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ザングウィル (イズレイル) イギリス 1864-1926
 ビッグ・ボウの殺人(1891) ハヤカワ文庫
ジェイムズ (モンタギュウ・ロウズ)イギリス 1862-1936
 M・R・ジェイムズ怪談全集1創元推理文庫
シューヴァル(マイ) & ヴァールー(ペール) スウェーデン
 ロゼアンナ (1968) 角川文庫
 蒸発した男 (1966) 角川文庫
 バルコニーの男 (1967) 角川文庫
 笑う警官  (1968) 角川文庫
 消えた消防車 (1969) 角川文庫
 サボイ・ホテルの殺人(1970) 角川文庫
 唾棄すべき男 (1972) 角川文庫
 密室 (1972) 角川文庫
 警官殺し (1974) 角川文庫
 テロリスト (1975) 角川文庫
スコット (ジェームズ・モーリス) イギリス 1906-1986
 人魚とビスケット 創元推理文庫
スタージョン (シオドア) アメリカ 1918-1985
 きみの血を (1961)ハヤカワポケミス
 不思議のひと触れ (短篇集)河出書房新社
ステーマン (S・A) ベルギー 1908-1970
 殺人者は21番地に住む 創元推理文庫
ストリブリング (トマス・シジスマンド) アメリカ 1881-1965
 カリブ諸島の手がかり  (短篇集)国書刊行会
スレッサー (ヘンリー) アメリカ 1927-
 うまい犯罪、しゃれた殺人 (1960)ハヤカワポケミス
 伯爵夫人の宝石 光文社文庫
 夫と妻に捧げる殺人 ハヤカワ文庫
セイヤーズ (ドロシー・L) イギリス 1893-1957
 誰の死体? (1923) ピーター卿シリーズ1創元推理文庫
 雲なす証言 (1926) ピーター卿シリーズ2創元推理文庫
 不自然な死 (1927) ピーター卿シリーズ3創元推理文庫
 ベローナ・クラブの不愉快な事件 (1928) ピーター卿シリーズ4創元推理文庫
 ピーター卿の事件簿創元推理文庫
セシル (ヘンリイ) イギリス 1902-76
 メルトン先生の犯罪学演習 (1948)創元推理文庫
 判事とペテン師 (1951)論創社
 判事に保釈なし (1952)ハヤカワポケミス
ソーヤー (コリン・ホルト) アメリカ 
 老人たちの生活と推理 (1988) “海の上のカムデン”シリーズ1 創元推理文庫
 氷の女王が死んだ (1989) “海の上のカムデン”シリーズ2創元推理文庫
 フクロウは夜ふかしをする (1992) “海の上のカムデン”シリーズ3創元推理文庫
 ピーナッツバター殺人事件 (1993) “海の上のカムデン”シリーズ4創元推理文庫
 殺しはノンカロリー (1994) “海の上のカムデン”シリーズ5創元推理文庫
ソウヤー (ロバート・J) アメリカ
 さよならダイノサウルス (1994)ハヤカワ文庫SF
 イリーガル・エイリアン (1997)ハヤカワ文庫SF


「ビッグ・ボウの殺人」 イズレイル・ザングウィル/吉田誠一 訳 (ハヤカワ文庫 1980.1.31)
 ロンドンはボウ地区の、霧深い12月の朝。いつになく寝過ごしてしまったドラブダンプ夫人は、 二階に下宿しているコンスタント氏の部屋のドアをノックする。だが早く起こしてくれと 言われていたにもかかわらず、コンスタント氏の部屋には鍵がかかっており、いつまでたっても 返答がない。同じ下宿人のモートレイク氏は、既に出かけた後のようだ。恐怖に駆られた ドラブダンプ夫人は、近所に住む元刑事グロドマンの家に駆け込む。ドアを打ち壊して入った コンスタント氏の部屋で、二人が見たものは…。1891年作。

 密室物(と言っても色々あるんですが、まあ…)はそれほど好きでないのですけど、これは 確かにすごいです。「密室の父」と呼ばれるだけのことはありますね〜。犯人はけっこう早めに 疑いだしてしまって、トリックもこういう感じかな、と思ってはいたのですけど、それでも 最後の展開には引きずり込まれてしまいました。意外で皮肉な結末も好きです(^_^;)  この全編にあふれるユーモアがまた、良いんですよね〜。自称(?)詩人のデンジルと、 靴職人のピーターがおかしくていいです。100年前のイギリスの雰囲気もすごく 伝わってきますね。「序」で自画自賛してる(笑)ザングウィル氏の言葉にも、読んだ後なら うなずけます。
 ところでこれ、作中にポーの『モルグ街の殺人』のネタバレがありますね…。 私まだ読んでなかったのに!…なんていう方は、まあ、いないと思うんですけど、一応。



「M・R・ジェイムズ怪談全集1」 M・R・ジェイムズ/紀田順一郎 訳(創元推理文庫 2001.10.26)
 近代イギリス怪奇小説の巨匠M・R・ジェイムズ(1862-1936)の作品集。15編収録。
収録作品…
 好古家の怪談集:「アルベリックの貼雑帳」、「消えた心臓」、「銅版画」、「秦皮の樹」、
        「十三号室」、「マグナス伯爵」、「笛吹かば現れん」、「トマス僧院長の宝」

 続好古家の怪談集:「学校綺譚」、「薔薇園」、「聖典注解書」、「人を呪わば」、
         「バーチェスター聖堂の大助祭席」、「マーチンの墓」、「ハンフリーズ氏とその遺産」


 M・R・ジェイムズは英国では有名な怪奇小説作家で、ブラックウッド、マッケンと並んで近代イギリス 怪奇小説の三巨匠と呼ばれているとか。私はどれもちょとかじったことくらいしかないですが…。 この本に収録されているのはもともと2冊だったのを1冊にまとめたものなので、タイトルが 二つあります。
 M・R・ジェイムズの作品は、まさに怪談。イギリスではクリスマスに炉辺で怪談話をする習慣が あったようですが(今はどうか知りませんが)、そういう時に大活躍しそうな本(^_^;)  しかも近代の怪奇小説独特の雰囲気。適度に怪談の伝統を踏まえつつ、恐怖感が5割増というか…。 モダンホラーとはやっぱり違うけど、それ以前の怪奇小説とも違いますね〜。ちょと ミステリっぽいのもあります。どれも好古趣味にあふれた、恐怖心をくすぐる(?)作品ばかり。 ストーリーは、古書や遺跡等古いものが好きで、夢中になっているうちに人が入っては いけない領域へ…というパターンが多いです。そこはかとないユーモアもあって楽しめますね。 以下にお気に入りの作品を♪ 2もありますので、いずれ…。

「消えた心臓」
 天涯孤独となったスティーヴン少年を引き取った従兄のアブニー氏は、これまでにも二人の 少年と少女を引き取ったのだが、二人とも何故か行方不明になっていた。 スティーヴンは従兄の家で怪しいものを目撃するようになるが……。
 まぁオチはすぐに分かるかもしれませんが、恐ろしいことですね。しかし、そこまでして そんなことしたいかなぁ…?(^_^;)

「銅版画」
 美術館の収集委員ウィリアムズ氏は、珍品の銅版画を入手した。それは荘園邸の全景を 描いたものだったが、やがて絵を見るたびに絵に奇妙な変化が現れることに気付いた…。
 不幸な作者の絶筆が、その運命を繰り返し語り始めたら恐ろしいですね。こんな絵は 飾りたくないな〜。

「十三号室」
 アンダースンは古い文書の調査のため、デンマークのヴィボーの金獅子亭という旅館の十二号室に 泊まった。その旅館には十三号室がなかったのだが、隣からの歌声に腹を立てて廊下に飛び出た アンダースンは同じように飛び出してきた十四号の住人と鉢合わせすることに。しかもあるはずの ない場所に十三号室のドアがあった…。
 いわくも何もないのが一番怖いかな…(T_T) 理由も分からず異世界へ引きずり 込まれることの恐怖。そこに棲むものの正体も知りたくない(>_<) でもこの作品には ちょっとユーモアもあって楽しいですね。

「笛吹かば現れん」
 慇懃だが堅物で知られるパーキンスン教授は、休暇を過ごしにバーンストウへ出かけた。 友人に調査を頼まれた聖堂騎士団の礼拝堂跡へ出かけた彼は、そこで奇妙な笛を見つける。 ためしに吹いてみた彼は、その怪しい音色と突然の突風に驚かされる。だが、不思議な出来事は それだけでは終わらなかった…。
 笛を吹くと現れる怪しいものの正体がよく分からないところが怖いです。 拾った笛をむやみに吹いてはいけない、という話……(^_^;)

「トマス僧院長の宝」
 グレゴリー氏は友人のブラウンの執事からの呼び出しを受け、ドイツへ出かける羽目になった。 ブラウンは何かひどいショックを受けて臥せっており、ようやく彼の口から語られたのは 18世紀にトマス僧院長が隠したとされる宝の話だった。
 宝探しの暗号解読の過程がとても面白いんですね〜♪ でもそこはM・R・ジェイムズ(?)、 それだけでは終わりません。穴の中にいた守護者ってなんだったんだろう(ToT) 不気味…。

「聖典注解書」
 図書館員のギャレットの元へ、エルドレットという男がとある本を借りたいとやってきた。 焦っているらしい男だったが、本は見つからなかった。翌日再び図書館にやってきたエルドレットは、 ギャレットが何かショックを受けて休んでいると聞かされた。彼は昨日エルドレットが探していた本があった 場所で、奇妙な体験をしたのだった…。
 ちょとご都合主義っぽいところがあるんですが、こういう話は好きです(^_^) 怪奇趣味の ミステリというのはよく聞きますが、これなどさしずめミステリ趣味の怪奇というところでしょか…。

「ハンフリーズ氏とその遺産」
 伯父の遺産であるウィルスソープの大邸宅を相続したハンフリーズは、邸宅の庭にある 迷路に入ってみる。印をつけてもどうしても迷ってしまう迷路の図面を書き始めるハンフリーズだったが、 何度も奇妙な現象に襲われて…。
 周りを高い生垣で囲まれた迷路というのは、それだけで何か結界のような力を持ってる気がしてきますね。 解けない謎に魅入られて禁を冒した人間は、それなりの報復を受けるということでしょうか…。



「ロゼアンナ」 マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S50.3.1)
 マルティン・ベックシリーズ1作目。運河の浚渫作業中、暴行を受けた女性の死体が発見される。 マルティン・ベック警部は地元警察と主に捜査に乗り出すが、女性の身元は不明のまま3ヶ月が 過ぎる。しかし同じころ運河を航行していた遊覧船の乗客を調査するうち、アメリカから一本の 電報が届く。女性の名前はロゼアンナ・マグロウ。アメリカからの観光客だった。彼女は何故事件に 巻き込まれてしまったのか…。

 以後十作にわたる“マルティン・ベック”シリーズの一作目。いつから本棚にあったのか 謎ですが、もっと早く読めばよかったな〜。少しずつじわじわと犯人に迫ってゆくベックと 捜査陣の、緊張感に満ちた、しかも温かみのある描写がとてもいいです。まだ一作目なのでまだ スウェーデンの変遷という部分は読み取れませんが、こちらの展開も楽しみです。地図を 広げてみたものの、スウェーデンてあんまり詳しく載ってないのね(T_T) 最初からこんなに 面白くて、まだ9冊もあると思うと嬉しい。



「蒸発した男」 マイ・シューヴァル  ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S52.5.30)
 夏期休暇に入った直後に呼び戻されたマルティン・ベックは、一人の男の行方を突き止めるよう 命じられる。雑誌の取材でハンガリーを訪れたルポライター、アルフ・マトソン。下手をすれば国際 問題にも発展しかねない微妙な情勢の中、ベックは単身ブダペストへと向かう。目撃者も少なく捜査が 難航する上、ベックは自分に尾行がつけられていることに気付く…。スウェーデンの警察小説 マルティン・ベックシリーズ第2作目。

 前作『ロゼアンナ』からは2年後という設定。これはまだまだ冷戦の真っ只中のお話なのですね。 …時代背景を微妙に分かってない(^_^;) 最後に真相がわかっても、妙にもの悲しい雰囲気が 漂っています。当然といえば当然かもしれませんが、罪を犯す人もそれを捜査する人も、ホントに 普通の人だな〜という感じがします。ブダペストの町並みやドナウ川や食べ物などが仔細に 描かれているので、行ってみたい場所がまた増えてしまった。今はだいぶ変わってるとは思いますが。 まだ2作しか読んでいないので、シリーズ全体から見てあれこれ言うことはできませんけど、 このお話は好きです。というわけで、3作目に続きます…。



「バルコニーの男」 マイ・シューヴァル  ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S46.8.10)
 早朝のスットクホルム市、あるアパートのバルコニーから、下の通りを見下ろしつづける一人の男。 その視線の先には、一人の少女の姿が…。
辻強盗の頻発するストックホルムを後にし、モータラへ休暇を過ごしに出かけたマルティン・ベック。 だが帰ってきた彼を待っていたのは、市内の公園で発生した少女殺人事件のニュースだった。目撃者は 3歳の男の子と、付近で時同じくして起こった辻強盗の犯人しかいない。曖昧な証言を元に捜査を 続ける殺人課の努力も空しく、第二、第三の少女殺人事件が…。スウェーデンの警察小説 マルティン・ベックシリーズ第3作目。


 読み出すと止まらないですね(^_^;) 登場人物の個性や置かれている状況もだいたい 把握できてきて(遅い…?)、だんだん深みにはまってきてますね〜。個人的に、睡眠は必ず 10時間はとって何かというとトイレにいて記憶力抜群で人間コンピューターというあだ名の メランデル氏が好きです(笑) それにしてもこれ、外国とはいえ30年以上も前の物語だとは 思えません。もっとも、30年てそんなに長い時間じゃないのかもしれませんけど…。微妙かな?  とにかく、起こってることは今と全然変わらないような気がします。決して派手なのではないけど、 捜査陣の個性の衝突がとても楽しかったり、少女の死体を目の当たりにする警官たちのやりきれない 思いに胸が痛くなったりとか、ちょっとしたところでもとても魅力があるんですよね。辻強盗の 犯人が殺人事件の目撃者、なんていう皮肉な展開も面白いです。今回は文庫にストックホルム市の 市街図がついていたので、事件現場や捜査陣の動きがよくわかって臨場感がありました。物語の端々で、 ストックホルムの、というかスウェーデンの社会に対する思いが、登場人物の口や目を借りて 語られていますよね。そういう場面になると、ふと襟を正したくなるような、そんな気持ちになります。 4作目に続きます…。



「笑う警官」 マイ・シューヴァル ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S47.7.20)
 雨の降る夜更け、ストックホルムの町外れで死体を満載した市内循環バスが発見される。殺人課主任 警視のマルティン・ベックは、「死体の中にあなたの部下がまじっている」という知らせを受け、 現場に急行する。はたして8人もの死者の中に、銃を手にした若手刑事の姿が。彼は一体こんなところで 何をしていたのか? 犯人の手がかりもつかめないまま彼の生前の行動を洗うベックたちは、 彼が単独である事件を追っていたことを知る…。スウェーデンの警察小説マルティン・ベック シリーズ第4作目。

 一体誰が死んでしまったのかと、冒頭からドキドキしてしまいました。でも、もちろんここには 書きません(^_^;) やっとここまで来て、まだまだ成長するはずの人だったのに……。でも、 それほど悲壮な感じはしないんですよね。弔い合戦のような雰囲気もなくて、ただ被害者の死を 悼んで、そのぶん自分の仕事はきっちりこなしていくというような。でもかすかな痛みのようなものは ずっと続いていて、最後にベックがモーンソンからの電話を受けるところで私はなんだかやりきれない 気持ちで一杯になりました。最後のあのシーンで一気にこみ上げるというかなんというか。 そういうわけで、とても心に残るお話です。
このお話ではベトナム戦争に対する反戦運動が盛んに行われているシーンがあって、そういう時代の 話なのだな〜と妙に感心してしまいました。印象に残ったのは、死んだ刑事の部屋で改造された銃を 見つけたときの、武器と名のつくものを一切この世から追放したいというコルベリの セリフ(P260〜)。そして犯人についての思いを語るグンヴァルド・ラーソンのセリフ(P425〜)。 特に後者、ちょっとラーソンを見直してしまいました(笑) 5作目に続きます。



「消えた消防車」 マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 高見浩 訳 (角川文庫 S48.12.20)
 寒さに震える若手刑事と張り込みを交代してやった直後、ラーソン警部の目前でアパートが爆発した。 彼は一人必死に救出作業を続けるが、出動したはずの消防車はなかなか現れない。焼死者の中には、 自動車窃盗事件の容疑者マルムも含まれていた。この火事は事故か、それとも放火なのか?  その日の朝、ただ一言「マルティン・ベック」と書き残して自殺した男と、この事件との関係は?  スウェーデンの警察小説マルティン・ベックシリーズ第5作目。

 これでこのシリーズも半分な訳ですが、長さを感じさせないのでとても5冊も読んだような気が しません。今回はグンヴァルド・ラーソン警部の独壇場といいますか、彼がかなり活躍してますね。 ベックは相変わらずインガとうまくいっておらず、娘のイングリッドが独立して家庭は崩壊寸前。 コルベリの娘はもう6ヶ月。前作で亡くなった刑事の代わりに、署長になるべく野心を燃やす スカッケが登場。時の流れを感じます。……事件は火事が放火だったのかどうかというところから 始まって、そこに自動車窃盗団やら麻薬密売人やらが絡んできて、一見地味な展開に見えてだんだん 大事になってきます。ちょーっと偶然すぎるかな? と思えるところがなきにしもあらずですが、 でも「消防車は何故消えたのか」という問題を解決する過程はとても面白いです。ソルナの おマヌケ警官コンビ、クリスチャンソン&クヴァントは、今回もいい味出してますね♪  ぜんっぜん懲りてない…(^_^;) もうひとつの「消防車行方不明問題」の方の解決も、妙にかわいくて 好きです。緊迫のラスト、コルベリは復活してるのでしょうか? というわけで、6作目に続きます…。



「サボイ・ホテルの殺人」 マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 高見浩 訳 (角川文庫 S57.5.30)
 スウェーデンの南に位置する町マルメのサボイ・ホテルで、財界の大物パルムグレンが射たれた。 大勢の人間がいたがたいした目撃証言も得られず、ストックホルム警察も犯人と目される男を 抑えることができなかった。過激派や企業間の闘争など、さまざまな線から捜査を試みる マルティン・ベック。やがてさまざまな人物の証言から、パルムグレンの冷酷な人物像が浮かび 上がってくる…。スウェーデンの警察小説マルティン・ベックシリーズ第6作目。

 事件は解決しても、すっきりした感じがしないですね。法による制裁の限界というか…。物語の 終わりに近い一文「マルティン・ベック主任警視は、はなはだおもしろくなかった。」というのが、 すべてを語っていますね。今回特にスウェーデン財界の裏面をクローズアップしていて、犯人探しは それほどパキパキと(?)すすみません。犯人を断定するのにも証拠がちょっと曖昧な気がするの ですけど、そういうところには重点が置かれていないのでしょう。
そういえば、今回もクリスチャンソン&クヴァントの二人、とんでもないことをしてますね〜。 あるいは何もしなかっただけというか(笑) この二人がいなければこの事件、きっと30ページ くらいで終わってました。スカッケは前作の事件でマルメ警察に移ってしまったのですね。 ラーソンに妹がいたなんて意外ですし。でももっと意外だったのが、ついに妻と別居した ベックがサボイ・ホテルで…(書いてしまうとやっぱりつまらないので以下略)。今後 どうなってゆくのか気になります。というわけで、7作目に続きます。



「唾棄すべき男」 マイ・シューヴァル  ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S57.11.30)
 深夜のストックホルム、マウント・サバス病院。入院していた一人の患者が銃剣で惨殺された。 被害者は現職の警察官、スティーグ・ニーマン主任警部だった。ベックたちの捜査の前に、 ニーマンの過去が次第に明らかになる。“セフレからきた唾棄すべき男”、 それが彼の従軍時代の渾名だった。やがて一人の容疑者の名前が浮かび上がってくる。 彼は誰も思いもよらない形で捜査陣の前に姿を現した…。スウェーデンの警察小説 マルティン・ベックシリーズ、第7作目。

 あらすじを書くのに困るくらい、とてもストレートなストーリー展開です。 でも、警察内部の歪みを現職の警察官たちが白日の下にさらけ出していく (いかざるをえない)という、重いお話です。少し前あたりから、謎解きよりも事件の背景、 何故そうなったか、根本的な原因は何かということがずっと重視されてきているような気がします。 今回はけっこう派手なアクションとかもあるんですが、単なる演出でなくて、その結果おなじみの 人物が死んでしまったり、きちんと名前のある人間が死んでいったりする(変な言い方ですが…) あたりが、このシリーズらしいと思います。…ところで、ベックは大丈夫なんでしょうか (大丈夫に決まってますか… )。すごいところでふっつりと終わってしまってますけど。 コルベリとラーソンも少しずつお互いを理解してきたみたいですね。というわけで、8作目に続きます。



「密室」 マイ・シューヴァル  ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S58.1.5)
 前回の事件で瀕死の重傷を負ってから15ヶ月が過ぎ、久々に登庁したベック。警視庁は 連続銀行強盗事件の捜査に追われていた。しかし復帰したての彼は、ある老人の変死事件を 割り当てられる。老人は当初拳銃で自殺したと考えられていたが、部屋が完全に密室だったにも かかわらず、拳銃がどこからも発見されなかったのだ。強盗事件の捜査に奮闘する仲間たちと離れ、 一人で捜査を続けるベック。やがて老人の意外な過去が明らかになる…。スウェーデンの警察小説 マルティン・ベックシリーズ、第8作目。

 これを読んでいると、スウェーデンて本当にこんなひどいことになってる(なってた)のかなぁ、 と思ってしまいます。福祉国家の現実とか警察の堕落とか、重いテーマでちょっと気分が暗くなって しまうんですが、それを救っているのが銀行強盗特捜班の喜劇(?)と、レア・ニールセン。 マルムストレームとモーレンの部屋に突入する特捜班、面白すぎます(笑) ブルドーザー・オルソンの キャラクターも妙に現実離れしてるのですけど、なんだか憎めないんですよね。でも彼らの捜査が最後、 こんな風にベックの捜査とぶつかろうとは。とにかくベックは復帰できてよかったですね。 レア・ニールセンは本当に理想的な女性だと思うんですけど、また登場するのかな? それにしても 衝撃的なラスト……。あのまま終わってしまうなんて…。本当に、どうしてそんなことになって しまったんでしょう? …というわけで、9作目に続きます。



「警官殺し」 マイ・シューヴァル  ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S58.3.25)
 通称“パン男”と呼ばれる窃盗犯の監視任務についていたベックとコルベリは、アンダスレーヴで 起きた失踪事件の捜査を命じられる。失踪したシグブリード・モードの隣家には、以前ベックたちが 捜査したセックス殺人の前科のある男性が住んでいた。上からの命令により、直感に逆らって彼を 逮捕せざるを得ないベック。埒のあかない尋問が繰り返される中、マルメ警察管区内で警察官が 撃ち倒されるという事件が起こった。コルベリがそちらにまわされ、逃げた犯人の足取りを追うが、 それがきっかけで失踪事件は意外な展開を見せる…。スウェーデンの警察小説マルティン・ベック シリーズ、第9作目。

 『警官殺し』というタイトルがとても皮肉ですね(だって実際は…)。以前起こった事件(第一作 『ロゼアンナ』と第二作『蒸発した男』)の犯人たちが登場して、懐かしい…というか、時の流れを 感じます。特に『蒸発した男』の犯人とコルベリが語り合う場面は印象的です。第一作目からもう十年 近くたったのですけど、その間に警察もだいぶ変わってしまいました。コルベリもついに辞職を 決心してしまって…。彼の辞表にはとても哀しい響きがあります。辞表を投函して家へ向かう コルベリと、最後に事件を解決してレアの待つ家に向かうベックが対照的。
 誘拐事件については、例の車があんな形で発見されるのが意外というか、偶然すぎるというか(^_^;)  でもコルベリの最後の(?)仕事だし、彼のお手柄ということで…。アンダスレーヴのオーライは 楽しい人ですね。田舎町の警察官は、どこの国も同じなのかな。今回もクリスチャンソン&クヴァントは、 妙なことしてラーソンにお決まりの言葉を(「失せろ!」)言われてます。重苦しい雰囲気の中で、 全然変わらない(懲りてない)人たちを見るとほっとしますね(笑)。…というわけで、10作目に続きます。



「テロリスト」 マイ・シューヴァル  ペール・ヴァールー/高見浩 訳 (角川文庫 S58.4.25)
 スウェーデン警察を代表して某国の要人警護を視察に行ったグンヴァルド・ラーソンの目の前で、 大統領の暗殺が行われた。国際的なテロリスト集団ULAGの犯行だった。半年後に米国上院議員を 国賓として迎える際の、特別警護の責任者に任命されたマルティン・ベック。テロが仕掛けられることを 予想し彼らが秘密裏に計画をたてていた頃、ある偶然によってテロリストの一人が既に市内に 潜入していることが判明する。彼らはテロを未然に防ぐことができるのか…。スウェーデンの 警察小説マルティン・ベックシリーズ、第10作目。シリーズ完結編。

 ベックたちが考えた例のトリック、すごいです。ベックたちとテロリストとの見えない戦いが スリルあります。どこまでがネタバレなのかよく分からないけど、楽しみが…とか考えると、 ほとんど何も言えませんけど…。しかし、一見無関係に思えた映画監督の殺人事件の関係者が、 あんなふうに関わってくるとは。上院議員に対して行われたテロよりも、スウェーデンの首相の身に あんなことが、しかも普段は政治的信条にかかわりのない人によって行われたということが、 なんだかとても皮肉で暗示的。世間のことに対しては全く無知でも、そのせいでかえって素直に 物事を見てる…というのがやるせない。
 あ、今回日本人も登場してましたね。もちょっといい役……いやいやいや(^_^;) しかし彼らの 食事の習慣は、たぶん他の日本人にとっても謎だと思います(笑)。シリーズの最後だけあって、 今までに登場したいろんな人たちがでてきます。懐かしい。この十年で、生活ががらっと変わって しまった人、変わらない、もしくは懲りない人…。スウェーデンの警察も、殺人課の面々の人間関係も だいぶ変化しました。コルベリがやめちゃって沈んでる感じのベックも、レアと一緒の時は 幸せそうでいいですね。今回、いつにもまして激しく板ばさみ状態のマルムが妙にかわいそうな感じ。 みんなから無能と呼ばれて毛嫌いされてるけど、彼は彼で大変なのだろうな〜と、変に同情して しまったです。弁護士のブラクセンも味のあるいいキャラクターですね。CS班の勘違いも、 笑い事じゃないけど笑えます。
 しかしこれ、リアルタイムで読んでいた人は、また違う感慨があるのでしょうね。 もちろん、マルティン・ベックシリーズが刊行されてる間に生まれた人(^_^;)にも、それなりの 感慨はありますが。…これで終わりじゃなくてもいいみたいです。はぁ……。なんだか寂しい。



「人魚とビスケット」 J・M・スコット/清水ふみ 訳 (創元推理文庫 2001.2.16)
 1951年の3月7日から2ヶ月間、イギリスの新聞<デイリー・テレグラフ>紙に掲載された 奇妙な個人広告。広告主の「ビスケット」と、相手の「人魚」との奇妙なやり取り。作家の“わたし”は、 このやり取りに興味を抱き、ビスケットとの接触を図る。そして第二次大戦中の、忌まわしい漂流 事件の真実が明かされてゆくことになる……。1955年。

 新聞広告の「ビスケット」と「人魚」の奇妙なやり取り、そして「ブルドッグ」や、 「ナンバー4」とは一体誰で、4人は一体どういう関係なのか? インド洋上を漂った、 14週間の出来事とは? ……そんな謎にまず、ひきつけられます。そして後は、「ビスケット」の 語るサン・フェリックス号の沈没と彼らの漂流の物語。良いです。極限状態での、4人の奇妙な関係。 そして起こる殺人……。いろいろ言うと微妙な雰囲気がぶち壊しなので、ただ、良いですとしか(^_^;)  こういう漂流もの(?)は好きです♪
これ、海洋冒険小説とミステリの見事な融合と書いてありますが、ミステリ好きはミステリだと 思って読まない方が、純粋にこの作品を楽しめるんではないかと。もっと違うことを期待して 裏切られて、つまらなかった〜と思うより、その方がいいかな……なんてまあ、余計な お世話ですが(^_^;)



「きみの血を」 シオドア・スタージョン/山本光伸 訳(ハヤカワポケミス S46.6.15)
 東京郊外に駐屯していた一人のGIジョージ・スミスの手紙が検閲され、その内容の異常さに彼は上官に部屋へ呼ばれた。 だが話をするうちにジョージの態度が急変。握りしめて割れたグラスでジョージは手を切ってしまうが、 彼はなんと傷口から流れ落ちる血を一心に吸いはじめたのだった…。本国に送還され、精神病医の アウターブリッジ博士がジョージの診察にあたる。やがて彼の口から語られた、過去の物語とは…。1961年。

 不思議な物語ですね〜。アウターブリッジ博士と彼の友人で上官のアルとの手紙の やり取りと、ジョージの過去の話で成り立ってるストーリー。ミステリでも怪奇でも幻想でもなく… でも全体に漂う雰囲気は一種異様なものがあります。その異様さに引かれてけっこう読めました。
 ジョージの過去の話なんかはストーリーとしては地味で、何も起こらないといえば まぁ起りませんが、そういうのはわりと好きなので(^_^;) 血生臭い話だし、読む人によって 意見がかなり分かれそうな作品だと思うんですが、私は楽しめました。興味深いというか…?(^_^;) ま〜 内容が内容ですので、面白いときっぱり断言するのはちょと気後れしますが(笑) 最後まで 明かされないジョージの手紙の内容とその意味するところも、すごい真相というか…。ジョージの 過去のあれこれも、そう言って良ければミスディレクションのようなものになってるわけですね。 この構成もなかなか♪
 冒頭とラストの、この物語はフィクションや否や?と読者を煙に巻く作者の趣向がなかなか良いです(^_^)  これポケミスは絶版ですけど、文庫が出てます。誰彼なくお薦めはできませんけど、 一読の価値はあると思います♪



「不思議のひと触れ」 シオドア・スタージョン/大森望 他 訳 (河出書房新社 2003.12.20)
 米国のSF作家シオドア・スタージョンの短篇集。10編収録。
 収録作品…
  「高額保険」、「もう一人のシーリア」、「影よ、影よ、影の国」、「裏庭の神様」、「不思議のひと触れ」、
  「ぶわん・ばっ!」、「タンディの物語」、「閉所愛好症」、「雷と薔薇」、「孤独の円盤」


 短編をまとめて読むのは初めてのスタージョン。SF作家…なんですが、この短篇集はちょっと 奇妙な話という感じのが多いかな…。軽い話から凝った話(?)まで色々ですね。ミステリっぽいのや ジャズ小説(?)も♪ どれも味のある面白いストーリーばかりです。以下にお気に入りの短編を。

「高額保険」
 面会に来てくれた友人フィルに、何故自分がこんなところに閉じ込められる羽目になったのかを語り始める アル。それは彼が多額の借金を抱え、運送業をしていた時のことだった…。
 4ページの短いお話なんですが、読者の心をぐっとつかむにはぴったりのお話(^_^)  ストーリーもいいけど、本の編集者の勝利かな…。

「もう一人のシーリア」
 他人の生活を事細かに知るのが趣味のスリムは、自分の住む安アパートに越してきた シーリアという女性の生活を知りたいと思っていた。ある日彼女の部屋に忍び込んだ 彼は、部屋に全く生活感がないのに愕然とする。やがて天井裏から彼女の部屋を覗き見し始めた彼は、 彼女の奇妙な習慣を知ってしまう…。
 屋根裏の散歩者みたいですね(^_^;) こんなの読むと、知らないだけで意外とシーリアみたいな 事してる人っているのかも、という気になるようなならないような(爆) 奇妙なお話です。

「裏庭の神様」
 妻に嘘つき呼ばわりされむしゃくしゃしていたケネスは、腹立ち紛れに庭に池を掘っていた。 そこで彼は、醜い姿の彫像が埋まっているのを発見するが…。
 変な神様(笑) ユーモアにあふれる変なお話です。めぐりめぐって元通り。 ま、そんなものなのでしょう(^_^;)

「不思議のひと触れ」
 月の出の時間、待ち合わせ場所の海の中の黒い岩へ向って泳ぎながら、 相手を見つけたスミスはいつものようにひどい言葉で彼女に語りかけた。だが、彼を待っていたのは いつもの待ち合わせ相手ではなく、普通の人間の女性だった……。
 タイトルがいいですね。どんなに平凡な人生を送っていても、誰にでもやってくる 人生を変える不思議のひと触れ(*^^*) 本当の不思議のひと触れは、触れられた本人も 気付かないほどささやかなものなのかもしれませんね…。

「孤独の円盤」
 ぼくは海辺で入水自殺をしようとしている女性を止めた。彼女は、かつて世間を賑わせた とある事件に巻き込まれた女性だった…。
 素敵なお話です(T_T) 円盤の言葉もですが、彼女の言葉も胸に染み入ります。 誰もが形こそ違うけど、海に向って手紙入りのガラスびんを投げ込みつづけているような ものなのかも…。



「殺人者は21番地に住む」 S=A・ステーマン/三輪秀彦 訳 (創元推理文庫 1983.12.30)
 霧深い夜に人々を襲い、犯行現場に“スミス氏”という名刺を残してゆく強盗殺人犯が、ロンドン市民を 恐怖に陥れていた。繰り返される殺人に手がかりもないまま非難を浴びていたストリックランド警視の 下に、ある目撃情報が届く。凶行現場から立ち去る“スミス氏”が21番地の下宿屋に入るのを見た者が いるというのだ。犯人はどの下宿人なのか…? 1939年。

 いかにも、推理小説、という感じでよいですね♪ (…いや…いかにもも何も、推理小説なんです けどね(^_^;)) 振り回されるスコットランド・ヤードとか、怪しいダイイング・メッセージ、 ブリッジのゲームから犯人の心理を分析したりとか(ブリッジを知らなくても関係ない、と書いて ありますが、私はちっとも分からなかった(T_T))。こういうの読むと、なんだか嬉しくなって しまいます。その上、読者への挑戦状が2回も入ってる。真剣に悩まなかったので、おぼろげにしか 分からなかったけど…。解決を読んで、まいった!と思うか、あるいは怒り出すか、その辺が読んだ人の 好みで分かれそうですね(笑) 私は、こういうのは大好きです(^_^)
 ところで、舞台がロンドンなのに、作者はベルギーの人なんですね。でも、舞台が霧深いロンドンで なきゃいけない理由も、読めば納得します。登場人物もなかなか面白い人たちなんですけど、 最後にみんなを集めて謎解きをする人が一番意外だったかも(^_^;)



「カリブ諸島の手がかり」 T・S・ストリブリング/倉阪鬼一郎 訳(国書刊行会 1997.5.20)
 アメリカの心理学者で犯罪研究家のポジオリ教授が活躍する短篇集。5編収録。
 収録作品…
  「亡命者たち」、「カパイシアンの長官」、「アントゥンの指紋」、「クリケット」、「ベナレスへの道」


 長い休暇を利用してカリブ海の周辺諸国を旅しているヘンリー・ポジオリ教授が、行く先々で出会うその土地ならではの 事件の数々です♪ どれもちょっと長めなので中編集といった方がいいかも。なんだかちょっと不穏な 空気の漂う中米の国々と、根っからのアメリカ人という感じのポジオリ教授がいいですね。 ビシッと鮮やかに事件解決っていうよりはおたおたしながら行きつ戻りつって感じで、情けないながらも なかなか好感が持てます(^_^;) 以下にお気に入りの感想を。 次は『ポジオリ教授の事件簿』に続きます。そのうちに。

「カパイシアンの長官」
 ハイチのカパイシアンから至急の呼び出しを受けて現地に向かったポジオリは、当地の長官から 奇妙な依頼をされる。近頃怪しげな術で人心を惑わせている呪師パパ・ロワが、いかさま師であるという 証拠を見つけ出してほしいというのだった。気のすすまないまま、パパ・ロワことラフロンドが住むという 場所へ案内されるポジオリだったが…。
 あれよあれよという間にとんでもないことに巻き込まれてしまったポジオリ教授。万事消極的な教授が いい感じです(^_^;) どーでもいいんですけど、これ以降の作品もですが、現地の人たちの言葉を大阪弁に すんのだけはやめてほしかったですね(-_-;)
 ラフロンドの正体も意外でしたけど、何より最後の、いつかやってくるかもしれない 未来に思いを馳せる彼の独白がいちばん心に残りました。

「クリケット」
 バルバドス島ブリッジタウンにやってきたポジオリは、クリケットの試合場で選手が死ぬという事件に 遭遇する。容疑者の母親に息子の潔白を証明してほしいと頼まれるポジオリ。事件を調べ始めるが、 裏にはなかなか複雑な事情があることが分かる…。
 情けなくはあるけど、名探偵(?)も人の子ってことですね〜。最後の新聞記事なんて、 おかしいやら切ないやら。ポジオリの最後の行動が笑わせてくれます(^_^;)

「ベナレスへの道」
 トリニダート島ポートオブスペインで現地のクーリーの結婚式を見たポジオリは、ふとした気まぐれから ヒンドゥー教の寺院へ一人で泊まってみることにした。だがその夜、結婚したばかりの花嫁が殺されるという 事件が……。
 衝撃的な話ですね〜。殺人の動機も動機なら、話のラストもラストです(^_^;) しかしまあ 他の作品からしても、いつかこうなってもおかしくはないような感じはありますが。 ミステリを超えた作品です。



「伯爵夫人の宝石」 ヘンリー・スレッサー/宮脇孝雄・池央耽ほか 訳  (光文社文庫)
 短篇の名手スレッサーの短篇集。

 結構最近の作品なんですね。でも作品は重厚感にあふれてますね。のっけから度肝を抜かれた短編集 でした。「伯爵夫人の宝石」は、シリトー刑事怪しい! くらいは気付いたけど、そんな生ぬるい 推測をものともしない解決が待っていて、拍手、拍手です。好きなのは、「シェルター狂想曲」 「ハーリーの運命」「目」「濡れ衣の報酬」「遅すぎた手紙」 ……皮肉でちょっともの悲しく、最後の一行で“落とす”見事な結末。まあ、落ちが読めちゃった のもあるけど(^_^;) どの作品も犯罪が関わってるけど、焦点は犯罪そのものではなく、それに 翻弄される人間の滑稽な悲劇。こういう機知に富んだ奥の深い短編は大好きです。まさに名人芸♪



「夫と妻に捧げる犯罪」 ヘンリイ・スレッサー/小鷹信光 編訳(ハヤカワNV S49.4.15)
 短篇の名手ヘンリイ・スレッサーの傑作短篇集。30篇収録。
 収録作品…
第一部 夫と妻に捧げる犯罪
 「愛犬」、「うわの空の殺人」、「就眠儀式」、「愛の巣」、「光る指」、「アンドロイドの恋人」
第二部 クライム・アンド・ザプライズ
 「ベッツィが待っている」、「勲章のない警官」、「ペントハウスの悲鳴」、「どなたをお望み?」、
 「人相書」、「暗殺指令」
第三部 ファンタスティック・ドリーム
 「三つの願いごと」、「猫の子」、「旅する医者」、「朝帰り」、「置手紙」、「おもちゃ」
第四部 陥穽の1ダース
「最後の微笑」、「出世の早道」、「奇病」、「ヴァイオリン・ソロ」、「解雇通告」、「すばらしい媚薬」、
「交通地獄」、「受験日」、「凱旋パレード」、「その後…」、「遺言」、「おはよう、未来です」


 みんな10ページ前後の短いストーリーなんですが、どれもオチがきいていて最高に面白いです♪  30篇も収録されてますがほとんど外れがないというのがすごいですね。多すぎるので 詳しくは書きませんが、私のお気に入りは… いつも上の空の化学技師ウィラードの最大の失敗「うわの空の殺人」、疑い深い社長が泥棒を 捉えるために使った薬品の皮肉な結果「光る指」、同じ飛行機に乗り合わせた男たちすべてが ベッツィという女性に会いに行く謎「ベッツィが待っている」、貸した金を返してもらおうと 友人の住むペントハウスに行ったチェットを襲った悲劇「ペントハウスの悲鳴」、一千人の男たちが 狙った敵の死を願う奇妙な会の話「どなたをお望み?」、人相を変えるために潜伏を続けていた 逃亡犯の悲劇「人相書」、ひとつだけ願いをかなえてくれる怪物の奇蹟「三つの願いごと」、 猫を父に持つエティエンヌが抱え込んだ悩み「猫の子」、息子の病を治すために未来からやってきた 医者の直面した現実とは…「旅する医者」、死刑囚に心の平安をもたらす話「最後の微笑」、 妻キャサリンのかかった奇病について友人に語るジョーの真意とは?「奇病」、 年をとって腕の落ちたヴァイオリン弾きのバウムガーデンが、試験に望んで抱いた苦悩「ヴァイオリン・ソロ」、 世界の終末が近づいたというニュースを聞いて、ショックのあまりキッシンジャー博士が意識を失った 理由とは…「遺言」、…などです♪



「うまい犯罪、しゃれた殺人」<アルフレッド・ヒッチコック編> ヘンリイ・スレッサー/高橋泰邦、他訳
  (ハヤカワポケミス 1964.2.28)
 米国の短篇の名手ヘンリイ・スレッサーの短篇から、ヒッチコックが選んだ作品集。17編収録。
 収録作品…
  「逃げるばかりが能じゃない」、「金は天下の廻りもの」、「ペンフレンド」、「信用第一」、
  「犬も歩けば」、「41人目の探偵」、「不在証明」、「恐ろしい電話」、「競馬狂夫人」、
  「気に入った売り家」、「老人のような少年」、「最後の舞台」、「二つの顔を持つ男」、
  「親切なウェイトレス」、「付け値」、「眠りを殺した男」、「処刑の日」


 ここに収録された短篇は、かのヒッチコック監督がすべてTV番組化したもので、彼自らが 厳選した傑作ぞろいの短篇集です。ヒッチコックはスレッサーの作品をとても気に入っていた らしいですが、ここに収録された作品を読むとさもありなんという感じですね。スレッサーの短篇は 今までにもいくつか読んでますが、どれも傑作ぞろいなんですよね。説得力のある人物描写と ストーリー、意外な展開。オチは微妙に読めてしまうのもあることはあるんですけど(^_^;)、それでも 読者を飽きさせません♪ 短い作品ばかりなのでひとつひとつの感想は述べませんが、 お気に入りは……。
 1週間分の給料をカードで擦ってしまった新婚のアーヴが妻についた嘘とは…「金は天下の廻りもの」、 自分の姪が文通している囚人が脱獄したと知らされた老女のとった行動とは…「ペンフレンド」、 金に困ったジョーは、行き倒れになった男の財布を失敬してしまうが…「犬も歩けば」、 落ち目の奇術師が計画した、世間を驚かすトリックとは…「最後の舞台」、ホテルに住む老婦人にいつも 親切にしていたウェイトレスは、老婦人から遺産を残してやるといわれるのだが…「親切なウェイトレス」
……などです♪



「不自然な死」 ドロシー・L・セイヤーズ/浅羽莢子 訳 (創元推理文庫 94.11.18)
 殺人の疑いのある死に直面した場合、医者はどうすべきなのか――。ピーター卿とパーカー警部が とあるレストランで語り合っていると、そんな体験をしたことのあるという医者が口をはさんできた。 彼が診てきた一人の癌患者が、思わぬ早さで亡くなってしまったのだが、結局不審な点は見つからず じまいだったというのだ。事件に興味を持ったピーター卿は、さっそく調査に乗り出す…。 ピーター・ウィムジイ卿シリーズ長編第三作。1927年。

 あと数ヶ月は生きられるはずの癌患者が、どう見ても自然死の状態で何故早めに死んでしまったかと いうことなのです。一言で言えば、ハウダニットですね。どうやったかというのも、私は全然分から なくて意外といえば意外だったんですけど、もっと意外だったのは、彼女と、彼女が……言えない(T_T)
 どんどん意外な展開があって、テンポも良いし面白いです♪ 法律の解釈と施行される時のことも、 微妙だけど説得力ありますね。家系図を頭の中で描くのが少し大変でした。従僕のバンターも 相変わらず良い味出してますが、今回ピーター卿の聞き込み代理人として登場したクリンプスンさんも 良いです。あんな不幸な目にあっても、今後もやめないみたいですね〜。最後に彼がぜんぜん 感謝しないのには、やなやつと思いましたけど、仕方ないですね。なんといっても、まあ、彼が頼んだ わけじゃないんですし(-_-;) それにしても、明るく楽しく探偵してるように見えるピーター卿も、 自分に関係ない人の事件に首を突っ込んでることに、時には悩むのですね。でも、そこは彼らしく すぐに吹っ切れてましたが(^_^;) ↓4作目『ベローナ・クラブの不愉快な事件』へ続きます。



「ベローナ・クラブの不愉快な事件」 ドロシー・L・セイヤーズ/浅羽莢子 訳 (創元推理文庫 1995.5.26)
 休戦記念日の晩、戦死した友人を悼むためにベローナ・クラブの晩餐会へ出掛けたピーター卿。 だが彼はそこで事件に巻き込まれることになる。クラブの会員の一人が椅子に座ったまま 死んでいるのに出くわしてしまったのだ。その上この事件が、後にとんでもない事態に発展する。 故人の妹がほぼ同時刻に亡くなっており、莫大な遺産の行き先が問題になってしまったのだ。 調査を頼まれるピーター卿だったが……。ピーター・ウィムジイ卿シリーズ、第4作目。1928年。

 よくある事件ですかね。いえ、もちろんミステリの中においてではですが(^_^;) わずかな 時間差で死んでしまった二人の、どちらが一体先なのか…。そんなの調べようがないじゃない、 とか思っていると、事件は意外な方向に。わりとテンポよくいろんな方向へ引きずりまわされて(?)、 なかなか楽しめたお話でした。でもストーリーはけっこうわき道に入りがちかなあ…(-_-)   ピーター卿自身戦争に行っていろいろつらい目にあっているわけですけど、 今回は周りにもそういう人が出てきて、全体的にちょっと陰のあるお話になってる気がしますが…。 ピーター卿もいろいろ不愉快な目にあうし、事件としてはあんまり救いのある結末ともいえません。 全体的には、う〜ん、まぁまぁですかね(^_^;) この作品、端々で作者の女性観や結婚観が仄見えて、 その点ちょと面白いですね。ここではまだピーター卿、絶対結婚しないなんて言い張ってますけど…(笑)  というわけで、5作目『毒を食らわば』に続きます。そのうちに。



「ピーター卿の事件簿」 ドロシー・L・セイヤーズ/宇野利泰 訳 (創元推理文庫)
 ピーター・ウィムジイ卿の推理が冴える7編の中短編。主なものの感想。

「鏡の映像」 
 内臓の位置が全部逆というダックワージー君、 無意識のうちに殺人を犯したと思い込んで…。 トリック云々より、ダックワージー君の描く不思議な世界を堪能。なんだか大変そうな人…。

「盗まれた胃袋」 
 大伯父サマから遺されたものは、なんと胃袋! 想像力たくましくして読むと、かなり不気味な お話…。

「完全アリバイ」 
 この頃ってこういうの珍しかったのかな? 現代人には…ああ…ネタがすぐ分かってしまう…。

「銅の指を持つ男の悲惨な話」
 確かに悲惨だ(-_-)。

「幽霊に憑かれた巡査」 
 この短編集中、解決前にトリックが分かんなかったのはこれだけ(^_^;) この話既にピーター卿 結婚して子供が生まれてるし、ちゃんと順番追って読んでいかないと、やはり流れとしてよく分からない。



「メルトン先生の犯罪学演習」 ヘンリ・セシル/大西尹明 訳 (創元推理文庫 1961.4.28)
 法理論の権威であるメルトン教授は長らくアメリカで教鞭をとってきたが、このたび 母校ケンブリッジ大学へ迎えられイギリスへ帰ってきた。だがケンブリッジ駅で列車を降りた途端、 転んで頭を強く打った彼は、何故かその後の授業で犯罪にまつわる面白おかしい話ばかり するようになってしまう。生徒たちには大人気だったのだが、事態を重く見た学寮長は メルトン教授をとある場所へ送り込む…。1948年。

 堅物だったはずのメルトン先生、頭を打ってちょいとばかり壊れてしまい(笑)、 犯罪にまつわる小噺(?)を次々に繰り出すようになるという、のっけから突拍子もない状況♪  メルトン先生自身が陥る境遇も笑えるのですが、何より彼の語るオチの利いた短い話が 小気味良い、さくっと楽しめるユーモアミステリです♪ 語ってる時間のほうが長いですから、ほとんど短編集のような趣きですね。 どれもちょっと皮肉で楽しい話ばかり。メルトン先生の行く末も、皮肉といえば皮肉なものです(^_^;)  判事でもあった作者の処女作ですが、後の作品にもこのユーモアあふれる作風は受け継がれてますね。 本当に楽しい作品でした♪



「判事とペテン師」 ヘンリー・セシル/中村美穂 訳 (2005.12.20 論創社)
 牧師の娘で賭け屋の事務所で働くルーシーは、競馬で不当な儲けを得たとして裁判を 起こされてしまう。彼女の事件を担当したのは高名な判事ペインズウィックだったが、 後に彼はこの事件を嫌でも思い出さねばならないような事態に陥ってしまう。それは 根っからのペテン師である息子マーティンが、多額の借金を抱えて彼に 泣きついてきたからだった。ペインズウィック判事は、ルーシーが競馬で儲けた 秘密を探るべく単身牧師館へ乗り込むが…。1951年。

 自身判事でもあった、ヘンリー・セシルの初期の作品、法廷もの…というか ユーモアミステリというか。前半は放蕩息子の借金をなんとかしようと 奔走する判事の物語、後半は自らのペテン師としての才覚(?)でその借金を なんとかしようとする息子マーティンのお話です。
う〜ん、前半はけっこう面白かったんですが、マーティンの話になってきたらちょい ごちゃごちゃしてきたので残念な気がしました。前半と後半があまり うまくつながってない感じで、全体的に散漫な印象になってしまったのかな〜。 なんか、持ち味を生かしきれてなくてとっても惜しい感じです(^_^;)  あ、後半にちょい役ですがメルトン先生が出てます(笑) ちょこちょこ笑えるので、 読んでみて損はないと思います。他の作品の後でもいいかな、とは思いますが…(^_^;)



「判事に保釈なし」 ヘンリイ・セシル/福田陸太郎 訳 (ハヤカワポケミス 1958.2.28)
 厳格な法律家として認められていた老プラウト判事は、ある事故がきっかけで売春婦殺しの容疑を かけられてしまった。一人娘のエリザベスはその汚名を晴らすべく、ちょうど自宅に忍び込もうとしていた 泥棒アムブローズ・ロウを脅し、事件の捜査を依頼するのだが…? 1952年。

 ちょいとひねったユーモアあふれる英国ミステリ♪ 翻訳が古いのは仕方ないですが、皮肉で奇妙なユーモアを にこりともせずに言うこの雰囲気、好きな人間にはも〜たまらないです(^_^)  カタそうなタイトルで敬遠されたら惜しいですが、さらに惜しいことにこの本は絶版です(-_-)
 道徳的に厳しい老判事が、売春婦殺害容疑で起訴。だって判事70歳ですぜ、とか思ってるうちに、 気の強い娘は泥棒組織の親玉とっつかまえて事件の調査をさせ始めるし(笑) 真犯人は特に劇的でもなく さらっと明かされてしまうんですが、それでもロウ氏の地道な調査は見もの。 退役軍人のブレイン大佐を使った心理作戦は笑えますね〜(^_^;) 本筋には無関係な人たちの 変なエピソードも良いです。作者自身判事として法律の世界に身を置いて、堅苦しい世界を 舞台に書いてるとは思えない面白さ。でも、ま、どっちかっていえば多少ひねくれたミステリ読み 向きでしょうか(笑) 楽しませていただきました。
 次は『あの手この手』か『法廷外裁判』に続きます。そのうちに。



「老人たちの生活と推理」 コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希 訳 (創元推理文庫 2000.7.21)
 ホテルを改築して建てられた豪華な老人ホーム、<海の上のカムデン>。そこで暮らす元司書の 目立たない老人が、滅多刺しにされた姿で発見される。殺される理由もなさそうな彼女に、一体 何があったのか? 元提督夫人の気位の高いアンジェラとその友人たちは、ありあまる好奇心を 満たすべく探偵活動に乗り出すが……。1988年。

 アメリカはサンディエゴの高級老人ホーム、探偵はそれぞれものすごく個性的な老婦人(平均年齢 70歳以上(^_^;))四人組。以後シリーズものとして続く、ユーモア・ミステリの第1話目です。
 最初アンジェラがでてきた時点では、こーゆーオバサマ苦手だな〜(^_^;)と思ったんですが、 これがまた笑わせてくれるんですね〜♪ 退屈というここともあるけど、みんないい歳して(失礼) 探偵ごっこをやってみたくて仕方ない。でも、警察が立ち入り禁止にした部屋に夜中に窓から 忍び込んだり、入居者に聞き込みをしたりして、ちょっとかっこいい若き警部補マーティネスに 一歩先んじた♪なんて思ってると、警察はその二歩先ぐらいを行ってたり(^_^;) 結局警察の 邪魔ばっかし(笑) でも、彼女たちは(もちろん)懲りません。真相はあれよあれよと言う間に 分かってしまい、犯人も意外じゃないかもしれないけど、この舞台と探偵には特筆すべきものが。 老人ならではの苦労(?)やエピソードが、謎を解くきっかけにもなってたりとか。老いに つきものの暗い部分もあるけど、重くはなってないのでさらっと読めます。むしろ、年をとってからも こんな風でいたいですね〜(?…(^_^;)) とにかく楽しいお話。
 アンジェラたちの頑固さ&しぶとさにお手上げのマーティネス警部補と助手のスワンソンも いいです(*^^*) このお話以降のシリーズにも登場するそうで、今から先が楽しみ(^_^)  第2作『氷の女王が死んだ』に続きます↓



「氷の女王が死んだ」 コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希 訳 (創元推理文庫 2002.4.26)
 サンディエゴの高級老人ホーム、<海の上のカムデン>に、新しい入居者がやってきた。 尊大な振る舞いで誰からも嫌われた彼女は、数週間後何者かに殺されているのを発見される。 地元警察がやってきて捜査を開始するが、もと提督夫人のアンジェラとキャレドニアは またしても事件に首を突っ込み始める…。シリーズ第2作目。1989年。

 老人ホームシリーズ(というのはなんだか変だ)第2作目です。1作目から約半年後という設定ですね。 こんなに人が殺されていいんでしょうか、この老人ホームは(^_^;) まぁ設定に ちょと無理があるのは仕方ないとして(だってまだまだこのシリーズ続いていますし)、とにかく 楽しいんですよね〜。1作目より明るいですね。キャラクターも際立ってますし。なんといっても、 80近いおばあちゃんたちが主役なんですから。しかしハンサムなマーティネス警部にどんなに 怒られようと、危険な目に会おうとアンジェラとキャレドニアの好奇心は押さえられませんね(^_^;)  なんだかこっちまでわくわくしてくるから不思議です。室内装飾家や、グローガン翁の心温まる ちょっとしたエピソードもいいです(*^^*) 謎解きもそれなりに良いですけど、これはやっぱり おばあちゃんたちの爽快な活躍が楽しい作品です♪ 
 3作目『フクロウは夜ふかしをする』に続きます↓



「フクロウは夜ふかしをする」 コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希 訳 (創元推理文庫 2003.3.28)
 高級老人ホーム"海の上のカムデン"で、連続殺人事件が発生。過去の実績(?)を生かし、 事件の捜査に協力したいアンジェラとキャレドニア。だが事件担当のベンソン部長刑事は、捜査が進まないにも かかわらず、彼女たちのことなど気にも留めてくれない。勝手に聞き込みを始めてベンソン部長刑事を 困惑させるアンジェラたちだったが、やがて第三の殺人事件が…。シリーズ3作目。1992年。

 "海の上のカムデン"シリーズ3作目♪ この話から読んでも問題ないですね。でもこの辺りからもう 年齢のことはあんまり問題にされなくなってきたかな? 後がまだまだ続きますしね。 老人ホームで人が殺されまくるという設定も、もう気にしない気にしない(^_^;) 80歳近いおばあちゃんたちが 探偵気取りで大活躍(困ったものだ(^_^;))、ただただ楽しい ユーモアミステリです。
 今回はいつも老人ホームの事件を受け持つ(というのも変だけど)かっこいいマーティネス警部補とその助手の スワンソンが最初から事件の担当ではなく、生意気で堅物なベンソン部長刑事が登場。でもまぁ、彼の気持ちも 分かりますよね。ほっとけば被害者の家に勝手に侵入し、勝手に聞き込みをし、勝手に危ない目にあう おばあちゃんたち相手じゃ…(^_^;) ミステリとしてはけっこう単純なんだけど、新しい入居者ガーデナーと その甥や、アンジェラの宝石のことも絡んで、楽しいストーリーになってます。
 4作目『ピーナッツバター殺人事件』に続きます↓



「ピーナッツバター殺人事件」 コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希 訳 (創元推理文庫 2005.6.17)
 サンディエゴの高級老人ホーム"海の上のカムデン"の近くの線路上で、轢死体が発見された。 それは最近頻繁に老人ホームに出入りし、ホームの女性と親密になっていた男だった。 事件を調査するマーティネス警部補に、この男性と関わりのあった人にそれとなく話を聞いてほしいと頼まれた 元提督夫人アンジェラとキャレドニア。大いに乗り気の二人は、頼まれていないことまで始めてしまうが…。 シリーズ4作目。1993年。

 老人(もとい、年配の方?)たちの暴走が楽しいユーモアミステリ、シリーズ4作目です。 やっぱここまで来るともう1作目から読んでいただきたいです。今回は“海の上のカムデン” 入居者の親しい人が不審な死に方をし、首を突っ込まずにいられないアンジェラとキャレドニアがまたしても いろいろしでかしてくれてます(^_^;) それでも前の作品などに比べるとわりとおとなしめな印象ですけど、 やっぱしキャラクターがホントいいんですよね〜。今回ホームに奇妙なインコがやってきたり、 関節の痛いトム・ブライトン翁まで事件に引っ張り込んだり(パソコンに夢中なシーンいいです(笑))、スワンソンとチータの間にいろいろあったりと、 なかなか変化があって面白いです。やっぱミステリとしてよりこの辺が楽しいシリーズ。相変わらず ホームの食事はおいしそうですしね〜。こんないいところなら今だって住みたい(笑)  今回ちょっと勉強になった(?)のは、「ピーナッツバター」ですかね〜。確かにいい言葉かも(^_^;)
 5作目『殺しはノンカロリー』に続きます↓



「殺しはノンカロリー」 コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希 訳 (創元推理文庫 2007.10.26)
 高級老人ホーム“海の上のカムデン”に住むアンジェラは、 友人ドロシーに過去の名探偵ぶりを見込まれ、彼女の経営する美容スパで起こった 殺人事件の調査を依頼される。アンジェラは親友のキャレドニアを伴い、表向きは客として スパに乗り込むが、程なくして第二の殺人事件が…。シリーズ5作目。1994年。 本の詳細

 シリーズ4作目ですが、これまでの作品と舞台が違う上、過去の事件にはあまり 触れられてないので、これだけでも大丈夫です。でも、まあ、最初から読まれた方が もちろんいいですが。
 アンジェラとキャレドニア、80歳を超えたおばあちゃんなわけですが、今回は調査のためとはいえ ダイエットに励むことに…(^_^;) 事件の調査より何より、こっちの方がある意味危険な 気がしますね(笑) パターンとしてはまぁこれまでどおり、暴走しがちな二人を 知り合いのマーティネス警部補やスワンソンがサポート(?)する形で、ほのぼのと 調査が進みます。老人ホームに劣らず個性的な面々も出てきて楽しいです。 ミステリとしてより、やっぱりシリーズとして楽しむ作品ですね。 だから個人的には老人ホームが舞台の方が好きなのですけど、目先が変わるのもよいかも。 キャレドニアにはちょっと素敵なことも起こるし(^_^) さらっと読める楽しい作品でした。
 6作目は、翻訳されたら読みます。



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