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zero hour

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HAPPY BIRTHDAY 1

 紅蓮の炎が燃えさかっていた。
 体の芯まで凍らせるような冬の夜空を焦がす、地獄の業火だった。
 白く続く雪原が、反射する炎で真っ赤な鮮血のように染まっていた。
 いまだ神羅に抵抗を試みるアイシクルエリアの反乱組織『阿修羅』を、神羅軍が壊滅に追い込んだ瞬間だった。
 作戦に参加したのは、ソルジャー部隊一個連隊。
 総指揮をとるのはセフィロスだった。

 レジスタンスを一掃せよ……。

 それが、彼に与えられた任務だった。
 当然のことながら、非戦闘員を含めて荷担する者全てを抹殺しろとの命令だった。
 戦争終結以来、そんな命令は絶えることがなかった。かなわぬと知ってなお抵抗を続ける組織を、ひとつ、またひとつと潰してゆく作業は、永遠に終わらぬ夜宴のようだった。
 最後のひとつを殲滅したとき、どんな悪魔が蘇るのだろうか。

「セフィロス!」
 ザックスが、東の砦から戻ってきて、息せき切って報告した。
「地下通路があった。北へ抜けるトンネルを掘っていたらしい」
 セフィロスは、形の良い眉をひそめて傍らに立つ副官を見た。
「追跡は?」
 ザックスは、体を折り、両腕を膝に突っ張って、ぜぇぜぇと弾む息を整える。
「二個中隊。ファーストが5人、入ってる。ただな、逃げたのは女子供らしいんだ」
「出した命令は?」
 ザックスは、体を起こした。普段、おちゃらけている時とは打って代わった、鋭い目をしている。その冗談を言うのが得意な口から、無情な言葉がこぼれ出た。
「殲滅」
 セフィロスは、浅く頷いて北の空を仰いだ。抜けるような星空が、どす黒い煙に覆い尽くされている。白銀の髪が、炎に染まった。
「行くぞ」
「あんたが追う必要があるのか?」
「リーダーの死体が確認されていない」
「確かに」
「ゲルニカを出す。トンネルの出口を探せ」
「了解」
 ザックスは、大剣を背中に担ぎなおして、ゲルニカに向かって駆けて行った。
 その背中を見送って自分も駆け出そうとしたとき、セフィロスは不意にミッドガルで自分の帰りを待つ少女のことを思い出した。
 こんな日に、何人の人間の命を奪えばいいのだろう……。
 不覚にも、そんな想いがよぎった。
 今更、きれい事を言える身ではない。
 無念の最期を遂げた人々と、その家族の怨念が、呪詛の言葉を吐きかけてくるのは、今に始まったことではないのだ。
 闘わなければ生きてゆけなかった。相手を殺さなければ前に進めなかった。
 だから、ためらいも、後悔も、とうの昔に捨て去ってきたのだ。
 それでも、あの少女の無垢な瞳を想うたび、我が身の不条理を感じずにはいられない。
 それは、決して同化することのかなわぬものへの憧憬なのだろうか。
 もしかしたら、憎悪にも似た感情なのかもしれなかった。
 憎み憧れ、それでもその白さを護りたいと願う。
 あの少女の持つ、決して何物にも染まらない純白の強さが、血塗れの英雄を迷わせていた。

 エアリス……。
 今日は、彼女の17回目の誕生日だった。

 エアリスは、鏡の前でファッションショーをしていた。
 教会の屋根裏部屋である。
 姿見の前で、くるりと回った。ふわりと彼女の動きにつれて、白いワンピースの裾が翻る。裾をつまみあげて、うーんと首をかしげた。
「ちょっと、子供っぽいかなぁ?」
 背中のジッパーを降ろし、すとんと床に服を落とす。
 ベッドの上に雑然とちらかる服の上に、ワンピースを放り投げた。
 クローゼットから、ハンガーにかかった黒のチャイナドレスを取り出した。昔、西の国のトモダチに押しつけられた一品だった。あの子も冗談で「これで男を悩殺」とか言って笑っていた。
 そっと袖をとおし、鏡の前でポーズを取ってみる。
 悩殺スリットが、腰骨のあたりまで入っていた。羽根のついた扇子をぱたぱたさせて、おほほ、なんて笑う自分を想像して、暗くめり込んだ。
「……ダメ。セフィに笑われちゃう……」
 はぁぁぁぁ〜、と深い溜息をついて、エアリスは黒のチャイナドレスを脱ぎ捨てた。
 白いスリップの肩紐が、二の腕にずり落ちて、それを無造作に肩に戻した。ローウエストの切り替えで、ミニの裾がひらひらとフレアーになっている、チュチュのようなランジェリーだった。
 鏡に映った自分の下着姿を見て、エアリスは思った。
 肩、出すと、可愛いかも……。
 頭に電球がピコンと閃くような直感だった。エアリスは、急いでそこらに放り出してある服を着込むと、コートを羽織って外に飛び出した。

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