ジェフリー・ディーヴァー作品  →公式サイト

海外のミステリ

ディーヴァー (ジェフリー) アメリカ 1950-
 汚れた街のシンデレラ (1989)ルーンシリーズ1  ハヤカワ文庫
 死の開幕 (1990) ルーンシリーズ2 講談社文庫
 死を誘うロケ地 (1992) ジョン・ペラムシリーズ1  ハヤカワ文庫
 ブラディ・リバー・ブルース (1993) ジョン・ペラムシリーズ2ハヤカワ文庫
 死の教訓 (1993) 文春文庫
 眠れぬイヴのために (1994) ハヤカワ文庫
 静寂の叫び (1995) ハヤカワ文庫
 監禁 (1995) 早川書房
 ボーン・コレクター (1997) リンカーン・ライムシリーズ1 文藝春秋
 コフィン・ダンサー (1998) リンカーン・ライムシリーズ2 文藝春秋
 悪魔の涙 (1999)  文春文庫
 エンプティー・チェア (2000)  リンカーン・ライムシリーズ3 文藝春秋
 青い虚空 (2001)文春文庫
 ヘルズ・キッチン (2001) ジョン・ペラムシリーズ3  ハヤカワ文庫
 石の猿 (2002) リンカーン・ライムシリーズ4文藝春秋
 魔術師(イリュージョニスト) (2003) リンカーン・ライムシリーズ5文藝春秋
 獣たちの庭園 (2004)文春文庫
 クリスマス・プレゼント (2005) (短篇集)文春文庫
 12番目のカード (2005) リンカーン・ライムシリーズ6文芸春秋
 ウォッチメイカー (2007) リンカーン・ライムシリーズ7文芸春秋
 スリーピング・ドール (2006)キャサリン・ダンスシリーズ 1文芸春秋
 ソウル・コレクター (2008) リンカーン・ライムシリーズ8文芸春秋
 ロードサイド・クロス (2009) キャサリン・ダンスシリーズ 2文芸春秋


「汚れた街のシンデレラ」 ジェフリー・ディーヴァー/飛田野裕子 訳 (ハヤカワ文庫 94.8.31)
 レンタルビデオ店で働くルーンは、ある日貸し出したビデオを回収しに、顔なじみの老人 ロバート・ケリーのアパートへ向かう。しかしアパートには警官が集まっており、ケリーは何者かに 射殺されていた。「マンハッタン・イズ・マイビート」という映画のビデオを借りるのだけが 楽しみだったケリーを、一体誰が、なぜ殺したのか? ビデオに何か隠された秘密があるのでは?  ルーンはほんの好奇心から、ケリー殺しの犯人探しをはじめるが…。

 初期の作品なので以後と比較するとアレなんですけど(^_^;)、 これはこれで楽しい作品です。映画が好きな人だったらもっと楽しめるのかも。けっこう読みやすいストーリー。 時々出てくるルーンの大ボケぶりが笑えます。“浦島太郎”の物語の教訓とか。ディーヴァ−の 登場人物って、わき役でも心に残るんですよね。今回はひっつき目(?)の刑事、マネリが妙に 忘れられません。しかし、やっぱりレンタルビデオ店の店員さんって、お客さんの借りたものから いろいろ想像されるんでしょーね(^_^;)
 しかしやっぱり最後の二転三転のどんでん返しがいいですね〜。この人がこんなことを、という驚きも かなりありますし、読んで損はない作品です♪ 2作目『死の開幕』へ続きます↓



「死の開幕」 ジェフリー・ディーヴァー/越前敏弥 訳 (講談社文庫 2006.12.15)
 ドキュメンタリー制作会社に勤めるルーンは、会社へ向かう途中ポルノ映画館の爆破事件に遭遇する。 「イエスの剣」と名乗る犯行グループが起こしたその事件に目をつけた彼女は、 ちょうど映画館で上映中だった映画の女優シェリー・ロウのドキュメンタリーの制作を始めた。 その一方で、ポルノ映画館ばかりを狙った爆破事件が相次いで起き、ルーンの周辺にも不穏な空気が 流れ始めていた…。ルーンシリーズ2作目。1990年。 本の詳細

 シリーズ2作目♪ お読みになる際は1作目からどうぞ。 前作ではレンタルビデオ店の店員だったルーン(20歳くらいらしい)ですが、 映画の製作をしたくて制作会社に就職。正直前回の諸々は忘れ去ってますが(^_^;)、ルーンの 突拍子もない性格は変わってないかな。あちこちに勝手に入り込み、身分証明書を偽造するわ 泥棒まがいのことはするわ、やりたい放題(^_^;) だからもちろん危険な目にあうけど(って前回もそうだったけど)ぜんぜん 懲りてません。一般人が主人公ですから犯罪捜査どっぷりという感じではなく、ルーンの撮ってる ドキュメンタリーも絡めつつ、彼女の周りの人たちも絡めつつ、わりとゆっくりな展開です。 かなり前の作品なので現在のディーヴァー作品と比べたら酷ですけど、 あれもディーヴァーならこれもディーヴァー、ってことで(笑) 翻訳も現代風で読みやすいし、 とにかく基本的に作風が好きなんで、かなり良かったです。読めれば幸せ(爆)
 3作目は翻訳されたら読みます。どのシリーズでも、やっぱディーヴァーは面白い♪(…贔屓目(^_^;))



「死を誘うロケ地」 ジェフリー・ディーヴァ―/飛田野裕子 訳 (ハヤカワ文庫 1995.7.20)
 新作映画のロケ地を探すため、ぺラムは相棒のマーティとともにクリアリーという田舎町を訪れる。 しかし何故か住民たちからの嫌がらせが相次ぐ。ある日、スリップした車にはねられて入院していた ぺラムのもとへ、マーティが車の爆発事故で死んだという知らせが届く。現場から大量の麻薬が 発見されたと聞き、ぺラムは彼の死因に疑問を抱いた。この事件のせいで映画会社をクビになった ペラムは、単身で調査に乗り出すが…。

 雰囲気はとても好きですね〜。平和で退屈な田舎町、よそ者と、よそ者を拒む人たち。登場人物に とても好感の持てるのが、ディーヴァ―の特徴だと思うのです。主人公のペラムとサムの友情が ほのぼのしていて好きです。どんどん読めてしまうのもいい、のですけど、やっぱり場面転換が 頻繁で唐突なので、ちょっと混乱してしまうかな(^_^;) ペラムも捜査とあまり関係のないことに 熱心になったりしてるし(笑)。でも犯人は意外でした…。最後の最後で、今まで考えてたことが ひょいっとひっくり返される感じ、いいです。技です。犯人のものの考え方が怖い。 2作目『ブラディ・リバー・ブルース』に続きます。



「ブラディ・リバー・ブルース」 ジェフリー・ディーヴァー/藤田佳澄 訳(ハヤカワ文庫 2003.1.31)
 ロケーションスカウトの仕事をしているジョン・ペラムは、映画「ミズーリ・リバー・ブルース」の 仕事でマドックスの町へ来ていた。そこでビールを買いに行ったペラムは、後に起こる殺人事件の 犯人の顔を目撃したと思われてしまう。被害者が重要な事件に関係していたため、ペラムは警察やFBIに しつこく証言を求められ、殺人犯にも命を狙われることに。やがて仕事にも影響が出始め、 彼は窮地に追い込まれる……。ジョン・ペラムシリーズ2作目。1993年。

 『死を誘うロケ地』(あるいは『シャロウ・グレイブズ』)に続く、シリーズ2作目です。 やっぱりディーヴァーはいいですねぇ(ToT)
 このシリーズは他の作品(たとえばライムシリーズ)ほどものすごいどんでん返しもなければ、 主人公が一般人なせいもあって事件も地味で、比較的(あくまで比較的)落ち着いたシリーズ なんですよね。ジェットコースターは期待しない方がいいですが、これはこれでじんわりと来る良さが あります(*^^*) 
 舞台はミズーリ州マドックス。寂れていく一方の町で、ヒット映画を撮った監督の 次の作品という微妙な映画を撮るために、ペラムは同行します。でも、映画ってこんない〜加減に撮られて いるものなんでしょうか?(^_^;) 
 せっかく買ったビールが突然開いた車のドアでめちゃめちゃになり、おまけにその車に 乗ってたのは後に殺人犯になる男だったから、さあ大変(笑) マドックス警察やらFBIやら、 そして当の殺し屋にも追いまわされ、犯人に撃たれた警官からは罵倒され…。 ペラムの悲劇は、実は何も……ということでしょうか(カバーの背に書いてあるけど 伏せます(^_^;) 事件は遅々として進みませんが、映画の話やペラムとバフィット巡査の話とか、 そういうのだけで十分楽しいです。読んでる間は楽しかったですが、この結末…う〜ん……微妙 です(^_^;) でもやっぱり最後にディーヴァーらしい"ずるさ"がほの見えます(*^^*)
 この作品、ちょとハードボイルドっぽいですね。なんだか他の2作とペラムのイメージが 違う気がします。翻訳のせいかな〜。これ3作とも翻訳者が違うんですよね。 ライム・シリーズに押されて憂き目を見ているというイメージがいやがうえにも強まりますが…(^_^;)  もっとも、米国でも1,2作目は立て続けに出たのに、3作目『ヘルズ・キッチン』までは 8年も開いてます。そのせいもあるんでしょうか、1、2作目と3作目でも全然印象が 違います。でも、これはこれでなかなか落ち着いた、いい雰囲気です。読まれていない方は やはりまず1作目『死を誘うロケ地』(あるいは『シャロウ・グレイブズ』) からどうぞ。日本での出版順でなく、シリーズの順番に。 続きは3作目『ヘルズ・キッチン』ですが、 個人的に『シャロウ・グレイブズ』に続きます(-_-) そのうちに。



「眠れぬイヴのために」 上・下 ジェフリー・ディーヴァー/飛田野裕子 訳 (98.5.15 ハヤカワ文庫)
 精神病院を脱走したマイケル・ルーベック。彼は過去に裁判で自分に不利な証言をしたリズを 狙っているのか…? 彼の主治医コーラ−、元警察官で賞金稼ぎのトレントン・へック、そして リズの夫オーエンが、それぞれの目的を胸にルーベックを追う。嵐の夜、追いつめられてゆくリズ。 全ての元凶となった、インディアン・リープ事件の意外な真相とは…?

 ラストは目が離せないけど、そこに至るまでがちょっとじれったいかな…。でも、ストーリーは すごくいいです。今まで思い込まされてきたことが、ラストで突然覆される爽快感。真犯人(というか、 真の悪人)の意外さ。この辺は作者の面目躍如というか、ウデの冴えを見せつけられますね♪  ドクター・コーラーがマイケルを捜すシーンの、“いったいどこにいるんだ、マイケル。壊れた目を したきみは、今どこに。”という一文が妙に気に入ってしまったです。この辺から、気付いても よかったのかもしれないけど、気付くわけがないのです(^_^;)  コーラー氏は最初から知っていたのかもしれないけど。読んだ後にはほのぼのしたものが残リます♪ 



「静寂の叫び」 上・下  ジェフリー・ディーヴァー/飛田野裕子 訳  (早川文庫)
 三人の脱獄囚が聾学校の生徒と教員を人質に、閉鎖された食肉加工工場に立てこもる。ポターは FBI危機管理チームを率い、根気強く人質解放交渉を行うが…。

 人質解放交渉の息詰まるような雰囲気がひしひしと…。しかし、あんなに邪魔の入るものなの でしょうか? チャールズ・バッド氏気に入ってたのに…。スティルウェル氏の モップ頭も忘れがたいですし、記憶に残るキャラクターが多いですね。いつでも直接取引役を買って出る スティーヴィー・オーツ氏や、人質のメラニー。う〜ん、でも、ミスディレクションという 観点だけからすれば、『眠れぬイヴのために』の方が強烈だったかな。今回も意外 でしたけど。ホントに、ディーヴァーの作品は一作ごとにすごくなってます。



「監禁」 ジェフリー・ディーヴァ−/大倉貴子 訳 (早川書房 98.2.28)
 謎の男アーロン・マシューズはセラピストになりすまし、泥酔して事件を起こした十七歳の少女 ミーガン・マコールを誘拐する。すべては、神の意志に基づくと信じて…。
 彼女の誘拐は家出に偽装されるが、両親であるテイトとベットの元夫婦は疑問を抱く。彼らは 友人の刑事やミーガンの恋人などと共に、非公式の捜査を開始するが…。


 読み出したら最後の方なんて止まりませんでした。アーロンはただの狂信者、と思わせて おいて、実はその裏には…(なるほど)…だし、テイト最低の父親〜、だと思っていたら、 実は…(感動しました(T_T))…だし、教会の中をうろつく謎の老人が実は…(これ驚いた)… だったり…。次から次へと、これでもかと「実は」がでてきて、面白い部分がみんな物語の核心に 触れるので、何も言えなくなってしまう(笑) でも捜査にかかわって真相に近づいた人たちが次々に 犯人の犠牲になっていくところや、監禁されたミーガンの恐怖に満ちた孤独な戦いは、すごく はらはらしました。ディーヴァーの作品にはいつも必ず心に残るキャラクターがいるのですが、 今回は、コニー刑事と、回想シーンにしか登場しないつり好きのテイトのお父さん(名前忘れた… ) かな。最後洞窟の中のシーンは、ちょっと(かなり)偶然かな〜とは思いますが、ラストは ほのぼのしていていいです。最初からもう一度読んだら、どこでどんな風に作者に騙されたかが よく分かって、きっと面白いと思います。



「ボーン・コレクター」  ジェフリー・ディーヴァ−/池田真紀子 訳 (文藝春秋)
 “世界最高の犯罪学者”リンカーン・ライムは、ある事故によって四肢麻痺になリ、 安楽死を願っていた。そんな彼の元に、不可解な誘拐殺人事件の知らせが届く。犯行現場に 次の殺人の手がかりを残してゆくボーン・コレクターの挑戦に、ライムの犯罪捜査への情熱が 再び目覚めた。彼の五感となり、殺人現場の鑑識を嫌々引き受けていたアメリア・サックス巡査も、 いつしか謎の解明に引き込まれてゆく。次の犯行現場はいったいどこなのか? 真夏のニューヨークを 舞台に、一刻を争う追跡が続く。リンカーン・ライムシリーズ第1作目。1997年。 本の詳細

 いいですよね。このスピード感。まさにジェットコースター・サスペンスという名が ぴったりです。息つく暇もなく、次々に現れる謎とそれがぱたぱたと解けてゆく快感。 気が付くとアメリアと同じ視点で犯罪現場を見ていて、イヤホンからライムのとんでもない 指示が聞こえてくるような気になってきます。非常に心に残るキャラクターもたくさん出てきます。 介護士のトムも良い味出してます。難を言えばきっと、面白すぎる、のでしょう。読み終わるのが もったいないと久々に思った作品です。2作目『コフィン・ダンサー』に続きます。



「コフィン・ダンサー」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (文芸春秋 200010.10)
 数年前にある事故で四肢麻痺となった犯罪学者リンカーン・ライム。民間の人間ではありながら 警察の捜査に協力している彼の元へ、ニューヨーク市警のセリットーとバンクス両刑事が訪れた。 ある会社の不正行為の証拠隠滅を目撃した証人を消すために、“コフィン・ダンサー”と呼ばれる 殺し屋が雇われたという情報が入ったのだった。ライムは優秀な鑑識官でもあるパートナーの アメリア・サックス巡査とともに、コフィン・ダンサーの行方を追う。証人たちが大陪審で証言を するまでの時間は、残り45時間…。リンカーン・ライムシリーズ第2作目。1998年。

 前の事件(『ボーン・コレクター』)から1年半後。ライムやアメリア・サックスをはじめ、 おなじみのキャラクターが活躍してます♪ 今回は殺し屋のターゲットが飛行機会社の人なので、 微細証拠物件の捜査の面白さに加えて、空の恐怖も味わえます。これがまた…すごいです。それでも、 ライムたちと犯人との壮絶な騙しあいも、個人的に慣れてきたせいか、そんなに目まぐるしさを 感じませんでした。むしろその方がありがたいですが(^_^;) 今回は人間模様もちょっと微妙に なってるし、そのせいもあるのかも。でも、最後のページへたどり着くまでには数え切れないほど 騙されるし、次に何が起きるか分からないという緊張の連続なのには変わりがありません。騙されない ぞ!と思って何もかも疑ってかかってるつもりでも、もう、これでもかと…。いろんなシーン (伏線といいますか)が出てきますけど、無駄なところなんて一つもない。最後には謎を残さずに 全部一つにすっきりとまとまるんだから、当然といえば当然なのかもしれませんが、やっぱり すごいですね。
 冷酷に人を殺す暗殺者と、感情を交えることの許されない鑑識官の精密な世界を描いていても、 登場人物の体温が感じられるのがいいのです。最後に必ず登場人物のイメージが鮮明に残ります。 ライムとサックスはもちろん、しわくちゃのセリットー、まずいタイミングでまずいことばかり 言ってるバンクス、“ベビーシッター”のローランド、そして介護士のトム。……読まれれば分かると 思うので(たぶん…)誰とは言いませんが、今回彼があんな目にあってしまったのがすごくショック でした。だからサックスと同じくらい怒りました(^_^;) もう登場しないのかな〜。 好きだったのに…。というわけで、『エンプティー・チェア』に続きます♪



「死の教訓」 上・下 ジェフリー・ディーヴァー/越前敏弥 訳 (講談社文庫 2002.3.15)
 半月の夜、ニューレバノン市の森の池のほとりで、暴行を受けた女子大生の死体が発見された。 ムーン・キラーと名づけられた犯人の出没に、市民は震え上がる…。 ビル・コード捜査主任は捜査を開始するが、彼自身大きな問題に巻き込まれることになる。そして ついに、彼の家族にまで犯人の魔の手が…。1993年。

 これは順番で言えば、『眠れぬイヴのために』(1994)の前、あの(?)『ボーン・コレクター』より4年前に 出た作品です。でも、だからといってこの作品を軽く見ることなんてできません(^o^) 面白いです。 いままで翻訳されなかったのがもったいない。確かに最近のようなジェットコースター的な 目の回るような展開はほとんどありません。むしろちょっと回り道も多く、ここはいらないんじゃない かっていうところも多少…あるかもしれませんが、私としてはそのくらいの方が好きです(^_^)
 展開はちょっと重め。犯人追跡だけでなく、ビル・コードの家族の問題といってもいいくらい。 学習障害を抱えた娘セアラと家族のかかわり、コード自身の過去の問題。彼が事件に夢中に なればなるほど、周りでは何かが壊れてく……。事件だけ追ってたらこれ、1冊で終わってたかも(^_^;)  後半はもう目が離せません。見えたと思ったら手の中をすり抜けてゆく犯人。サスペンスとしては 申し分なしです♪ がっ、本格ミステリファンからは、ちょっと文句の出そうな……(^_^;)
今回もディーヴァーのキャラクターはいい味出してます♪ コードとクレスギの奇妙な友情も いいですね(^_^) とにかくホントに楽しめた1冊…じゃない、2冊でした♪



「悪魔の涙」 ジェフリー・ディーヴァ―/土屋晃 訳 (文春文庫 2000.9.1)
 大晦日の午前9時、大勢の人々が行き交うワシントンの地下鉄の駅で乱射事件が発生し、 多数の死傷者が出る。まもなく犯人から市長あてに脅迫状が届く。正午までに二千万ドル 用意しなければ、午後4時から4時間おきに無差別殺人を繰り返すという内容だった。刻一刻と 迫る期限。しかし思いもかけないアクシデントが…。犯人を追うための唯一の手がかりは、手書きの 脅迫状のみ。FBIは数年前に引退した筆跡鑑定の第一人者、パーカー・キンケイドの出動を 要請する…。1999年。 本の詳細

 誰が名付けたか、ジェットコースター・サスペンス。最後の最後の最後まで目がはなせません。 ホントにすごいです♪ トーマス・ジェファーソンを尊敬する文書検査士パーカー・キンケイド。 離婚した後二人の子供と暮らしていますが、子供を危険にさらしたくない、そしていいかげんな母親に 子供の監護権を奪われたくないという一心から、FBIの要請を拒みます…が。筆跡鑑定というのは すごいですね。この本のタイトルも、最初は少々思わせぶりだな〜と思ってたのですけど、“悪魔の涙” というのは筆跡鑑定の上で重要な役割を持っていて、事件を解く鍵にもなってるのです。
 たった一日のお話なのですけど、4時間ごとにどこで起きるか分からない惨劇を阻止しようとする FBI&キンケイドと、その裏をかく犯人との息詰まる戦いがなんともいえません。というと何か 『ボーン・コレクター』を彷彿とさせるというか、なんというか、と読みかけは思ったのですけど、 さにあらず。計算されつくした物語が、二転三転、四転五転(笑) ここまで目がはなせなくて気が 抜けなくて息もつけないと、少々疲れますが(贅沢な(^_^;) 今回も魅力的で印象深い登場人物が たくさん。キンケイドとどこか似ているFBIのマーガレット・ルーカス、“奇跡を起こす男”ケイジ、 熱血刑事レン・ハーディ、ワシントン市長のケネディもなかなか味のある人…と挙げてゆくときりが ない。あ、『ボーン・コレクター』でおなじみのリンカーン・ライムや介護士のトム、セリフは ないけどアメリア・サックスもゲスト出演(?)してます〜。懐かしい。もちろん、読んでなくても 大丈夫。
 個人的に好きなシーンは、事件とはそれほど関係ない、キンケイドとルーカスが肉筆について 語り合うところ。筆跡は精神の指紋なのだと語るキンケイドの言葉に、彼女自身の事情から ルーカスが……というシーン。確かに今は、自分の手で字を書くということが少なくなってきて ますね。金釘流の私には、まあ喜ばしいことでもあるのですが。その人にしかできない、という 数少ないことのひとつが消えつつある…。
 一章ごとに、少しずつ砂の減ってゆく砂時計の写真と、現在時刻を示すデジタル時計の 写真が挿入されていて、そんな演出も緊迫感や焦燥感を高めてます。タカのパズルが 少々くどいかな、ですけど、最後にはしっかり忘れられなくなってます。



「エンプティー・チェア」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (文藝春秋 2001.10.15)
 手術のためにノースカロライナ州の病院を訪れていたリンカーン・ライムとアメリアの元に、 パケノーク郡の保安官ジム・ベルが訪れた。ベルは最近起こった二人の女性の誘拐事件に手を 焼いており、ぜひライムに協力してほしいと言う。犯人と目される16歳の“昆虫少年” ギャレット・ハンロンは、誘拐したばかりの女性リディア・ジョハンソンを連れて逃走中。 彼らの残した証拠を元に、ライムの追跡が始まる……。リンカーン・ライムシリーズ第3作目。 2000年。

 シリーズ3作目は、前2作と趣をちょっと異にしてますね。まず舞台が違う。四肢麻痺の 改善のための手術を受けるべく、ライムと介護士のトム、そしてアメリアはノースカロライナ州に。 隅々まで知り尽くしたニューヨークが舞台の犯罪ではないために色々やりにくい上、犯人には 翻弄されっぱなしです。しかも今回、アメリアは途中からライムに追われる身となってしまいます〜!  その辺のフクザツな事情は読んでいただくとしても、やっぱり読ませる作家ですよね〜(^_^)  二転三転のストーリー。最後に明かされる、意外な真相に次ぐ真相(言い方が変だけど、そういう 感じなので(^_^;))
 とはいえ、慣れてきたせいかけっこう先が読めるんですよねぇ〜(^_^;) しかもこういう真相の 事件は、私の趣味としては素直に受け入れがたいところがある〜(-_-;) しかしそれはま、 好きずきとして、誰が読んでも楽しめることはまず間違いないですね。シリーズを通して読んでると 特に、ライムとアメリアの師弟対決はドキドキしますね〜。シリーズものだからといって キャラクターに頼ってないし、逆にこんな風に見せてくれると嬉しいです。今回アメリアの代わりに ライムの助手をするベン・カーの成長も見ものです♪ 思わぬところで懐かしいキャラクターも。 シリーズものとは全然関係ない『静寂の叫び』からも元FBI捜査官のアーサー・ポターなんていう 懐かしい名前が出てきたりして、ディーヴァーファンにはたまらない部分があります♪(でも誰も 気付かないんだろうな(^_^;)) 「エンプティー・チェア(空っぽの椅子)」というタイトルが、 また実によいです。
 第4作『石の猿』に続きます。



「青い虚空」 ジェフリー・ディーヴァー/土屋晃 訳(文春文庫 2002.11.10)
 護身術のウェブサイトを開いていた女性ララ・ギブソンが殺されるという事件が起こる。 犯人は彼女のパソコンをハックして、彼女の個人的な情報を盗み出していた。犯人のユーザー・ ネームは“フェイト”。カリフォルニア警察コンピューター犯罪課主任のアンディ・アンダーソンは、 フェイトの並外れたハッキング技術に対抗するため、国防総省のコンピュータをハックした罪で 受刑中のワイアット・ジレットに協力を求める。しかしその間にも、フェイトは次の標的を定めて 動き始めていた…。2001年。 本の詳細

 ノン・シリーズです。息づまる追跡がコンピューターの中の世界……青い虚空(ブルー・ノーウェア)で 繰り広げられます。すごいです。いいですね〜(ToT) 犯人の“フェイト”は本名も素性も 分かっているのに、捕まらないところがいかにもこういう犯罪らしい。 天才ハッカーの犯人を追うのがこれもまた、国防総省のコンピューターをクラックした罪で 服役中のジレットというのがいいです(^_^) ジレットとカリフォルニア警察の面々、特にフランク・ ビショップ(いつもズボンからシャツがはみ出てる)との掛け合いが最高♪ ジレット自身の葛藤も コンピューター相手の殺伐とした事件に温かみを添えてますね。やっぱり主役はコンピューターの 外側の人間たちです(*^^*)
 それにしても、まったく、次から次へと起こる事件&事故に、息つく暇もないです。現実との境を失う ところまでコンピューターの世界にのめり込み、自分を偽って、他人の生活に入り込んでくるハッカー……。 こんなこともできるのかと思えば怖いけど、これもまた現実になろうとしてるのかも。しかしフェイトの パートナー“ショーン”の正体って…(-_-;) でもここまで読んでくると妙に納得してしまえるのが怖い。 そして、最後の最後で明かされる、もっと心温まる真実。絶対騙されないぞ!と思いつつ ディーヴァーを読んでいて、こんなふうに裏切られるのも楽しい(笑) とてもとても楽しくて、 そして、すごい作品でした(*^^*)



「ヘルズ・キッチン」 ジェフリー・ディーヴァー/澁谷正子 (ハヤカワ文庫 2002.12.31)
 映画のロケーションスカウトをしているジョン・ペラムは、ドキュメンタリー映画の撮影のため ヘルズ・キッチンを訪れて取材をしていた。だが、72歳の老女エティ・ワシントンに会いに向かった ペラムを猛火が襲った。彼女の住むアパートが放火されたのだ。難を逃れた二人だったが、エティに 放火の容疑がかけられ、逮捕されてしまう。彼女の無実を信じるペラムは調査をはじめる。だが、 彼が相手にするのは凶悪な放火犯だった…。ジョン・ペラムシリーズ第3作。2001年。

 原書では、ディーヴァーはこのシリーズをもう一つの名前、ウィリアム・ジェフリーズ名義で書いてるんですね。そういうことも あってか、ディーヴァーの他のシリーズとはやや趣きが異なっています。サスペンスには違いありませんが 二転三転の展開はなく、もっとゆっくり、じわじわ来るものがあります〜。
 こういうゆっくりした展開もいいです♪ いや、むしろ私はこっちの方が落ち着いて楽しめます(爆)  ニューヨークの片隅、ヘルズ・キッチン。古い町が取り壊され、どんどん開発が進むこの町で、ペラムは いろんな人に会います。エティをはじめ、路上生活をしている少年イスマイル、キューバ系のギャングのコーコラン、アイルランド系 ギャングのラミレス、青少年福祉センターのキャロル、弁護士のベイリー、不動産王のマケナー……。 みんなヘルズ・キッチンの住人で、それぞれの世界をうまく代表してる、魅力的な(?)人たちです。 ゆっくり、とはいえそこはディーヴァー、ストーリーは申し分ないですね〜。放火魔との対決も いいけど、私はペラムとヘルズ・キッチンの住人とのふれあい(笑)が好きです。これは ある意味伏線でもあるのでしょう。あの、驚愕のラスト(というか、事実)のための…(*^^*)
 1作目の『死を誘うロケ地』(1992)(またはリライト版の『シャロウ・グレイブズ』)、  2作目の『ブラディ・リバー・ブルース』(1993)、とは主人公こそ 同じですが、前作にはほとんど触れてませんので、読んでなくてもまぁかまいません。 でも、ペラム自身の過去に起こったある出来事が詳しく書かれてるので、やっぱり順番に読んだ方が、 これだけでなく前作も楽しめますね。1、2作目が書かれてからかなり時間がたっているので、 この機会に(?)ディーヴァーの成長ぶりを比べてみるのもよいでしょう(^_^;) 1作目は リライト版も出ていますから、元のと比べるのも面白いかも。ああ、でもやっぱりディーヴァーは ホントにいいですねぇ〜(ToT) 
 日本では翻訳の順番がめちゃめちゃでしたが(怒)、これがシリーズ完結作。初めて読まれる方はこの作品を最後にどうぞ♪



「石の猿」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (文藝春秋 2003.5.30)
 中国からの不法移民を乗せた福州竜丸には、十一人の殺人容疑で国際指名手配されている蛇頭の クワン・アンことゴーストと呼ばれる人物が乗っていた。手術を目前に控えたリンカーン・ライムは、 船の居所を突き止めるべく、移民帰化局とFBI、ニューヨーク市警の合同捜査に駆り出される。 だが、追い詰められたゴーストは意外な行動に出る。責任を感じたライムは、全面的に 捜査に協力することに。移民たちを追うゴーストと、ゴーストを追う捜査班の戦いが 幕を開ける…。2002年。 本の詳細

 とぼけた表紙にへなへなと力が抜ける(笑)、リンカーン・ライムシリーズ4作目です♪ まぁ 単独でも十分読めますが、やっぱり前の作品から順番に読んだ方がいいです。
 やっぱりディーヴァーはいいですね〜(ToT) 面白かったです♪ 残虐な犯人を捕らえるために またしても捜査に駆り出されたライムと、もちろんアメリア、しわくちゃのセリットーと、FBIのデルレイという いつものメンバーに加え、今回は帰化移民局の面々も。中国からの不法移民という複雑な問題が絡んでます。 もっと言えば、中国とアメリカの問題…。話が大きくなるのは好きではないんですけど、そこは ディーヴァーらしく(?)ちゃんと血の通った話になってます。次々に人が死ぬしアメリアも危険な目にあうけど、 不思議と読んでてホッとするお話。中国の風習や習慣(漢方や風水まで)がたくさん 盛り込まれているせいもあるのかな。楽しいです。ここで名前を書くわけにいかない(でも 読めば誰のことかすぐ分かる)あの人の存在が大きかったかも。はぁ……もうパターンなので 覚悟していたとはいえ、やっぱ酷いよ〜(ToT) "石の猿"は、日本人にも馴染み深い猿なのですけど、こんな風に使われるなんて。
 四肢麻痺を改善するための手術を受けようとするライムと、ある悩みを抱えてるアメリアの二人も、 もう言葉はいりませんね。本当にいい雰囲気の二人です。いいです(T_T) 前3作に比べると、 わりと落ち着いた印象の作品でした。けっこう先も読めるし…まぁ私が慣れてしまっただけ なのかもしれませんが、このくらいの方がのんびり楽しめて好きです。ラストも、こんな展開に なろうとは…。大技よりも小技がキラリと光る作品という感じかな(*^^*) 読み出したらやっぱり 止まりません。5作目『魔術師(イリュージョニスト)』へ続きます♪



「魔術師(イリュージョニスト) ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (文藝春秋 2004.10.15)
 ニューヨークのマンハッタン音楽芸術学校で、一人の女性が殺された。さらにイースト・ヴィレッジで男性が…。 二つの事件に共通するのは、被害者がマジックショーの演目どおりのやり方で殺されているということだった。 ライムたち捜査班は魔術師見習のカーラの協力のもと犯人を追うが、犯人の仕掛ける巧妙なミスディレクションと早変わりに 翻弄される。その一方で、「愛国同盟」と称する武装組織の指導者の裁判を受け持つ グレイディ地方検事が狙われている事件の調査もすることになるが…。
 四肢麻痺の犯罪学者リンカーン・ライムシリーズ第5作目。2003年。 本の詳細


 シリーズ5作目、おなじみリンカーン・ライム&アメリア・サックス他の面々が追うのは、魔術やイリュージョンの手管に長けた殺人犯。 できれば順番にお読みください。
 も〜ホント楽しい作品でした♪ マジックとミステリって、共通点が多いですよね〜。魔術師の仕掛ける誤導(ミスディレクション)と 作者の仕掛けるミスディレクション、いかにして観客&読者をだますか…。今までのディーヴァー作品に だってホントそういうの多いんですが、犯人がマジックのトリックを使ってやるとなると、また一味違います。 ショーの演目通りの殺人、早変わりでくるくると姿を変えてしまう犯人。マジックって恐ろしい…(^o^;)
 ライムとサックス、介護士のトムやしわくちゃのロン・セリットー刑事(ダイエット中…)他、 おなじみの面々に加えて、魔術師見習のカーラもいい味出してます。そういえばサックス以外にメインの 女性キャラってこのシリーズあんまり出てきませんでしたね。別シリーズの『悪魔の涙』からの ゲスト出演(?)なんかもちらっとあったりして、ディーヴァーファンには嬉しいサービス♪  今回アメリアは個人的に挑戦することがあって、そちらもすんなりとは行かずにやきもきさせられます。 「愛国同盟」なんていう妙な団体も絡んできて、なんだか錯綜してくるんですが…。
 魔術師のどんな小さな手の動きにも、そして作者の書くどんな何気ない言葉にも気を抜けないという緊迫感。 ちとやりすぎかな〜ってところもないでもない気もしますけど(^_^;)、それもきっと観客&読者を 楽しませようという熱意の表れ(笑) この大掛かりなイリュージョンを見ている間は誰を信じてもいけないし、何があっても驚いてはいけません♪  原題「The Vanished Man」(消された男)もなかなか意味深。
 幕が下りて現実に引き戻されるのが惜しいような作品でした。真のイリュージョニストは ディーヴァーなのかも。最後にちらっと出てきた変な事件も、なんか気になって仕方ないんですが(^_^;) 
 次はシリーズ6作目、『12番目のカード』に続きます。



「獣たちの庭園」 ジェフリー・ディーヴァー/土屋晃 訳 (文春文庫 2005.9.10)
 1936年7月アメリカ、ニューヨークの殺し屋ポール・シューマンは、 過去の経歴を抹消する代わりにナチス政権下のドイツでとある高官の暗殺をするという 取引を持ちかけられる。ベルリンオリンピックの記者として船に乗り込み、かつて祖父が住んでいた ドイツへと向かうシューマン。だがその船上でも不穏な出来事が相次ぎ、 ベルリンで現地工作員と落ち合う際にも殺人事件に巻き込まれ、その容疑者として地元警察に 追われることになってしまう…。ノンシリーズ、2004年。 本の詳細

 ディーヴァー初の歴史サスペンス(と帯はうたってますが、ちょいとばかり違う気もするんですが)。 舞台は1936年のナチスドイツ。ベルリンオリンピックを(そして第二次世界大戦を)前にして、 妙に不安定でキナ臭い空気が渦巻いています。おまけに主人公はタフな殺し屋。突拍子もない 設定に見えるんですが、この状況と人物をこともなげに切り回している(ように見せる)辺りはさすがです。
 あんまり詳しいこと書くと面白くないんで中身には触れませんが、ナチスでもなんでもほんっと 平和な時なら冗談かって思うよなことを大真面目にやってたんですよねぇ。神の誤りを正す…その存在さえ疑いたくなるような世界で。 シューマンの選択は少し安直な…というか分かりやすすぎというか…方向へ流れてしまってる気もしますが、まぁ、こうするしか ないのかなぁ。嫌いじゃないですし、決して皮肉でなくなんだか楽しそうなのでいいですけど(いいのか?)
 全体としては、細かい部分でどんでん返しがたくさんあって、 これだけの長さでも全然飽きさせません。地元警察のコール警視とヤンセンもなかなか良いですし、 ヴェバーもいい味出してます。重苦しい空気が行き場もなく淀んだ中、彼等の存在がホント息抜きになります。
 作品もすごく面白いんですけど、慣れないことに手を出して失敗、という感じが全然ないのが ファンとして個人的に嬉しいです(ホッとしてる、か…(^_^;)) 執筆準備に2年も費やしたということですが、 調べたことてんこ盛りって感じさせないのがやっぱ腕なんですよねぇ。ドイツが舞台だと ディーヴァー読んでるって気があんまりしなかったですが(笑) とにかく、本当に楽しめました♪



「クリスマス・プレゼント」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子、他訳(文春文庫 2005.12.10)
 サスペンスの名手ディーヴァーの初短編集。16編収録。2005年。本の詳細
 収録作品…
  「ジョナサンがいない」、「ウィークエンダー」、「サービス料として」、「ビューティフル」、「身代わり」、
  「見解」、「三角関係」、「この世はすべてひとつの舞台」、「釣り日和」、「ノクターン」、「非包含犯罪」、
  「宛名のないカード」、「クリスマス・プレゼント」、「超越した愛」、「パインクリークの未亡人」、
  「ひざまずく兵士」


 短篇も見事などんでん返しの数々。どんでん返しがあるのはもう大前提なんで、その方向について あれこれと不穏な想像をめぐらすのが楽しいです(^_^;) 短めの作品ばかりなので、テンポよく読めます。 でもこういうタイプの作品ばっかりだと、16篇はちと疲れるかな〜(贅沢か…)。ひとつひとつの感想は、 ちょっとした言葉の端からネタバレしかねないので書きません。 あらすじ書くのさえ微妙な作品もありますので(^_^;)  書き下ろしの「クリスマス・プレゼント」は、四肢麻痺の犯罪学者リンカーン・ライムとアメリア・サックスの 活躍するシリーズです♪

 好きな作品は…高級住宅地に診療所を構えるセラピストと、夫に殺されると訴える患者との奇妙なストーリー「サービス料として」、 美しく生まれついてしまった女性の悩み「ビューティフル」、 ひょんなことから知り合った男性に、浮気をしている夫の殺害を依頼した女性の顛末「身代わり」、 彼女が自分に隠して付き合っている男を消すため、ピートが立てた殺人計画「三角関係」、 17世紀ロンドン、父の仇を討つ決心をしたチャールズは友人の助けを借り、とある計画を立てる 「この世はすべてひとつの舞台」、クラシック好きのパトロール警官が、コンサートホールから 盗まれたストラディヴァリウスの行方を追う「ノクターン」、明らかに殺人を犯した男の裁判で、とんでもない逆転劇が… 「非包含犯罪」、事件もなく暇を持て余したリンカーン・ライムの元に持ち込まれた 小さな事件「クリスマス・プレゼント」……です♪



「12番目のカード」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (文芸春秋 2006.9.30)
 ニューヨーク・ハーレム地区にある図書館で、16歳の高校生ジェニーヴァ・セトルが 何者かに狙われる事件が起こった。彼女は自分の先祖である140年前の解放奴隷について調べていたのだが、 狙われた原因はその過去にあるのか? 執拗で冷酷な犯罪者を相手に、ライムとサックスをはじめ捜査班は 追跡を開始する…。
 四肢麻痺の犯罪学者リンカーン・ライムシリーズ第6作目。2005年。本の詳細


 6作目。これから読んでもかまいませんけど、やっぱ最初からを強くお勧めいたします。
 今回の舞台はハーレム。貧困と暴力と犯罪に取り巻かれた町で、140年前に起きたある事件の謎と 現代の事件をライムたちが追います♪ やっぱりディーヴァーはいいですね。今回数々のどんでん返しは ちょっと軽めで派手さもなく、前作『魔術師』の後では少々物足りないかもしれませんけど、それはそれ、 今回の目玉は二つの事件を追うストーリーの厚みでしょか。ジェニーヴァのキャラクターもなかなか 良いですし、彼女関連のお騒がせ&どんでん返しも、ベタかも知れませんけどけっこう好きです(^_^;)  今回セリットーの抱えてしまった問題の行く末も 気になりますし、ライムの新しい試みも…とまぁ、シリーズならではの醍醐味も色々あり、楽しかったです♪  『悪魔の涙』のパーカー・キンケイドもまたゲスト出演してるし、前作からカーラも出てるし。
 ミステリとしてのラストは…どうなんですかねぇ、あれはあれでいいけど個人的には微妙かな(^_^;)  まぁ全体的に問題が大きすぎるという感はあります。ただ、状況を受け入れて 戦う(ジェニーヴァもライムも…)…という結び付け方は悪くない。
 しかしディーヴァー作品を長年読んでると、ストーリーとは関係ないところで 色々と法則(パターンつーか…)が見えてきてしまいます。それが何なのか言うとつまらんので、 今回も少々そんな感じだったとだけ…(T_T) 今回ルーキー君がけっこう気に入ったんですけど、 これからも活躍してくれないかな〜。
 次は7作目「ウォッチメイカー」に続きます↓



「ウォッチメイカー」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (文芸春秋 2007.10.30)
 クリスマスを前にしたある日、ニューヨークで2件の殺人事件が起こる。 犯行現場に必ず時計を残し、自らを“ウォッチメイカー”と名乗る犯人を、 四肢麻痺の犯罪学者リンカーン・ライムとアメリア・サックスが追うことになる。
だがアメリアは、同時に別の事件を操作中だった。 自殺したと見られていたある公認会計士の死を調べるうち、彼女は 思いがけない事実に行き着く…。
 リンカーン・ライムシリーズ第7作目。2006年。 本の詳細


 装丁が素敵なシリーズ7作目♪ 今回もライムとアメリア、そしてセリットーやプラスキーといった おなじみの面々が、どうやら残虐な殺し方が好みな感じの殺人者“ウォッチメイカー”を 追跡します。以下なるべく前回までの内容に触れずに感想を書くつもりですが、 これから作品をお読みになる方は…なるべくシリーズを最初からどうぞ(^_^;)。
 今回のアメリアは、個人的に色々と問題を抱えて辛そうです…(とはいえ いつもながら登場人物の心情にはあまり踏み込まれておらず、さらっと流されてますが)。 そんな彼女に代わって今回活躍しているのがプラスキー。前回はチームの不安要素として 活躍(?)してくれましたが、だいぶいい感じになってきました。 そんな成長を見るのもシリーズの醍醐味かな。
 しかし今回の物語、シリーズ中でもちと特殊な感じですね。まさかあんな結末が待っていようとは。 個人的にはディーヴァーの作品自体が好きなんで何が起こったって別にいいんですが、 今回はどんでん返し方の方向にちょい納得がいかないような気がしますね〜(^_^;)  それはいいとしても、最後の辺はもうちょいライム側から物語を見せてほしかったかな…。 とにかくまぁ、相変わらず楽しいことは楽しいです。
 今回新たに登場する尋問のエキスパート、キャサリン・ダンスは、 彼女が主人公の「スリーピング・ドール」以下のシリーズもあります。 そしてライムシリーズは8作目『ソウル・コレクター』に続きます。



「ソウル・コレクター」 ジェフリー・ディヴァー/池田真紀子 訳 (文芸春秋 日)
 以前取り逃がした容疑者を追うライムのもとに、別の強盗殺人事件の一報が入る。 疑いの余地のない証拠と共に逮捕されたのは、なんとライムのいとこのアーサーだった。 あまりに揃いすぎた証拠に不信感を抱いたライムはいとこを救うべくアメリアやプラスキーらと共に 事件の捜査を始めるが…。
 リンカーン・ライムシリーズ第8作目。2009年。
本の詳細

 今回は、ちょっと唐突に出てきた感のある(^_^;)ライムのいとこが、 殺人事件の容疑者に…。犯人はネット上の個人情報を好き放題悪用して捜査陣を翻弄します。 怖いというより、あそこまで色々やられるとなんかもう笑えます。こういうストーリーは 目新しくはないかもしれませんが、かなり好きです。おなじみの面々が巻き込まれると、 緊迫感も恐怖もひとしおですね。個人的にディーヴァーの作品を好きすぎるので その辺差し引いてほしいのですけども、8作目でもマンネリでないしシリーズならではの サイドストーリーもあるし、とても楽しめました。この作品だけ読んでも 十分楽しいと思います。前作がちょい切ない感じに終わったんで、今回は多少気になることは あっても手放しで誉めたい気がする(^_^;) 別に進行しているあの事件も、 いつか決着がつくのか気になりますね。派手にやってくれたらいいな〜と期待しつつ。
 他にも未翻訳の本が色々あるようなので、それらが出たらまた読みます。



「スリーピング・ドール」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (2008.10.10)
 カリフォルニア州の捜査官で尋問のエキスパートであるキャサリン・ダンスは、 かつてカルト的集団を率い、殺人罪で服役しているダニエル・ペルを尋問することになった。 だが何者かの手助けにより、尋問中の裁判所からペルが脱獄するという事件が起こってしまう。 キャサリンはペル自身と彼に関わった人々の心の動きを探りながら、ペルの追跡を始める…。
 キャサリン・ダンスシリーズ第1作目。2007年。 本の詳細


 感情の動きによって現れる他人のしぐさや言葉から、 その意味するところを読み取り嘘を見破る“キネシクス”の エキスパート、キャサリン・ダンスシリーズの1作目です。ただ今回の話には関係ないですが、 彼女は過去にリンカーン・ライムシリーズ7作目の「ウォッチメイカー」にも 登場してます。あわせてお読みいただくと、さらに楽しめるかと思います。
 ということで、キャサリン・ダンスが主役の1作目。 尋問のためにやってきた、警備が手薄な 裁判所からまんまと脱獄してしまった危険な殺人犯ペルを追い、キャサリン自身も 危険にさらされながら追跡を続けます。ストーリーの中心はもちろんペルの追跡ですが、 キャサリンの家庭や、彼女を取り巻く人々もたくさん描かれてます。 女性が主人公だから…というのはそれほど関係ない気がしますが、 たとえばリンカーン・ライムシリーズと比べると、かなり暖かい雰囲気です。
 しかし、だからといって緊迫感は少しも減じていません。 届きそうな指先をあざ笑うかのように、キャサリンたちの半歩先をするすると逃げてゆくペル。 この辺の追跡劇は期待を全然裏切りませんね。そして、今回も驚愕のどんでん返しが いくつか…。…ディーヴァーのどんでん返しに関しては、これはちょっとなくてもいーんじゃないの という感じのが全然ないとは言い切れないのがアレなんですが(^_^;)、まぁ それも含めて(含めるのか…)とても楽しめた作品でした。
 それにしても、人間は無意識のうちにとっている行動で、 なんてあけすけに心をさらけだしていることか。おそろしいことですね〜。 ペルより何より、そこんとこが一番怖い気がしますね(^_^;) とはいえ、人の心を描いても全然 生々しくならない(といって真実味が薄れるわけではない)のが、 ディーヴァー作品を好きな理由の一つですね。…好きな作家なので、 多少ほめすぎた部分があっても、そこは割り引いていただくと ありがたいということで(笑)
 次は2作目『ロードサイド・クロス』に続きます↓



「ロードサイド・クロス」 ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳 (文芸春秋 2010.10.30)
 カリフォルニアで有名なブログに掲載された記事が元で、 ある少年がネットいじめの標的となってしまう。少年は姿を消し、彼に悪意ある書き込みをした人々が 次々と襲われるという事件が起こる。カリフォルニア州捜査局の捜査官でキネシクス(ボディランゲージ分析)による 尋問のプロであるキャサリン・ダンスは、コンピューターの専門家の力を借りて少年の行方を追うが…。 キャサリン・ダンスシリーズ第2作目。2009年。 本の詳細

 シリーズ2作目。前回の事件からわずか数週後から事件は始まります。 前回のことも色々と引きずっているので、順番に読むのをお勧めします。
 ネットで中傷の的になった挙句姿を消した少年を追うのが本筋ですが、 キャサリン自身も家族のことで大変な問題を抱えてしまいます。 前作でも言いましたが、登場人物との距離が近い感じがするシリーズ。 今回ダンスのアドバイザーとなったカリフォルニア大学教授のジョン・ボーリングは なかなか魅力的な人物ですな。いろんな意味でやきもきしながら読みました(^_^;)
 ネット社会についてはあくまで中立的に淡々と物語を描いていて、 だからこそ描き出されるものが色々怖いのかも。 ミステリだからそのへんは添え物で十分なんですけど、それでも ネットの功罪について色々考えずにはいられません。 日本の話もちょいちょい出てきて、嬉しいやら複雑やらです。
 とにかく、今回も時間を忘れさせてくれる楽しい作品でした。 1作目よりこの作品の方が個人的には好きです。…なんつーか、 ディーヴァーの作品を読む時は、今まで読んだ作品全部を いったんリセットしたい。ディーヴァーだからきっとこうなんだろうとか考えず、 常に先入観なしで読めればいいのに。…まあ、無理なんですけど。
 何か翻訳が出たらまた読みます。



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