaskell/)を開設されていて、全作品(原書)が 読めます。ちなみにディケンズとギッシングとブロンテ姉妹に関するページ(英語です)もありましたので、 興味のある方はご覧になられては。…私は英語ダメです(T_T) 。以下好きな短編のご紹介。

「ジョン・ミドルトンの心」
 密猟者の父を持ち、無法者の仲間の間で育ったジョン・ミドルトンはネリーに恋心を抱き、まっとうな生活を送ろうと決意する。しかし彼を妬むディック・ジャクソンの投げた石がネリーに当たり、彼女は半身不随に。その上ディック・ジャクソンは父親である工場長に働きかけてジョンを解雇させてしまう。歩けない妻ネリーと生まれたばかりの子供を養うため、彼は再び悪い仲間に誘い込まれそうになるが、それを救うのはいつもネリーだった。それから何年もたったある日、一人の脱獄囚が一家の前に姿を現した。その男こそ、ジョンが心の底から憎みつづけてきたディック・ジャクソンだった…。
 どのお話もそうなんですが、聖書のエピソードからの引用やなんかがとても多いです。ギャスケルは牧師の奥さんなので、当然なのかもしれません。そのうち気にならなくなりましたが、最初はちょっと抵抗が(^_^;) このお話、最後は感動しました。

「異父兄弟」
 “私”の異父兄弟のグレゴリーは、父親や周囲の人間から疎まれ、嫌われていた。ある冬の日、父の使いで出かけた“私”は帰り道に猛吹雪にあい、道に迷ってしまう。倒れかけた“私”の耳に、犬の声と、それに続くグレゴリーの声が聞こえてきた。だが彼も道を見失ってしまい、二人は犬を頼りに歩き出すが…。
 次の「墓掘り男が見た英雄」も、同じといえば同じパターンなのです(^_^;) そう言ってしまうとミもフタもないですけど、真の賢者とは、英雄とは何かということについて考えさせられます。

「家庭の苦労」
 療養生活を送る病気の母親に代わり、家庭の切り盛りを任されたベッシー。働く兄たちや学校へ通う妹のため、気持ちのいい家庭生活を演出しようと一生懸命になるが、みんなの望んでいる生活とはいつもどこかちょっとずれていて…。
 この作品は日曜学校(のようなもの)の生徒向けに書かれたそうで、“人の気持ちを考えずに自分の勝手に立てた楽しい計画を押し付けても、相手はちっとも楽しくないんですよ”という教訓(…たぶん)があります。それはともかく、なんだか妙に楽しいお話です。

「リジー・リー」
 頑固者だった夫が亡くなったので、リー夫人は身を持ち崩した娘のリジーを探しにマンチェスターへ移り住む。 リー夫人の息子ウィルは町でスーザンという立派な女性と出会い、彼女を愛するようになる。彼女は父親と二人暮しで、 姪のナニーを引き取って育てていた。妹の存在が負い目となって心中を告白できないウィルを見かねて、リー夫人は事の 次第を告げるべくスーザンの元へ出向いた。真実を知らされたスーザンは、リー夫人が考えもよらなかったことを語り 始める…。
 この時代、性的に堕落…というかたった一度でも過ちを犯した女性って、今では考えられないほどひどい扱いを されるんですよね。まぁそれでなきゃお話が始まらないんですけど(^_^;) このお話のリジーも、かなりつらい 境遇に置かれて、その上…。…試練という考え方も…できないこともないけど。

「終わりよければ」
 ブラウン夫妻、そして使用人のクリスティ婆さんとクロフォードは、貧しいけれどロンドンで幸せな生活を送っていた。 ある日家具の代金を支払うために用意したお金が、引出しの中から消えてしまう。クロフォードが疑われ逮捕されるが、 証拠がなく釈放されてしまう。その頃から夫のブラウン博士の様子がおかしくなってきて…。
 犯人追求が主になってれば、ミステリといってもいいですね。妻のマーガレット立派です〜(T_T) 前の 「リジー・リー」のスーザンといいマーガレットといい、理想的な女性すぎてお手本にも何にも(笑)



「ポセイドン・アドベンチャー」  ポール・ギャリコ/古沢安二郎 訳 (ハヤカワ文庫 S52.12.31)
 アフリカと南米を巡る一ヶ月のクリスマス・クルーズを終えた汽船ポセイドン号は、500名の乗客を乗せ帰港の途についていた。だが海底地震によって発生した大津波に巻き込まれ、船は逆様になったまま停止してしまう。旅の間に親しくなった15人の乗客たちは不屈のスコット牧師に導かれ、救助される可能性を求めて破壊された船内を移動し始めるが…。1969年。

 沈没や暗闇や至る所死体だらけという恐怖と戦いつつ、極限状態の中15人の乗客が上(逆様になってるので船底)を 目指して歩き始めます。彼らを率いるのは、スポーツマンで牧師(-_-;)のスコット青年。要するにパニックものです。 スリルはありますが、読んでてちょっと重い気持ちになりました(笑)
 スコットの強い意志と信仰心だけが他の乗客たちを引っ張っていきますが、愚痴ばっかり言ってる人や、自分では 何もしないのにスコットにケチをつける人なんかがいて、状況の困難さ以上にみんなをまとめる方が大変(^_^;)  といってスコットもそれほど立派な人には見えなくて、何考えているのかちょっとわからないです。最後のあの行動に 至っては……。みんな一致団結して困難を乗り越える〜、という雰囲気はあんまりないです。その辺で逆に非常時の 人間の心理が生々しく見えてきます。15人(あとで減りますけど)もいるんですが、ちゃんと誰が何を考えてるのか 分かるのがすごいですね〜。それぞれがこうなる前から内面にいろいろ傷を抱えてて、追いつめられた状況でどんどん 出てきてしまうのでいっそうひどいことに。
それにしても、これはとても皮肉なストーリーのような気がします。あれだけの困難を克服したあとも、本音で 言いたいことを言い合ったあとも、何も変わらないんですから。そういうものなのかな〜(^_^;) 何がひどいって、 努力した人もしなかった人も…というところでしょう。でも、そういうのは嫌いではないです(^_^;)


「消えた太陽」 アレクサンドル・グリーン/沼野充義・岩本和久 訳(国書刊行会 1999.6.25)
 ロシアの作家アレクサンドル・グリーン(1880-1932)の短篇集。15編収録。
 収録作品…
  「消えた太陽」、「犬通りの出来事」、「火と水」、「世界一周」、「おしゃべりな家の精」、「荒野の心」、
  「空の精」、「十四フィート」、「六本のマッチ」、「オーガスト・エズボーンの結婚」、「蛇」、「水彩画」、
  「森の泥棒」、「緑のランプ」、「冒険家」


 アレクサンドル・グリーンは初めて読みますが、薄闇を通して見るような、ちょと暗くて幻想的なお話が多いですね。 うまく言えませんが、かなり独特な雰囲気があります。慣れないうちは少々戸惑いましたが、読んでると意外とこれがいい感じ。 以下にお気に入りの短編を♪
 この本は単独でも読めますが、国書刊行会の『魔法の本棚』の6巻、これで終わり。 よくもまぁ叢書としてまとめたというような、どれも癖の強い独特な作家の作品ばかりでしたね〜。わりと好きですけど(笑)

「消えた太陽」
 有り余る財産を残酷な悪事につぎ込みつづけたアベル・ホッゲイは、ある時ロベルトという名の 男の子の赤ん坊を買い取った。彼はロベルトを電気の光しかない住居に監禁し、太陽や星の光について一切教えずに 育てた。それは成長したロベルトが、生まれて初めて太陽を見たらどうなるかという"遊び"のためだったのだが…。
 のっけからすごい話(^_^;) 一人の人間の一生を、退屈しのぎにおもちゃにするホッゲイ。 でもお楽しみはぶち壊し。しかしまだまだこういうこと続けそうな感じですね(^_^;)

「おしゃべりな家の精」
 雨宿りのために立ち寄った空家で、僕は虫歯に苦しんでいる家の精に出会った。家の精は、この空家で 昔起こった出来事がどうしても理解できないといって、僕にその話を始めた。
 人間の心を持たない者には理解できない、ささやかな物語。本当に短いお話ですが、ちょとしんみりさせられます…。

「十四フィート」
 ロッドとキストの二人の鉱夫は、同じ女性にふられたあとも親友だった。彼女に別れを告げ、採掘場に向かった 彼らは道に迷ってしまう。目の前には幅14フィートもある断崖が口を開いていたが、飛び越せればかなりの近道になるのだった。 まずキストが思い切って飛び越したのだったが…。
 まったく、若い娘ってものは(^_^;) 実に皮肉なお話です。

「オーガスト・エズボーンの結婚」
 ロンドンに住む美男子にして資産家のオーガスト・エズボーンは、身寄りのない娘と結婚した。これ以上幸福な夫婦はないと 思われた結婚式だった。だが式が終わったあと、ちょっと外出すると言い残したエズボーンはそのまま行方不明に なってしまった。一体彼の身に何が起こったのか…。
 なにが彼をそうさせたのか。最初はほんのちょっとしたいたずら心だったのに、帰れないままずるずると…。でもなんとなく 分かる気もしてしまうというか…(^_^;) ひどいことはひどいですが、なんだか妙に切ない物語です。

「森の泥棒」
 ヘルトンの町外れに、マルドとカロルという名の二人の泥棒が暮らしていた。刑務所から出たばかりで 日々の生活にも困っていた二人だったが、ある時マルドは金儲けを思いつく。大金を隠した場所の地図を捏造し、 裕福な人間をだまして探索に乗り出し、しばらくの間いい暮らしをしようというものだったが…。
 なのに、別のもっと健康な生活の喜びに目覚めてしまうマルド(^_^;) まっとうに生きていけるはずだった未来を、 追いかけてきた自らの過去に奪われてしまう…。切なくも皮肉なお話ですね(T_T)

「緑のランプ」
 1920年のロンドンで、スティルトンとその友人は浮浪者ジョン・イーヴを助けた。富豪だったスティルトンは、 そこである悪戯を思いつく。イーヴをとある部屋に住まわせ、その意味も教えないまま毎晩一定の時間窓辺で緑色のランプを 灯させるというものだった。約束どおり、数年間ランプを灯しつづけるイーヴだったが…。
 「消えた太陽」もそうでしたが、グリーンの作品の登場人物はお金が有り余ってるとろくな使い方をしませんね(^_^;)  しかしこのお話は面白い結末に。収録作品ではこれが一番好きです。

「冒険家」
 旅行家のアモン・クートは冒険をこよなく愛する一方、静かな人生を送っている人間を軽蔑していた。だが友人に紹介されて リリアナに住むドッガーとエルマの夫妻の家を訪れた彼は、彼らの穏やかな田舎の生活に魅了される。だがその裏に何か 納得のいかないものを感じたアモン。夜中にこっそり家の中を歩き回るドッガーを見た彼は、その後をつける…。
 冒険というのは何も物質的なものだけじゃないってことでしょか。何かをやり遂げることでありさえすれば。 ドッガーの描いた3枚の絵、見てみたいですね……。



「悪童日記」 アゴタ・クリストフ/堀 茂樹訳 (早川書房 91.1.15)
 戦争が始まり、双子のぼくらは母親と別れ、会ったこともないおばあちゃんに預けられることになった。 夫を毒殺したと噂され、“魔女”と呼ばれるおばあちゃんとの生活が始まる。ぼくらはその厳しさに慣れるため、 訓練を始める。だがやがて、戦争は激しさを増してくる……。1986年。

 アゴタ・クリストフはハンガリー出身の女流作家。この『悪童日記』が処女小説。名前がアガサ・クリスティに似てるせいで損をしてるとか。……そんなこと、ぜんぜん気付かなかった(笑) この小説は双子の僕ら(名前は謎)が、感情を交えず、ただありのまま真実を書くというルールで書いた、という日記のような形式になってます。彼らは、感情を表す言葉は漠然としていて曖昧なものだからという理由で、感じたことは何も書きません。不思議な文章なんですね(^_^;) ありのままを書いてるからといって、対象を観察してるわけでもないし、感情表現をしないからといって、感情を抑えてるわけでもない…。ただ彼らの…絶食をしたり、殴りあって体を鍛えたり、罵詈雑言を浴びせあうとか、そういう一見ワケの分からない訓練のこととか、業突く張りのお婆ちゃんや、変な趣味(笑)の将校さんや、変な司教さん(笑)その他の隣人の様子が書かれてるだけ。彼らは何も感じてない、冷徹な目でゆがんだ大人たちを見ているようにも見えるけど…彼らも境遇ゆえとはいえ、十分おかしい(^_^;) いえ、確かに彼らは正しいのですが…。正しすぎて怖い。心に残ったのは、乞食の練習の章と、精神の鍛錬の章(…と書くと、わけが分からないな〜…(^_^;)) それにしても、続きの気になる(そして少々酷い)終わり方…。 それから、え〜…漠然とした言葉ではっきり言わせてもらうと、キライです、この本(笑)  双子たちのことは むしろ気に入ってますし(?)、登場人物は悪くない。ストーリーも特に好きじゃないけど、問題ない。 …がっ、この生々しさが嫌い。真実だけ書いてるんだから(しかも戦時中でいろいろ…あるし)生々しいに 決まってますけども、こういうたぐいの生々しさはダメだ…。というわけで、『ふたりの証拠』に続きます((-_-;)??) ↓


「ふたりの証拠」 アゴタ・クリストフ/堀 茂樹 訳 (早川書房 91.11.15)
(前作の続きから)国境を越えたクラウスと分かれたリュカは、祖母の家へ戻った。どうやって生きていったら いいのか分からなくなってしまったリュカは、ある日子供を水に投げ入れようとしているヤスミーヌという女性と 出会い、その子供と共に生活を始める。一方、本を読みたくて仕方ないリュカは、図書館へ向かう。ほとんどが禁書に なってしまったことを嘆く司書のクララに、彼は惹かれていくが…。1988年。

→前作『悪童日記』ではとても気になる終わり方をしていましたが、その続きのお話です。といっても、雰囲気は かなり違いますね。双子には名前があり、物語も三人称で書かれてて、こっちの方が“小説”という感じ。「日記」ほど 生々しい感じではなくなったのでこちらの方が私は良いですが、やっぱり心底好きにはなれないかな。とても 読みやすいんですけども。今回、リュカの周りの人たちがけっこう魅力的。ヤスミーヌやその子供のマティアスや クララや党書記のぺテールや不眠症の老人ミカエルやアルコール依存症のヴィクトール…リュカと同じくらい、 すごい人生を送る人たち。でも、リュカよりは人間くささがあるような。私は周りの人たちの方が好きだ……。
ところで、主人公に名前があるのとないのとではぜんぜん違うはず…なんですが、彼らの場合双子という設定がコトを 複雑にしてますね(^_^;) 確かにクラウスは国境を越え、リュカは残ったのだけど、結局名前なんてどっちがどっちでも 関係ない。リュカがリュカである意味なんてないのかな。現に、彼の生活は書かれてるけど、彼の姿がよく 見えないんです(T_T)。周りの人たちと親密な関係を築きながら、リュカは前作より感情をあらわにしてるのに、 それでも彼が見えない。感情移入をしようとすると、するっと手の中から抜け出られてしまうような……。彼のことは 気になるし、嫌いじゃない、好きになる可能性だってあるけど、信用はできない、という感じです。……うう、なんか 混乱して何を言ってるのかわからん(T_T) でも、こんな感じは嫌いじゃないですね。
それにしても、これも結末で意外なことが明かされますね。そういうお話だったのか〜。油断してました(^_^;)  というわけで、『第三の嘘』に続きます。↓


「第三の嘘」 アゴタ・クリストフ/堀 茂樹 訳 (早川書房 92.6.15)
 (前作の続き)私は、子供の頃を過ごした小さな町に、身分証明書がないために投獄されている。私は4歳のときに 生き別れになった双子の兄弟を探していた。やっと兄弟の居場所を突き止め、私は彼に会いにゆく。一方、兄弟の方は 彼に来てもらいたくはなかったのだが…。1991年。

 …いずれ読む方のために話の底を割ってしまうわけにもいかないので(^_^;) なんとも説明がしにくいのですけど、 要するに前2作の『悪童日記』、『ふたりの証拠』というのは、双子の兄弟(主にその片方)が書きついできた物語なわけ なんですね。ここまで読むと、クラウスとリュカが頭の中でぐるぐる回りだして(笑)もう何も信じられなくなります〜。 全てが見えたと思ってはいるけど、それだって怪しいものです(^_^;) でも、この作品のクラウスとリュカ(特に前者)の 方が私は好き…というか前2作よりはましな気がします。ここまで生きてきて不幸に押しつぶされそうな二人ですが、 少なくとも『悪童日記』に書かれてる二人より普通な気がする(^_^;) 読みやすいのでどんどん読めてしまうわりに、 最後までどれも好きになれない三部作でした。でも、じわじわと好きになってきているので、十部作くらいだったら 最後には好き、と言えたかもしれませんけど(爆) 今は正直なところ、ホッとしてます。終わったことにじゃなくて、 もう続かないことに……(笑)


「ウィーンの辻音楽師 他一篇」 グリルパルツァー/福田宏年 訳 (岩波文庫 79.7.16)
劇作家グリルパルツァー(1791−1872)の短編集。2篇収録。
 収録作品……『ウィーンの辻音楽師』(1848)、『ゼンミドールの修道院』(1828)


 劇作家として有名なグリルパルツァーですが、名前を知ってるくらいでした(^_^;) ここに収録されてるのは、 グリルパルツァーが生涯でたった2編だけ残した短篇小説。この2編だけなんて、ホントにもったいないと思える ような作品です。著者は不幸な人生を送ったせいか、とても控えめで内向的で物静かで人嫌いで傷つきやすい人 だったようで、作品にもそんな感じがあります。そういうのは好きです(笑) 以下に感想など。

「ウィーンの辻音楽師」
 毎年7月にウィーンで催される祭りに出かけた私は、こぎれいな身なりで古ぼけたバイオリンを弾く老人を見かけた。楽譜を見ながら調子外れの曲を弾いてはいるが、どこか気品のある態度にひかれた私は、彼の家を訪ねて話を聞く。 ヤーコプという名のその老人は、宮中顧問官を父に持つ立派な家柄の出だったのだが…。
 完璧主義者で、なんでも完全にやらないと気が済まないだけに、かえって無能な人間だと思われ、その上世間知らずなヤーコプ。歌声を聞いて初めて好きになったバルバラからも、思いっきり平手打ちをされたりします(^_^;) こういう人は、女性にしてみればとてももどかしいですね〜。好きだけど、後については行きたくないというバルバラの判断は正しかったと思います(爆) でも、他の人と結婚して何年たっても、やっぱり最後まで忘れられないのは彼のことなんですね(*^^*) ちょっと切ない痛みの残るお話。


「ゼンミドールの修道院」
 二人のドイツ人の旅人が、ポーランドのゼンミドールにある修道院に一夜の宿を求めた。一見新しそうなこの修道院の 由来が気になった二人は、世話をしてくれる修道士に訳を尋ねる。彼の語り始めたのは、シュタルシェンスキーと いう伯爵の悲惨な物語だった……。
 世間知らずのシェタルシェンスキー伯爵は、エルガという美しい女性と結婚して子供も生まれ、しばらくの間は幸せなのですが…。やがてある出来事が元になって、彼は子供の顔の中に違う男の面影を見るようになります。ついに逆上した彼は…(T_T)  ストーリーがけっこう起伏に富んでいて面白いです。よくある(?)不倫物語ですけど、なんだかおどろおどろしい。妻の不倫相手を監禁して問い詰める伯爵…。疑いを胸に秘めたまま、ただ黙って行動を起こす伯爵が悲しくも怖いです。最後のあの一件、分かっていたけど、やっぱりぞっとしました。こういうのも好きなお話ですね(^_^;)



「白い犬とワルツを」テリー・ケイ/兼武 進 訳 (新潮文庫 H10.3.1)
 足の不自由な老人サムのもとに、57年連れ添った最愛の妻コウラの死後、真っ白な雌犬が現れる。だがこの白い犬は、 何故か彼の前にしか姿を現そうとしない。心配する娘たちをよそに、彼は白い犬とともに一人で生活を始める……。

 80年も生きると人はこうなるのだろうかと、不思議な気持ちになりました。しかし、こういう言い方は誤解を 招きそうだな。え〜…80年生きた後でも、人はこんな風でいられるのだろうか、と(^_^;) 最愛の妻を失ったサム。 でも、気丈に、今までどおりになんとか一人でやっていこうとします。一人ずついなくなる友人たち、痛む腰、娘たちの 心配そうな視線が、ちょっとわずらわしい。毎日日記をつけるけど、書くことといったら、天気のこと、見た夢のこと、 若い頃の妻との思い出、世話をやく娘たちのこと……。なんだかふつーの老人という感じのサムなんですが、彼の元に 不思議な白い犬が現れます。彼以外にはほとんど姿を見せないし、吠えないし、彼の歩行器に前足をかけてダンスする ようなしぐさをする、見たこともないくらい白い犬。これは1970年代のお話で、まだ老人の痴呆症なんかにも理解が ないみたいで、ちょっとでもサムが変なこと言い出すと、頭がおかしくなったなんて思って泣き出す娘たち(^_^;)  そんな娘たちを大きな心で包みながら、でも自分のしたいことは何が何でもやる、というサムの生き方、かっこ良い ですね〜(*^^*) 81歳にもなって、免許もないのにおんぼろトラックに乗って、遠くで催される高校時代の同級会に 行っちゃうのです(^_^;) 道に迷えば野宿もする。周りの心配に、本人は至って無関心。こういうおじいちゃんがいると、 家族は大変だろうなぁ〜(^_^;) やがて彼も不治の病に冒されてしまうんですけど、それからの生き方がまた潔いんです。 今ひとつストーリーがまとまりに欠ける気もしましたが、こんな風でいられるなら、80歳も悪くないな、と思えた 作品です(^_^) 白い犬、見られるといいですけどね。


「宮殿泥棒」 イーサン・ケイニン/柴田元幸 訳(文春文庫 2003.3.10)
 アメリカの作家イーサン・ケイニン(1960-)の短編集。4篇収録。
収録作品……「会計士」、「バートルシャーグとセレレム」、「傷心の街」、「宮殿泥棒」


 どれもどこか哀しい優等生たちの物語ですね。努力して、真面目に生きるけど、主人公たりえない優等生たち。 派手ではないけど、しんみりとした良さがあります。以下に4篇全部の感想を。

「会計士」
 会計士として生真面目に生きてきた私ことアバ・ロスだが、いつも何か心に引っかかる事があった。 そんなある日、疎遠になっていた旧友ユージーン・ピーターズが突然彼に電話をかけてくる。 彼にベースボールキャンプに誘われた彼は、それを大きなビジネスチャンスとみるのだが…。
 こつこつ真面目に努力してきたのに、旧友はどんどん出世していく…。そんな友人と自分を比べると、 どうしても引け目と理不尽な怒りを感じてしまう…。アバがあんなことをするに至るまでは、 なんかかわいそうな人だな〜という気持ちがぬぐえませんでしたけど、あれでなんだか妙に スカッとしました(笑) 優等生だって、やる時はやるんだって感じで(謎) このお話が一番好きです(^_^)。

「バートルシャーグとセレレム」
 僕ことウィリアムの兄クライヴは、数学コンテストでいつも優勝する天才だった。だが彼は友人の エリオットと共に奇妙な行動ばかりしていた。ある日僕は、自宅の地下室にクライヴのガールフレンドが 住んでいるのを見つけてしまう…。
 バランス、というのがあるのでしょうね〜。あやういところでまとまっていた天才とその一家。 確かに何か起こらずには済まされなかったのかも。そしてそれを望んでいたウィリアムの 気持ちもよく分かります。妙に切ないお話ですね。タイトルが「?」ですけど、それはあとがきに…。

「傷心の街」
 大の野球好きのウィルソン・コーラーは、今は遠い場所に住んでいる息子ブレントと野球を みるのを楽しみにしていた。妻が自分の上司と浮気して家を出ていった悲しい思い出を胸に 抱えながら一人で暮らすウィルソンは、息子ともっと語り合いたいと思っていた…。
 中途半端なところでふらふら不器用に漂ってる感じのウィルソン。野球を通じて触れ合う父と息子の 妙なぎこちなさがいいです。

「宮殿泥棒」
 政財界の子息を預かる聖ベネディクト校の歴史教師ハンダートの悩みの種は、上院議員の息子 セジウィック・ベルだった。ある日、伝統ある「ミスター・ジュリアス・シーザー」コンテストに 出場した彼が、カンニングしていることに気づいたのだが……。
 生徒たちの人格を陶冶したいと熱望する熱血教師だった彼が、最後に人格は宿命なのだと思うに 至るのがなんとも切ないです。最後にはどうしても薄い壁一枚に隔てられてしまうような教師と生徒が、 妙に悲しい余韻を残します。



「アルケミスト」 パウロ・コエーリョ/山川絋矢・山川亜希子 訳 (地湧社 1994.12.10)
 スペインの野原で、羊を連れて一人旅をしているサンチャゴという名の羊飼いの少年。彼は見捨てられた教会で一晩を過ごした時、一週間前にも見た夢を再び見た。気になった少年がジプシーの老女に夢の解釈を頼んだところ、彼はエジプトのピラミッドへ行って、宝物を見つけてお金持ちになると告げられる。戸惑う少年だったが、ある日広場で不思議な老人とであったことで、彼自身の運命を受け入れるようになる……。1988年。

 パウロ・コエーリョはブラジルのベストセラー作家ですが、いつかどれかと思いつづけ、やっと読めました(^_^;)  これは、一人の少年が自分の運命を発見して、いろんな人と出会い、学びながら旅を続け、ついに自分の求めていたものを 得るというストーリーです。アルケミストというのは錬金術師のことですが、ここでは単に鉛を金に変えることが できる人というだけでなく、もっともっと根源的な力を持ってる人のことなんですね。少年を導いてその力を 目覚めさせてくれる、スゴイ老人です。全体としては童話とかファンタジーっぽい雰囲気なんですが、自分は 何故ここにいるのか、どうしたら夢を叶えられるのか、愛とはなんなのか、ということが、読みやすいやさしい 言葉で淡々と語られています。
う〜ん、そんな本ならいくらでもあるかもしれませんが、これほどシンプルな言葉に、ここまで深い意味を こめて語ってる本というのは、なかなかないと思います。すごいです。雰囲気がとてもいいんですよね。 スペインの野原を、羊を連れて旅する少年。アフリカに渡ってお金を盗られ、クリスタルガラスの店で働いて、 キャラバンに混じって砂漠へ…。全てはあらかじめ“書かれたこと”であって、人が何かを望むときには、 全宇宙が協力して、それを実現させるために力を尽くしてくれる。前兆を読み取って、それに従ってゆくことが 出来さえすれば。この物語には、偶然なんていうものは存在しません。…私個人としては、全てが必然とか考えると ちょっと息苦しい思いはするんですが(^_^;)、それでもそうなのかも、と思えてくるような…。
とても書ききれませんが、単純なのに深い言葉が多くて感動しました。「ほとんどの人は、世界を恐ろしい場所だと 思っています。そして、そう思うことによって、世界は本当に恐ろしい場所に変わってしまうのです。」と、 少年自身の心が語ります。人はいつからか、自分の心の声を押さえつけて、それに耳を傾けるのをやめてしまうように なるんでしょうか。自分にとって唯一正しいことを告げてくれてるかもしれないのに…。本当にいろいろ考えさせられた 本ですね〜。これはもっと早く読みたかったです(^_^;)


「星の巡礼」 パウロ・コエーリョ/山川絋矢、山川亜希子 訳 (角川文庫 H.10.5.30)
 RAM教団のマスター称号授与式で、最後の試験に失敗し、パウロは奇跡の剣を手にすることができなかった。そのため彼は「星の道」と呼ばれる巡礼のための長い道を旅し、剣を自分の力で見つけ出さねばならなくなる。ガイドのペトラスに導かれ、ピレネー山脈を超えポルトガルのサンチャゴへと続く旅が始まる……。

 これは自伝的な作品なんですね。知らなかったんですが(^_^;) コエーリョ自身がRAM教団(詳しい説明は私には 無理ですが(^_^;)、スペインのキリスト教神秘主義の秘密結社だとか)に入ってるそうです。いろんな試練を乗り越えた 者が魔法使い(マガス)になることができ、その証として剣を与えられるんですが、パウロこと著者はこの試験に落第し、 巡礼の旅へと出ることになります。ただ歩くだけじゃなくて、その間に実習と呼ばれるいろんな儀式やなんかがあります。 今でも、宗教は違っても巡礼は盛んに行われてるんですね。どこを歩いてるかということはほとんど問題になってないので、 途中の風物もあまりかかれてません。ただ、パウロが出会うものが問題だという感じです。
宗教のことは詳しくないのですが、ずーっと読んでるうちに、宗教はあくまでひとつの例えに過ぎないような気が してきます。結局、自分が目指すものに迷わず行き着くためには、どうしたら良いかということを教えてくれてるんだと 思います。ペトラスとパウロの巡礼は、いろんな示唆に富んでます。聞こうとすれば聞こえるし、見ようとすれば 見えるのに、そんな簡単なこともできなくなってしまうから、人間て大きくなるにつれ不幸になってしまうのかも しれませんね。それで、いろんな試練も必要になって来るんですね。でも、何もきちんとした巡礼(?)に行かなく たっていいんでしょう。これを読んでると、日々の生活が全て、大切なものを手にするための巡礼のような気が してきますし(^_^;)
『アルケミスト』がフィクションでそういうことを言ってるのに対して、『星の巡礼』は著者の体験を通して いってるというだけの違いのような気もしますが、キリスト教になじみのない人間の目から見ると、 『アルケミスト』の方が分かりやすいかも(^_^;) でも、キリスト教を信じてなくても、このパウロのやった 「RAMの実習」は役に立つと思うんですよね。リラックスできそう(笑) 何事も知識で否定してはいけないと いうことですね〜。最後の一文に感動しましたが、書くとつまらないので書きません(笑)


「死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇」 ゴーチェ/田辺貞之 訳(岩波文庫 1982.2.16)
 フランス文学の魔術師テオフィル・ゴーチェ(1811-72 )の幻想的な短編集。5編収録。
  収録作品……「死霊の恋」、「ポンペイ夜話」、「二人一役」、「コーヒー沸かし」、「オニュフリユス」


 いいですね〜(^o^) どれも幻想的かつ怪奇的。私好みな短編集です。ふふ(^_^;) やっぱり同じ幻想小説でも お国柄というものがありますね(^_^) 以下にお気に入りの感想を♪

「死霊の恋」
 神学校を卒業し、僧侶になろうとするロミュオー。そんな彼の前に、彼に恋するクラリモンドという美しくも妖しい 女性が現れる。ロミュオーは夜毎の夢の中で、彼女との享楽の日々を送るが…。
 何が夢で何が現実なのかだんだん分からなくなってきますね。このお話も次のもそうだけど、 人生なんてかくも簡単に狂ってしまうのですね(^_^;) それでもどことなく哀しみの漂うお話です。

「ポンペイ夜話」
 友人たちとイタリアのポンペイに旅したオクタヴィヤン。そこで発掘された美しい女性の胸の押型に感動した彼は、 二千年前に生きていたその女性を恋い慕う。その夜一人ポンペイの遺跡をさまよう彼は、いつのまにか自分が 噴火前のポンペイにいる事に気付く……。
 やがてそこで押型の婦人にめぐり合うオクタヴィヤン。でもただの恋物語で終わらないところがいかにも、 なんですね(^_^;) オクタヴィヤンの奥さんかわいそ(-_-)

「二人一役」
 俳優を志すハインリッヒは、メフィストフェレスの役を演じ喝采を受ける。だが、それを快く思わない者がいた……。
 本物の悪魔が出てきてしまうんですね〜。こういうのはけっこう好きです。この短編集の中では唯一 明るいラストかな(^_^;)



「弦のないハープ または、イアブラス氏小説を書く
       エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2003.11.30)
弦のないハープ  高名な小説家イアブラス氏は、モートシャーのツブレタプディング近郊の自宅シュミキテレツ邸で 新しい小説を書き始めた。タイトルはメモの中から無作為に選んだ「弦のないハープ」。 イアブラス氏の作家としての苦悩は続く…。
 アメリカの画家ゴーリー(1925-2000)のデビュー作。1953年。


 ゴーリーにしては珍しく短編と言ってもいいような本、と思ったらこれはゴーリーのデビュー作 なんですね。とてもデビュー作とは思えないくらい、既にあのちょっと不気味で暗いシュールな 絵はそのまま、ゴーリーの持ち味がふんだんに盛り込まれてます。
 「弦のないハープ」という作品を呻吟しながらひねり出そうとするイアブラス氏。 ゴーリーは作家の実態(?)を知らずに書いたそうですが、作家の苦しみ悩む様がおかしくも生々しく描かれてます(笑) 自分の作品が古本屋で安売りされてるの見て複雑な思いにかられたり、 新刊がショーウィンドウに並ぶのを見て気恥ずかしくなったりする様子なんて、さもありなんという 感じ(^_^) 作中には画家だからこそできるお遊びなんかもあったりして、とても楽しい作品です♪ 



「ギャシュリークラムのちびっ子たち」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2000.10.25)
大人のための絵本作家エドワード・ゴーリー(1925-2000)の絵本。26人の子供たちが恐ろしい死を迎える さまを独特の線画で淡々と描く。1963年。

 怖いんですけどね(^_^;) 子供たちがアルファベット順に、階段から落ちたり、まさかりが突き刺さったり、 火だるまになったりして死ぬところが、何の感情も交えずに淡々と描かれてます。だけど、なんとも言えない雰囲気 なんですよね〜。ブラックユーモアというか、言葉じゃ雰囲気が伝わらないと思うので、本を見かけたら開いて みて下さい(^_^;) 原文と対訳になってます。


「うろんな客」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2000.11.25)
カギ鼻頭のヘンな生き物が、突然とあるビクトリア朝の館を訪れた。一家の困惑をよそに、したい放題の うろんな客の正体は…? 1957年。

→このヘンな怪しい生き物がかわいい〜。一目惚れです(笑) それに、柴田さんの短歌調の翻訳が、作品の 雰囲気にぴったりすぎる(T_T) 「ふと見れば 壺の上にぞ 何か立つ 珍奇な姿に 一家仰天」とかいう 感じです。最高です。ヘンな奴に勝手に来られたビクトリア朝風一家の、身の置き所のなさがひしひしと 伝わってきますね(笑)。この“うろんな客”の正体、言われてみればなるほど、ですね〜。


「優雅に叱責する自転車」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2000.12.25)
火曜日よりあとで、水曜日より前のこと。クローケーの槌でお互いを叩き合っていたエンブリーとユーバートは、 奇妙な自転車で旅に出た。おかしな旅から帰ってきた二人を待っていたのは…。1969年。

→途中で出てくる大きなとりが好き(^_^;) 優雅に叱責する自転車(-_-;)?とか、第2章の次が4章だったり さらに次が7章だったりする(T_T)とか、深く考えてはいけない本(笑) 子供の無表情&無感動な感じとか、 ペダルもチェーンもブレーキもないのに勝手に動く自転車とか、こういうシュールな感じは好きです♪ 


「不幸な子供」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2001.9.20)
優しくてお金持ちの両親のもとに生まれた少女、シャーロット・ソフィア。だが幸せも束の間、彼女に次々と不幸が襲いかかる…。アメリカの画家エドワード・ゴーリー(1925‐2000)が独特の線画で描く、不幸の物語。1961年。

→不幸すぎます(T_T) 途中まで「小公女」みたいな運命を辿るシャーロットですが、それはもう並みの 不幸じゃないです(爆) 両親が死に、孤児院に入れられていじめられて、逃げ出したところを人さらいに さらわれて…。とにかく不幸です。これがまたゴーリー独特の恐ろしげな絵で淡々と描かれているので、 不幸な感じ倍増(?)です。どの絵にも得体の知れない動物がさりげな〜く描き込まれてて、不吉な感じを 出してます。ほとんど悪趣味なくらい不幸です。
……でも、やっぱり、このさばさばした感じ、いいですね〜(笑)


「蒼い時」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2001.10.20)
米国の画家エドワード・ゴーリーが、スコットランドの思い出を2匹の犬(?)に託して描いた、奇妙な絵本。1975年。

→……ゴーリーです。はまってます(^_^;) この本は「旅嫌いのゴーリーが、唯一遠出したという スコットランド旅行での思い出を二匹の犬に託して語る、摩訶不思議な物語」と紹介されています(^_^;)  しかしこの2匹が犬かどうかも実は良く分かってませんし(まぁ、犬っぽいけど)、ましてスコットランドの思い出など さっぱり出て来ないのです(^_^;) その辺が、ゴーリーらしいといえばらしいのでしょうか(^_^;) 2匹の犬らしき 生物が、筋も脈絡も何もなく好き勝手なコトを語り合っているだけです。その奇妙さ加減がまたいいんですよね(^_^) 


「華々しき鼻血」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2001.11.20)
アメリカの画家ゴーリー(1925−2000)の絵本。1974年。

→日本で出版されるのは、これが6作目。一種のアルファベット絵本なのですが、名詞ではなくて副詞が アルファベット順に並んでるという珍しいものです。最高です(T_T) ゴーリー独特の、やるせない哀愁が そこはかとなく漂ってます(^_^;) だから何?とといたくなるようなのばっかりですが、そこがまさに ツボなんですね(^_^) こーゆーのが好きな人間にはたまらないです。
ちなみに、タイトル『華々しき鼻血』(原題「THE GLORIOUS NOSEBLEED」)は、内容とは一切関係ありません(^_^;)  しかしこれも内容同様、柴田氏の名訳と言っても良いタイトルですね。


「敬虔な幼子」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2002.9.30)
 3歳になったヘンリー・クランプは、自分の魂が邪であるにもかかわらず、神様が彼を愛し給うことを知りました。 ……あまりにも純粋すぎる幼子が、早すぎる死を迎えるまでを描いたゴーリーの絵本。1966年。

 ゴーリーの絵本は何度読んでもシュールですね(^_^;) このヘンリー・クランプも、かわいいことはかわいいんだけど、 敬虔すぎて怖いです(^_^;) 一見わりとフツーに淡々と物語が進んでくのですが、どっかおかしくて味があります。 結局敬虔すぎたばかりに早く死んでしまうことになるのですが、彼はきっと後悔してないでしょう(^_^;) やっぱりゴーリーはいいですね〜(*^^*)


「ウエスト・ウイング」 エドワード・ゴーリー (河出書房新社 2002.11.30)
 この作品にあらすじは必要ありません。なぜなら、絵だけだからです(^_^;) 翻訳者が書いてないのもそのため。 ウエスト・ウイング(建物の西翼という意味らしい)というタイトルと、描かれているどこかの建物の怪しすぎる室内から 何もかも想像するしかありません。見るからに不吉な建物、見てるうちに何かが浮かび上がってきそうな不吉な壁紙、 怪しい人たち、不吉な影、怪しい現象、妙な置物、怪しい生物……このゴーリー独特の不気味で不吉でそれでいて 妙に想像力を掻き立てられる絵がたまりません(^_^;) どこかでこの本を見かけたら、この怪しい世界をちょとだけ 覗いてみて下さい(^_^;)♪


「まったき動物園」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 2003.1.30)
まったき動物園  実在しない奇妙な名前の変な動物たちが、アルファベット順に26匹描かれた、ゴーリー版幻獣辞典。1967年。

 相変わらず、ゴーリーの本は変です(^_^;) アンプーだのボガスロシュだのクランクだの、耳慣れない(当然)名前の動物が 26匹も……。しかも全然かわいい動物がいなくて、なんかみんな奇妙で不毛で不吉な顔つきをしてます。個人的には、 "モーク"の奇妙さと"ニープス"の救いの無さと"レイッチ"のやる気の無さが気に入ってます(笑) でもこんな動物園が ホントにあったら……怖すぎ(^_^;)



「おぞましい二人」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳 (河出書房新社 12.30)
おぞましい二人  問題のある環境で生まれ育ったハロルドとモナ。大人になった二人は出会い、いつしか恐ろしい犯罪に手を染めることに…。 1977年。

 まさにおぞましい二人ですね〜。出版当時アメリカで多くの読者の反感を買った 問題作だそうですが、さもありなん(^_^;) 実際にあった事件に触発されて書いたものらしいですね。 しかし万引きはするわ他人を困らせてほくそえむわ、そんな人間が二人集まると…(ToT)  妙に淡々としてる辺りが救いでもあるかな〜。発売当時はともかく、今ではそれほど反感も 覚えないと思いますが…。だってゴーリーだし(笑) ほの暗く救いようのない空気が漂う、奇妙な味の作品です(^_^;)



「雑多なアルファベット」 エドワード・ゴーリー/柴田元幸 訳(河出書房新社 2003.2.20)
雑多なアルファベット  ヴィクトリア朝時代の教訓をパロディにした、アルファベット・ブック。1983年。

 ゴーリーのアルファベット・ブックです(*^^*) 文庫サイズのハードカバーでかわいいです♪  もともとマッチ箱程度の大きさの豆本として作られたため、絵も小さいし、言葉も短い。でも やっぱりゴーリーらしさは随所にあふれてます♪ Alms(施し)から始まって、Zinc(亜鉛)で 終わるのだけを見ても分かるように、もうワケの分からない教訓で満ち溢れています(爆)  対訳になってますので、韻を踏んだ原文の面白さも堪能できます。柴田氏の翻訳も 絶妙ですね〜(^_^) この世界は、はまったら逃れられない……(^_^;)



「THE IRON TONIC or a winter afternoon in lonely valley
 EDWARD GOREY (Harcourt 1969)
 LONELY VALLEYに建つ、老人や病人ばかり滞在している灰色のホテル。人々は谷を散歩するが、 そこで起こるのは奇妙で不吉なことばかり…。アメリカの画家エドワード・ゴーリー(1925‐2000)が 描く奇妙な世界。1969年。

 原書ですが、文章が1ページ1行ほどしかない絵本ですのでまぁ軽く読めます。読み終えてもタイトルが 意味不明なのは、私の英語力のなさだけが理由じゃない、はず……(-_-;)
 例によって、ゴーリー特有の不可解で不吉な空気に満ち満ちているお話。面白いです〜♪ 人々は毛皮やら ショールやらに深く身を包み、雪に埋もれた谷間を、巨大なうなぎ一家(謎)が潜む池のそばを、不吉な墓場を…いわく ありげにさまよいます。原文の方が、不穏な雰囲気がじかに伝わってくる感じ(当たり前か(^_^;)) やっぱり ゴーリーの絵本はいいですね〜♪



「題のない本」 エドワード・ゴーリー (河出書房新社 2004.11.30)
題のない本
 題どころかストーリーもないので、あらすじも書きませんが(^_^;) 男の子(?)が窓から庭を眺めてると、 どこからともなくヘンな生き物たちが現れ、手をつなぎ輪になって踊る…というのを ずっと同じ視点から描いてます。擬音ともなんともつかない、妙な音に乗せてでてくる妙な生き物。でも この妙な動物たちがなんだかかわいい(…くもないか?(^_^;))♪ 男の子(?)のとぼけた表情もいいです♪  あんまり深く考えてはいけませんが、なんとなくほのぼのしてる感じ(…そうか?(^_^;))が好きな本です。



「キャッテゴーリー」 エドワード・ゴーリー (河出書房新社 2003.10.30)
キャッテゴーリー
 米国の絵本作家ゴーリー(1925-2000)の描く、とぼけた味の50匹の猫たち。1973年。


 ゴーリーはちょと不気味でおどろおどろしい絵の作品が多いんですが、これはとても かわいい(かどうかは意見が分かれる……かな(^_^;))猫たちの 絵本です♪ カラーだし。 タイトルはcategory(カテゴリー)とかけてるんですね〜。ちょととぼけたおじさん ぽい顔で、ひげと眉毛が妙に長い猫が、一輪車やボートに乗ったり、梯子を上ってたり…。文章が全くない (だから翻訳者も書いてない)のですが、絵の中にはそれぞれ50まで番号が振られています。それもアラビア数字 だったりローマ数字だったり、漢数字まで…。どこに書いてあるのか探すのも楽しいですね(^_^) でもやっぱり、 この猫たちののほほんとした表情がとてもいいです〜(*^^*) 文字がなくてもここまで見せてくれる本て すばらしいです(T_T) 一番好きなのは、最初のページで逆立ちしながら一輪車に乗ってる猫です。 ちょとなごみたい時に最適な本♪



「林檎の樹」 ゴールズワージー/渡辺真理 訳 (新潮文庫 S28.8.10)
 銀婚式の日、妻ステラと一緒に若い頃の思い出の場所を訪れたフランク・アシャースト。 彼が思い出していたのは26年前、大学卒業を間近に控え、この同じ場所を友人と二人で 徒歩旅行をしていた時のこと。そしてあの時、林檎の木の下で愛を誓ったミーガンという女性 のことだった……。1916年。

 良い……というか残酷なストーリーですね。デボンシャーの牧歌的な風景、そして時は春。 純朴で美しいミーガンに心ひかれるアシャースト。でも彼女と駆け落ちを しようと約束した次の日にはもう、友人とその妹たちとのもっと洗練された生活に未練が…。 こんなことになるんではないかなと予想がつくくらい、ストーリーとしては単純なのですが…。
 こう言ってしまうのは簡単なんですけど、若さってやつなんでしょうか(^_^;) 私ももっと若い頃に 読んでいたらどうか分かりませんが、アシャーストの不誠実を非難しつつも、彼がそういう行動を とったことも理解できるんです。無理もないかな、と思ってしまう……。 もう若くはないってことなんでしょうか(ToT)
 年月は彼をどう変えたんでしょうか? すべてが明らかになったあの瞬間、自分は何を してしまったのかと、答えの出るはずのない問いをつづけるアシャースト。確かに やりきれない話だけど、感傷に流されて終わってないところがいいですね。
 他に短篇を一つしか読んだことしかないですが、ノーベル賞作家なんですよね〜(-_-;) もうすこし いろいろ読んでみたい作家です。



「郵便局と蛇」 A・E・コッパード/西崎憲 訳(国書刊行会 1996.6.20)
 英国の詩人・短編作家コッパード(1878-1957)の短篇集。9編収録。
 収録作品…
  「銀色のサーカス」、「郵便局と蛇」、「うすのろサイモン」、「若く美しい柳」、「辛子の野原」、
  「ポリー・モーガン」、「王女と太鼓」、「幼子は迷いけり」、「シオンへの行進」


 英国の短編作家、コッパードの短篇集♪ 美しい言葉で語られる、幻想に満ちた 不思議なお話ばかりです。いろんな職を転々とし、波乱に満ちた人生を送ったコッパードは 作家としてのデビューも早くはないのですが、独特の雰囲気を持つ短篇をたくさん残している作家です。 いろんなアンソロジーで数篇読んでますが、まとめて読むのは初めて。コッパードの作品は キリスト教に関わるもの、村を舞台にしたもの、恋愛小説的なもの、ファンタジーの4つが 主なものらしいです。私が好きなのは、やっぱしファンタジーでしょうか(^_^;)  以下にお気に入りの感想を♪ コッパードについて書かれたあとがきも、一番長い短篇よりさらに長いけど(^_^;) とても面白いです。
 ところでこの本は、幻想と怪奇を主題にした短編集を集めた叢書「魔法の本棚」(国書刊行会)の 1巻でもあります。もちろん単独で読めますが、2巻の『漁師とドラウグ』(ヨナス・リー) に続きます。

「銀色のサーカス」
 ウィーンで雇われポーターの仕事をしている50歳のハンスは、若い妻が彼の友人と 駆け落ちしてしまったことに心を痛めていた。そんな時、ルーマニアのサーカスの 団長が彼に声を掛ける。死んでしまった虎の代わりに、虎に成りすましてライオンと 格闘をしてほしいと頼まれるハンスだったが…。
 そんなことって(笑)というストーリーですけど、なんだかとてもコミカルに 描かれていて楽しいです。それだけに、恐怖の結末が胸にしみます…。

「郵便局と蛇」
 切手を買うために山の麓の郵便局に立ち寄った僕は、そこで奇妙な話を聞かされる。 それは山の上の沼に住むという、奇妙な蛇の話だった。
 ホントに短いお話なんですが、オチがとても好きです。郵便局と蛇、という 奇妙な組み合わせがまた良いですね♪

「うすのろサイモン」
 人生でたった3度しか幸福を感じたことがなく孤独に生きてきたサイモンは、 ある日天国へ行こうと決心した。さまざまな人に道を尋ね、やっと天国行きの エレベーターを見つけたサイモン。だがそんなサイモンの後を、彼に外套を与えた学者が 追って来ていた。外套にポケットに入れたままの、あるものを取り返すために…。
 不思議なお話ですね。天国行きのエレベーターって(^_^;) 天国も奇妙だけど、 学者のエピソードがちょっと感動的です。

「ポリー・モーガン」
 仲の良い伯母アガサのもとへ遊びに行ったポリーは、小間使いのフィットルから奇妙な話を 聞かされる。アガサは一人でいるときも、何故か二人分の食事を用意させて誰かと食事を しているらしいというのだ。しかもポリーは、その相手が少し前に死んだはずの農場主だと 知ってしまう。何かに取り付かれているにはあまりに幸せそうなアガサだったが、 見かねたポリーは恋人と対策を講じることに……。
 他人の幻想は例えそれがなんであれ、壊したりするのは 余計なお世話ということでしょか。切なくも皮肉なお話です…。



「天来の美酒/消えちゃった」 コッパード/南条竹則 訳(光文社 2009.12.20)
 英国の短編小説家、コッパードの短編集。 本の詳細
 収録作品…
  「消えちゃった」、「天来の美酒」、「ロッキーと差配人」、「マーティン爺さん」、
  「ダンキー・フィットロウ」、「暦博士」、「去りし王国の姫君」、「ソロモンの受難」、
  「レイヴン牧師」、「おそろしい料理人」、「天国の鐘を鳴らせ」


 コッパードは幻想的かつ叙情的で不思議な後味の残る短編をたくさん残してる作家ですね。 「消えちゃった」だけ既読。「レイヴン牧師」とか「天国の鐘を鳴らせ」あたりが好きな 作品ですが、何かいちばん忘れられない感じなのは「おそろしい料理人」です(笑)
 怪奇小説とか大好きなんですが、コッパードくらい幻想的かつ突拍子もない展開の話に なってくると、私にはちょいとついて行けない部分があります(^_^;) そういうのが好きな 人にはたまらないのでしょうけれども。あと、なんか読みにくい 感じだったのは何故なんだろか。コッパードは嫌いじゃないんですが、個人的には、 この短編集の収録作品はちょっと好みが分かれる感じ。もうちょっと色々読んでみたい 気がします。



「新訳 ピノッキオの冒険」 カルロ・コッローディ/大岡玲 訳 (角川文庫 2003.2.25)
 ジェッペットじいさんは、真っ赤な鼻のために"さくらんぼ親方"と呼ばれていた大工の アントーニオにしゃべる棒っきれをもらい、それであやつり人形を作り、ピノッキオと名づけた。 ピノッキオは勉強も仕事も嫌いで、いたずらをして遊んでばかり。ひどい目にあうたびに 改心するピノッキオだったが、すぐに元通り。ある日出会った美しい仙女に、よい子にしていれば 人間の子供にしてやると言われるが…。1883年。

 このお話を知らない方はたぶんいないでしょう♪ 童話とはいえ妙にシビアで、大人が読んでも 十分面白いです。というか、この翻訳は大人向けらしいですね。ディズニーの「ピノキオ」とはだいぶ 話も違うようですが、私はディズニーの方を知らないので、どこが違うか分かりません(^_^;)  とにかく子供時代に絵本で読んだ私には、とても懐かしいお話でした〜(*^^*)
 冒頭からいいですね。さくらんぼ親方と、ジェッペットじいさんの子供じみたケンカ。やがて 作られたピノッキオも、よい子になるなると言いつつ誘惑に弱い(弱すぎる)。ストーリーも よい子になるための教訓に満ち満ちているんですが、こんなのかえって守りたくもなくなるような(笑)  忠告をしてくれるこおろぎをはずみとはいえ殺しちゃうし、ジェッペットじいさんの親心も無にするし、 せっかく手に入れた金貨もだましとられるし、挙句の果てに、ロバに…もう最後の最後までろくでもない ピノッキオです(^_^;)  でもま、そんなものかな。子供の頃の私も、ピノッキオのする悪いことが楽しくて 大好きでしたし。なんか悪い子の方が、きらきらと輝いて見えるような(^_^;) ホントに子供が 生き生きと描かれていますね(^_^) しかし改めて読み直すと、子供向けとは思えない、けっこうハードな お話なんですね〜。大人でなければ気付かないようなイタリアらしい描写も随所にありますが、これはやっぱり子供に 楽しんでほしい本ですね。本当に楽しい、素敵なストーリーです♪



「ロード・ジム」 上・下  ジョゼフ・コンラッド/鈴木健三 訳
    (講談社文芸文庫 上 2000.9.10 下 2000.10.10)
 パトナ号に乗り組んでいた、一等航海士の若者ジム。船が遭難し沈没の危機を目前にした時、彼は800人の乗客を船に 残し、船長たち三人とボートで脱出してしまう。乗客たちはその後救出され、ジムたちの行為が発覚する。裁判にかけられ 一等航海士の資格を剥奪されたジムだったが、自らの犯した行為に対する苦悩は深く、それはやがて彼を果てのない旅へと 駆り立てることになる。そんな彼とふとしたことから出会ったマーロウ船長は、ジムの生き方に深い興味を覚え、彼に 何かと援助をする。ジムは船員をやめ、過ちを犯した自分の姿から逃れるように白人社会を離れてゆく。やがて彼は マーロウの友人シュタインが経営する商社の、スマトラのパトサン出張所へ派遣されるが…。1900年作。
 読み始めの頃は、ジムは問題を直視できなくて世界中を逃げ回っているように見えたし、そんなジムを助けるマーロウも どうかしてるんじゃないか、と思ってたんですけども…(その辺、「わたしの主題は女性の普通の感受性にとっては相当 異質的なもの」とコンラッドが言っているのもちょっと分かったよーな気がする )。でも、そうじゃなくて、うまく 言えないんですけど、彼の行動は逃避というより、自分が通った後の橋を焼き落として背水の陣を敷くような、悲壮な 感じがします……。
 う〜ん、800人の乗客置き去り云々は、あくまで二次的なものなのかな。作中で何度も罪人、日陰者と呼ばれてる ジムですが、確かにそうであるにもかかわらず、そんな感じがあまりないんですよね。それはたぶん、ジムにとっては 罪の意識よりも、現在の自分を彼の思い描いている理想の自己像と一致させられるかどうか、という問題の方が 大きいからなんだと思います。彼がときに痛ましいほど純粋に見えたり、腹立たしいほど傲慢に見えたりするのも、 そういうところにあるんでしょう。若いから、と片付けてしまうには悲劇的すぎるけれど、やっぱり彼の若さもあるし ――シュタインの言葉を借りれば――ロマンティックだったから…。理想を追いつづけて、自分を追いつめてしまった 哀れな若者。もっともそんな風に客観的に言い切れるほど、ジムは特異な存在じゃないです。確かに彼はマーロウが 言うように「われわれの一人」で、私たちの一部でもあるんだと思います…。ジムのしたいこともよく分かるし、でも そうじゃないんだと言いたくもなる。こんな感じが終始頭から離れなくて、読んでる間中考え込まされることに(^_^;)  ジムがどう生きればいいかということを、シュタインがマーロウに「夢を追い、さらに夢を追い、――そして――永遠に―― 最後まで」と語りますが、それはジムが結局ああなってしまうより他なかったことを暗示してるように見えます。美しい のかもしれませんけど、破滅的な生き方…。あの結末に、ジムが満足しているかどうかは分かりませんが。読み終わると、 「ロード・ジム」というタイトルにも複雑な思いがあります。
………長いな。すみません、これでもかなり短くしました(^_^;) でもまあ、今更ですけど、読んでよかったです。 何故か一番心に残ってるのは、マーロウがジムに言った、なんでもない言葉…。

『覚えているのはこのおれでも世の中でもない。君が、君自身が覚えているだけだ』


HOME海外の文学