▲TOP ■NAVIGATOR ■COMMUNICATION ■WORK ■CINEMA        
zero hour

 ………………………………………………………………………………………………………… †

花束を担ぐ男 1

 セフィロスが、神羅ビルの中を花束を担いで歩いていた。
 一抱えほどもある、真っ赤な薔薇の花束だった。
 通りすがりの女子社員たちが、格好の噂の種とばかりに、ささやき始める。
 誰にあげるのかしら?
 えぇー? プレゼントの花束、普通、担ぐぅ?
 じゃあ、貰ったのかな?
 誰が、男の人に薔薇の花束プレゼントすんのよ?
 あら、彼になら不思議じゃないわよ。似合いすぎって感じ。
 う〜ん。送り主は誰?
 女の人だと思う?
 もしかして、男?
 ザックス副官かしら?
 なんでぇ? 彼なら、ゴンガガイモ担いで持ってくるわよ。
 じゃあ、新人のクラウドくんかもよ?
 わぁ、なけなしの給料はたいて? 健気ぇ〜。
 あ、ほら。でも、彼に色目使ってる部長さんが居るじゃないの。
 いや〜ん。ハイデッガー元帥だったりしてぇ……。
 げ。なんでそうなるのよ……。
 女子社員たちが勝手な想像を巡らせてヒソヒソと話しているのを尻目に、セフィロスは神羅ビルを出た。
 花束を担いだまま、駐車場に降りる。
「じゅ……准将、すごい花束ですね」
 警備当番のクラウドが、見事な花束に目を奪われて、ポカンと口を開けた。
「思いの外、目立つので閉口している」
 セフィロスはボソッとつぶやいて、浅く嘆息した。
「そりゃぁ、当たり前ですよ。ご自分がどんなに注目される存在か、判ってないんだもん……」
「では、お前が持って歩くか?」
 クラウドは、驚いて目を見開いた。
「えっ? ぼ、ぼぼぼぼくに下さるんですかっ?」
 セフィロスは呆れた。
「お前、こんなものが欲しいのか?」
 クラウドは赤面して首を横に振った。
「いいえっ。そそそそんなつもりじゃ……」
 セフィロスは破顔した。
「確かに、このミッドガルで花は珍しいかもしれんな……。悪いな。次は余分に注文しておいてやる」
「えっ? そそそれって……?」
 赤くなったり青くなったりしているクラウドに微笑んで、セフィロスは車のキーを受け取った。
 立体駐車場から出てきた軍用ジープのドアを開ける。
 セフィロスはひょい、と車に乗り込み、助手席に花束を置いた。
「あのう……」
 おずおずと、クラウドが声をかけた。
「なんだ?」
「ほんとに、ジープでいいんですか? あの、女性に会うなら、もっと、かっこいい車のほうが……」
 決死の覚悟で進言するクラウドに顔を向けて、セフィロスは曖昧に微笑んだ。
「そ、それに、フルオープンだと狙撃……」
「このところ……」
 ぽそりとセフィロスは漏らした。
「は?」
「俺の周りには、何かと世話を焼きたがるヤツばかりが集まる……」
「すっ、すいませんっ! 出過ぎたことでしたっ!」
 シャッキーンと、全身を針のように硬直させ、クラウドは詫びた。
 セフィロスは、そんなクラウドを見てニッと笑う。
 ふわりと助手席の花束に視線を落として、エンジンをスタートさせた。

 どすどすという足音をたてて、黒髪の大男が兵舎の廊下を鼻歌混じりに歩いていた。
 その肩に、無骨な木の枝を担いでいる。
 先刻、宝条の日本庭園から失敬してきた、いわゆる盗品だった。
 宝条の唖然とする顔を思い浮かべて、ザックスは「きしし」と白い歯をむき出して笑った。
 突き当たりの、4人部屋のドアを、げいんげいんとノックする。
「そんなに叩くとドアが壊れちゃう……ったく、いったい、誰……?」
 金髪の新兵が、頬を膨らませて出てきた。
「あ……ザックス……」
 クラウドは、ぽかんとザックスを見上げて棒立ちになった。
「おまえなー、ソルジャー試験、落っこちたんだって?」
「まだ、1回目だから、しょーがないよ」
 拗ねたように、クラウドは言う。
 ザックスは、カラカラと笑った。
「まあ、そう落ち込むな。おまえが花ほしがってるって聞いてさ……」
 クラウドは、怪訝な顔になった。
「えっ? 誰にそんなこと?」
「誰って、まあ、誰でもいいじゃん。あいつも世間話のついでだったみてーだし」
「世間話?」
「ほらよ。俺も初めて見る花なんだけどもな。清楚なのに豪華ってゆーか……、ちょっと薔薇みてぇだろ?」
 ザックスは、担いでいた枝をクラウドの眼前に無造作に差し出した。
 それは、見事な八重咲きの椿の花だった。
「え? これを……僕に?」
「おうよ。まあ、これで次の試験、がんばれよな」
 半分、照れたように笑って、クラウドは突き出された枝に手を伸ばした。
 豪華な中にも、どこか切なくなるような静けさををたたえた、凛とした花だった。

1 2

-------------------------------------------------------------------------

 多分、同人作家さんが描かれたものだと思うんですが……。
 セフィが、無造作に花束担いで絶妙な腰つきで立ってるイラストを見せていただきました。
 そんなわけで、お題は花束。
 うちのセフィが花束を贈るとしたら……ってだけの話です(^^;
 本当に、なんてことのないエピソードなんですけど、俺様設定全開の私のこと……。
 うちのセフィエアの時間軸&設定で書いてしまいました(^^;
 うちのセフィロスの階級は准将です。ザックスは副官です。
 過去に因縁を持ったセフィロスとエアリスは、紆余曲折の末らぶらぶです(爆)
 時間軸は6年前です。


 ……………………………………………………………………………………………………………… 
                                             
zero hour
                          
Copyright(c) Lei Tojoe 1997-2002