セクハラ行為等の防止と対策
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2007.10.1(2003.2.2)
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会社としても従業員によるセクハラ行為の防止対策などは不可欠になっています。ところが、実際には社内で十分な対応策が講じきれてはいないのがかなりのようです。特に従業員が外部の人間に対して行ったセクハラやストーカー行為に対しては、極めて不十分な管理体制しかとられていないことが大半といえます。今回は、セクハラやストーカー行為を行った場合に会社はどうなるのかの概論を、主としてセクハラ事例を中心に裁判例などを引用しながら検討・説明してみます。
| その1 セクシャル・ハラスメントやストーカー行為の認定 | |
セクシャルハラスメントについては、職場における業員に対する性的言動と把握されることが多いが、会社とそのお客さんの関係、先生と生徒の関係などでも、上位者と下位者という立場を利用しての性的言動、あるいはその場にいざるをえない被害者に対してセクハラ環境を強制するようなことになれば、セクシャルハラスメントとなるのは当然です。雇用機会均等法において定められているのは雇用に関する問題として「職場における」「従業員に対する」セクハラを規定しているだけであって、後述の指導教官の院生に対するセクハラなども、社会的にはセクハラとして把握されているものです。 セクシャルハラスメントとしては、主として対価型(不利益を与える)ものと環境型(就業関係への悪影響)が問題とされており、直接に性的行為(性的関係の要求など)に及ぶに至らなくとも、性的感情を害するような環境を作出することでセクシャルハラスメントと認定されることがあります。また、これまでのセクハラの認定というものは、年を追う毎に主観主義的判断がより強くなる傾向が伺えます。訴訟においては純主観主義であると言い切れるほど、被害者側の主観的判断が重要視されているような事案もあります(もっとも、このような純主観主義が主流とはなっていません)。 講師という立場を利用して生徒の携帯電話に電話をする、補講と称して特定の生徒との対応関係を持つなどの行為についても、生徒において性的感情を害する場合には、セクシャルハラスメントと認定されることがあります。勿論、性的言動にまで至らない場合であっても、ストーカー行為であると判断されることがあります。 セクハラによる不法行為であると認定される場合としては、 |
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| @ 性的言動に対する嫌悪感を生じさせたこと(またはその様な環境を作出したこと) A 労働環境・就業環境などの悪化(環境型)または就労・学業上の不利益などの発生(対価型)のいずれかがあること、 B Aの対価については@と時間的因果関係があること |
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| が一般的な要件であるといえます(なお、上記の@〜Bは分かりやすくしたもので、実際の要件は各裁判例の説明などを参照して下さい)。 しかし、後述2でみるように、例えば@については嫌悪感の基準が「一般の女性」「社会通念」の基準が、徐々に当該当事者の主観的認識に移行しつつあるとか、Bの因果関係についてもそれほど厳密な認定が求められなくなってきているなど、全般的に認定要件は緩やかになってきていると言えます。 | |
<セクシャルハラスメント〜 sexual harassment>
最近では、セクシャルハラスメント(セクハラ)というのも日常用語としても用いられるようになってきました。良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが、少なくとも「違法な行為である」ことの認識が一般化しているのはよいことでしょう。問題はセクハラとは何なのかですが、一般には「他者の意に反する形でこれに向けて性的な言動を行うこと」(法律学小辞典)などと定義されています。
この定義ですと、なんでもかんでも「嫌な性的言動はセクハラである」と思われがちですが、これまでに裁判などで認められたセクハラ行為については大きく分けて「対価型」と「環境型」とに分類できるとされています。対価型というのは、性的言動を受けた相手方の反応次第では経済的あるいは精神的な不利益を課す類型とされます。典型的なのは、会社の上司が部下である女性に対して「勤務評価に響かせる」などの影響力を行使して性的言動を行うものです。この類型の行為は、刑事的にも強制猥褻や迷惑防止条例違反などの刑法犯罪となり、事案によっては強姦に該当するとして極めて重い刑罰を科せられることもあります。
これに対して、環境型といわれるものはすこしやっかいです。つまり、この類型におけるセクハラ行為は、特定の人を対象としてなされている訳でもなく、また、具体的な不利益が常に必ず発生するとも限らないからです。例えば会社のオフィスにヌードポスターが貼られているとかがそうですが、これによって誰か特定の従業員に対して嫌がらせをしているということはないでしょうし、ヌードポスターが貼ることで具体的な不利益を与えているとも言い切れない面もあります。しかし、そのような環境の中にいなければならないことで不快感などが醸しだされ、その場の雰囲気が悪くなります。ですからこれもセクハラとされます。
具体的に、どの程度でセクハラになるのかは実際問題として非常に難しいものです。対価型などでは被害者の対応次第で不利益を与える場合のその程度などが重要な要素となるため、比較的容易に判断できることが多いと言えます。環境型の場合には、特定の不利益を与えるという訳でもないために、被害者が受ける迷惑や不快感、嫌悪感がどの程度なのかによってセクハラか否かの結論が変わってくると言えます。
詳細については本文で説明しますが、セクハラ行為は民事上は不法行為となることがあるという点は肝に銘じておく必要があります。<セクシャルハラスメントと不法行為>
社会一般でセクシャルハラスメント(セクハラ)と言われているものと、訴訟の場でセクハラと扱われるものの違いは、単に相手方の意に反する性的な言動が行われたか否か(一般的にはこれで「セクハラだ!」と言われる)、だけでなく、そのセクハラ行為が人格権侵害であるとか職場安全配慮義務に違反するなどの“違法”な行為であり、そのようなセクハラ行為によって具体的に何らかの損害が発生した、ということ、つまり民法上の不法行為(民法709条)になるかどうか(これが裁判の場で違法なセクハラだと認定されるもの)、の違いです。いくら性的嫌悪感を与える行為をしたとしても、それが何ら損害を発生させない場合、あるいは社会的に見て違法な行為とは認められない場合、には、セクハラ行為をした者に対して不法行為責任は発生しないので、世俗的には「セクハラ」と呼べても、法律的に違法なセクハラにはなりません。セクハラ、というのは特殊な行為なのではなく、不法行為の一類型(あるいは会社の債務不履行の一類型)であるという理解がまず必要です。この点を混同していると、セクハラの理解や裁判になったセクハラの事案についての評価を誤ることとなります。
本稿では単に「セクハラ」と言っている場合であっても、法律上の責任を発生させるもの、つまり不法行為責任が認められるもの、または債務不履行責任が認められるもの、のみを指しています。なお、いうまでもありませんが、法律上不法行為にならないから相手が嫌がる性的言動をしてもよい、というものではありません。違法でなければ何でもやっていいという考えが肯定されるものではありません。
| その2 セクハラ認定事案と賠償額 | ||||||
セクハラとなる行為にはどのようなものがあるのかをまず簡単に見てみます。同時に、「たかがセクハラ」と甘い考えでいるととんでもないこととなる慰謝料金額についても見てみます。 セクハラについては、既に数多くの研究報告がなされていますし、ちょっとした本を見ても何がセクハラなのかは載っていますので、ここでは類型的な説明をするのではなく、実際に問題となった事案でどのような行為がセクハラとされたのかを、例を挙げて見てみます。 なお、下記にあげている事案は、セクハラの分類としては(敢えて2分類のいずれかに該当させるならば)いずれも「対価型」に該当すると言えます。環境型の事案については、多少散見されるものの、公刊物での掲載がほとんどないなどしており、事案として参考となる適当な例が見あたらないため、ここでは典型的な事案(対価型)のみをあげてあります。 |
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| 金沢セクシャルハラスメント事件(金沢地方裁判所輪島支部判決平成6年5月26日) | ||||||
(事案) |
会社社長が、自宅で家政婦的仕事に従事する従業員の体に触る、胸に触る、抱きつくなどの行為をしたことが、不快感を与え、その労働環境を悪化させるものであり、また、このような行為を拒んだことでボーナスを支給しなかったことが、性的行為に対する対応を一因として不利益を課すものであるとして、セクハラ行為と認定した事案。 |
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この事案は、この事案は最終的に最高裁で確定し(最判平成11年7月16日)、セクハラというものが司法の場でも公に認められる契機となったものです。 セクハラについての黎明期とも言えるためか、セクハラの認定について(現在と比べると)かなり厳格な認定をしていることが分かります。判決における認定事実をみると分かりますが、@性的言動に対する嫌悪感を「一般の女性」を基準にしていること、A労働環境の悪化(環境型)とボーナス支給の停止(対価型)の双方があること、BAの対価について時間的因果関係を厳密に把握していること、など、セクハラの認定をかなり厳格に行っています。 なお、この事案の上級審である名古屋高等裁判所金沢支部判決平成8年10月30日においては、「職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、これかすべて違法と評価されるものではなく、その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、被害女性の年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害するものとして、違法となるというべきである。」とセクハラの要件をあげており(この基準自体は最高裁でも支持されている)、@婚姻歴の有無や被害女性の年齢なども判断要素として明示されている、A言動の反復・継続性も判断要素となっている、ことが注目されます。また、この判決でもB「社会的見地から不相当とされる程度」ということで、セクハラ行為か否かの判断基準については客観主義的に検討しています。 |
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| 大阪地方裁判所判決平成10年10月30日 | ||||||
(事案) |
出張先のホテルで二人きりの状況で、社長が従業員をベッドに誘う行為が、社長と一従業員という関係に鑑みて、雇用契約上の地位を利用して性的関係を求めたものとして、セクシュアル・ハラスメントに該当するとした事案 |
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| この事案では、(当時の)セクハラ成立の要件を有る程度明確にしたものと言えます。分類とすれば対価型のセクハラに限定されるものと言えますが、「セクシュアル・ハラスメントとして不法行為が成立するためには、雇用関係上の地位を利用し、ことさらに不快感を与えたり、性的関係を強要することが必要である」との要件を定立しており、具体的な行為のうちの「面前で下着を見せたこと」「顧客の面前での『昨晩あなたはどうやって私の部屋に入ってきましたか』」と発言したこと、についてはセクハラによる不法行為には該当しないと判断されています。 |
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| 東京地方裁判所判決平成9年12月24日 | ||||||
(事案) |
雇用主である国会議員がその地位を利用するとともに、有形力を行使して、意に反してわいせつ行為に及び、被害者が貞操侵害の危機にさらされたばかりか、当該秘書の言動もあって、家庭内で孤立し、自ら身の潔白を晴らさざるを得ない立場に追い込まれるとともに、わいせつ行為が原因で退職を余儀なくされ、職を失ったこと、さらに、再三再四の謝罪要求に同議員は事実を否定して謝罪には一切応じていないこと、などからセクハラ行為による慰謝料180万円の支払が認められた事案。 |
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| 千葉地方裁判所判決平成13年7月30日 | ||||||
(事案) |
大学院研究科の女性院生が、男性の指導教官から性的嫌がらせを受けたことについて300万円の慰謝料が認められた事案。 |
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| この事案においても、「教育上の支配従属関係の存在」「性的意図をもって、被害者が拒絶の意思を明らかにした後もなお身体的接触に及んだ」「社会通念上許容される限度を超えた」という認定を核にしていますが、慰謝料金額が初期の事案よりも高額化してきていることが重要です。平成12年ころから、セクハラに関する慰謝料で極めて高額なものが認められるようになってきています。我が国の裁判においては慰謝料は雀の涙のようなものしか認められないのが通常です。「殺された」とか「配偶者を寝取られた」などの場合にはそこそこの慰謝料がでる場合もありますが、全体としてみると「これっぽっち」という程度がほとんどです。しかし、後掲の仙台地裁の事案で750万円が認められるなど、我が国の慰謝料の実情(世界的にも極めて低額な慰謝料しか認められていないと批判されている)からすると異例の扱いが、セクハラ事案では通常化してきています。 なお、同様の事案として名古屋高等裁判所判決平成12年1月26日があり、大学の助教授が女子学生に対し、コンパの2次会のカラオケの席上、馬乗りになるなどしたことが、社会通念上許容される範囲を逸脱する行為と評価することができるとして、セクハラ行為についての損害賠償を認めたものがあります。 |
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| 京都地方裁判所判決平成13年3月22日 | ||||||
(事案) |
日本銀行の行員によるセクハラ事案としてマスコミでも話題になったものであり、慰謝料として676万円が認められている。 |
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| この事案で重要なのは、@被害者女性が明確な拒絶の意思を表明していない(できていない)、Aクラブ内であって店員もいるなど客観的には必ずしも密室とはいえない場所であった、という状況を認定しながらも、セクハラ行為(対価型)を認定しているところです。また、事実認定においてはB社会一般通念や一般的な女性という基準での判断ではなく、当該被害女性の主観によってセクハラに該当する性的言動であると認定していることもポイントです。 この事案以前にもすでに見られる傾向ですが、金沢事案とくらべるとセクハラの認定が緩やかになってきており、セクハラ行為か否かの判断基準も、当該被害女性がどう判断したのかで認定することを当然のように扱っています。@の拒絶の意思についても、被害女性の合意があったと考えること自体に「重大な過失」があると認定していることもポイントです。 |
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| 千葉地方裁判所判決平成12年1月24日 | ||||||
(事案) |
準看護婦が勤務先の病院長からわいせつ行為や卑わいな性的言辞を繰り返し受けたとして求めた損害賠償請求事件で、違法なセクハラ行為と判断された事例。 |
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| この事案では、違法なセクハラ行為となるかの判断基準について「男性たる上司が部下の女性に対して何らかの身体的な接触行為を行った場合においてもそのことだけから直ちに相手方の性的自由ないし人格権が侵害されるものと即断することはできないが、接触行為の対象となった相手方の身体の部位、接触の態様、程度、接触行為の目的、相手方に与えた不快感の程度、行為の場所・時刻、行為者と相手方との職務上の地位・関係等の諸事情を総合的に考慮して、当該行為が相手方に対する性的意味を有する身体的な接触行為であって、社会通念上許容される限度を越えるものであると認められるときは、相手方の性的自由又は人格権に対する侵害に当たり、違法性を有する」という基準を示しています。 また、この事案では被害女性が、「当初被告の身体的接触行為について快く思わないまでも強いて拒絶したり、ことさら問題行為として公的に取り上げたりするまでの意思はなかったと認められる」ことについても、「個人的には許容していた被告の行為につき、後に被告に対する恨みの感情を持ち、前記のような職員の意を受けてことさらにこれを問題にし始め、もっぱら被告を失脚させることを目的として訴訟を提起したとみるべき事情の存在を認めることはできない」として不法行為成立の結論に左右しないと判断していることもポイントです。つまり、セクハラ被害を訴えることによって私怨を晴らすとか、相手方の社会的地位をおとしめようとする意図で賠償請求がなされているとしても、その立証責任は加害者とされる側にあるといえるのです。 |
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| 仙台地方裁判所判決平成11年5月24日 | ||||||
(事案) |
大学助教授の大学院生に対する言動が、教育上の支配従属関係を濫用したもので性的自由等の人格権の侵害に当たるとして、慰謝料750万円の支払が認められた事案 |
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| この事案では、セクハラか否かの事実認定よりも、結果として認められた損害賠償額の金額そのものが極めて重要です。この事案では、指導教授がセクハラ行為を行ったものであるが、判決理由中に示されたセクハラ行為は、「指導を行うに当たり、性的な冗談を言ったり、原告の顔を凝視し続ける」「恋愛感情を表明」「強い拒絶かできないことに乗じて、原告が不快感を抱いていることを知りなから、抱きついたり、飛行機の中で手を握るといった直接の身体的接触に及んだ」「キスをしたり抱きつくといった性的接触を重ねただけではなく、ついには原告の病気に対する不安感を利用して、交際相手と別れて自分と恋愛関係に入るよう迫り、三回にわたってホテルで肉体関係まで結ばせた」というものである。これらの事実によって、被害女性に対して「不快感を与える言動をし」、「良好な環境の中で研究し教育を受ける利益を侵害した」ものと判断している。 これまでのセクハラ事案の中では、この事案は対価型の類型を中心としながら環境型の行為も併存しているものであるが、強制猥褻とも評価されるようなセクハラ事案であり、ストーカー行為も含む、相対的に程度の悪い事案であるとしても、慰謝料金額が750万円に上ったことは、我が国の不法行為事案においても珍しいものです。この裁判例以降、特にセクハラ事案における慰謝料金額が高額化する傾向が高まっているとも言われています。 |
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以上いくつかの有名な事案をピックアップしてきましたが、時間的経緯が多少前後したり、特異な例が含まれたりはしているものの、最近の傾向としては |
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といえます。 |
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| その3 ストーカー行為やセクハラによって会社が負う責任 | |||||||||
会社の従業員がセクハラ行為ストーカー行為を行った場合に、会社や経営者が問われる責任・結果としては、大きく分けて以下の4つが考えられます。 |
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| 会社として上記の@の責任・結果が発生することは今更言うまでもないと思います。しかし、@については「所詮は金」の問題でしか有りません。特に、会社内でのセクハラ行為などの場合には、被害を受けた従業員が自分の被害を社会に知られることを忌避してしまうこともあり、会社や経営者としてはそれほど深刻な問題ではないと誤解しがちです。 しかし、@の責任発生に伴い、有る意味では当然のようにAの社会的評価の失墜を将来することを忘れてはなりません。特に、英会話スクールの講師による生徒へのセクハラとか、取引先従業員に対するセクハラなど、会社外でのセクハラが発生した場合には、Aの社会的評価に間違いなく直結します。会社としてはこの社会的評価の失墜は甚大な損害をもたらすものです。近年のBSE問題での食品会社などを見ても分かるように、会社の社会的評価の失墜は会社の成立基盤そのものの崩壊をも招来します。 会社だけでなく、直属の上司とか管理責任者個人に対しても直接に責任を問われることもあります。より厳しいものとしては、セクハラによって会社の信用失墜を招いた場合に役員が問われる管理責任です。一つには、不適切な会社管理体制であったことやそれに伴う会社への損害発生を理由として、役員の解任がなされるものです。上場企業などでは、個人株主から株主総会で個々人の役員の責任追及が為されることも覚悟しなければなりません。さらには、会社に与えた損害について、株主代表訴訟によって直接に賠償責任を負わされることも考えなければなりません。最近は、良くも悪くも「グローバル化=アメリカナイズ」という感覚の人が増えており、海の向こうのメリケン粉の国だけの話、では済まされない状況になっています。@の賠償責任は「所詮は会社の金」という安易な気持ちでいる役員であっても、自分自身の財産から出捐を迫られる段階にいたってようやくことの重大さを認識することがあります。このようになってからではもはや手遅れです。 最後に、場合によっては管理者個人が刑事処罰を受けることが無いわけではありません。極めて稀な場合ではあると言えますが、管理者においてもセクハラ行為やストーカー行為を助長するような環境を作出していた場合には、幇助犯としての刑事責任を問われることも、法律上はあります。 |
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<幇助犯>
「共犯の1形式で実行行為以外の行為をもって正犯の実行行為を容易にさせること」を幇助犯あるいは従犯といいます。 一般的には凶器の貸与したとか、犯行に必要な情報を提供したなどの物質的な方法と、助言したり激励したなどの精神的な方法によるものとに分類されます。幇助犯においても、自ら積極的に行為する場合(作為)に限らず、するべき行為をしなかった(不作為)場合の双方共が対象となりますので、たとえば犯行実現を容易にするために施錠をしないままにしていた場合(不作為)も幇助行為となります。
幇助犯の解釈については、学説上も様々な見解がありますが、ここでは割愛します。なお、幇助犯の場合には、正犯の刑を減軽するとされていますので、実行行為を行った人よりは刑罰は軽くなります。また、拘留又は科料だけにあたる罪の幇助については特別の規定がある場合に限って罰せられることとなります。ストーカー行為規制法による罰則には懲役刑がありますので、幇助行為であっても犯罪として処罰されることとなります。
刑法第62条(幇助)
正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
ストーカー行為等の規制等に関する法律第13条(罰則)
ストーカー行為をした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
| その4 セクハラ・ストーカー行為に対する社会的評価・法的規制 | |
セクハラに対しては、当初は一部の女性による行きすぎた反応であるととらえられていた時代もありますが、現在においては「セクハラ行為≒犯罪行為」との社会的評価にまで至っている現状を認識する必要があります。この数年の裁判の動向をみると、セクハラ被害に対する賠償額が急激に増加している傾向が顕著です。一般的な不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)請求における認容額とは桁の違う賠償額が認定される例が増加し、事案にもよるが悪質なものでは賠償額が500万円や700万円にまで至った例も存在します。更に、厳密な統計によるものではありませが、裁判になったものの大半は会社側が敗訴(あるいは実質的に敗訴と評価できる和解で終了)しているものであるといえます。 特に、教育関連の職種や上場企業におけるセクハラ行為は報道機関によっても取り上げられるなどし、その社会的使命からも厳しい評価がなされる傾向にあります。当然ですが、一旦失墜した信用を回復することは極めて困難であるという事実を真剣に認識する必要があります。 セクハラについては、平成10年改正の雇用機会均等法によって、事業主に職場におけるセクハラの防止が義務づけられ、平成18年6月21日施行の改正によって、男女を問わずセクハラを禁止するに至っています(均等法11条)。詳細は後述しますが、厚生労働省(当時労働省)による指針なども規定されており、法令による規制も本格化しているものです。セクハラとは異なりますが、類型としてはセクハラに類似する行為として問題となっているストーカー行為についても、ストーカー規制法が制定され、現実に刑事裁判にまで至った事案も少なくありません。 講師による生徒へのセクハラ行為や、営業先従業員に対するセクハラ行為については、その行為がセクハラであると共にストーカー行為であると判断される場合も少なくないと考えられます。必要もないのに自宅や携帯の電話番号を聞いてかけるとか、要件があるわけでもないのに会社に電話をしたりメールをする、あるいはもっと直接的には、仕事と関係ないのに(仕事にかこつけて)呼んでみたり会いに行ったりする、などの行為が伴うと、セクハラ行為に付随してストーカー行為であるとされる場合があります。ストーカー行為と認定されると、これは単純な民事上の不法行為ではなくストーカー行為防止法違反という刑事上の犯罪行為がすぐさま飛び出してきます。セクハラについても、行為者に対して刑事処分(公然わいせつ罪・強制わいせつ罪・わいせつ物頒布罪)が為される場合がありますが、セクハラ防止法はできていません。これに対してストーカー行為については、まさにストーカー行為の防止のための特別法がありますので、有る意味ではセクハラ行為よりも厳しく処罰されると言って良いでしょう。 |
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| 以上みたように、セクハラ行為やストーカー行為というのは、決して甘く見ることはできないものです。セクシャルハラスメントが違法不適切な行為であることは言うまでもありませんが、その社会的評価は会社側(経営者側)の考えている以上に厳しいものであるとの認識が必要です。法的にも、会社内におけるセクハラ防止は均等法上で明確に規定されており、ストーカー行為については独自に規制法が制定されています。 | |
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮)
1 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
3 第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。
<参考 〜 平成18年改正前の規定(21条)>
1 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が配慮すべき事項についての指針(次項において指針という。)を定めるものとする。
3 第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。
| その5 セクハラ行為などが明らかになった場合の会社(経営者)の対応 〜主としてセクハラ行為を行った従業員の処分について〜 |
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経営者にとって頭が痛いのは、従業員のセクハラ行為が明らかになった場合に、その従業員に対してどの様な措置を講ずるかです。 一番問題とされる行為は、社内においてもみ消しを計り、何らの処分もしないことです。有る意味では犯罪行為や不法行為を会社が組織ぐるみで隠蔽するわけですから、狂牛病問題の際のある食品会社のように、最終的には会社の存続に関わります。当然ですかが、経営者のモラル・順法精神が大いに疑われ、コンプライアンスが重要であると認識されてきている現在の流れには大きく逆行します。隠蔽を行うのは経営者としては失格であり、最悪の対処方法であると言わざるを得ません。また、「女も御せないようじゃ一人前じゃない」「それだけの精力があるから営業成績もいい」、だから「大目に見てやってしかるべき」などという感覚でいると、それ自体がセクハラ行為を助長するもので論外といえます。 経営者としては、迅速な対応、具体的にはセクハラ行為を行った従業員に対する適切な処分を行うことが必要となります。同時に、再発防止に向けた具体的な対応策の検討と実施も、会社全体の問題として不可欠です。しかし、他方で嫌疑のかけられた従業員に対して、セクハラ行為の判明によって解雇するなどの重大な処分をするにあたっては、有る程度慎重な手続きが必要です。最近特に目立つようになった意図的なでっちあげ被害というものも念頭に置かなければなりません。 従業員のセクハラ・ストーカー行為による会社外の第三者への被害が発生した場合には、正確な事実関係の把握関係に努めることは当然に必要ですが、被害者への迅速な対応がまずは重要です。その意味では拙速が時として重要になることすらあり得ます。セクハラ・ストーカー行為は被害者側の主観的事情に大きく左右されるものであることから、事件発生後直ちに被害者に慰謝の措置を講ずることで、事件を大きくさせないで済むことが少なくはありません。また、被害者に対する対応を第一とすることが、社会的評価という面から見れば誤解を招かない会社政策といえます(「隠蔽」「もみ消し」の疑念をもたれないようにする)。 被害者に対する慰謝措置については、会社担当者が直接被害者本人(とその家族など)の元へ出向いて謝罪をすると共に、今後の再発防止の説明と、具体的に会社として行った対応の報告をすることが必要です。慰謝料など金員の用意をするのかはケースバイケースですが、金銭的解決は時と方法によっては逆にトラブルを大きくしてしまう場合もありますので、慎重な対応が必要です(物理的な被害ではなく精神的な被害であることから、「何でも金で片づけようとしている」という思いを与えてしまうのは、会社の対応としては宜しくないものです)。 会社として行うべき対応のもう一つ、従業員の取扱いはどうすべきでしょうか。セクハラやストーカー行為を行った従業員については、(事実関係が明らかになるまで)直ちに出勤停止などの処分をとるなども時として検討するべきと言えます(但し、これには就業規則の変更などが必要となる場合もあります)。迅速且つ目に見える対応が必要と言えます。問題の従業員からの事情聴取などは当然行うべきです。その上で、事実関係が認められた場合には最終的な懲戒処分(解雇・契約打ち切り)を行うことが必要になる場合もあります。 会社にとって有能な従業員であるとしても、営業成績さえよければあとは目をつむる、という時代ではありません。泣いて馬謖を斬るではありませんが、営業成績が良くてもそれ以上の害悪を招来する危険のある従業員は、会社にとっても爆弾を抱えているような大きなリスクを伴います。「これだけ(営業面などで)有能な従業員であっても、会社としては違法な行為をしている以上は断固たる対応・処分をする」という姿勢を示すことが、一罰百戒的に以後のセクハラ行為発生などの一般予防にもなります。同時に、実際にセクハラ被害を受けた被害者の感情を癒すことにもなり、会社としての事後対応が対外的に好印象を与え、社会的信用の失墜を可及的に食い止めることにもなります。 |
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| その6 セクハラ行為を原因とする懲戒解雇 | ||||||||||
では、会社がセクハラ行為を行ったなどの理由で従業員を解雇できるのかについて、幾つかの裁判例を見て検討してみましょう。なお、解雇についての一般的な説明については、「整理解雇」の項目も参照して下さい(今説明している解雇は「懲戒解雇」であって「整理解雇」とは性質を異にしますので、参考までです。念のため)。 |
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| 東京地方裁判所判決平成12年8月29日 | ||||||||||
(事案) |
部下の女性らに対するセクシュアル・ハラスメント行為を理由とする管理職従業員の解雇が有効とされた事例。解雇に伴う実体的要件・手続的要件などについても広く判断されており、セクハラ行為に伴う解雇についての事案としては非常に参考になる事案である。 |
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| この事案の具体事実関係は、室長が同部署所属の女性従業員(全部署員の約半数のうちの複数に対するセクハラ行為が問題とされている)に対して勤務時間中なども、執拗にデートに誘う、恋人との性行為に言及する、出張中の同室宿泊を強要する、業務にかこつけた面談をして交際を迫る、などの所為を繰り返していた。その間、担当部長からセクハラ行為を辞めるようにと注意したり、事実関係を聞き取り調査して本人に釈明を求めるなどしたものの、セクハラ行為を否定していたため、解雇に踏み切ったもの。これに対して室長から解雇無効の訴訟が提起されているというものです。 同室長の電子メールや発言は、「いずれも直接的で露骨な性的言動であることが明らかであ」り、「女性社員らはいずれも対応に苦慮し、苦痛を感じていたものであり」、室長本人も「女性社員らにことごとく断られているのであるから、少なくとも歓迎されていないことは認識できなければなら」なかったと認定し、しかもこれらの行為は「いずれも上司として部下に接する機会に、あるいは上司としての地位を利用して行ったと評価できるもの」としています。この地位利用の点については、「上司としての地位を前面に出し、訪い等に応じない場合の不利益を示唆してこれに応ずることを強要したということまではできないものの 相手か上司であることを認識せざるを得ない状況下での各発言は、冗談と見られるものも含まれているとはいえ、部下を困惑させ、その就業環境を著しく害するものであった」と認定しています。 手続的にみても、同室長は具体的事実がどのようなものかを十分に理解し、懲戒委員会において十分弁明する機会もあったものとされました。なお、同室長の従業員としての能力を会社が相当に評価して管理職者の地位に就けたことからも、「より軽微な処分を経ることなく解雇することは、いささか酷であるとの感を持たないではない」が「被害を受けた者の多さ、室長の地位、セクハラに対する被告の従前からの取組みと、その中で原告が置かれていた立場、室長自身がセクハラ行為をした部下に対する退職勧奨を行った経験を有し、自己の言動の問題性を十分認識し得る立場にあったこと 被告の調査に対し真摯な反省の態度を示さず、かえって告発者捜し的な行動をとったこと」などの総合的な判断の元に、会社が通常解雇を選択したことには合理性が認められ、懲戒権あるいは解雇権を濫用したとまではいえないとした。いずれもかなり詳細な認定をしています。 なお、この事案においては、「いきなり解雇」というところが多少なりとも問題点とされていたようであるが、その点については普段からの会社の危機管理(セクハラ行為の防止などについての職場環境の維持管理)が相当重要視されていると考えられます。本件では判決理由においても述べられているように、「本件解雇以前から、セクハラを含む嫌がらせのない職場の提供、従業員が意欲をもって業務に取り組める職場環境の維持改善に努めようとし、部下を預かる管理職者を実践の第一義的責任者と位置付けていた」にもかかわらず、「30名の部下を有する地位にある室長が性的言動を繰り返し、部下の就業環境を著しく害したことを被告か重大視して、室長が管理職としてのみならず、従業員としても必要な適格性を欠くと判断したことには相当の理由がある」としています。 この点については、単純にセクハラ行為をした従業員を解雇できるかの問題点を超えて、経営者(企業)としては非常に重要なものとして把握することが必要である。この会社は常日頃より健全な職場環境の維持管理に努めていたこともあり、その点が解雇に際しての大きな判断要素になっていたと考えられる(なお、本件解雇後には、従業員行動指針を改訂した『社員行動指針』を全社員に配布し、セクハラを含む嫌がらせに対する被告の厳しい姿勢を更に明確化している)。 |
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| 大阪地方裁判所平成12年4月28日 | ||||||||||
(事案) |
バス会社の運転手による、取引先女性添乗員および会社の従業員に対するセクハラ行為等が就業規則の懲戒解雇事由に該当すると認定し、従前より会社内社厳しい対応を取っていたこと、セクハラ行為をした従業員においては事実関係把握の際に極めて反抗的な態度を会社に取るなどし、セクハラ行為をしたことについての何らの反省も見られないなどの諸事情を総合的に勘案すると、懲戒解雇はやむをえないと認定した。 |
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| まず、解雇することができるのか否かの実体的要件(解雇事由の有無)については、@会社として従前より運転手とガイドなどの男女関係がずさんにならないように厳格な対応をとっていた(退職させた例もある)、A本件では運転手が、以前より上司からセクハラ行為についての注意を受けていたにもかかわらず、B取引先女性添乗員などに対して脚や胸を触る、むりやりホテルに誘い込もうとするなどの行為を行うなどしていた。これについてはC同運転手が古参であるのに対して当該女性添乗員が入社間もないことなどの事情から、同運転手のセクハラ行為に対して強く拒絶できない事情があった。D同運転手はBの行為について会社は添乗員の勤務先より苦情を受けるなどして事情を聞き取ろうとしたが、同運転手は事実関係を否定し、さらにはE聞き取りをしていた会社の担当者に対して、同担当者の行為についても「(労働組合員の立場を利用して)ビラをまいてやる」などの脅迫的行為にも及んでいる、などの事実関係を基礎的な事実として認定しています。 そして、Bの行為は、会社の就業規則に規定されている「会社の信用を毀損する行為」に該当し、会社が従前より@Aの対応を講じていたにもかかわらず、本人はDの事情のとおり全くセクハラ行為に反省していないばかりか、逆にEのような脅迫的な行為にまで及んでいることから、解雇についてやむを得ない事情があったと判断されています。 |
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| 東京地方裁判所平成10年12月7日 | ||||||||||
(事案) |
派遣先女性従業員に対する一連のセクハラ行為が執拗かつ悪質であって、職場内の風紀秩序を著しく乱し、ひいては会社自体の名誉・信用を著しく傷つけたとして、懲戒解雇が就業規則に基づく合理的な理由があり、その手続も相当であって、有効であるとされた例。 |
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| @従業員が顧客会社の女性従業員に対して、下着に手をかける、人影のないところに引きずり込んで胸を触るなどの直接的なセクハラ行為を執拗に行った、A当該女性従業員はこれらの行為を断ろうとしており、相当程度の恐怖や苦痛を覚えていた、などの事実に基づいて、B就業規則に定められた会社の名誉毀損・信用失墜行為であるとして懲戒解雇をした、という事実が認定されています。 同従業員に対する解雇については、会社において顧客会社(同従業員の派遣先会社)からの苦情を受けた時点で検討していたが、最終的な結論を出すまでにはC同従業員からの事情聴取を行い、人事担当者との検討、顧問弁護士への相談などの経過を経ている、という事実関係も認定されています。 @、Aのセクハラ行為の実体の存在が、Bによる懲戒原因と認められ、手続的にもCのとおり適正な手続きを経ていることから、解雇が正当なものであると判断されており、構造としては極めてオーソドックスな例であるといえます。 この事案では、セクハラ行為があったのか否か、手続きが適正に為されていたのか否か、について、当該従業員の主張と会社(被害を受けたとする女性従業員や人事担当者)の主張のいずれが信用できるのか、という点が一番の争点となっていたものです。会社としては、懲戒解雇を行う場合には、後日訴訟によって解雇無効確認請求がなされることも常に念頭に置いて(適法適切に懲戒解雇をしていても、解雇された従業員が訴訟を提起すること自体は禁止されるわけではありません。棄却される訴訟であっても提起はできます)、事実関係の適切な把握・確認や、それらの証拠化を怠ってはいけないと言えます。 |
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| 大阪高等裁判所平成13年4月26日 | ||||||||||
(事案) |
大学(私立)に対し、教授の全演習科目について担当を停止するとの大学の措置は不適法であるとして、同教授の演習担当者としての仮の地位を定める仮処分が認められた事例。 |
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| これは、企業(経営者)側にとっては、大いに注意しなければならない事案といえます。大学教授の身分についてであること、解雇とは異なること(担当停止)、は上記3例と異なりますが、基本的な対処方法は変わらないものです。会社においていい加減な処理をすると、場合によっては解雇が無効であると認定されることもあるので、迅速さを失わないようにしながらも厳格適切な手続きを履践することが重要であることも忘れずにいなければなりません。 この事案では、担当停止処分を決定したのが「教授会」であって、大学と教授との雇用関係についてを規律する組織ではないことから、違法な処分であったとされていますが、懲戒解雇などの際に拙速にしてしまいがちな適正な手続きの点に警鐘を与えたものして把握してほしい事案です。本字案においては、セクハラ行為の有無などを調査して報告結果を提出した組織が、「債務者の寄附行為や大学学則、その他の規則等に根拠を有しない執行部ないし教授」であったことも問題であるとされています。会社におきかえるのであれば、本来懲戒などは人事部などのしかるべき専門部が担当するべきものであるところ、就業規則や会社内規などに全く規定のない組織に調査をさせて、その調査結果が事実上懲戒処分の結論を決めているような場合には、適正な手続きではない、とされる危険があるということです。会社としては、従業員のセクハラ行為は会社にとっても不名誉極まりないこととして、上司が一部の(上司にとって)信頼のおける部下に内偵調査を命じて、その報告に基づいて懲戒処分が実質的にきめてしまう、ということは案外ありそうな話です。しかし、そのような調査や結論付けは、労働者の基本的身分を喪失させるような懲戒解雇などの場合には、極めて問題の多いものとして、適正な手続きによらずに解雇したと判断される危険もあります。 |
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| さて、以上4つの裁判例を見てみましたが、ポイントをまとめると次のようにいえると思われます。 |
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| つまり、経営者(会社)としては、従業員がセクハラ行為やストーカー行為を行った場合に、適切な処分を行い、時として解雇も辞さないという厳格な対応を取ることが求められているだけでなく、解雇などの処分を行う場合には、安易に拙速な処分をすると逆にトラブルを招来する危険もあり、慎重な対応が必要であるとも言えます。 |
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<懲戒解雇>
「使用者が従業員の企業秩序違反への制裁として行う最も重い懲戒処分」と定義されます(有斐閣法律学小辞典)。
会社(使用者)と従業員(労働者)の関係は、雇用関係であって労働基準法その他によって労働者保護の規定が数多く設けられています。しかし、従業員が不正行為に及ぶなどして、会社の秩序を侵害しても労働者だから保護されるというわけではありません。労働争議行為(ストライキなど)のように法律上認められたものは別として、従業員の不正行為・不当行為などについて、使用者である企業が不利益処分を課すことは認められています。これを「懲戒」といい、就業規則などを見ると、戒告とか減給、出勤停止などの規定があり、その最も厳しい処分が懲戒解雇となっているのがほとんどです。この懲戒の法律的な性質については見解に争いもありますが、使用者である企業が秩序維持のために本来的に有している権利であると言えます。
このような懲戒処分の一つ、最も厳しいものとして懲戒解雇があります。懲戒解雇の場合には@解雇予告(あるいは予告手当の支払)を要することなく直ちに解雇の効力を生ずる、A退職金の支払いがなされないこともある(一部の場合も有れば全部の場合もある)、という大きな特徴があります。整理解雇の場合と比較してもかなり厳しいものですが、解雇される従業員に原因があって解雇されるのであるから、労働者保護の側面が制約されることも許されるというというものと言えます(もっとも退職金を支払わないという点については、退職金の法的な性質をどう把握するのかなどの解釈論もあり、数多くの論点を有しているものではあります)。
但し、懲戒の中でも「解雇」は基本的な雇用関係の消滅を伴うものですから、解雇という懲戒処分に該当するか否かについては、実体的な要件の具備(懲戒されるだけの不正行為・不当行為をしたのかどうか)、だけでなく、懲戒に至る手続きがきちんと適正適切になされていたのか(事前の事情聴取の有無など)も厳しく問題とされます。悪さをしたから直ちに懲戒解雇、とするのは余りに乱暴な処分であり、後日解雇が無効とされる場合も少なくありません。そういう意味では、整理解雇における手続的要件が懲戒解雇においても同様に必要となると言えます。
【自宅謹慎処分は簡単にできるものなのか】
本文では、まず嫌疑のかかった従業員に対して「自宅謹慎処分をするなど」することも時として望ましい旨の説明をしています。しかしながら、何でもかんでも自宅謹慎処分ができる訳ではありません。会社と従業員の間の雇用関係については各種労働法の規定や就業規則などに違反してはなりません。特に、自宅謹慎を命ずることは、その間の勤務を停止させる=給料が発生しない(Nowork, no Pay)ということとなり、従業員に対する不当な取り扱いになりかねません。
そこで、会社としては就業規則などにおいても適切な条項を規定しておくことが必要となります。例えば、会社の信用を著しく失墜するおそれのある行為(その「行為」についても具体的な例を明示することが重要です)をしたと思われる従業員に対しては、当該行為の事実関係調査に必要な期間、会社はその出勤を停止させる処分をすることができる、などを就業規則上も設けておくことが有用です。この場合、不当な出勤制限にならないようにすること(期間をどこまでにするのか、どのような場合に出勤停止にできるのか)、仮に嫌疑が晴れた場合の補償がどうなるのか(会社の都合により出勤させなかった)、などについてもよく検討しておくことが必要になります。
| その7 会社・経営者がセクハラ行為の防止措置を怠った結果 | ||
経営者(会社)が、自分の雇い入れている従業員に対して、あるいは会社内の職場環境について、適切なセクハラ行為防止などの施策を講じていなかった場合には、経営者自身もセクハラ行為を行った従業員と共に賠償請求の責を負うこととなります。勿論、経営者にとっては、金銭的な問題である賠償請求などよりも、セクハラ行為に伴う企業イメージの低下や社会的評価の失墜の方が遙かに大きなダメージではあります。しかし、金銭による賠償という「形」ができてしまうことは、目に見える損害であり、経営者個人の責任まで及ぶ可能性もあります。 セクハラの被害を受けた側からすると、セクハラ行為を行った従業員に対しては勿論、そのような従業員を雇っており、何らの防止策を講じていなかった経営者(会社)に対してもその責任を追及したくなるのは当然です。セクハラ行為を行った当の従業員が場合によっては刑事罰を科せられる場合もあるのに対して、会社それ自体や経営者個人が刑事罰を受けることは極めて稀であるため、民事手続きにおいて経営者や会社の責任を明確にするべく訴訟提起されるのは、必然の流れといえます。訴訟になれば当事者以外も傍聴できますし、司法部(社会部)の記者の耳に入れば報道されることもあります。イエロージャーナリズトはここぞとばかりにおもしろおかしく記事にでもすることがあるでしょう。会社にとっては、時として致命的な打撃を受ける危険があります。 そこで、従業員のセクハラ行為によって会社も不法行為による損害賠償の責を負うことは当たり前のように認められていることを示すため、幾つかの裁判例をあげてみます。見て頂ければ分かりますが、当該従業員が、会社とは全く無関係な場所、時間でセクハラ行為をしていた場合はともかく、会社の従業員に対する支配関係が多少でも認められるような場合には、会社にも不法行為(使用者責任)が成立するとしているのがほとんどです。 |
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| 大阪地方裁判所平成10年12月21日 | ||
(事案) |
飲み会の席でなされたセクハラ行為について、会社に対しても損害賠償請求がなされた事案。 |
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| この事案では、従業員が飲み会の席で行った性的いやがらせがセクハラ行為であり、不法行為であることが前提となっています。その上で、会社は、飲み会をやったのは当該従業員が勝手にしたことであって、しかも会社は私的な飲み会を禁止していたのだから、会社の事業の執行とは無関係であるとして会社の責任はないと争っていました。 判決理由においては、この飲み会は、職務に関連させて上司たる地位を利用して行ったもの、すなわち、事業の執行につきされたものであると認めました。私的な飲み会を「禁止した」とは言っても、口頭で指示しているだけで会社の従業員は誰もがそのような禁止についてきちんと受け取っていなかったこともあり、単純に会社の通知に反した飲み会をしているというだけで、飲み会で行われたセクハラ行為が会社の業務執行性を失うことはないとされました。 |
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| 千葉地方裁判所平成10年3月26日 | ||
(事案) |
会社の代表者が従業員に対して行ったセクハラ行為について、代表者個人の不法行為責任を認めると共に、会社に対しても損害賠償責任を認めた事例。330万円の賠償が認められている。 |
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| この事例では、代表者のセクハラ行為のために使用者責任ではなく民法44条1項という別の規定で会社の責任が問われていますが、被用者と代表者の違いによる法律構成の違いはあっても結論として会社自体が責任を負うという点では同じです。同じ事案として東京地方裁判所平成9年2月28日。 |
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| 神戸地方裁判所平成9年7月29日 | ||
(事案) |
国立病院におけるセクハラ事案。院内の洗濯場において上司からセクハラ行為をされた女性職員が、国に対しても使用者責任を求め、これが認められた事案。 |
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| 国が賠償責任を負ったという意味でクローズアップされた事案ですが、会社であろうと国であろうと、あるいは個人商店の経営者であろうと、使用者の立場にいる者が責任を負わなければならない場合があるのは同じです。 院内での洗濯時におけるセクハラ行為であるため、勤務場所・勤務時間内といういずれも病院の業務の執行についてなされたことは争ってみても結論は見えていたといえます。中心的な争点は、使用者(管理者)であった国(とはいっても抽象的な国家ではなく、当該病院の管理者が国の代行者というわけですが)は、適切な選任・監督を行っており相当な注意をしていたとして責任を争っていた者です。結果としては、従前より洗濯場でのセクハラ行為がなされていることは女性職員の間でも広く認識されていたこと、セクハラ行為にあった女性職員が改善処置を求めていたのに、「事実の確定が困難である」との理由で特別の措置を講じていなかったことなどから、免責事由はないとされています。 なお、類似事案として、女子中学生が男子中学生より性的暴力を受けたことについて、学校側の賠償責任が認められた事案として旭川地方裁判所判決平成13年1月30日。 |
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| 福岡高等裁判所平成12年1月28日 | ||
(事案) |
社会福祉法人の事務局長が女性職員に行ったセクハラ行為について、法人の使用者責任が一部否定された事案。 |
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| 事務局長のセクハラ行為それ自体は認定していますが、そのなかの1つについて、事業の執行とは関係なかったとして使用者責任を認めなかったものです。但し、全体としては、職務時間内・勤務場所でのセクハラ行為をしていたので、大半のセクハラ行為について使用者責任が肯定されています。たまたま1つだけが、勤務時間外で職場とは全く異なる場所において行われており、女性職員の自宅に「食事のために訪れた」際の事案だったため、職務範囲内の行動とはいえない、という程度でしかありません。逆に言うと、このような場合でもない限りは、会社は使用者責任をおわされる可能性が極めて高いのだということを認識させられる事案です。 |
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民法715条(使用者責任)
或事業の為めに他人を使用する者は被用者か其事業の執行に付き第三者に加へたる損害を賠償する責に任す但使用者か被用者の選任及ひ其事業の監督に付き相当の注意を為したるとき又は相当の注意を為すも損害か生すへかりしときは此限に在らす
2 使用者に代はりて事業を監督する者も亦前項の責に任す
3 前二項の規定は使用者又は監督者より被用者に対する求償権の行使を妨けす
| その8 事前予防のための対応策 | |
たかがセクハラ、という甘い認識が会社・経営者にとってどれほど厳しい結果になるのかについては、多少でも分かって頂けるかとおもいます。そこで、会社・経営者としてどのような対応策を講じておけばよいのかも多少説明してみます。 6であげた参考判例を見て頂ければ分かったと思いますが、外資系などの会社では、コンプライアンス重視という経営志向が邦人企業よりも明確になっており、常日頃から適切な管理体制をしていることが少なくありません(もっとも、外資、特に米国系企業はこれまでに数々の訴訟を起こされるなど散々痛い思いをしてきた中で自衛手段としてコンプライアンスを徹底せざるを得なくなったとも言えますが)。この点、邦人資本の企業はまだまだ認識が甘いと言えます(だからといってアメリカナイズしろとは一言も言いません、念のため)。会社が普段からセクハラ行為の予防・防止のための具体的取り組みをしているかどうかは、結果的にセクハラ行為が発生した場合の会社の責任に直結します。会社が常日頃から適切な管理体制をとっていたならば、「その従業員だけが悪く、会社は責任がない」という主張も通ることがあります(使用者責任における免責要件)。要は、経営者が適切な管理をすることを意識することが第一です。 では、具体的にセクハラ行為の予防・防止のための具体的取り組みとしてどのようなことをすればよいのかですが、人事部や総務部の担当者がファイルに綴じているはずの、厚生労働大臣が定めた「指針」(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針)を遵守することが最低限必要です。 この指針、数頁の中に非常によくまとめられています。セクハラの概念・定義の説明に始まり、具体的対応策などについて、具体例を盛り込んで説明されておりますので、この指針をじっくりと読んで頂き、それを遵守すればかなりのものと言えます(全文を挙げてありますので、読んでみて下さい→「指針」)。 指針の中で述べられている予防策をみてみると、@「職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を明確化し、労働者に対してその方針の周知・啓発をすることについて配慮」する、として、パンフレット配布などによる広報や研修・講習の実施などが挙げられています。また、A「相談・苦情への対応のための窓口を明確にする」として、セクハラ行為が重大な被害を招来する以前に適切な措置を講ずることができるようにし、相談・苦情に対して迅速かつ適切な対応をするようにしなければならないとしています。相談・苦情に対する対応としてはその場その場での判断ではなく一定のマニュアルを作成してそれに従った処理も有用であると指摘しています。更には、B「事実関係の迅速かつ適切な確認」を行うべく、専門の担当部署を設けることも推奨しています。その上でCセクハラ行為の予防・防止のための「適正な対処」として、配置転換やセクハラ行為をしている者に対しての就業規則に基づく適切な措置の実行が挙げられています。 |
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【事実関係の調査はどの程度やればいいのか】
まず嫌疑のかかった従業員、セクハラ行為の被害を受けたとされる従業員に対して事情を聞き取るとか、セクハラ行為の事実を知っている者からも事情を聞くなどは当然にしなければならないです。通り一遍の調査はしていないと同様ですので、やれるだけのことは全てやった、といえる程度の調査はするべきです。しかし、会社の担当者は警察でもなければ探偵でもありませんから、全てを完全に把握することは元々不可能です。会社としての調査には最初から限界があります。
そこで、場合によっては部外者(弁護士、カウンセラーなど)に助力を求めて、特に被害にあったとされる女性の従業員に対しての事情聴取には二次被害を防ぐ配慮をして(信頼できる女性カウンセラーに聞き取り調査を担当してもらうなど)、事実を確認することも必要です。「指針」にも記載されていますが、セクハラによる女性従業員の情報については、その女性従業員のプライバシーを十分に配慮することが必要です。
| その9 最後に | |
セクハラ行為については、当然ですがレベルがあります。当該従業員からしてみればいずれも不快きわまりないものだとは思いますが、客観的に見て「深刻とは言えない」ものから、「犯罪と同じ」ものまで幅があります。前述の裁判例などの事実関係を見てみると、いずれも最初のセクハラ行為は深刻度の低いもの(ex.食事やデートに誘う)などから始まっています。それが、時と共に深刻度を増し、身体に触る→抱きつく・胸を触る→同部屋への宿泊を強要する→強姦まがいの行為に至る、などとエスカレートしています。 会社・経営者が早期にセクハラ行為の実体を把握して適切な対応を講じていたならば、ここまで被害は深刻化しなかったというものは数多くあります。ここでは敢えて事案内容を載せませんでしたが、前出の旭川地方裁判所判決平成13年1月30日の事案などは、正にその典型だと言えます。初期の段階で担当教師がきちんと事実関係を調査・把握することなく事態を見過ごしており、その後も適切な対応をしていなかったために、被害者は回復しがたい精神的・肉体的苦痛を受けていると言えます。このような事態を招来すると、被害者の被害の程度に比例して会社・経営者の責任も重く、会社自体も回復困難にります。 そうなる前に、改めて会社内の管理体制を見直すなどして頂ければと思います。 |
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