ナ行
茶色のタイトルをクリックすると、感想へ飛びます♪

ノックス (ロナルド・A) イギリス 1888-1957
 陸橋殺人事件 (1925)創元推理文庫


ハ行

ハイスミス (パトリシア) アメリカ 1921-
 動物好きに捧げる殺人読本 創元推理文庫
バークリー (アントニイ/フランシス・アイルズ) イギリス 1893-1971
 レイトン・コートの謎 (1925) (ロジャー・シェリンガムシリーズ1)国書刊行会
 ウィッチフォード毒殺事件 (1926) ( 〃 シリーズ2)晶文社
 ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎(1927) ( 〃 シリーズ3)晶文社
 絹靴下殺人事件 (1928) ( 〃 シリーズ4)晶文社
 毒入りチョコレート事件 (1929) ( 〃 シリーズ5)創元推理文庫
 第二の銃声 (1930)( 〃 シリーズ6)国書刊行会
 最上階の殺人 (1931)( 〃 シリーズ7)新樹社
 地下室の殺人 (1932)( 〃 シリーズ8)国書刊行会
 ジャンピング・ジェニイ (1933) ( 〃 シリーズ8)国書刊行会
 殺意 (アイルズ名義) (1931)創元推理文庫
ハメット (ダシール) アメリカ 1894-1961
 マルタの鷹創元推理文庫
ハリス (トマス) アメリカ
 ブラック・サンデー (1975)新潮文庫
 レッド・ドラゴン (1981)ハヤカワ文庫
 羊たちの沈黙 (1988) 新潮文庫
 ハンニバル (1999) 新潮文庫
 ハンニバル・ライジング (2006)新潮文庫
バリンジャー (ビル・サンボン) アメリカ 1912-
 歯と爪 (1955) 創元推理文庫
ハル (リチャード) イギリス 1896-1973
 伯母殺人事件 (1935)創元推理文庫
ハンドラー (デイヴィッド) アメリカ 1952-
 真夜中のミュージシャン (1989) 講談社文庫
ピリンチ (アキフ) トルコ 1959-
 猫たちの聖夜 (1989) 早川書房
ヒル (レジナルド)イギリス 1936-
 社交好きの女 (1970)(ダルジール警視シリーズ1)ハヤカワポケミス
ヒルトン (ジェームズ) イギリス 1900-54
 学校の殺人 (1932)創元推理文庫
フィシュテル (ジャン=ジャック) フランス
 私家版 創元推理文庫
フィッシュ (ロバート・L) アメリカ
 シュロック・ホームズの迷推理 (短篇集) 光文社文庫
 懐しい殺人 (1968) (殺人同盟シリーズ1)日本リーダーズ
ダイジェスト社
 お熱い殺人 (1971) (殺人同盟シリーズ2)同上
 友情ある殺人 (1979) (殺人同盟シリーズ3)ハヤカワ文庫
フィニイ (ジャック) アメリカ 1912-
 レベル3 (短篇集) 早川書房
 ゲイルズバーグの春を愛す (短篇集)ハヤカワ文庫
 クイーン・メリー号襲撃 (1959)ハヤカワポケミス
 マリオンの壁 (1973)角川文庫
フィルポッツ (イーデン/ハリントン・ヘクスト) イギリス 1862-1960
 赤毛のレドメイン家 (1922)創元推理文庫
 テンプラー家の惨劇 (1923)(ヘクスト名義)国書刊行会
 闇からの声 (1925)創元推理文庫
フェラーズ (エリザベス) イギリス 1905-
 その死者の名は(1940) (トビー&ジョージシリーズ1) 創元推理文庫
 細工は流々 (1940) (トビー&ジョージシリーズ2)創元推理文庫
 自殺の殺人 (1941) (トビー&ジョージシリーズ3)創元推理文庫
 猿来たりなば (1942) (トビー&ジョージシリーズ4)創元推理文庫
 ひよこはなぜ道を渡る (1942) (トビー&ジョージシリーズ5・完結)創元推理文庫
 私が見たと蝿は言う (1945) ハヤカワポケミス
 間にあった殺人 (1953) ハヤカワポケミス
 嘘は刻む (1954)長崎出版
 さまよえる未亡人たち (1962) 創元推理文庫
ブラウン (ダン) アメリカ 1964〜
 ダ・ヴィンチ・コード (2003)角川文庫
ブラウン (フレドリック) アメリカ 1906-72
 さあ、気ちがいになりなさい (短篇集)早川書房
 まっ白な嘘 (1953) (短篇集) 創元推理文庫
 復讐の女神 (短篇集)創元推理文庫
ブランド (クリスチアナ) イギリス 1907-88
 ハイヒールの死 (1941) (ノン・シリーズ) ハヤカワポケミス
 切られた首 (1941) (コックリル警部シリーズ1)ハヤカワポケミス
 緑は危険 (1943) (コックリル警部シリーズ2) ハヤカワポケミス
 自宅にて急逝 (1947) (コックリル警部シリーズ3) ハヤカワポケミス
 ジェゼベルの死 (1949) (コックリル警部シリーズ4) ハヤカワ文庫
 疑惑の霧 (1952) (コックリル警部シリーズ5)ハヤカワポケミス
フリーマン (リチャード・オースチン) イギリス 1862-1943
 赤い拇指紋 (1907) (ソーンダイク博士シリーズ1)創元推理文庫
 証拠は眠る (1928) (ソーンダイク博士シリーズ11)原書房
 ソーンダイク博士の事件簿 T (短篇集)創元推理文庫
 ソーンダイク博士の事件簿 U (短篇集)創元推理文庫
ブリテン (ウィリアム)アメリカ 1930-
 ジョン・ディクスン・カーを読んだ男 (短篇集)論創社
ブルース (レオ) イギリス 1903-79
 三人の名探偵のための事件 (1936)新樹社
 死体のない事件 (1937)新樹社
 結末のない事件 (1939)新樹社
 ロープとリングの事件 (1940)国書刊行会
 死の扉 (1955) (キャロラス・ディーンシリーズ1) 東京創元社
 ジャックは絞首台に! (1960) (キャロラス・ディーンシリーズ7)現代教養文庫
ブロック (ロバート) アメリカ 1917-94
 血は冷たく流れる  (短篇集)早川書房
ヘアー (シリル) イギリス 1900-58  
 自殺じゃない! (1939) (マレット警部シリーズ3)国書刊行会
 法の悲劇 (1942) (マレット警部シリーズ4)ハヤカワポケミス
 ただひと突きの…… (1946)(マレット警部5、弁護士ペティグルー2)ハヤカワポケミス
 風が吹く時 (1949)(弁護士ペティグルー3)ハヤカワポケミス
 英国風の殺人 (1951)国書刊行会
 いつ死んだのか (1958)(マレット警部6、弁護士ペティグルー5)論創社
ベイリー (ヘンリー・クリストファー) イギリス 1876-1961
 フォーチュン氏の事件簿 創元推理文庫
 フォーチュン氏を呼べ (1920) (短篇集)論創社
 死者の靴 (1942) 創元推理文庫
ヘクスト (ハリントン) イギリス 1862-1960
 →フィルポッツ 
ペニー (ルーパート) 英 ?-?
 甘い毒 国書刊行会
ベントリー (エドマンド・クレリヒュー) イギリス 1875-1956
 トレント最後の事件 (1913) (フィリップ・トレントシリーズ)創元推理文庫
ポー (エドガー・アラン) イギリス 1809-49
 黒猫・黄金虫 新潮文庫
 モルグ街の殺人事件新潮文庫
ポーター (ジョイス) イギリス
 切断 (1967)ハヤカワ文庫
ホール (パーネル) アメリカ
 探偵になりたい (1999) ハヤカワ文庫
ホールデン (クレイグ) アメリカ
 夜が終わる場所 (1999) 扶桑社ミステリー
ホック (エドワード・D) アメリカ
 サム・ホーソーンの事件簿 1 (1965、74〜75) 創元推理文庫
ボンド (マイケル) イギリス 1926-
 パンプルムース氏のおすすめ料理 (1983)創元推理文庫
 パンプルムース氏の秘密任務 (1984)創元推理文庫
 パンプルムース家の犬 (1986)創元推理文庫
 パンプルムース氏のダイエット (1987)創元推理文庫
 パンプルムース氏と飛行船 (1989)創元推理文庫
 パンプルムース氏対ハッカー (1990)創元推理文庫


「陸橋殺人事件」 ロナルド・A・ノックス/宇野利泰 訳 (創元推理文庫 1982.10.29)
 パストン・オートヴィルのクラブハウスで、ミステリ談義に花を咲かせる四人組。彼らは雨上がりの ゴルフコースで、上の陸橋から落下したとおぼしき変死体を発見する。警察を待つのももどかしく、 彼らはさっそく素人探偵ぶりを発揮し始めるが…。

 …やられた、という感じです(笑) 読み終わって思わず苦笑いが…。ミステリとゆーより、 ミステリに対する皮肉のような気がしないでもない(^_^;) 四人組、特にリーヴズが、それは どうかな〜? というような突飛な迷推理を何度も展開しておきながら、そしていかにも怪しげな 小道具をたくさん出しておきながら、真相が実に意外というか、なんといいましょうか。 こういう結末は、なかなか予想できませんでした。と、ゆーか…(^_^;)
 ミステリにおけるフェアプレイを提唱した “ノックスの十戒”が書かれたのはこの作品より 後ですが、これもきちんと守って書かれてます(よね?)。しかしむしろ守ってますよという ポーズを見せられることで、かえって煙に巻かれているような感じですね。確かに問題作かもしれません(笑) 評価が 割れるというのもよく分かります。私としては、作品自体がユーモアにあふれてて楽しいし、イギリスの田舎町 パストン・オートヴィル(ここも実は…)の風景も満喫できたので、それで十分です。はい。…お気楽だな〜(^_^;)



「動物好きに捧げる殺人読本」 パトリシア・ハイスミス
   /大村美根子・榊優子・中村凪子・吉野美恵子 訳 (創元推理文庫 86.3.28)
 さまざまな種類の動物たちによる殺人を描いた短篇集。13編収録。
 収録作品……「コーラス・ガールのさよなら公演」、「駱駝の復讐」、「バブシーと老犬バロン」、
「最大の獲物」、「松露狩りシーズンの終わりに」、「ヴェニスで一番勇敢な鼠」、「機関車馬」、
「総決算の日」、「ゴキブリ紳士の手記」、「空き巣狙いの猿」、「ハムスターVSウェブスター」、
「鼬のハリー」、「山羊の遊覧車」


 動物をいじめたり嫌ったりする人がいて、ついにそういう人々に動物が襲いかかるという、 全部そういう感じのストーリーです。ミステリというよりは普通の小説のようですね。動物は ほとんど擬人化されてて、怒りももっともなのですが、読み終わると動物が怖くなります〜(^_^;)  以下に好きな短編など。

「コーラス・ガールのさよなら公演」
 長い間一緒だった優しい飼育係が引退し、次にやってきたクリフに冷たくされる“コーラス・ガール” という名の象。ある日動物園のお客からひどい目に合わされたことがきっかけで、コーラス・ガールは クリフに今までの怒りをぶつける…。
 タイトルが皮肉ですね。道徳的なことを言い出すとこの短編集きりがないのでやめますけど、 人を殺した動物が最後に一番ひどい目にあっているのがこの作品です。それとも、こうなる方が 彼女にとっては幸せなんでしょうか。だとしたら寂しいことですけど。

「最大の獲物」
 ミングの主人であるエレインの友人テディは、彼の存在が気にいらないらしい。エレインの隙を うかがっては海に突き落とそうとしたり、テラスから突き落とそうとしたり。怒りに燃えたミングは ついに……。
 猫です。殺人が一番よく似合っているような気がするのは、私だけでしょうか(^_^;)。

「機関車馬」
 祖母のベスに金を無心して断られたハリイと妻メリルウ。必要な金を得るために、“機関車馬”と 呼ばれるファニイを使ってある計画を立てるが…。
 人を呪わば穴二つ。しかし、馬はこんなことで怒ったりはしないと思うのですが、まあ馬のことは よく知らないので(^_^;) 子猫がぁ〜(T_T)

「総決算の日」
 巨大な鶏舎の中で、玉子を取るため夜昼なくライトを当てられる鶏たち。叔父のハンショウの 仕事に少なからぬ嫌悪感を持っていたジョン。彼と同じ思いを抱いていたハンショウの妻ヘレンは、 ある夜……。
 このお話は好きだけど、こんな死に方は嫌です(T_T) こ、ここでも子猫が…。

「ハムスターVSウェブスター」
 田舎の家に引っ越したウェブスター一家。息子のロレンスは二匹のハムスターを飼いはじめる。 そのうちに子供が生まれ、友人の増えすぎたハムスターも貰い受け、ロレンスは庭にハムスターを 放し飼いにするが……。
 タイトルがなんだか好きです。でもやっぱりこんな死に方も嫌です。これは、必ずしもお父さんが 悪いというわけではないような気が…。子供って怖い。地下でどんどん増え続けるハムスターの ことは……考えたくない……。

「鼬のハリー」
 手に入れた鼬にハリーと名前をつけ、親に止められながら部屋で飼っていたロラン。ある日部屋に 入った使用人のアントワーヌがハリーにかまれ、ロランは仕方なくハリーを外へ出す。しかし次の日、 ハリーを入れた檻は消えていて……。
 これも悪いのはロランのような気が。この鼬ってフェレットのことだと思うのですが、フェレットと 鼬の違いはよく知りません(^_^;)

「山羊の遊覧車」
 遊園地で遊覧車を引いている山羊のビリーは、そんな生活がとても気に入っていた。しかしある日、 主人のハンクは彼を突然知らない場所へ売り渡してしまう。そこでの生活が気にいらないビリーは 大暴れして再び遊園地に戻ってきたが、主人のハンクは再び彼を別の場所へ売り飛ばす…。
 山羊怖い……。人を殺した山羊と分かってても…なんて言い始めたらこの短編ほとんどそう ですが…黙って飼うのが真の動物好きというものですね、やっぱり(^_^;)。



「レイトン・コートの謎」 アントニイ・バークリー/巴妙子 訳(国書刊行会 2002.9.20)
 作家のロジャー・シェリンガムは、友人アレックと共にスタンワース氏の館レイトン・コートに 滞在していた。だがある日、額を打ち抜かれたスタンワース氏の死体が書斎で見つかる。密室で 遺書も残っていたことから、警察は自殺と断定する。だが、シェリンガムは死体の状況や滞在客の不審な 行動に疑問を感じ、アレックをワトスン役に独自の調査を開始する…。ロジャー・シェリンガム シリーズ第1作。1925年。

 ユーモアにあふれた、楽しい作品ですね(*^^*) 英国ミステリはこうでなくっちゃという逸品♪  誰に頼まれたわけでもなく(笑)ホームズ役を買って出たシェリンガムは、ほとんど空想といっても いい推理で事件をあちこちから突っつきまわします(^_^;) それも核心を突いているようで、 いないようで……。
 ストーリーは本当に古典的かつ典型的なものですけど、この英国ミステリの空気、シェリンガムの 迷活躍がとても楽しいです♪ バレバレの展開をユーモアに乗せてここまで楽しく見せてしまう のは、さすがユーモア小説を生み出したお国柄。こういうの大好きです(^o^) 
2作目『ウィッチフォード毒殺事件』へ続きます↓



「ウィッチフォード毒殺事件」 アントニイ・バークリー/藤村裕美 訳(晶文社 2002.9.30)
 友人アレックの家を訪問中の作家ロジャー・シェリンガムは、最近世間を騒がせている ウィッチフォードで起きた毒殺事件が気になっていた。人々は容疑者を有罪と 信じて疑わなかったが、彼には疑問に思える点がいくつかあったのだ。好奇心から アレックと共にウィッチフォードに乗り込んだシェリンガムは、事件の真相を明かすべく奔走する…。 ロジャー・シェリンガムシリーズ第2作。1926年。

 殺人に使われた毒薬が多すぎることを疑問に思ったシェリンガムは、頼まれてもいないのに(笑) アレックとウィッチフォードに乗り込みます。前作とは違い、事件の当事者を直接知らないことに 苛立つシェリンガム。というか、2年前とはいえあのレイトン・コート事件の後、こうして 平気で犯罪談議をできるものなのか(^_^;) 私にはその辺の心理が謎です(爆)  『レイトン・コートの謎』を読んでからこれを読んだ方が楽しいですね、きっと。
 アレックの従妹シーラを交えた素人探偵団の捜査もなかなか進みませんが、 まぁそこはそれ、このユーモアに満ちた英国ミステリの空気を存分に楽しめれば良いでしょう♪  立てては崩れる仮説の山を積み重ねたりひっくり返したりした割に、ラストであれよあれよと いう間に真相が明かされます。そして、この結末……う〜ん、 ここまで来るともうどんな結末でもいいかな、という気が(笑) ただただシェリンガムたちの 奮闘ぶりを楽しめたので(*^^*) 
 3作目『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』に続きます。↓



「ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎」 アントニイ・バークリー/武藤祟恵 訳 (晶文社 2003.4.20)
 シェリンガムが従弟のアントニイと旅行に行こうとしていた矢先、クーリエ紙から取材の依頼を 受ける。ラドマス湾の崖の上からヴェイン夫人が転落死したのだが、その事件を スコットランド・ヤードの、モーズビー警部が休暇返上で追っているというのだ。事故死とされた 事件を、何故警察は調査しているのか…。シェリンガムはアントニイをつれてラドマス村へ向かい、 早速調査を始める。1927年。ロジャー・シェリンガムシリーズ第3作目。

 ウィッチフォード毒殺事件から2年後のお話ですね。ストーリーはどれから読んでも 問題ないんですが、バークリーを楽しむためには順番に読んだ方が良さそう。
 取材を依頼されたとはいえ、事件に深々と首を突っ込むシェリンガム。アントニイ (バークリーと同じ名前っていうのがなんとも)をワトスン役に、モーズビー警部をライバルに、 精力的に(そして楽しい(^_^))調査をします。
 相変わらず心理的な面から容疑者たちを分析して、少々突っ走り気味な推理をして…そしてあの 結末。絵に描いたように(もとい、推理小説に書いたように(笑))流れていくので 怪しいと思ってたら、あんなことになろうとは(^_^;) これがバークリーの持ち味というか、 見せ所というかなのですね。まあこういうのって好き嫌いが出ましょうが、個人的には途中がこれだけ楽しめれば いいです(^_^)
 4作目『絹靴下殺人事件』へ続きます↓



「絹靴下殺人事件」 アントニイ・バークリー/富塚由美 訳 (晶文社 2004.2.29)
 デイリー・クーリエ紙にコラムを書いている作家ロジャー・シェリンガムの元に、 ロンドンに出て行ったきり消息を絶った娘を探してほしいという手紙が届いた。 彼が調査したところ、その娘は数週間前に絹のストッキングで首を吊って 死んでいたことが分かる。さらに同様の事件が頻発していることに疑念を抱いたシェリンガムは、 調査を開始する…。1928年。ロジャー・シェリンガムシリーズ第4作目。

 前回の事件(『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』)から9ヵ月後という設定です。 前作に出ていたモーズビー警部も登場しますので、前のを読んでいた方がきっと面白いです。 シェリンガムのいとこのアントニイのその後もちょこっと書かれてますし。
 このお話、前3作とはちょっとトーンが違いますね。なにしろ犯人の手がかりが全くない 事件。その性質上、ストーリー全体にかつてない緊迫感がある…のですが、そこはバークリー、 シェリンガム本人の面白さ(?)は今までどおり♪ 今回は警察と共同捜査しているのですが、 個別にまたしても素人探偵団みたいのを結成して、ちょっと無理のあることをやってみたり…楽しいです。
 結末…というかシェリンガムのとった方法に賛否が分かれるような気もしますが…まぁ 仕方がないのかなぁ(^_^;) もうちょっとスマートにやってくれても良かったとは思いますが、 モーズビーへの最後の一言がなんだかスカッとしたのでいいです(^_^;) この辺の いきさつも、前作を読んでいた方が爽快感倍増です(笑)
 次はシリーズ5作目『毒入りチョコレート事件』ですが、既読ですので6作目『第二の銃声』に 続きます↓



「第二の銃声」 アントニイ・バークリー/西崎憲 訳 (国書刊行会 1994.11.25)
 探偵作家ジョン・ヒルヤードの住むミントン・ディープスに客の一人招かれたシリル・ピンカートンは、 女主人のエセルからとある相談を持ちかけられる。知人の娘を、その金目当て似結婚しようとしている 男から救ってほしいというものだった。招待客はすべてその目的のために招かれているというのだ。 だが余興として演じられた推理劇の最中に、被害者役だったその男が本当に殺されてしまうという事件が起こる。 疑いをかけられたシリルは、友人の探偵作家ロジャー・シェリンガムに救いを求める…。シリーズ長編6作目。1930年。

 ロジャー・シェリンガムシリーズ6作目。シリーズ長編の翻訳はすべて現役本(珍しいことに…(^_^;))ですので、 順番に読まれることをお薦めします♪
 この物語の語り手はシリル。前作『毒入りチョコレート事件』(感想は ないですが…)同様、ちょと実験的な感じがしますかね。作者が巧妙に仕組んだ意図が台無しに なるんで細かいことは言えないですが、実に良く考えられたストーリー。事件が起こるまでのキナ臭い空気、 登場人物たちの性格、すべてがあの結末のために…。う〜む(-_-) 好きかと聞かれると微妙ですが、 とにかくすごいミステリではあります。語り手がシリルなので、シェリンガムのおかしさが他のシリーズ 作品ほど爆発してなくて寂しい(笑)上、彼の存在もあれだとなんだか切ないけど…。それでも、 やっぱりたまにはこういうのもいいかな。シリルはシリルで面白いし(爆) ミステリとしてはホントに楽しめました♪
 7作目『最上階の殺人』に続きます↓



「最上階の殺人」 アントニイ・バークリー/大澤晶 訳 (新樹社 2001.8.10)
 ロンドンのプラッツ通りにあるモンマスマンションの最上階で、孤独な老女が殺されるという事件が 起こった。金盗りが目的の単純な事件かに見えたのだが、たまたま捜査に同行し不審な点を見つけた シェリンガムは、単独で事件の調査を始めた…。ロジャー・シェリンガムシリーズ7作目。1931年。

 シリーズ7作目。最初から順番に読んだ方が面白いと思います。前作までちょっとシェリンガムの出番が少なくて 寂しかったですが(そうか?(笑))、今回はまた 偶然出っくわした殺人事件の捜査に飛び入り参加。ありふれた事件に見えたのに、納得のいく答えが 見つからないことばかりで四苦八苦…。シェリンガムはかなりあちこち取り留めなく 振り回されていて、ミステリとしてはびしっとまとまっていない感じです。でも、モンマスマンションの 個性的な面々や、被害者の姪のステラとシェリンガムの攻防(?)なんかがとてもユーモアに あふれていて楽しい♪ 事件解決の過程よりこっちを楽しんだ方が面白い(笑) とどのつまりも あんな感じですから。本格は本格ですけど、謎解きばかりに鵜の目鷹の目だと損する作品ですね。 こういうのは結構好きです(^_^)
 というわけで、次は8作目『地下室の殺人』に続きます↓



「地下室の殺人」 アントニイ・バークリー/佐藤弓生 訳 (国書刊行会 1998.7.25)
 新婚旅行を終えて新居へやってきたデイン夫妻を待っていたのは、地下室に埋められた 見知らぬ女性の死体だった。ロンドン警視庁のモーズビー主席警部が調査を始めるが、 犯人どころか死体の身元さえ分からない。なんとかたどり着いた僅かな手がかりの先には、 モーズビーの友人シェリンガムにも関係が…。ロジャー・シェリンガムシリーズ8作目。1932年。

 シリーズ8作目、良いか悪いかはともかくいろんな変化がありますので、読まれてない方は順番にどうぞ。
 珍しく警察の地道な捜査を追うかたちで展開する今回のストーリー。いつもは呼ばれてもいないのに首を突っ込んでくる シェリンガムも、ちょっと変わった形で事件に関わってきます。途中、シェリンガムが書いた 推理小説の草稿が入ったりするのも目先が変わってなかなか面白いですね。ストーリー展開も早くてテンポよく読めます♪  全体的にはわりと無難な感じで決して嫌いじゃないんですが、やっぱなんか釈然としないものは残るかな。 こういうラストが好きじゃないだけかもしれませんが(^_^;) まぁ、適度に楽しめた作品でした♪
 次は9作目『ジャンピング・ジェニイ』に続きます↓



「ジャンピング・ジェニイ」 アントニイ・バークリー/狩野一郎 訳 (国書刊行会 2001.7.20)
 小説家の友人ストラットンの屋敷で、殺人者と犠牲者に扮するという仮装パーティに招かれた ロジャー・シェリンガム。その席上で皆から嫌われていた女性が、余興として設置された絞首台の上で 首をつって死んでいるのが発見される。状況は自殺であることを示していたのだが、 ロジャーはとんでもないことを発見してしまう。しかも友人たちのために良かれとやったことが、 自らを窮地に追いやることに…。ロジャー・シェリンガムシリーズ9作目。1933年。

 ひんしゅく女性が不可解な死を遂げた現場に居合わせたロジャー、彼自身その女性に うんざりしていただけに、事件を捜査するどころかあるまじき手助け(?)を…(^_^;)  窮地に立たされるロジャーが見ものです♪ もうあまり深く考えずに、 彼とその周辺があたふたする様を楽しめばいいのではないでしょうか。一見行き当たりばったりに見えるけど、 ちゃんと計算され尽くしたきわどい小細工(笑)の数々が素晴らしいですね〜。ラストも、 いいのかそれで?(^_^;)という感じですが……かなり好きです。
 ということで、翻訳されてるシェリンガムものはこれで終わりかな? 次はノン・リシーズ作品をどれか読みます。そのうちに。



「羊たちの沈黙」 トマス・ハリス/菊地光 訳 (新潮文庫)
 FBIの訓練生クラリス・スターリングは、人手不足からボルティモアの精神病院に収監されている ハンニバル・レクター博士の面接調査を行うことに。患者を何人も残虐な方法で殺している彼の 口から、最近若い女性を誘拐してはその皮をはいでいる“バッファロゥ・ビル”の事件に関する情報が 語られる。レクター博士の指示のもと、クラリスはバッファロゥ・ビルに立ち向かうことになるが…。

 これは『レッド・ドラゴン』(ハヤカワ文庫)の続きにあたる作品で、レクター博士やクロフォード などおなじみのキャラクターが登場します。といって、別にこれだけ読んでも全然支障はないです。 読み始めたらもう、止まりません。レクター博士って、殺人鬼なのに妙に魅力のあるキャラクター なんですよね。彼がもう一人の主人公といっても過言ではないです。彼の助けを借りて、 バッファロゥ・ビルの正体にじわじわと迫ってゆくクラリス…。たんたんとした描写が続くのに、 それがぞっとするような迫力を生んでいるんです。すごい作品です。これの続編が『ハンニバル』 ですが、やっぱりこれが最高。『レッド・ドラゴン』もいいです。



「ハンニバル」 上・下 トマス・ハリス/高見浩 訳 (新潮文庫 2000.4.10)
 『羊たちの沈黙』から7年、FBIの特別捜査官になったクラリス・スターリング、32歳。ある日、 麻薬密売組織の摘発に借り出された彼女は、そこで繰り広げられた銃撃戦での行動をめぐって 孤立無援に陥る。そんな彼女の元に届いたのは、7年前から行方不明になっているハンニバル・ レクター博士からの手紙だった…。

 とりあえず無難なあたりまでしか、あらすじを書かないでおこう。やっぱりこれは 『レッド・ドラゴン』(ハヤカワ文庫)→『羊たちの沈黙』(新潮文庫)→…と順を追って読むと いいんでしょう。でも、前作を読んでいなくても『ハンニバル』には回想シーンというか、『羊たちの 沈黙』の概要がちゃんと書かれているので、これだけ読んでも分かると思います。今回レクター博士は、 過去にひどい目にあわせた人物から復讐の標的にされ、クラリスはクラリスで司法省のクレンドラー から目の敵にされて窮地に追いやられます。しかし、レクター博士にあんな過去(妹のこと)が あったとは。驚きです。…こればっかりはもうネタバレありで、言いたいことを言いたい〜!!  うう……でも、とにかく損はしないので、読んで下さいとだけ。読み終わったあと、衝撃のあまり しばらくぼぉっとしてしまいました。前二作とは、確かに違います。違う…う〜ん。私は特に、 下巻3分の2以降のあの出来事からラストまでの展開が、「そ、そうなっちゃうんですか?」(笑)と いう感じで、意外というかショックというか…。でも、こうなってもまぁ不思議じゃないかな、と いうような気も、なにかしてくるのです。個人的には、こういうのは好きです。ミステリではない… かもしれませんが。しかし、もう続かないですよねぇ、これは…。続いたらすごいかも。誰に止め られるんだ、あの……を、ねっ(笑)。映画化って、どんな風になるんでしょう。『羊たちの沈黙』は 観たんですが、小説の方が3倍は面白かったような気がします。というか、媒体が違うものを同列に おいて考えてはいけないんですね。はい。映画は映画で面白かったし。
   余談ですが、ちょっと雰囲気を出そうと思って「ゴールドベルク変奏曲」(グールド…)を BGMに読んでみました。これがまた、怖いくらいにはまるのです。今回音楽がかなり出てくるん ですよね。クラシックはよく知らないんですけど(T_T) 麻薬密売組織との銃撃戦のシーンも、 「ラ・マカレナ」を思い出しながら読んだのですが、日常と非日常とが奇妙に交錯するあの感じは、 他の曲ではダメかも(笑)。『羊たちの沈黙』もそうでしたけど、今回は更に強烈に五感に訴えて くるものがあります。そのぶん余計に引き込まれてしまう。……計算されてますね。



「ハンニバル・ライジング」 トマス・ハリス/高見浩 訳 (新潮文庫 2007.4.1)
 後に世間に恐れられる犯罪者となるハンニバル・レクター少年は、ナチスの影が忍び寄る リトアニアで暮らしていた。貴族としての生活を奪われ、家族と幼い妹を奪われた彼は、 やがてフランスに住む叔父の元へ引き取られることになる…。2006年。

 あのハンニバル・レクター博士が、どうしてあんな風に(笑)なってしまったかという、 理由というかきっかけを描いた物語です。ですので、シリーズ最初の『レッド・ドラゴン』から 本作以前の3作を全部読んでいた方がよいかと思います。読んでない方はそちらからどうぞ。
 リトアニアで幸せに暮らしていた一家を襲った悲劇。下劣な人間を描かせたら 天下一品ですね〜(ほめているのです(^_^;))。何がハンニバルを怪物へと 変えたのか(あるいは生まれついたものだったのか)、結局のところ誰にも…本人にも 分からないのかもしれません。同情もさせず嫌悪感も持たせず、という…その辺の バランスは絶妙です。しかし確かにずいぶんとひどい過去ではあるのですが、 それでも実のところ、もうちょいスゴい話かと勝手に思っていました(^o^;)  日本人の叔母の話や日本趣味なんかも面白いのですが、ここまで必要かな〜と思う部分も、 なきにしもあらずですかね。ごくごく個人的には、怪物の過去は謎のままでも良かったよな気が しておるのですが、まぁ長いわりにさらっと書かれていて読みやすいですし、 楽しめた作品でした。……続くのかなぁ(^_^;)



「歯と爪」 B・S・バリンジャー/大久保康夫 訳 (創元推理文庫 1977.7.15)
 リュウは素晴らしい腕を持った魔術師だった。だがある事件に巻き込まれ、彼の運命は狂い始めて しまう。魔術師をやめるまでに、彼は今まで誰もやらなかったような一大奇術をやってのけた。ある 殺人者に対して、復讐を遂げるために彼が行った謀略とは…? 1955年。

 あらすじを詳しく書けません(T_T) ある殺人に関する緊迫した裁判風景と、リュウの語る思い出が 交互に描かれながら、徐々に真実が明らかになってゆく…という、サスペンス小説です。これ、物語の 結末が読めないように閉じられていて、ここで読むのをやめることができたら代金はお返ししますって なってることで有名ですよね(古本屋さんで買った私には、最初からそれはできない相談でしたけども)。 でも、分かる人にはトリックがすぐ分かってしまうような気がします。私はとても早い段階で気付いて しまったので、最後のあたりはえ゙〜やっぱり〜(T_T)という感じでした(^_^;) でも、それで楽しみが そがれたかというと、そんなことはありません。リュウが殺人者を追いかけてゆく過程と、謎の裁判が どうつながってゆくのかというのがとても面白かったです。ちょっとづつ明らかになってく謎と語りの うまさに、ぐいぐい引っ張られてしまうんですよね。彼には相応の運命なのかもしれませんが、それでも ラストシーンにはぞっとしました。永久に解けない謎の中に取り残されるというのは、どんな刑罰より つらいことなのかも…。



「真夜中のミュージシャン」 デイヴィッド・ハンドラー/河野万里子 訳 (講談社文庫 90.3.15)
 元売れっ子作家だったスチュワート・ホーグことホーギーは、今ではゴーストライター。 彼はイギリスの元人気ロック・ミュージシャン、トリスタン・スカーの伝記の執筆を依頼され、 愛犬ルルを連れてロンドンへ向かう。豪邸に住み、自分の殻に閉じこもっていたスカーが ホーギーに語り始めたのは、彼のバンドUsの栄光と失墜、そしてバンド仲間の不審な死だった。 調査を始めたホーギーだったが、彼の身にも危険が迫っていた…。シリーズ2作目。1989年。

シリーズ2作目ですが、初ハンドラーです(^_^;) 国内の出版順に読むとこういうことになります。 ちなみに1作目は『フィッツジェラルドをめざした男』ですので、順番に読みたい方は お間違えのないよう。
 ゴーストライターが過去のロック・スターにインタビューするという形式で書かれてます。 インタビューの部分は会話だけ。こういうのも読みやすいし新鮮でよかったけど、何より全体の 雰囲気が都会的でおしゃれなんですよね(^_^) 気の利いた会話とか、歯切れのいい言葉、 華やかな成功と、その影に潜む深い哀しみ。ミステリとしてはそれほど意外なことはなかったけど、 こういう雰囲気は最後まで楽しめました。キャラクターもいいんですよね。ドラッグと無茶な生活で ぼろぼろになってしまったスカーと、元バンドの仲間たち、スカーの娘ヴァイオレット。 主人公のホーギーはもちろん、彼の元妻で女優のメリリーと、サバ缶の好きな犬ルル。 読んだ後はしんとした切なさが残ります。いいですね〜。次は、第1作を。そのうちに(^_^;)



「社交好きの女」 レジナルド・ヒル/秋津知子 訳 (ハヤカワポケミス 1982.3.15)
 地元のラグビー・クラブの会員の妻が何者かに殺されるという事件が起こった。 かつて同クラブの会員だったアンドルー・ダルジール警視は、部下のパスコーと共に 事件の捜査を始めるが…。
 ダルジール警視シリーズ、第1作目。1970年。


 現在も続いているシリーズの第1作目にして、ヒルのデビュー作。 大男でちょいと下品な叩き上げのダルジール警視と、インテリで好青年のパスコー部長刑事のコンビ が活躍します。聞き込み中心の地道な捜査と、事件に関わる人たちの行動を淡々と描く 警察小説。事件はそれほど盛り上がることもなく、ダルジールとパスコーの捜査よりは 関係者の心理描写というか、言動中心に淡々と描かれてます。謎解きも あまり重視されてないかな。最後の最後で、え〜…(^_^;)というかなんというか(笑)  でも端々にユーモアが漂っていて楽しいですし、もうちょいダルジールとパスコーの活躍を見たいですね。ダルジールの過去には いったい何があったのかなぁ(^_^;) 
 というわけで、次は2作目の「殺人のすすめ」に続きます。そのうちに。



「学校の殺人」 ジェームズ・ヒルトン/龍口直太郎 訳 (創元推理文庫 1960.1.29)
 詩人で素人探偵でもあるコリン・レヴェルの元へ、出身校オーキングトン校の校長から 手紙が届いた。就寝中にガス灯用具が落ち学生が死亡するという事件が最近学内であったのだが、事故だったのか どうか調査してほしいという内容だった。手がかりのないままむなしく調査を続けるレヴェルだったが、 やがて第二の事件が……。1932年。

 作者はどちらかというと『チップス先生さようなら』等で有名ですよね。この『学校の殺人』はヒルトンが グレン・トレヴァー名義で描いた、唯一のミステリだそうです。パブリック・スクールを舞台に した、英国情緒あふれる本格ミステリ♪ でもたぶん今……絶版かな(^_^;)
 レヴェルは最初の事件をもてあまし気味で、全体的にもテンポがいいとは言いがたいけど、 二番目の事件からだんだん面白くなってきます。 ミステリ慣れした読者にはいろいろバレバレでちょと詰めが甘いかなと思えるのですが、 意外と随所に面白い仕掛けがあるんですね。レヴェルも少々もどかしいけど、最後に あんな展開ではさもありなんというか。ムゴイ……(^_^;)
 これが最初で最後というのはもったいないと思える作品です。ミステリとしてもなかなか良かったですが、 やっぱりユーモアにあふれた英国小説の雰囲気が楽しいですね♪



「私家版」  ジャン=ジャック・フィシュテル/柏原晃三 訳 (創元推理文庫 2000.12.15)
 “わたし”ことエドワード・ラムが昔から崇拝しつづけ、奉仕してきた友人の作家ニコラ・ファブリ。 彼の新作を渡された私は、その素晴らしさに激しい憎しみの念に襲われる。だが、私は瞬時に悟った。 この本の成功を利用して、これまでの彼の仕打ちに今こそ復讐をすることができるのだ。私は綿密な 計画を立て、ニコラを破滅へと導いてゆく…。1933年。

 帯を見て、本の存在が凶器になる、ってどういうことなんだろう? と思ったんですが、こういうこと だったんですね。面白い♪…んですけど、これってニコラだけが悪いんじゃないのではないで しょうか(^_^;) 確かに彼は自分しか愛せないエゴイストなのかもしれないですけど、“わたし” だってニコラにくっついてまわって自分のこと卑下してばかりで、ぜんぜん罪がないとはいえないん じゃないかな。彼女(…と言っておこう )の事も、よく考えたら“わたし”の罪になってたかもしれない んだから、ニコラばっかり責められないですよね。こういう人には恨まれたくないな〜(T_T) でもまあ それはそれとして(^_^;)、“わたし”がどんな手を使ってニコラを追いつめてゆくかというのは、とても スリルがあって引き込まれてしまいました。危うい橋を渡ってるようで、“わたし”の今までの経験をしっかりと 踏まえてて。しかし、彼にはこのエネルギーをもうちょっと良い方面につぎ込んでほしかった(笑) ラストは ちょっとあっけないかな。だって、いいのか〜、こんなに幸せで(-_-;)。誰か気付きそうなものですよね〜。 …しかし、一体どこまでがネタバレなんだか分からない(^_^;)。



「シュロック・ホームズの迷推理」 ロバート・L・フィッシュ/深町眞理子、他 訳 (光文社文庫 2000.3.20)
 シャーロックならぬシュロック・ホームズとワトニイが、的外れの迷推理で難事件の解決に挑む11篇の パロディ他。16篇収録。
 収録作品……「アスコット・タイ事件」、「シュロック・ホームズの復活」、「奇人ロッタリーズ氏」、
「シュロック・ホームズの迷推理」、「動物輸送事件」、「謎の郵便番号」、「不思議なレストラン」、
「純文字の殺人」、「短気な導火線」、「ウクライナの孤児」、「ハメルンの酔いどれ笛吹き」、
  ……以上シュロック・ホームズもの
「ラッキー・ナンバー」、「月下の庭師」、「一万対一万の賭け」、「クランシーと飛び込み自殺者」、「よそ者」


 シャーロック・ホームズもののパロディです♪ ロンドンはベイグル街221番地Bに住む、シュロック・ホームズとワトニイ。どんな簡単な事件も、シュロックにかかるとたちまち難事件へと早変わり(笑) しかも彼自身とんでもない事件を巻き起こしてしまうという…。笑えます。ホームズもののパロディ、パスティシュってホントにたくさんあるんですよね。以前にも少し読んだことがありますが、どれもあの偉大な名探偵に対する愛情が感じられます(*^^*) 私もホームズものはもう大好きなので、こういうの読むのも好きです♪(逆に怒る人もいるかもしれないけど…(^_^;)) 本家をネタにした英語の駄洒落が多いですが、分かると笑えます。あとチェスタトン(だと思う)のもなんかあったけど、詳しくないので(^_^;)
 フィッシュの作品読むのはこれが初めてですが、シュロックもの以外にも別名義でたくさん作品があります〜。以下にお気に入りの感想…というか、パターンはどれも同じなので簡単に(^_^;)

「シュロック・ホームズの復活」
 宿敵マーティ教授との死闘の末、勝利したが足を滑らせ崖から転落し帰らぬ人となったホームズ。だが彼は生きていた! 再会を喜ぶ間もなく、ホームズとワトニイは再び事件の渦中へ。ホームズの旧友エプスワース卿の飼っているブローティングズ公爵夫人という豚が行方不明になり、それを探し出してほしいというのだが…。
 豚がどうなったのかは読者にはもうバレバレなんですが、シュロックはとんでもない推理で事件を複雑怪奇にしてしまいます。今言ったこともしたこともすぐ忘れ、ワトニイを常に違う人物と間違えるエプスワース卿が良いです(笑)

「奇人ロッタリーズ氏」
 州警察本部長となったエプスワース卿は、助手としてロッタリーズという男を雇う。だがある日の夜中、ロッタリーズが黒ずくめの服で仮面をつけて出かけるのを見た卿は、ホームズに調査を依頼する…。
 怪しいってゆーか、もう正体みえみえのロッタリーズ氏なのに、ホームズとワトニイはどうしようもない結論を〜(^_^;) この推理の過程は笑えます。 確かに間違っちゃいないです(笑)

「シュロック・ホームズの迷推理」
 ホームズのもとに駆け込んできた演劇記者のジョン・シンプルは、ある奇妙な投稿に悩んでいた。暗号で書いてあるのだが、何とか解いてほしいとホームズに依頼する…。
 この暗号の解読はすごいです〜♪ シュロックも時々すごい(笑)

「純文字の殺人」
 とあるアパートで、ベルズ夫人が何者かによって撲殺された。夫の通報で警察が駆けつけてみると、何故か彼女の夫ロバートは服を暖房機に突っ込んでおり、火掻き棒をせっせと磨いていた。婦人はアルファベットの書かれた三つのゲームの駒を手にしていたが…。
 これ、好きです……(^_^;) スコットランド・ヤードのレストイル警部もマヌケです〜(笑)

「短気な導火線」
 暇を持て余していたホームズのもとに、ホズマー・アングルという青年が奇妙な頼みごとをしに来る。彼はある人妻と恋に落ちてしまったのだが、彼女の夫に高価な目覚し時計を贈ってほしいというのだ…。
 名前を聞くとすぐ、本家の「花婿失踪事件」なんか浮かびますね(^_^;) まあその逆パロディというか(?) これがまたとんでもない結末に〜(笑) 知らずにやったとはいえ、酷いぞホームズ(^_^;)

「ハメルンの酔いどれ笛吹き」
 イギリスの優秀な子供たちが、ドイツに“進物” として贈られることに憤ったシュロックとワトニイは、ハメルンに乗り込むが…。
 駄洒落の説明しないとあらすじも意味不明なんですが、それはともかく、おかしすぎます(^_^;) ホームズがいきなり椅子に縛られて倒れてるところから始まるかと思えば、変装の得意な彼はなんと今回、パブリック・スクールの生徒に変装(爆) その上めちゃめちゃに酔っ払って、もうおかしいやら情けないやら涙が…(T_T) しかもこれも結末がブラックユーモアというかなんとゆーか、ひどすぎ(笑)

「月下の庭師」
 おせっかいなウィリアム夫人は、隣家のクロンプトン夫人が行方不明だと警察に乗り込んだ。ほっておくわけにも行かない警察は、巡査長をクロンプトン氏の元へ派遣する。彼の庭の木や地下室は掘り返され、しかも彼は怪しげな手斧を磨いている最中だった……。
 これはシュロックものじゃないです。ちゃんとした(?)ミステリです。このお話、シュロックものと似ているようで実は実は…。意外な結末です。

「クランシーと飛び込み自殺者」
 ふらふらと吸い寄せられるように、ホームに入ってきた列車に飛び込んだ男。目撃者もおり、明らかに自殺と思われたが……。
 クランシー警部補シリーズ(というのもある)です。52分署に移ったばかりで、なんとなくよそ者の雰囲気の漂ってたクランシー警部補。でもこの事件で冴えたところを見せて和やかな雰囲気で終わるのが良いです♪ 



「懐しい殺人 パーシバル卿と殺人同盟 ロバート・L・フィッシュ/菊池光 訳
                      (日本リーダーズダイジェスト社ペガサスノベルス 1972.7.1)
 ロンドンのミステリー作家クラブの創始者で齢70を数えるシンプスン、ブリッグズ、カラザズの三人は、 かつて探偵作家として築き上げた栄華も虚しく、今ではクラブの片隅で不遇をかこつ身となっていた。 金欠に苦しむ三人は、ふととんでもないことを思いつく。それは殺人を請け負い、それによって 収入を得ようという殺人同盟の発足だった! 次々に首尾よく依頼を片付けていく三人。だがその影で、 彼らの事件に目をつけている敏腕弁護士がいた…。殺人同盟三部作、第1作目。1968年。

 これハヤカワ文庫版もありますが、どっちにしても絶版です(-_-;)
 3人はかつて売れっ子ミステリ作家だったけど、今では若い者たちの嘲笑の的。いよいよお金に困った じーさんたちが、純粋なサービス業(笑)として作った殺人同盟。老人とはいえ、そこは昔とった杵柄(?)、 嬉々として理論を実践に移してるあたりがなんとゆ〜か、いいのか悪いのかなんだか…(^_^;) でも、 ひとつひとつの仕事ぶりがなかなか堂に入っていて、とても楽しいです。しかしホントに 面白くなってくるのは、彼らに思いもよらない出来事が降りかかった時…。けっこう凝ってるお話なんですよね。 ユーモアミステリ…になるのでしょうけど、パーシバル卿の手際の良さなどなかなか見事なものです。ミステリとしては 詰めが少々甘いのですが、これだけストーリーを楽しめればそれで満足(^_^)  2作目『お熱い殺人』に続きます↓



「お熱い殺人 パーシバル卿と殺人同盟 ロバート・L・フィッシュ/菊池光 訳
                      (日本リーダーズダイジェスト社ペガサスノベルス 1972.8.21)
 ロンドンのミステリー作家クラブの創始者のシンプスン、ブリッグズ、カラザズの 3人は、豪華客船サンダランド号に乗って優雅な船旅を楽しんでいた。その船には、 彼らが以前世話になった敏腕弁護士パーシバル卿の姿も。平和な船旅にすぐに退屈してしまった 3人は、ちょっとしたスリルを味わうべく冒険を始めることにした。だがそのおかげで、 こともあろうにカラザスが強姦の容疑を着せられることに…。彼を助けようとしてますます窮地に陥る ブリッグズ。シンプスンは仕方なく、再びパーシバル卿の助けを求めることにしたのだが…。1971年。

 『懐しい殺人』に続くシリーズ2作目。ハヤカワ文庫版もありますが、どっちも絶版です(-_-)  できれば順番に読んだ方がいいですね…。
 1作目で殺人同盟という刺激的なものを発足させてしまった3人は、船旅に出てもなんだか 退屈そう(そりゃそうでしょうよ(笑))。 イカサマ賭博師相手にイカサマを始めて、しかも成功してしまったからさあ大変。3人の行くところには いつも面白おかしい騒動が♪
 今回さらに3人の性格の違いが目立ってて面白いです。カラザスの発明したビルマ式 ソリテア(笑)なんて最高。船上のミステリっていうのもいいですね。 殺人事件は…あれでいいんでしょうか?(^_^;) 今回はパーシバル卿もなかなか茶目っ気の あるところを見せてます。敏腕弁護士ぶりも、ここまで来るともう笑うしか…(^o^;)  最後の審問なんて前作以上にむちゃくちゃやってますけど、今回の方が好みかも(爆)  作中で3人が何度も作者ロバート・L・フィッシュをほめたりけなしたり(けなす方が多いか…(笑))するのも 面白いですし(^_^)
 というわけで(?)3作目『友情ある殺人』に続きます↓



「友情ある殺人」 ロバート・L・フィッシュ/島田三蔵 訳 (ハヤカワ文庫 S56.4.15)
 ロンドンのミステリ作家クラブ創設者カラザズ、ブリッグズ、シンプスンの三人は、 船旅を終えてジブラルタルから飛行機でイギリスへ戻る事になった。そのニュースを知った 悪党アリグザンダーとハラルドが、なんと彼らのうちの一人を誘拐する算段を始めてしまう。 首尾よく誘拐は成功したかに見えたが、彼らは致命的な間違いを犯してしまったことに気付く…。1979年。

 殺人同盟シリーズ3作目♪ このシリーズは3作とも絶版ですが、読まれる時は1作目からを お薦めします。
 前回で船旅に出たカラザズら3人が、イギリスへ戻る途中から物語は始まります。その途中で 自分たちが一文無しになってしまったというショッキングなニュースを知ってしまうカラザズ。 誘拐されても、もちろん誰も身代金など払えるわけもなく…。といったあたりからまたしても話が ややこしくも楽しい方向へ♪ 誘拐されても平然としているばかりか酒や食べ物を要求、果てはハラルドと 意気投合してカードを始め、前作で培った技術(笑)で勝ちまくる始末(^_^;) ついに パーシヴァル卿まで巻き込んで…とパターンは一緒なんですけど、前二作以上に突拍子もない話に。 やっぱり面白いですね♪ 前回よりもひどく作者をけなす3人が良いです(笑) なんだかんだ言っても、 カラザズたち3人とパーシバル卿は似た者同士なのかも(^_^;) ま〜よくやってくれます。  ラストも例によってむちゃくちゃなんですけど、それもいい(笑) 本当に楽しい三部作でした♪



「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」 ウィリアム・ブリテン/森英俊 訳(論創社 2007.9.15)
 偉大なミステリ作家たちの作品を愛読する人々が、身の回りに起こった事件を名探偵たちの 手法で次々と鮮やかな解決へ導く、ユーモア溢れるパロディ作品集。14篇収録。
 収録作品…
  「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」、「エラリー・クイーンを読んだ男」、「レックス・スタウトを読んだ女」、
  「アガサ・クリスティを読んだ少年」、「コナン・ドイルを読んだ男」、「G・K・チェスタトンを読んだ男」、
  「ダシール・ハメットを読んだ男」、「ジョルジュ・シムノンを読んだ男」、「ジョン・クリーシーを読んだ少女」、
  「アイザック・アシモフを読んだ男たち」、「読まなかった男」、「ザレツキーの鎖」、「うそつき」、「プラット街イレギュラーズ」


 これまでアンソロジー等でしか読めなかった「〜を読んだ男」シリーズが全部読める、貴重な(?)短編集です♪  タイトルになってる作家の作品を読んであればもちろんですが、読んでなくてもとても 楽しめます。パロディつっても茶化してるわけではなく、ミステリに対する 登場人物たちの(作家の)愛情がひしひしと感じられる、ほのぼのした作品ばかり。 どれもそんな複雑な事件でこそないけれど、ミステリ好きなら 楽しめると思います。それぞれの感想は書きませんが、お気に入りはジョン・ディクスン・カーを読みすぎた男の 企てた密室殺人「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」、交通事故で妻を亡くした男と、 加害者の物語「読まなかった男」、 宿命のライバル同士のマジシャンと警部の奇妙な対決「ザレツキーの鎖」、 まじめな警備員を襲った不可解な出来事の意味とは…「うそつき」等です♪



「テンプラー家の惨劇」 ハリントン・ヘクスト/高田朔 訳 (国書刊行会 2003.5.20)
 イングランド南部キングスクレセットに住む名門テンプラー家。一族は当主の サー・オーガスティンのもとに集まり、家族の集いを楽しんでいた。何事もなければ栄華を誇りつづけたであろう テンプラー家に悲劇が訪れる。ある日、不審な黒髭の人物が屋敷に侵入したことから事件は始まった。 まるで一族皆殺しを図るかのように、テンプラー家の人間が次々に殺され始めたのだ。そして そこには常に怪しい黒髭の男の影がちらついていた。テンプラー家の友人であるミッドウィンター警部が 捜査に乗り出すが…。1923年。

 ハリントン・ヘクストは、『赤毛のレドメイン家』等を書いた、イーデン・フィルポッツの別名です。 私は知りませんでした〜(^_^;) その上、もう他のフィルポッツ 作品ははるか記憶の彼方(-_-)
   なんというか、スゴイ話でした。まるで滅びることを運命付けられてでもいるように、謎の人物の 手によって次々と殺されていくテンプラー家の人々。これはミステリ好きなんかにはちょっと もどかしいくらいなストーリー展開かな。これだけ人が殺されてもなんか淡々としてるし、 警察なんていないに等しいし…。
 それでも、姿の見えない犯人の意図した恐ろしい真実にはただもう呆然(いろんな意味で…(^o^;))。 この時代にこれってすごいことですよねぇ。これをもうちょっと早く読めてたら良かった気も……。 全体的にちと宗教くささがありますし、メナンドロスからの引用多すぎる気はしますが…まぁそれも雰囲気と いうかなんというか(^_^;) 意見割れそうですが、私としては少々もどかしく思いつつも、 けっこう楽しめた作品でした。



「私が見たと蝿は言う」 エリザベス・フェラーズ/橋本福夫 訳 (ハヤカワポケミス S55.9.15)
 ロンドンはリツル・カーベイ街の安下宿「十号館」。ガス管の工事の折、ある部屋の床下からピストルが発見される。 しかもそれは、以前その部屋に住んでいた少女を殺害した凶器だった。「十号館」の住人はすべて容疑者扱いされ、その上 彼らは自分の推理からそれぞれ違った人間を犯人だと確信するのだが……。1945年作。

 これが日本で最初に翻訳されたフェラーズ作品…なのかな? さすがに古いですね…翻訳が(^_^;) 「十号館」自体 怪しげな場所に建っている上、登場人物もみんな後ろ暗いところのありげな人たちばかり。犯行そのものは特に目立った ところはないですが、「十号館」の住人たちが同じ根拠からそれぞれ違う犯人を引っ張り出して、お互いに猜疑心に 駆られているのが面白いです。そのせいか犯人は全然分からなかったし、もっと分からなかったのは、犯人と同じか、 それ以上に重要な存在でもある、“蝿”は誰か? この「私が見たと蝿は言う」(原題「I, SAID THE FLY」)という タイトルは、マザー・グースの「誰がコック・ロビンを殺したか?」の中の、
  「コック・ロビンが死ぬのを見たのは誰?」
  「私」と蝿が言った。
  「私が見た。私のこの目は小さいけれど」
(すみません、うろ覚え ) という部分からきてます(内容はマザー・グース殺人じゃありませんが)。最後の最後で、 このタイトルの本当の意味(意図)が分かった時は、なるほどと思いました。それが一番意外でした。翻訳の古さのせいかも 知れませんが、この作品の雰囲気がとても好きです。結末の、この余韻もお気に入り。
 …ところで、あとがきで「自殺の殺人」の結末がバレてませんか? 



「間にあった殺人」 エリザベス・フェラーズ/橋本福夫 訳 (ハヤカワポケミス S56.12.31)
 ロンドンで秘書をしているセアラ・ウィングは、ある晩ひき逃げ事件を目撃してしまった。その帰宅途中、彼女は 古くからの顔見知りで代議士のオーティと再会した。あれは事故ではなく殺人だったと主張するセアラをなだめ、 オーティは彼女をパーティに招待する。それは南仏ニースで行われる、彼の結婚披露パーティだった。しかし同じ頃、 彼からのパーティの招待状を受け取った8人の男女たちは、招待に対する不信感をつのらせていた……。1953年作。

 結婚披露パーティに招待された人たちが集まった屋敷で殺人事件が起きる、という状況設定がいいです。なんか こういうの好きなので、どんどん読めてしまいました。この「間にあった殺人」、誰がどう間にあったのかというのが 問題です。実は途中でちょっと見当がついてしまいましたが(^_^;) でもまさか本当にそこまでしようとしてたとは。 殺された人に対する憎しみをみんなが口々に語るという不思議な状況のおかげで、犯人が分かりませんでした。 みんなで犯人を考えに考えて、疑って、推理を働かせて……も、感情に流されがちで、それほど役には 立ってない(笑)。その辺りは「私が見たと蝿は言う」なんかと似たようなパターンかな。ホッとする後味のよさです。



「嘘は刻む」 エリザベス・フェラーズ/ 川口康子 訳 (長崎出版 2007.3.10)
 古い友人でかつては思いを寄せたこともあったグレース・ダロングの家を6年ぶりに訪ねた ジャスティン・エマリーは、そこで恐ろしい殺人事件に巻き込まれることになる。 グレースの隣人でデザイナーのアーノルド・サインが何者かに銃殺されたのだった。 グレースにかけられた疑いを晴らすために、ジャスティンは独自に事件関係者を調べ始めるが…。

 あちこち過去の話っぽいのも出てくるのですが、ノン・シリーズらしいですね。 フェラーズは本当に作品が多いですけど、その出来不出来はどうなんでしょうかね〜。 本作は主人公が普通の人間で、だから事件の捜査もそれほど突っ込んで出来るわけでもないし、 おまけによそ者なんで登場人物たちの人となりも知らない上に嘘ばっかしつかれて、 本格ミステリとしちゃちょっと回りくどいかなって部分がけっこうある気がするんですよね。 グレースがあんまし魅力的じゃないし、な〜んか優柔不断ぽい主人公に 肩入れできないってのもあるかも(^_^;) まぁ、でも、最後の謎解きなんかは… ちょい唐突な気もするにせよ…意外だったし、そこそこ楽しめた作品でした。 つーか冒頭のレッド・へリング(読むの面倒なので飛ばした(爆))を書いたのはいったい 誰なんですかね。それが一番気になるかな(^_^;)



「さまよえる未亡人たち」 エリザベス・フェラーズ/中村有希 訳 (創元推理文庫 2000.9.22)
 久々に英国へと帰ってきたロビン・ニコルは、空港で何か訳のありそうな男女の別れを目にする。それはそのまま 忘れられてしまうはずの光景だったが……。休暇を過ごそうとスコットランドのマル島を訪れたロビンは、不可解な 殺人事件に遭遇してしまう。被害者は旅先で知り合った有閑マダム4人組のうちの一人。彼はある個人的な事情から、 犯人を突き止めようとするが……。

 ……夫にほったらかしにされて、旅から旅へと世界をさまよう“未亡人”たち。一見楽しげな彼女たちにもその 実色々と問題やら誘惑やらが。偶然一緒になっただけのロビンも、詐欺師か探偵かと疑われて大迷惑。その上彼は、 同じホテルに宿泊しているシャーロットに……。これは最近出ているトビー&ダイクシリーズものでなくて、 非シリーズものです。しかしそんなことは全然気にしなくてもいいですね。ミステリとして全く引けを取って ませんから。全編に漂うユーモアもそのままです。
 登場人物がそれぞれ殺人事件について勝手な推測を並べるのですが、一見もっともらしく見えるそれが打ち 壊されていくたびに、また新しい事実が顔を見せて、暗中模索といった感じで、じりじりと真相へ近づいてゆきます。 そしてついに……。これです(T_T) 本格ミステリは一つの言葉もなおざりにできないな〜、と改めてつくづく 思いました。しかしロビンてけっこう他人の意見に振り回されてるな、と思ってたら、案の定彼より……。 スコットランドの風景もいいですね。バグパイプの音が聞こえてくるような。そして個人的に、いつも「んー」とか 言ってるウォータストン地方検察官が、なんかとてもお気に入りです(^_^;)



「その死者の名は」 エリザベス・フェラーズ/中村有希 訳(創元推理文庫 2002.8.30)
 深夜のチョービー村の警察署に、人を轢いてしまったと近所に住む未亡人のミルン夫人が 飛び込んできた。轢かれた男は身元不明。泥酔していたらしいが、酒場に寄った形跡がない。 持っていたと思われる酒瓶探しに乗り出した警察だが、そこに新聞社をやめたばかりの トビー・ダイクと、刑務所から出てきたばかりのジョージの二人が首を突っ込んできた。これは本当に 事故だったのか? 調査を始めた二人の前に、さまざまな謎が浮かんでくるが…。 トビー&ジョージシリーズ第1作目。1940年。

 これが、トビー・ダイクとジョージシリーズの第1作目なんですね〜。そしてフェラーズの デビュー作でもあります。翻訳の順番はずいぶん後でしたが(^_^;) シリーズは全5作。 すべて翻訳されていますので、シリーズをまだ一度も読んだ事がない方は、やはりこれを真っ先に 読まれるとよいでしょう♪
 以降のトビー&ジョージシリーズと雰囲気は一緒ですね。ユーモアがあって、結局いいところ 見せるのはジョージという(^_^;) でもちょっと不穏な空気を残して終わってる辺りが違うかな。 こういうのは嫌いじゃないですけども♪ 轢かれた死体は誰なんだかさっぱり分からず(もとい、 誰なのか非常に疑わしく)、出て来る人はみんな怪しく、犯人はけっこう最初から分かってたと 思えば最後にはあんなことが。それほど出来も悪くない(というか、私はけっこう好きです)のに、 翻訳が後回しになってたのがちょと意外。他のトビー&ジョージシリーズ作品同様、楽しめた作品でした(^_^) 
↓シリーズ5作目『ひよこはなぜ道を渡る』に続きます。



「ひよこはなぜ道を渡る」 エリザベス・フェラーズ/中村有希 訳 (創元推理文庫 2006.2.24)
 旧友のジョンの招待を受け、マロウビー村を訪ねた犯罪ジャーナリストのトビー。だがそこで彼が発見したのは何者かが格闘したような跡と、 その中で安らかに息絶えている旧友の姿だった。その後彼は自然死と認められ、事件の謎は深まるばかりだったが…。 トビー&ジョージシリーズ5作目。1942年。

 シリーズ最終作♪ 特に順番気にしなくていいとは思うのですが、せっかくシリーズ全部翻訳が出ているのですから やっぱり1作目から順番にどうぞ。
 どう見ても殺人現場に見える状況の中、あるのは自然死の遺体だけという、不可解かつ シリーズの掉尾を飾るにふさわしい魅力的な謎ですね〜。今回何故かジョージがあまり乗り気でなく、 その分トビーが苦労してます。だからまぁあれやこれやとばたばたしてますけど、テンポも良くて 読みやすいですね。ふつーなら気の滅入りそうな人間関係にもかかわらず、楽しい作品です。
 何より、好きだったシリーズなので全部読めて嬉しいです♪ 特にシリーズ完結を思わせる話でないのに、 これで終わりなんて寂しいですが…。未訳のフェラーズ作品はまだまだあるようですので、 他の作品も翻訳されたらぜひ読みたいですね(^_^)



「ダ・ヴィンチ・コード」上・中・下 ダン・ブラウン/越前敏弥 訳 (角川文庫 H18.3.30)
 パリに滞在していたハーヴァード大学教授のロバート・ラングドンは、その日の夜面会する予定だった ルーヴル美術館館長ジャック・ソニエールが死体となって発見されたという知らせを受ける。 そのあまりに異様な死に様が何かのメッセージではないかと見た地元警察の要請を受け、 ラングドンはルーヴル美術館を訪れる。だが現場に駆けつけた 暗号解読官ソフィーから、ラングドンは自分が窮地に置かれていることを密かに知らされる。 そしてソニエールが残した暗号を解くため、彼はソフィーと奔走することに…。 ロバート・ラングドンシリーズ2作目。2003年。本の詳細

 シリーズ2作目ですが、これから読んでも特に問題ないです。誰でも一度はどっかで目にしている ダ・ヴィンチの絵に隠された謎とサスペンス。ルーヴル美術館館長の異様な死体、幾重にも 仕掛けられた暗号と、真実を暴こうとする者、隠そうとする者…。 いいですね、次から次へと謎が提示され、解かれてはまた新しい謎が現れて、ぜんぜん 飽きさせません。ルーヴル美術館に行きたくなりますね〜(^_^;) ミステリ読みすぎた人間にはサスペンスの方の展開はわりと次の手が見える と思うのですが、謎の指し示す方向が見えそうで見えないのでいいですね。 どこへ連れて行かれるのか分からないまま、あちこち引っ張りまわされるのが楽しい♪ 
 まぁ、聞いたような話もあるにせよキリスト教のことはろくに知らないし、 「モナ・リザ」も「最後の晩餐」も見たって悲しいほど覚えておらず、 暗号にしてもよくここまで詰め込んでるな〜ってな感じなんですが(^_^;)、 全体としてはかなり面白かったです。ラングドンはわりと地味な主人公ですね。ストーリーはちこっと都合がいいかな〜と思える部分はあるにしても、 謎もウンチクも読み飛ばしたくなるほど難しいこともなく、エンタメとして気軽に楽しめる作品です♪   個人的に好きなのはソフィーと祖父の思い出、そしてやっぱりラストかな〜(T_T)  きっとソニエールが本当に伝えたかったこと。謎解きだけじゃないのがいいですね。
 順番が前後しましたが、次はシリーズ1作目の『天使と悪魔』を読みます。そのうちに。



「復讐の女神」 フレドリック・ブラウン/小西宏 訳(創元推理文庫 1964.6.10)
 ミステリ・SF作家フレドリック・ブラウンの短編集。11編収録。
 収録作品…
  「復讐の女神」、「毛むくじゃらの犬」、「生命保険と火災保険」、「すりの名人」、「名優」、
  「猛犬にご注意」、「不良少年」、「姿なき殺人者」、「黒猫の謎」、「象と道化師」、「踊るサンドイッチ」


 どれもひねったオチが楽しいミステリ短編集♪ 意外で…でもちょと ホッとするようなストーリーが多いでしょか。さらっと読めます。以下にお気に入りの感想を♪

「生命保険と火災保険」
保険外交員のスミス氏は、割り当て地区の最初の家のドアをノックした。その家でとんでもないことが 進行中とは気付くわけもなく…。
 仕事のことしか頭にないのに、さらりとやってのけることはハードボイルド顔負けのスミス氏(^_^;)  このミスマッチさ加減が絶妙です♪ スミス氏はこの後の「姿なき殺人者」でも名探偵役を演じてます。

「すりの名人」
 スリを生業とするウィルスンは、ある日自分の財布がすられているという不名誉な事実に愕然とする。 しかもそれをやってのけたのは、どこかぼんやりしている大富豪の御曹司らしいのだった…。
 困った御曹司のネジのゆるみ加減が笑えます(^_^;) 最後のひねりがいいですね〜。

「不良少年」
 不良少年の仲間入りをしてどんどん手に負えなくなってくる息子のエディを、母エルシーは どうすることもできなかった。ある日、彼女の家へ知り合いのウィーラー警部が尋ねてくる…。
 不安で押し潰されそうな母親と、まだ無邪気なままの子供と信じて疑わないお婆ちゃん。 ちょと感動的なお話です(T_T)

「踊るサンドイッチ」
 婚約者のいるディクソンだったが、ある日酒場で知り合ったトレメーンの妹ドロシーに心を奪われてしまう。 だがそのことが、彼をとんでもない窮地に追いやることに…。
 これだけちょと長めの、サスペンス仕立てのお話。婚約者に同情し、有給使ってディクソンの 行ったお店やドロシーを探すコール刑事が泣かせます。…というか事件の捜査やら裁判 いいかげんすぎなんですけど(^_^;) 「踊るサンドイッチ」の謎、けっこう好きです(笑)



「さあ、気ちがいになりなさい」 フレドリック・ブラウン/星新一 訳(早川書房 2005.10.15)
 SF作家フレドリック・ブラウン(1906-72)の傑作短編集。12編収録。
 収録作品…
  「みどりの星へ」、「ぶっそうなやつら」、「おそるべき坊や」、「電獣ヴァヴェリ」、「ノック」、
  「ユーディの原理」、「シリウス・ゼロ」、「町を求む」、「帽子の手品」、「不死鳥への手紙」、
  「沈黙と叫び」、「さあ、気ちがいになりなさい」


 タイトルがちと強烈ですけど(^_^;)、どれも面白い作品ばかりです♪ ちょいとばかり(あるいはかなり) 皮肉な味を秘めつつも、全体としてわりと明るくほのぼのした空気が漂っている辺りはかなり好みです。 以下にお気に入りの作品の感想を。「ぶっそうなやつら」(感想は「危険な連中」)、 「町を求む」、「沈黙と叫び」のみ既読です。
 叢書としては、『一角獣・多角獣』(シオドア・スタージョン)に続きます。そのうちに…。

「電獣ヴァヴェリ」
 ラジオの広告文案家だったベイリイは、ラジオを聞くことにうんざりしていた。ある日 仕事のために聞いていたラジオから奇妙な音がするのに気付いた彼は、それが56年前、ラジオの放送が 開始された頃の音であると友人に聞かされ驚愕する。その原因はどこか地球の外から 妨害電波が出ているためらしいのだが…。
 現代だったらもっと恐ろしいことになってたかもしれませんけど、 まぁこういう世界もそれほど悪くないかも(^_^;) 少し(少しですが(笑))うらやましいです。

「ノック」
 「地球上で最後に残った男が、ただひとり部屋のなかにすわっていた。すると、ドアにノックの音が…」  わずか2行で書かれた怪談の背景と、ノックした者の正体とは…?
 宇宙人に侵略されて地球最後の男になってしまったフィランの機転がなかなか良いです♪  ほのぼの、ってわけにもいきませんが、じんわりとくるもののあるラストですね。

「ユーディの原理」
友人のチャーリーが作った奇妙な機械。それは無理のない程度に望みを一瞬でかなえてくれる というものだった。それは“ユーディの原理”で動くというのだが…?
 果たしてユーディの正体とは?(^_^;) それにしても、スイッチの入れかたをもうちょっと 別な風にできなかったんですかね〜(笑) もったいない。

「不死鳥への手紙」
 原子兵器のせいで、ほとんど不死の体をもつことになってしまった私は、18万年もの時間を生きてきた。 そんな私が書く、不死鳥への手紙とは…。
 喜んでいいのか悲しむべきなのか分からないのは、人類の存亡など考えるには人間の寿命が短すぎる せいなんですかねぇ(^_^;) なんだか切ない物語です。

「さあ、気ちがいになりなさい」
 新聞記者のバインは、とある精神病院の院長が何か秘密裏に取材して ほしいことがあるらしいという話を確かめるべく、患者を装い病院へ行くことになる。しかも彼自身、 過去に記憶喪失になって以来奇妙な感覚に悩まされていたのだった…。
 この作品だけちょっと長めです。ま、そりゃぁ気も変になりますわね〜。そしてその方が幸せ なのかも。恐ろしすぎる物語です(^o^;)



「ハイヒールの死」 クリスチアナ・ブランド/恩地三保子 訳 (ハヤカワポケミス S59.2.15)
 ロンドンのクリストフ衣装店の女性店員たちは、近々フランスのドーヴィルに開店する支店のマネージャーに誰が 抜擢されるかと噂話に花を咲かせていた。候補は3人。仕入部主任のミス・ドゥーン、店主であるべヴァンの秘書 グレゴリイ、ショールーム主任のイレーネ。だがやっと人事が決定したその日、昼食を食べたドゥーンが突然苦しみだし、 その夜のうちに死んでしまった。死因は、その日帽子のクリーニングに使うために薬局で購入してきた蓚酸による 中毒死だった。不審な死に、スコットランド・ヤードのチャールズワース警部が捜査に乗り出す…。ブランドのデビュー作。 1941年。

 きちっとした本格ではあるんですけど、語り口がユーモアにあふれてるので読んでて楽しかったです♪ 女性がいっぱい 出てきて、その上店長は類を見ない女たらしで、けっこうどろどろしてるんですけど、軽く描かれてるのが救いですね。 ブランドの作品読むの初めてなので分からないんですけど、後期の作品と比べるとだいぶ違うらしいですね。 チャールズワース警部なんかのキャラクターも良いです。惚れっぽくて、思い込みが激しくて、こんなんでだいじょーぶ なのか、と最初のうちはいささか不安でしたが(^_^;) ラストシーンを読めば分かるように、こういう人はほっとくに 限る(笑) そんな彼を陰で支えるビッド部長刑事も良い。お嬢さんことセシルも笑えます(笑) 怪しい行動をする人が 多くて、誰が犯人なのか最後まで分かりませんでした。こまかい謎も多いのですけど、それはほとんどチャールズワース 警部がいけないような…  女性4人による最後の展開が面白いです〜。なんだかこういうの、女性ならではという気が します(^_^;) この作品、全体的にそういう感じですね。この「ハイヒールの死」というタイトル、読み終わっても ちょっと謎だったのです。凶器がハイヒール(?)とかいう事件ならともかく…でも、ハイヒールって女性の象徴でも あるのかな。こんな結末って(T_T)、と思ってたら、その後にもうひとひねり…。



「切られた首」 クリスチアナ・ブランド/三戸森 毅 訳 (ハヤカワポケミス 1959.10.15)
 イングランド南部のピジョンスフォード。大地主のペンドックの館で、一人の女性が 首を切断されて死んでいるのが発見される。その頭には奇妙な帽子が。それは彼女がその日 ペンドックとその知人とのお茶会の場でけちをつけた、最新流行の帽子だった。 トーリントン警察のコックリル警部が事件の調査を始め、疑いをかけられるペンドックと その知人たち。だが、事件はそれだけでは終わらなかった…。コックリル警部シリーズ、第1作目。 1941年。

 コックリル警部初登場の作品です。初登場なだけに、彼の描写がちょと詳しいですね。 死んだ奥さんのこととか。どっちにしても、あんまり親しみ深い人とは言えないみたいですが…(^_^;)
 全体としては、まあよかったです。結末に好き嫌いがでそうですね。犯人の可能性のある人物を 一人づつ消していくあの緊迫感は、確かになかなかのものです。最後までみんな怪しい。雪密室(?)の謎まであるし。 殺害方法が方法ですから、全体にも凄惨な空気が漂ってて、それもまた悪くない 雰囲気。
 それでも……あそこまでいってあれ、というのがちょっと私好みではないです。あの人、というのはともかく 別にああじゃなくても良かったような。(指示代名詞多い…(^_^;))   ストーリーもちょっと、38歳の女を老人呼ばわり(!)はないでしょとか、フランが どうも好きになれなかったり、いろいろ文句はあるんですけど、それなりに楽しめた作品でした。短めで読みやすい ですし。とにかくこれがシリーズ1作目ですから、今後が楽しみです。2作目『緑は危険』 に続きます。



「緑は危険」 クリスチアナ・ブランド/中村保男 訳 (ハヤカワポケミス 1958.6.15)
 爆撃で負傷した患者たちが次々に運び込まれる、ヘロンズ・パーク病院。元郵便配達夫のヒギンズは、折れた大腿骨を 手術することになっていた。だが、手術台に横たえられ、麻酔をかけられたヒギンズの様子がおかしい。医師たちの努力にも かかわらず、彼は程なく死亡する。妙な噂の立つのを防ぐため、コックリル警部が調査に呼ばれた。単なる偶然と見られて いたヒギンズの死が、やがて殺人事件へと発展していく…。コックリル警部シリーズ2作目。1943年。

 ヘロンズ・パークへの長い坂道を、七通の手紙を手に、赤い自転車を押しながらのぼるヒギンズ…。その一年後、 その七通の手紙を出した七人の人間が、ヒギンズの死をめぐる容疑者になるという皮肉なところから物語が始まります。 戦時下の病院の手術室という特殊な場所での謎の死。いたる所に死があふれていても、殺人かもしれないということに なると話は別です。でも、七人(結局は六人ですが)にはそれぞれ動機らしいものが見え隠れするにもかかわらず、 誰も殺人なんてしそうに見えない。この雰囲気、良いですね〜。例の証拠やボンベのことは(ついでにヒギンズが聞いた 声のことも)分かったんですが、そんなことでは全然犯人が見えてきません。容疑者を六人に限定されようがされまいが、 犯人は最後の瞬間まで分かりませんでした(^_^;) コックリル警部は早々と犯人が分かってしまったようで、あとは 六人の容疑者たちの物語と彼らの推理や分析などで話が続いてます。この緊迫感もとてもいいです。ムーン少佐と バーンズとイーデンが“このごろの推理小説”について語り合うシーンには、思わずにやりとさせられました♪ 最後は、 犯人が意外な上あんな皮肉な結果に。ラストシーンは、ぞっとするけど好きです…。
 3作目『自宅にて急逝』に続きます。


「自宅にて急逝」 クリスチアナ・ブランド/恩地三保子 訳(ハヤカワポケミス S59.6.10)
 白鳥の湖邸と呼ばれる富豪サー・リチャードの家では、彼の前妻セラフィタを 偲ぶパーティーが例年どおり催されようとしていた。だがその翌朝、サー・リチャードは 館の離れで死体となって発見されたのだった。誰もが疑わしい状況にある中、館の人々と 個人的に親しかった地元警察のコックリル警部が捜査を始める…。コックリル警部シリーズ4作目。 1947年。

 まだまだ第二次大戦中の、なんとなく暗い影の漂う作品ですね。全員が何らかの動機と 犯行の機会を持つ中、コックリル警部はいつもそうするように容疑者たちをあおっては、 そのなりゆきをじっと見つめます。陰湿なやり方と言えばミもフタもないですが、悪くはないです。 登場人物たちも、ちょっとそりゃないんじゃないの?というような人たちばかりですし(笑) いろんな説が 出ては消え、様々なトリックが試され、誰かが槍玉に上げられては否定され……その繰り返しが見どころですね。 この辺、ミステリとしては文句ないですが、全体的に少々メロドラマちっくかなというところが(^_^;) 最後の展開なんかも かなり意外だったですが、私としては少々やり過ぎな気もしないでも…。とはいえ、誰が犯人になっても、 どのトリックが使われても不思議でない緻密な構成はさすがです♪
 4作目『ジェゼベルの死』に続きます↓



「ジェゼベルの死」 クリスチアナ・ブランド/恩地三保子 訳 (ハヤカワ文庫 1979.1.31)
 帰還軍人のために開催された劇で、惨劇が起こった。殺人の予告を受けていたイゼベルという女性が 塔から落下したのだ。観客席から見守っていたコックリル警部が駆けつけた時、彼女はすでに 息絶えていた。衆人環視の中で起こった殺人事件には、数年前のある青年の自殺事件が影を 落としていた……。1949年。コックリル警部シリーズ4作目。

 旧約聖書に出てくる悪女ジェゼベルと同じ名で呼ばれていた、イゼベル・ドルー。彼女を含めた 数名に殺人の予告状が送られ、その中の一人がケント州に住むコックリル警部の知り合いだった ことから、彼の登場となります。誰からも嫌われてるイゼベルだけに、登場人物が全員怪しい(^_^;)  衆人環視とはいえ、みんな劇の衣装の鎧をつけていて、誰がどうやってイゼベルを殺したのか 全く分かりません。とにかく、最後の最後までみんな怪しい!(-_-;) 個性的なキャラクターぞろいで、 読んでてとても楽しいですね♪
みんな怪しいから犯人とその正体はそれほど意外じゃないけど、イゼベルを殺したときのトリックが うぅうぇえ〜?(T_T)という感じ(?)で、かなり凄かったです。衝撃的でした。全体的に、 満足度の高いミステリでした♪

これ、コックリル警部シリーズですけど、ブランドの処女作『ハイヒールの死』で登場した スコットランド・ヤードのチャールズワース警部も出てます。ひそかに彼のファン だったから嬉しい(^_^;) 
 5作目『疑惑の霧』に続きます↓



「疑惑の霧」 クリスチアナ・ブランド/野上彰 訳 (ハヤカワポケミス 1958.8.15)
 濃い霧の渦巻くロンドン、エヴァンズ医師の屋敷で、外国からやってきた客が 頭を殴られて殺されるという事件が起こった。一家の友人であるコックリル警部は、 被疑者となった家族を救って欲しいと頼まれ、スコットランドヤードのチャールズワース警部とともに 事件の捜査に乗り出す。コックリル警部シリーズ第5作目。1952年。

 終始ロンドンのじっとりねっとり(?)濃い霧に包まれているかのような、 先の見えないストーリー。その奔放さから望まない妊娠をしてしまい、兄の一家とその 友人の生活をかき回すことになるロウジーと、彼女をめぐる人間関係がなかなかドロドロでよいですな(^_^;)  誰もが誰かをかばって、なかなか進まない捜査。コックリルが活躍しているという 感があまりないですし、後半の裁判がちと冗長かな〜とも思うのですが、 全体としての仕掛けはなかなか良いですね。それもコックリルに明かしてほしかったかな。 ま、ミステリとしてというより、ストーリーが楽しめたのでよかったです。
次は6作目「はなれわざ」に続きます。そのうちに。



「赤い拇指紋」 R・オースチン・フリーマン/吉野美恵子 訳 (創元推理文庫 1982.8.27)
 失業中だったわたしこと医師のジャーヴィスは、法学院で偶然旧友のソーンダイクに出会う。 彼はその博識を生かし、助手のポルトンと共に犯罪事件の科学的解明を請け負っているのだった。 そんな彼の元に、ロンドンの貴金属会社からダイヤモンドの原石が盗まれるという事件が持ち込まれた。 そこにあった書類には血染めの拇指紋がくっきりと残されていたのだが、それが経営者の甥ルーベンのものと 一致するというのだった。決定的とも思われる証拠を前に、ソーンダイクはルーベンの無実を証明するため 事件の捜査に乗り出す…。ソーンダイク博士シリーズ第1作。1907年。

 科学探偵ジョン・イヴリン・ソーンダイク博士初登場作品♪ この作品時点で30歳、既に法医学の権威とゆ〜から 驚きですね(^_^;) ハンサムで冷静沈着、捜査中の事件については全く洩らさない厳しさもあるけど、 そこはかとないユーモアも備えてる、そんなお人。友人のジャーヴィスも、お人よしでちと思い込みが 激しいみたいだけど、ワトスン役にしてはまぁそこそこというか…(失礼な(^_^;) 不思議な経歴を持つ助手のポルトンもいいですね♪ けっこう魅力的なキャラクターたち。
 盗難現場に残された血染めの拇指紋は、本当に被疑者のものなのか? この作品の主な謎はそれだけです。 長編にしては地味な謎ですが、当時の科学の粋を集めた捜査や、ソーンダイク襲撃事件、ジャーヴィスの苦悩 なんかもあったりして、けっこう楽しめました。法廷での一幕もなかなか♪ 漂うそこはかとないユーモア。 控えめ(?)のロマンス。古きよき英国ミステリですね〜(^_^) 現代のミステリに慣れていると 退屈だという向きもあるかもしれませんが、私はこういうの大好きです♪ ソーンダイクと全っ然関係ない あのラストもなんかいいです(笑)



「証拠は眠る」 オースティン・フリーマン/武藤祟恵 訳 (原書房 2006.3.16)
 長患いの末に死んだかに見えた男が、実は殺された疑いがあることを知り、衝撃を受ける家族。 男の妻と幼馴染である弁護士のルパートは、事件の調査を友人のソーンダイク博士に依頼する。 確たる証拠も動機も見つからないまま、調査は難航するが…。ソーンダイク博士シリーズ11作目。1928年。

 作品数は多いものの、翻訳のあまりないこのシリーズ。私は好きなんですけどねぇ、かなり…。
 現代では科学的に、うん?ってな部分もあるんでしょうが、この時代なら十分読者の度肝を抜いた ことでしょう。いや現代でも、あちこちバレバレなんですけど十分楽しめました。 ジャーヴィスはなんか偉くなっちゃったらしくて(?)ちらっとしか出てきませんが、ルパートもワトソン役としては なかなかいい味出してるし、ソーンダイク博士の助手ポルトンは今回も大活躍♪ 事件を解決してもしなくても 苦しむ人がいることへのソーンダイクの苦悩とか、ルパートの過去とか、古くさいくらい正統派な ストーリー展開の中にも色々と好きな部分があります。ま、この時代の雰囲気を 楽しめなくてはちと単調かもしれませんが。なんだか切なくも素敵なラストです。やっぱしいいです(T_T)
 ちょっと前後してしまいましたが、次は9作目『ダーブレイの秘密』に続きます。そのうちに。



「ソーンダイク博士の事件簿 T」 オースチン・フリーマン/大久保康雄 訳
                       (創元推理文庫 1977.8.19)
 法医学の権威ソーンダイク博士とその友人ジャーヴィス医師が、科学的捜査で難事件を解決する シリーズ短編集。Tには8編収録。
 収録作品…
  「計画殺人事件」、「歌う白骨」、「おちぶれた紳士のロマンス」、「前科者」、「青いスパンコール」、
  「モアブ語の暗号」、「アルミニウムの短剣」、「砂丘の秘密」


 シャーロック・ホームズのライバル♪(笑) ソーンダイク博士が活躍するシリーズ短編集。 初登場作品は『赤い拇指紋』です。 同シリーズの「オスカー・ブロズキー事件」はミステリ史上初の倒叙推理小説と しても有名ですね♪(知らなかったけど(爆)) この時代の科学捜査の粋を集めた捜査方法。今から見ればもちろん 古くさくはありますが、小道具の使い方が効果的。何よりやっぱりこの時代の雰囲気が好きです。 以下にお気に入りの感想を♪

「計画殺人事件」
 元脱獄囚ベンバリーが列車の中で出会った男は、刑務所の元看守だった。元看守にゆすられた ベンダリーは、元看守を殺そうと決意する…。
 倒叙ものです。以後倒叙ものの場合、1章が犯行の模様、2章がソーンダイクの記録係(?)ジャーヴィス医師の 手記という形が多いですね。
 とある捜査方法を見越してベンバリーがまきちらす偽の手がかりが面白いです。そりゃあちっと 不自然ですけど(爆) 倒叙もの読むといつもそうですが、露見しない犯罪なんか ありえない気がしてきますね〜(^_^;)

「歌う白骨」
 灯台守のジェフリーズは、新しくやってきた灯台守がかつて自分を警察へ売り渡した男であることを知った。 怒りに駆られてもみ合ううちに、ジェフリーズは相手を殺してしまう。なんとか事件が起きなかったように装う のだったが…。
 今から見ればかなり稚拙な隠蔽工作ですが…この灯台の雰囲気が好きです(^_^) 歌う白骨のエピソードもいいですね♪

「おちぶれた紳士のロマンス」
 とある田舎のパーティ。招待されていないのに出席して盗みを働こうとしていたオーガスタスだったが、 旧知の夫人に出合ってしまい、事態は思わぬ方向に…。
 オーガスタスがなんか行き当たりばったりすぎる気もしますが、ちょこっとホロリとさせられる ラストがいいです(^_^)

「前科者」
 ある日ソーンダイクの事務所へ、前科者だが今は真面目に暮らしているベルフィールドという男が駆け込んできた。 現場で見つかった指紋のせいで、身に覚えのないキャンバーウェル殺人事件の犯人にされそうだというのだが…。
 この作品だけは『赤い拇指紋』を読んだ後の方がいいかも。揺るぎない証拠と 思われてる指紋も…というお話。とはいえこれほかの証拠もちと特殊すぎて出来すぎな気もしないでも ないですが(^_^;)、前科者の訴えに耳を傾けるソーンダイクがなかなか良いです♪



「ソーンダイク博士の事件簿 U」 オースチン・フリーマン/大久保康雄 訳
                       (創元推理文庫 1980.3.28)
 法医学の権威ソーンダイク博士とその友人ジャーヴィス医師が、科学的捜査で難事件を解決する シリーズ短編集。Uには9編収録。
 収録作品…
  「パーシヴァル・ブランドの替え玉」、「消えた金融業者」、「ポンティング氏のアリバイ」、
  「パンドラの箱」、「フィリス・アネズリーの受難」、「バラバラ死体は語る」、「青い甲虫」、
  「焼死体の謎」、「ニュージャージー・スフィンクス」


 Tに引き続き、Uも面白いです♪ やっぱ遺体の判別に関わる事件が多いですね〜。 この頃の方が色々やりやすそう(?)で、保険会社なども大変みたいです(^_^;) 以下にお気に入りの感想を♪

「パーシヴァル・ブランドの替え玉」
 クリスマスの夜、下宿の女主人が留守で一人きりになれると知ったパーシヴァル・ブランドは、 とある計画を実行すべく動き出した。次の日下宿は焼け落ち、焼け跡からは遺体が発見されるが…。
 昔からこ〜ゆ〜ことする人いたんですねぇ。今ならこんなバレバレなこと誰もやらないと思いますが(^_^;)、 ブラントの替え玉が実は……だったところがおかしくて好きです(笑)

「ポンティング氏のアリバイ」
 ある日ソーンダイク氏の元へやってきたミード牧師は、婚約者のミス・フォーセットがその兄から 脅迫されているので助けてほしいと相談する。早速ミス・フォーセットの家へ向かう一行だが、 彼女は自殺を思わせる状況で死んでいた…。
 なんて残酷な事件(-_-;) ふとした事からアリバイ工作がバレるのがいいですね。

「フィリス・アネズリーの受難」
 空家の床下からルーシー・ブランド夫人が死体で発見された事件で、容疑者となっている ミス・アネズリーを弁護してほしいという依頼を受けたソーンダイク。二人の目撃者が、 ミス・アネズリーが死体を埋めているのを見たといっているのだが…。
 きわどいトリックで今なら驚くよりむしろ笑えますが(笑)、こ〜ゆ〜の嫌いではないです(^_^) 

「青い甲虫」
 曽祖父が残したガラス製の青い甲虫を盗まれたというブローグレーヴが、ソーンダイクのもとへ相談に やってきた。それは安い模造品の甲虫なのだが、判読できない象形文字が刻まれていた。 曽祖父が莫大な宝物を所持していたと聞いたソーンダイクは、象形文字の解読を試みる…。
 いいですね〜、ポーの「黄金虫」みたいな暗号と宝探し♪ 最後のちょっと一ひねりがいいです(^_^)



「三人の名探偵のための事件」 レオ・ブルース/小林晋 訳 (新樹社 1998.12.1)
 知人であるサーストン夫妻の屋敷で週末を過ごしていたタウンゼントは、その夜起こった 殺人事件に巻き込まれてしまう。翌朝屋敷に現れたのは3人の名探偵、ロード・サイモン・プリムソルと ムッシュー・アメ・ピコン、そして牧師のスミス師。彼らは独自の手法で、それぞれ事件の 調査を開始する…。レオ・ブルースの処女作。1936年。

 三人の名探偵はそれぞれ、ピーター卿(セイヤーズ)、ポワロ(クリスティ)、 ブラウン神父(チェスタトン)のパロディですね。この三人が出てくる本をそれぞれ数冊ほど読んであった方が より楽しめると思います。そんなことを言うと読んでない方の足が遠のきそうですが、 「読んでなくても構わない」とは言えないほど面白い(ToT) 
 いい意味、ミステリのためのミステリ。このタイトルも……皮肉ですね(^_^)
 屋敷でのパーティーの夜(当然♪(爆))。そしてほとんど密室状態の部屋で 見つかった死体。名探偵たちはタウンゼントをワトスン役にしながら、それぞれ独自の調査をします。 パロディとはいえ、人物像、推理方法などはきちんと踏襲されています。次々に明らかになる 意外な真実、そこから導き出される名探偵たちの推理…。
 いいですね〜(ToT) 正統派本格ミステリですが、そこかしこにユーモアもあります。彼らの名探偵ぶりを苦々しく 見ているビーフ巡査部長(変な名前(笑))もいいです。そりゃ、三人もいたらね(^_^;) でも 名探偵への敬意も忘れてません♪ 
 ミステリの魅力は、最後にたどり着く意外な真相だけじゃないんですよね♪ こんなミステリが あるというだけでもう嬉しくなってしまう、そんな作品です(*^^*)



「死体のない事件」 レオ・ブルース/小林晋 訳 (新樹社 2000.3.24)
 探偵小説作家のタウンゼンドは、友人のビーフ巡査部長のいるブラクサムに滞在していた。 二人が居酒屋でダーツをしながら地元の厄介者ロジャーズの噂話をしていると、そこへ当人が現れる。 しかも彼は人を殺したので自首しにきたと言い終えると、服毒自殺を図ったのだった。ロジャーズは 血で汚れたナイフを持っていたが、一体誰を殺したのか分からない。スコットランド・ヤードからも 敏腕スチュート警部がやってきて事件の捜査を始めるが、死体は一向に見つからない…。1937年。

 シリーズ2作目♪ 面白かったです(^_^) 愚鈍でちょともたもたしたイメージのある ビーフ巡査部長と、率先してワトスン役を買って出ている(笑)タウンゼンド。ヤードからも 切れ者のイメージのあるスチュート警部がやってきて、ロジャーズが殺したと言い残した人間を 探します。行方不明者もいるけど、一体誰が殺されたのやら…。この謎は面白いですね。 スゴい名前のゴールズワージイ巡査(笑)とスミス巡査も面白いし、スチュート警部もも〜いかにも、という感じで大変よろしいです。彼の推理も けっこう良かったし。謎の外国人もいい感じ(笑) 結末は想像どおりだったですが(^_^;)、 過程がとても楽しい。死体がないという奇抜な設定をけっこうよくこなしてて、とても楽しめた ミステリでした♪
 3作目『結末のない事件』へ続きます↓



「結末のない事件」 レオ・ブルース/小林晋 訳 (新樹社 2000.9.25)
 田舎町の巡査部長を引退したビーフは、ロンドンで私立探偵を開業した。複雑な思いのタウンゼントだったが、 ビーフが依頼を受けた事件に同行することに。それはシデナムで起こった殺人事件で、容疑者として告発された 兄を助けてほしいという依頼だった…。シリーズ3作目。1939年。

 シリーズ順に読まれた方がいいです。今回ビーフは警察を退職し、あのベイカー・ストリートの近くで私立探偵を開業。 いい事件はみんな有名な探偵に回ってしまう、と同時代の他のミステリの探偵を列挙するところが笑えます。今回ビーフは 調査はするものの、事件についてどう考えているのかよく分からず、なんとなくやる気なさげ。 そうこうするうちに、容疑者も危うい立場に…。スリルがあるというより、ビーフの立場がかなり 不安になるストーリーですね(^_^;) ホントに結末がないのか…と思わせるような。 全体的にはちょいと散漫な印象を残す部分もある…のですが、ユーモアで補いつつ、実はかなり巧妙な 仕掛けを隠しつつ、あの結末。う〜ん…確かにこれはすごくて良かったんですが、なんか微妙(笑)  ミステリとしてでなくて、ビーフがもうちょとなんとか……という感じでしょか(^_^;)  とはいえまぁ、これはこれでけっこう楽しめました♪
 次は4作目…は未翻訳ですので、シリーズ5作目『ロープとリングの事件』に続きます↓



「ロープとリングの事件」 レオ・ブルース/小林晋 訳 (国書刊行会 1995.3.10)
 名門パブリック・スクールのペンズハースト校のボクシングのジムで、ロード・イーデンブリッジの息子が 首を吊っているのを発見された。自殺かと思われていたのだが、ビーフは頼まれもしないのに 事件の調査を始めた。さらに、ロンドンでも同様の事件が…。ビーフ巡査部長シリーズ5作目。1940年。

 4作目が未翻訳なので、5作目です。今回は英国の由緒正しきパブリックスクールが 舞台。貴族の息子が自殺、ということで片付きかけていた事件を新聞で読んで、首を突っ込むビーフと タウンゼンド。それだけに留まらず、ビーフは学校の門番になるやら生徒たちにダーツを広めるやら、 やりたい放題(^_^;) それはなかなか楽しいのですが、いつも二言目には自分の 書く本の心配しかしないタウンゼンドがいささか鼻についてきました(-_-;) 実は3作目でも うるさいなと思ってたんですが…ユーモアといえばユーモアですが、ちとしつこくてイライラします。 ま、誰もそんなこと気にしやしないでしょうが…(^_^;) 今回出てくるペンズハースト校教師の タウンゼンドの兄の方がよっぽどいい性格に思えてきます。
 ミステリとしては、単純に見えた二つの事件が実は…というのは結構意外で良かったです。 個人的な好みからすると、ちょと意外すぎてアレな気もしますが……それでも、シリーズの 中では2番目に好きです(笑)
 というわけで、現在翻訳されているビーフ巡査部長シリーズはここまで。翻訳が出たら読みます。



「死の扉」 レオ・ブルース/清水俊二 訳 (東京創元社 S33.10.31)
 小さな田舎町ニューミンスターで、評判のよくない雑貨屋の女主人が殺され、それを発見した警察官も 同様に殺されるという事件が起こった。警察が事件の捜査に手間取る中、クィーン公立学校の歴史教師 カロラス・ディーンは生徒に焚き付けられたこともあり、自らも素人探偵として事件の調査に 乗り出すことに決めた。友人のムア捜査課長の協力にもかかわらず、殺人の動機を持つ人間が多すぎて困惑する ディーンだったが…。カロラス・ディーンシリーズ第1作目。1955年。

 ニューミンスターのクィーン公立学校の歴史教師、カロラス・ディーン(キャロラス・ディーンの表記が一般的)シリーズ第1作目♪  残念ながらこの本は、文庫も含め絶版ですが…。
 男やもめで気ままな生活を送る、ちょいと枠から外れた教師のカロラス・ディーン氏。歴史の授業中でも、生徒の思惑通りに 事件の話に乗ってしまう辺りがいいです。後ろ暗い仕事に手を染めてた因業婆さんが殺され、 素人がちょっとつついただけでわらわら動機が出てくる始末。余計な事件も絡んでテンポのいい話では ないのですが、そこはかとなくユーモア漂うディーンの調査が楽しいです。まぁあちこち え?という部分がなきにしもあらずなんですが、結末も含め全体としてはなかなか好きな作品です。 ミステリ好きな農場主のリムブリック氏が、ディーンにミステリ談議を吹っかけるとこがいいです♪(笑)  あ、作中にチェスタトンの短篇作品のネタバレ(ちなみに作者でなく翻訳者がやってるんですが…)が 2つありますので、読まれる際はご注意を。
 次は7作目の「ジャックは絞首台に!」に続きます↓



「ジャックは絞首台に!」 レオ・ブルース/岡達子 訳 (社会思想社 現代教養文庫 92.7.30)
 病後の静養のため温泉町バディントンに滞在していたパブリック・スクールの歴史教師 キャロラス・ディーンのもとに、不可解な殺人事件の知らせが舞い込む。 一夜のうちに二人の老婦人が殺され、その手にはユリの花が握られていたのだった。 被害者の家族がキャロラスの噂を聞きつけ、彼は事件の調査をすることになるのだが…。
 歴史教師キャロラス・ディーンシリーズ第7作目。1960年。


 途中翻訳がないので、シリーズ7作目。しかも1作目同様、この本も絶版です(-_-;)
黄疸に悩まされた後、刺激的なことなど何もない温泉町に送り込まれ、 のんびり静養するはずだったキャロラス。でもちょっと気になる事件に遭遇してしまい、ついには病気だったことなど忘れ…(笑)
 そこはかとなくユーモア漂う楽しい作品です♪ 由緒正しきパブリック・スクールの教師が犯罪事件の捜査なんてとんでもない、と 駆けつけた校長まで乗り気になっちゃってるのがいいです(^_^;) キャロラス本人より、 周りのキャラクターが突出してるというか。個人的に、病気の倉庫ギリング氏が気に入ってます(笑)  ドラゴン・ホテルのバーに現れる面々が楽しい。この頃ちょうど普及し始めたテレビのことが 頻繁に出てきて、時代を感じさせますね〜。
 事件そのものはそれほど目新しい展開でもなく淡々と進みます。地味ですけど伏線も色々あり、まぁ 正統派のミステリ。面白かったです。
次はシリーズ9作目『骨と髪』に続きます。そのうちに♪



「血は冷たく流れる」 ロバート・ブロック/小笠原豊樹 訳(早川書房 2006.3.15)
 短篇の名手ロバート・ブロックの短篇集。16編収録。
 収録作品…
  「芝居をつづけろ」、「治療」、「こわれた夜明け」、「ショウ・ビジネス」、「名画」、
  「私の好みはブロンド」、「あの豪勢な墓を掘れ!」、「野牛のさすらう国にて」、
  「ベッツィーは生きている」、「本音」、「最後の演技」、「うららかな昼下がりの出来事」、
  「ほくそ笑む場所」、「針」、「フェル先生、あなたは嫌いです」、「強い刺激」


 かなり皮肉のきいたオチの数々が、薄ら寒さを覚えながらもやっぱり楽しい短篇集です。「治療」とか「最後の演技」なんてかなりエグイのですけど、嫌いではないんですね。 ああ…やってしまったのね…って感じでしょか(^_^;) 皮肉は絶妙なものの、いろんな意味でグロテスク(悪趣味の一歩手前というか…)な話が多いので、ダメな方はダメそうですね。 私の好きな作品の感想は以下に。どれも短い作品ですので、ほんの一言。

「こわれた夜明け」
 核爆弾が投下され死の街と化した場所を、防護服に身を包んだ男が歩いていた。彼はいつかこんな日が来ることを 予期していたのだが…。
 短いお話です。最後のセリフが決まってますね。実際こんなことがあったら こんなこと言う人がいそうな気がするから怖い…。

「名画」
 毎晩決まってカフェに現れる、一人の老人がいた。彼はかつて絵描きとして、素晴らしい名画を描いたという…。
 名画かどーかはともかく、そんな死に方はしたくないですね(^_^;) オチは好きです。

「野牛のさすらう国にて」
 終末戦争を迎えた後、アメリカの人々は開拓時代のような素朴な生活を送っていた。 ある日そんな彼らの前にロケットが降り立ち、かつて月へ逃れていたという人々が降り立つ…。
 まぁ、その場しのぎの解決ではありますが、そうしたくなる気持ちはよく分かります。

「本音」
 ある日突然、大勢の人々がいっせいに自分の本音をぶちまけ始めるという気妙な事件が起こった。 どうやら原因は、ある大学教授が散布したガスらしいのだが…。
 理想的かつ恐怖の世界ですね(^_^;) 今更ね〜(笑)

「針」
 安い借家を探す絵描きのストーンが周旋屋に紹介されたのは、廃屋同然のビルの屋根裏部屋だった。 場所を見に出かけた彼は、その部屋に誰かがいるのを発見する…。
 ほぼ同じ話をブラッドベリも書いてましたが、どこかで誰かがやらねばいけないことなんですかねぇ(^_^;)  いつか自分の名前に…と考えると怖いです。



「自殺じゃない!」 シリル・ヘアー/富塚由美 訳 (国書刊行会 2000.3.30)
 ロンドン警視庁犯罪捜査部のマレット警部は、休暇をペンデルベリー・オールド・ホール・ホテルで 過ごしていた。そこで彼はとある老人と知り合いになるが、翌朝老人は睡眠薬の飲みすぎで死亡していた。 自殺とされた彼の死に納得のいかない家族は、独自の調査を始める。マレット警部シリーズ、 第3作。1939年。

 いきなり三作目ですが、これ以前のが翻訳されていないので仕方がありません(-_-;)。
 マレット警部(後に昇進しますけど)シリーズとはいえ、この作品にはあまり顔を見せません。 活躍(?)するのは死んだ老人の家族。生命保険を受け取るためになんとか自殺じゃないことを 証明しようと、素人探偵のようなことをします。とはいえ、やっぱり最後にはマレット警部の推理が 冴えますけど♪
 いいいですねぇ〜。さまざまな思惑から、なんとしても殺人の証明をしたい老人の家族たち。 事件当日ホテルに泊まっていた客を片っ端から調べていくのですが、そこは素人。傍目にも 穴だらけの調査なのです。途中が少々だれ気味だし、ちょいとフェアじゃないかなぁと思う部分も あるにはあるんですが、結末でこれだけ楽しませてもらえれば文句なしです。なるほどね〜。犯人の 動機(というか何と言うか…)も納得。すべてはこの結末のために、ですね〜。 そこここに散りばめられたユーモアもいいです。やっぱりこういうのはけっこう好きです(*^^*)
 4作目『法の悲劇』↓に続きます。



「法の悲劇」 シリル・ヘアー/宇野利泰 訳(ハヤカワポケミス S35.4.15)
 "きれもの"と囁かれる高等法院王座部のウィリアム・バーバー判事は、厳しい裁判官として 名を馳せていた。だがイングランド南部のマークハンプトンで巡回裁判中、彼は交通事故を 起こしてしまう。多額の賠償金請求と、地位の失墜を恐れるバーバー判事とその妻ヒルダ。 さらにその頃から彼らの周囲では、不穏な出来事が相次いで起こり始める…。マレット警部シリーズ 第4作目。1942年。

 シリル・ヘアーの最高傑作と言われながら、この本は文庫も含め絶版です(x_x)  どうでもいいけど、毎度のことながらポケミス背表紙であらすじ書きすぎ!(ToT)
 一風変わったミステリという感じの作品ですね。イングランド南部の各地へ巡回裁判に赴く ウィリアム・バーバー判事とその一行。何か起こりそうな空気が漂い、実際小さな事件はいくつか 起こるものの、わりとゆっくり、淡々と物語が進んでいきます。まるで何かを待っているように。 最後まで読んで初めて、この長い物語の深い意味が分かります。長い、とはいえ冗長という感じは ないですね。ユーモアを交えつつ描かれる、法に関わる人たちの人間模様が楽しくもあります(^_^)  この英国ミステリ独特の雰囲気もいい♪
 ひとつの事件の謎をじっくりと解いていくミステリに慣れてると、ちょともどかしいと感じるかも しれません。この辺、万人向きじゃないのかも。しかしこれはこれで、隙のないすごいミステリ。 あの動機と、あの犯人の行動。…絶妙です(-_-;) まさに法の悲劇ですね。いいいですねぇ〜。
 これマレット警部シリーズですけど、もう一人シリーズキャラクターが登場します。でも、ここでは一応 伏せときます♪
 というわけで、次は『ただひと突きの……』に続きます↓



「ただひと突きの……」 シリル・ヘアー/和田一郎 訳 (ハヤカワポケミス S40.6.15)
 弁護士フランシス・ペティグルーは、ピン統制局の法律顧問としてマーセット・ベイに 行くことになった。局員の一人が探偵作家だということを知った 宿舎"ファンリー宿舎クラブ"の面々は、統制局の人々を登場人物にした探偵小説の筋書きを練り始める。だが その筋書で犯人役に仕立て上げられた人物が、何者かに殺されてしまうという事件が起こる。 ちょうど統制局がらみの事件の調査に来ていたマレット警部が、殺人事件の調査に乗り出すが…。 マレット警部シリーズ5作目、および弁護士ペティグルーシリーズ2作目。1946年。

 マレット警部とペティグルー弁護士、二人のシリーズキャラクターがそれぞれ活躍します(^_^) 時は第二次世界大戦中、 ピン統制局(って具体的に何なのかイマイチよく分からんの ですが(^o^;))の法律顧問としてマーセット・ベイにやってきたペティグルー。 大人気ない推理小説の"筋書"ゲームのことや、ペティグルーの秘書の問題やらが淡々と描かれ、事件はなかなか 起きないように見えます、が……。伏線はけっこうあちこちに張ってあるんですよね。 短めの作品で、あれよあれよという間に解決しちゃったようにも思えるんですが、 そこに至るまでのそこはかとないユーモアのあるストーリー展開はけっこう好きです。 あのラスト(物語の)も予想はつきましたが、個人的には……いいですね♪(笑) シンプルですけど けっこう楽しめた作品でした。
 次はペティグルーシリーズ3作目、『風が吹く時』に続きます↓



「風が吹く時」 シリル・ヘアー/宇野利泰 訳 (ハヤカワポケミス 1955.6.30)
 ペティグルウが協会理事を勤める地元マークシャア管弦楽団のコンサートの最中、 出演予定のバイオリン奏者が殺されるという事件が起こった。地元警察から助言を 求められたペティグルウだったが、なかなか犯人を特定できずにいた…。 弁護士フランシス・ペティグルーシリーズ3作目。1949年。

 結婚して田舎へ引っ込んだペティグルー弁護士(この辺のいきさつは前作を読んでいるといいです)、 地元の文化事業にまつわる雑事を押し付けられた挙句、殺人事件に巻き込まれてしまうことに…。 みんないたって真面目にやってるように見えて、あちこちにふとにやりとさせられるような ユーモアがあっていいです♪ ヘアーの作品のこういうところがホントに好きです。そしていかにも…と 思わせる事件の解決。でもやっぱりこの作品は、事件そのものの謎よりその周辺が楽しいですね。 ペティグルーはなるべく事件に巻き込まれまいとしてるし(笑)、地元警察内部の妙な 気の遣い合い(気を遣ってる場合じゃないでしょが…)も面白かったです(^_^;) 
 次は4作目…が未翻訳なので、5作目『いつ死んだのか』に続きます↓



「いつ死んだのか」 シリル・ヘアー/矢田智佳子 訳 (論創社 2005.11.20)
 妻と二人でエクスムーアへ旅行に出掛けたペティグルーは、子供の頃に経験した忌まわしい出来事の 記憶をたどっていた。かつて死体を見つけた場所へと再び足を運んだ彼だったか、そこで再び死体を発見してしまう。 だが人を呼びに行き戻ってみると、死体は跡形もなく消えうせていたのだった…。
 マレット警部シリーズ第6作目、弁護士ペティグルーシリーズ第5作目。1958年。


 本作はシリーズの最後、そしてシリル・ヘアーの遺作。さびしいことです。
 事件の発端はペティグルーのトラウマ。彼の過去にそんなことがあったなんて(^_^;)  とはいえ過去の事件は特に現在に絡んでくることもなく、問題は現在の死体とその死亡時刻の謎。200ページもない 短めの話で、わりと淡々とした――というか、なんとなく弱々しい――印象があります。 でも結末はなかなか意外で、作者らしい展開ですね。欲を言えば、ついでに古い事件の謎も…って とこでしょうか。引退したマレット警部との親交やエリナーの友達なんかも面白く、作風も好きなので 全体としてはわりと楽しめました。しかしこのタイトルがもうちょいと、なんか……ね(^_^;)
 シリーズは他に未翻訳の作品もあるので、何か出たらそのうち読みます。



「英国風の殺人」 シリル・ヘアー/佐藤弓生 訳 (国書刊行会 1995.1.25)
 歴史学者のボトウィンク博士は、英国はマークシャー地方の旧家ウォーベック邸へ古文書の 研究に訪れていた。近々ウォーベック邸では恒例のクリスマス・パーティが行われることに なっていた。病弱な主人のウォーベック卿の元に集まるのは、彼の親類や知人が5人。 心ならずもそこに紛れ込むことになってしまった博士だったが、そのパーティの席上で 不愉快な事件が起こる。客の一人が、クリスマスを祝う乾杯をしたあと突然死んでしまったのだ。 大雪に降り込められた館で、救助を待ちつつ捜査が始まる。だが、事件はそれだけでは 終わらなかった…。1951年。

 これはノン・シリーズです♪ う〜ん、いいですね〜(*^^*)  まさにイギリスの正統派の本格ミステリ♪ まさにタイトルどおりですが、このタイトルの本当の 意味はもっとずっと深いのです。犯人はともかく、こんな動機があったとは♪ まさに英国風。 でもこれを外国人のボトウィンク博士が解くというのもちょと皮肉な……(^_^;)
 派手な展開もないし変わった人物も出てきませんが、ゆっくりじっくり楽しむのには最適です。 田舎の古いお屋敷とその主、そして執事。なんとなく退屈なパーティと、その席での殺人、雪に 閉ざされた館……。登場人物も舞台装置も申し分なし(*^^*) 本当にじっくり楽しめた英国 ミステリでした♪



「フォーチュン氏を呼べ」 H・C・ベイリー/文月なな 訳(論創社 2006.5.20)
 名探偵レジナルド・フォーチュン氏が初めて登場する第一短編集。6編収録。1920年。 本の詳細
 収録作品…
  「大公殿下の紅茶」、「付き人は眠っていた」、「気立てのいい娘」、「ある賭け」、
  「ホッテントット・ヴィーナス」、「几帳面な殺人」


 翻訳が進んでるとは言いがたいこのシリーズですが、これがレジナルド・フォーチュン氏初登場の 短編集です♪ 35歳、丸顔で人好きのするタイプ。なんでもそこそこ出来るけど本気でやりたいこともなく、 父親の診療所で診察を受け持ちつつわりとお気楽に暮らしていた…のですね、最初は。 ミステリとしてはあちこちちょっと詰めの甘いとこもありますが、ユーモアもあるし、この時代の 雰囲気など楽しめればそれで十分ですね。なかなか楽しい短編集でした。以下にお気に入りの感想を。

「大公殿下の紅茶」
 父親が留守の間診療所を任されたレジーは、近所に住むボヘミア大公の屋敷から 大公がひき逃げにあったと呼び出しを受ける。急いで屋敷へ向かうレジーだったが、その途中 ひき逃げにあったと思しき男の遺体を発見する…。
 レジー・フォーチュン氏初登場作品。初めてにしては不遜なほど冷静沈着ですね(^_^;)  この後たびたび事件の捜査を共にすることになるスコットランド・ヤードのローマス部長も登場してます。
ミステリとしては単純で、おまけに殺し損ねたからってそこまでする犯人は少し妙かと思うんですが、 まぁ大公夫人にからかわれるフォーチュン氏が面白いのでいいです(笑)  のっけから犯人に対してとんでもないこともしてるし…(^_^;)

「気立てのいい娘」
 世間が鉱山主のアルバート・ラント卿が殺された事件の話でもちきりの時、 レジーは知り合いの看護婦の訪問を受ける。アルバート卿殺害の 犯人として逮捕された彼女の婚約者を救ってほしいというのだったが…。
 この事件の頃から警察に頼りにされ始めてしまったフォーチュン氏。本人一向に 面白くないようではありますが…。しかし女ってな怖いですな(^_^;) 気持ちは分かるけどね…(笑)

「ホッテントット・ヴィーナス」
 スコットランド・ヤード犯罪捜査部のローマス部長の頼みで、レジーは彼の妹が経営する女学校へ向かう。 2度に渡って生徒の部屋が荒らされるという事件が起こったというのだった。気乗りのしないレジーだったが、 校長室でとあるものを見つけて興味を抱く…。
 なんというか、ユーモアにあふれるお話ですね。フォーチュン氏が逃げ出したくなるのも分かります(^_^;)  けっこう好きです(笑)

「几帳面な殺人」
 休暇から帰ってきたレジーを待っていたのは、一部の会社の異常な株価高騰という 事件だった。政府関係者が秘密裏に情報を流しているらしいのだが、ローマスは犯人を特定できずに いた。実業家のキンボール氏か、その秘書のどちらかしか知りえない秘密だというのだが…。
 ちょっと長めのお話。どっちか一人が犯人に決まってるのですが、 身元不明の死体も発見されてなかなか事件の向かう先が見えてきません。動機が後付けっぽくて どうかと思うんですけど、無残な死体を見て怯えるローマスやレジーの荒っぽい運転とか、ミステリ以外のとこが なかなか楽しいです(^_^;) そしてフォーチュン氏の運命的な出会い。この顛末が 読めるのはもう少し先になりそうですね〜…。



「フォーチュン氏の事件簿」 H・C・ベイリー/永井淳 訳 (創元推理文庫 77.9.23)
 H・C・ベイリーの生み出した名探偵レジナルド・フォーチュン氏の活躍する短編集。7編収録
 収録作品……「知られざる殺人者」、「長い墓」、「小さな家」、「ゾディアックス」、「小指」、
「羊皮紙の穴」、「聖なる泉」


 フォーチュン氏ものを読むのは初めてなのですが、面白いですね〜。もともと医者だけどその鋭い推理力を買われて、 スコットランド・ヤードの犯罪捜査部顧問になったレジ―・フォーチュン氏。鋭い人間観察と深い洞察力で難事件を解決 してるけど、自分はあくまでも普通の人間だとひかえめに主張。時代は古いけど、事件の背後にあるものは古さを感じ させないです。フォーチュン氏ものはかなりたくさん(長編9と短編84ですか…)あるのですね。訳されてないなんて もったいない。初登場短編集はこちら。以下に短編の感想を一言…短いので全部。

「知られざる殺人者」
 婚約者のミス・アンバーと共に孤児院でのパーティを訪問したフォーチュン氏は、住み込みの女医が首をかき切られて 殺された現場に遭遇する。更にパーティに出席した子供の一人が毒殺されそうになる。そして少し前に起こった、結婚式の 前夜の青年が白亜坑から死体となって発見された事件。この3つの悪魔的な事件には何か繋がりがあるのか…。
 これはどちらかといったら、普通の小説に近いですね。犯人の狂気…というか、病んだ心は現代にも通じるものがあります。 怖いです。

「長い墓」
 人里はなれた場所で古代の墓の発掘をする考古学者とその助手を、何者かが妨害しようとしている。事件の捜査を 依頼されたフォーチュン氏は考古学者の家へとおもむくが、彼は次々に奇妙な発見をする…。
 事件はよくある話(もちろん、ミステリの中では)なのですが、雰囲気が好きです。しかしミス・ジョージが出てきた 辺りで、いくらあれだって警察も気付きそうな……(T_T)

「小さな家」
 隣の家の女の子が、姪の子猫を連れて行ってしまった。しかし隣人は家には女の子もいないし、猫も見ないという…。 警察が笑って相手にしなかった事件を捜査するうち、フォーチュン氏は隣家に隠された秘密を突き止める。
 これもなんだかぞっとするようなお話。そこまでしなくても、という…。隣人の犯罪そのものより、嫉妬が怖い(^_^;)

「ゾディアックス」
 ゾディアックス鉱山株が大暴落した直後、その社長アーサー・ビュアが不審な死を遂げる。その後何故か株価は 急上昇し、新聞は社長の死についての報道をぴたりとやめてしまう。裏に何かあると思っているフォーチュン氏の もとに、フランクリン・リーと名乗る怪しげな男が事件の相談に訪れた。依頼を断ったフォーチュン氏は、やがてその男が ゾディアックスの社長殺害の嫌疑をかけられていることを知る……。
 ビュア氏の死の真相は意外でした。まさに……と、あることわざを持ち出そうとして思いとどまる(^_^;) その後の 展開もひねってありますね。終わってからも、なんだか嫌〜な後味の残る事件…。

「小指」
 友人のベル警視の依頼で、ボーンハムで頻発している強盗事件の調査に乗り出したフォーチュン氏。ゴールズ チャイルド氏の館からダイヤモンドが盗まれ、近所に住むブラントが疑われているのだが…。
 どうも一筋縄ではいかない事件ですね〜。つまり……と事件を要約できないのがつらいところですが(^_^;)  フォーチュン氏に葉書を送った例の人が一番スゴイ。最初の放火事件の犯人の執念深さも怖いけど、このストーリーで 何が嫌ってもちろん……小指(T_T) うわぁー(@_@)

「羊皮紙の穴」
 フィレンツェに旅行中、街中で倒れた男を介抱したフォーチュン氏。ホテルへ戻った彼のもとにイタリア警察の ブリオスコが訪れる。彼が助けた男が、買ったばかりの古い聖書を盗まれたと訴えたのだ。男はイギリスの ブロス自動車の社長で、古い聖書を買いに専門家を連れてイタリアを訪れていたのだった。ブロス一家を 見張っていたフォーチュン氏とブリオスコだったが、やがて彼らの中に奇妙な動きが…。
 喜劇だと思ってたら悲劇で、でもやっぱり喜劇だったという(笑) 奥が深い上に、最後にはちゃんとオチもついてます……。

「聖なる泉」
 ふとした偶然から日曜新聞を手にしたフォーチュン氏は、母親が息子を殺害したという扇情的な記事を 見つける。南アフリカから帰郷したジョナサン・プラウトがその母親に殺され、聖なる泉と呼ばれている 泉に投げ込まれたというものだった。その記述に引っかかるものを感じた彼は、事件の捜査を始める…。
 あんな記事から事件の真相を見抜いたフォーチュン氏もすごいですが、それ以前に警察その他がいーかげん すぎるだけでは…(^_^;) 母親って……怖い(T_T) 



「死者の靴」 H・C・ベイリー/藤村裕美 訳 (創元推理文庫 2000.8.25)
 イギリスの美しい田舎町キャルベイの海で、少年の死体が引き上げられた。ガセージという名のその少年は、 地元警察と確執のある州警察のユーヴデイル警部と会っているところを最後に目撃されていた。殺人の 容疑者から依頼を受けたクランク弁護士は、助手のホプリーをキャルベイへ送り込み、事件の調査を任せるが…。 1942年。

 クランク弁護士シリーズは、これが7作目なのですね。小柄でふくよかで、甘いものに目がなくて、 いつも賛美歌を口ずさんでいて、何を考えてるのかよく分からない、初老の(?)クランク弁護士。 主人公というより、黒幕という感じです。
ホプリーや新聞記者のハウが町の噂やなんかを探り出しているうちは、どうなってるんだろうと すごく楽しかったんですけど、最後の辺でクランク自らキャルベイに乗り出してきた辺りから混乱 してきました。あなたは一体、何を、どうしたいのだ〜と、ホプリーでなくても思ってしまいます。 確かに正義はなされたのかもしれないけど、後味はよくないですね。目に見える結末が、本当に このとおりだったのかどうか疑わしいからなのかも。灰色な結末。でもこれがクランク弁護士の 望んでいたような状況だったのかな? 古狸っていうかなんて言うか、食えないお人です〜。 小さな町の土地を巡る争いなんて、この人にかかったら遊びみたいなものなんでしょう。賛美歌などを 持ち出してくるので偽善者っぽく見えちゃうんですけど(実際そうだったとしても)、この韜晦術には 妙に感心してしまいます。ほんとにもう…いいんでしょうか、世の中これで(^_^;) クランク弁護士の ことは特に好きにはなれませんが、時にはこんな人がいても面白いですね。近くにいるので なければ(笑)
他にどんなあくどいことをやっているのか(笑)、シリーズの別の作品も読んでみたいです。



「甘い毒」 ルーパート・ペニー/好野理恵 訳 (国書刊行会 97.1.20)
 サリー州のアンスティー・コート私立予備学校で、校長の姉に宛てて送られてきた チョコレートの小包が紛失するという事件が起こる。しかも、校長が 放置しておいた青酸カリの瓶も一緒に消えてしまったのだった。事態を重く見た校長は、 スコットランド・ヤードの副総監サー・フランシスとビール主任警部に調査を依頼する…。 ビール主任警部シリーズ7作目。1940年。

 シリーズ7作目ですが、これ以前の翻訳は出てません。しかも作者はほとんど 名前以外は知られてない人らしいですね。
 読者への挑戦まで挿入されてる本格ミステリ。チョコレートと毒が一緒になくなるという、 ミステリ好きには刺激的な出だし♪ …ですが、事件らしい事件が起こるのはだいぶ後。そのせいか ちょっとだらだらした感じがありますね〜。ミステリとしてはまぁきちんとしてるんですが、 ストーリーがぽろぽろくずれてる感じ(?)で、おまけになんか妙に文章が読みにくかったような。 (原文と翻訳どっちのせいか知りませんが…(^_^;)) 寄宿学校を舞台にしたミステリってけっこう 雰囲気が独特で、この作品もその意味ではけっこう好きなんですけど… 全体としてはまぁまぁという感じです。うーん、もっと初めの頃の作品を読んでみたいですね。 翻訳が出るまで(出るのか…?)待ちます。