世は幕末、新しい時代の風が吹き始めようとする頃。土佐の武士の娘苗は、五歳の時に旅絵師の弾く
一絃琴の音色に魅せられ、以後の人生を琴と共に歩むようになる。師有伯との出会いと彼の死、
不幸な結婚…。後に土佐に一絃琴の隆盛をもたらす市橋塾の設立、弟子蘭子との確執。
一絃琴を通し明治の女性の矜持と生き様を描く直木賞受賞作品。1978年。
前にドラマ見て以来読みたいと思ってたんですが、
ドラマのことはもうすっぱり忘れているので触れないことにし…(^_^;)
明治の女性の芯の強い、粘り強い生き様。今の女性と違っていつも何かに頭を押さえつけられているだけに、
内に秘めたものは恐ろしいほどなのでしょうか。士族の誇り、師への想い、子供ができないことに対する負い目、
弟子への憎しみ……言葉に出すことを許されない思いのすべてを一絃の琴に託す苗。文章はわりと淡々としていて読みやすいのですが、
それでも女性の秘められた情念が恐ろしくなってきます。前半は苗が主人公、後半はその弟子蘭子が
主人公ですね。生い立ち、琴への傾倒、似たような人生を辿りながら決して重なり合わない女性たち。
こういうのってえてしてドロドロになりがちかと思うんですけど、
二人の憎しみ合いさえ暗い琴の音のようで、ドロドロ嫌いな私にはありがたかったです。
しかし二人とも琴の奏者として誰からも認められるようになったというのに、なにかそれほど幸せそうに
見えないのは私だけでしょか。特に蘭子。一人の女として自立しても何かを成し遂げても、
今の自分の幸せをいつも他の何かと引き比べずにいられないってのは不幸ですよね…。
だから全体としてはわりと暗いお話のような気がします。でも感傷に流されてないのがいいですね。
面白かったです♪ 違う作品も是非読んでみたいところです。
|