内容証明郵便
2000.11.22(2004.5.10)
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お金を貸したが返してくれない、物を売ったのに代金を支払ってくれない、家賃を支払わないので契約を解除したい、などなどのときに相手方に催促したり解除する旨を伝える方法として、内容証明郵便を出すということがあります。勿論、口頭で言ってなんとかなるものならばわざわざ内容証明郵便を出す必要もないのですが・・・ 裁判では証拠の有無が最終的な判断を決することとなります.。こと裁判になると、内容証明郵便は証拠としての価値は高いものです。
そこで、今回は、内容証明郵便について説明してみましょう。
| その1 そもそも内容証明郵便とは | |
内容証明郵便とは、郵便物の特殊取扱制度のひとつで、郵政省において当該郵便物の内容である文書の内容を謄本によって証明する制度です(郵便法63条、郵便規則109〜115条)。内容証明は文書を出したことの証拠となり、また文書に確定日付を与える効果があります。 一般家庭の日常生活では、まず内容証明郵便というものにお目にかかることはないかと思いますが、企業法務、特に金融や不動産管理などを扱う人にとっては日常的に目にするものといえます。賃貸借契約の解除や、貸金の返還催告などの場合、口頭で行うことも出来ますが、後日紛争になった場合を考えて証拠となるものとして内容証明郵便を使うことがあります。また、債権譲渡などをする場合には、確定日付が必要なこともあり内容証明郵便を用いるのが基本です。 |
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【証拠が無くても事実は事実でしょう?】
証拠の有無にかかわらず、事実は事実として存在しています。例えばAさんがBさんに100万円を貸したとして、その事実は抹消できないものです。しかし、いざAさんとBさんとの間でトラブルが起きて、Bさんが「自分はお金など借りたことない!」と言い始めたらどうなるでしょうか。最終的に裁判に持ち込んで判断をしてもらうような段階になると、客観的に「AがBに100万円を貸した」という証拠がないかぎり、裁判所はその事実を認定してくれないでしょう。真実と(裁判所の認定する)事実とはかならずしもイコールではなく、裁判所が認定する事実は「証拠によって認められた事実」にすぎません。そこで、書面で契約するとか、領収書をきちんともらう、という行為は、客観的な証拠として事実の存在を残すという重要な意味があります。実際に存在した事実と、裁判所の認定する事実との間の乖離を意識して行為する必要があります。
刑事訴訟法第317条(証拠裁判主義)
事実の認定は、証拠による。※ 訴訟には、刑事訴訟・民事訴訟という大きく分けて二つの種類の形式があります。刑事裁判(犯罪に対するもの)については、上記の刑事訴訟法の規定が明確にあります。民事訴訟に関しては、民事訴訟法を探してみてもこのような規定はありません。しかし、規定がないのは、証拠が無くても事実を認定していいという意味ではなく、当然のことであるから条文に規定されていないということです。民事訴訟においても証拠がなければ事実を事実として認定してくれないのです。
| その2 どんなとき内容証明郵便が必要なのか | |
結論から。 時効にかかりそうなときとか、後日言った言わないの争いになりそうなときに役立ちます。 まず、内容証明郵便がある意味必要的とされるものとして債権譲渡通知があります(債権譲渡特例法による場合は多少異なります)。金融機関などはよく債権譲渡を行い、第三者の債権を譲り受けたり、あるいは逆に第三者に債権を譲ったりということをします。このとき、債権というものそれじたいは目に見える物(有体物)ではありませんので、同じ債権がAさんにもBさんにもCさんにも譲渡される可能性があります(破産状況にある債務者は現にこのようなことをよくやります)。債権譲渡については、民法上の規定で、複数の者に債権譲渡がなされているときには譲渡通知、あるいは債務者の承諾の確定日付が早い者が優先することとなっています。そして、内容証明郵便は確定日付を有するものなので、譲渡通知に際しては内容証明郵便を用いるのが一般なのです。 次に、内容証明郵便が役立つ場合としては、催告など「いつ意思表示をしたか」が後日争われる事案です。貸金債権でもなんでもそうですが、債権というものは「時効」によって消滅します。AさんがBさんにお金を貸していたとします。平成12年11月30日に返済する約束になっていたにもかかわらず、ず〜っと返済の催告をしていないと、平成22年12月1日の到来でこの債権は時効にかかってしまいます。債権が時効にかかることはよくあることですし、来週で時効になってしまう!とあわてるようなことも珍しくありません。このように時効完成が間近なときに内容証明郵便で催告をすると、とりあえず6ヶ月間時効が停止します。その間に訴訟の準備なりをすればいいのですが、これを内容証明郵便などでやっていないと「時効完成より前には催告されていない」と争われたときにそれを証明する手だてが無くなってしまう恐れがあります。 また、解除通知など「意思表示をしたこと」それ自体が争われる事案でも有用です。なかなか家賃を支払わない借主に対して、大家さんが「もう出ていってくれ」と契約を解除したとします。今まで半年も家賃を支払わないでいたのに、解除したとたんに支払ってきたり、という場合に、解除前の支払なのか解除後の支払なのかが問題となることがあります。また、開き直られて「解除なんかされていない!」と言われたときにも、大家さんは「解除した」と言って水掛け論になってしまう危険もあります。このようなときに内容証明郵便を使っておくと解除した事実が明らかになります。 |
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<確定日附>
確定日付とは、文書の作成日付が公証されている日付のことをいいます。その文書の日付はまさにその日付に間違いないことを公に証明していることから、証拠として非常に重要な意味をもちます。単に請求書に日付が記載されていても、その日付は本当にその請求書を作成した日の日付なのかは分かりません(日付のバックデートなど簡単にできます)。そこで、公の機関によって文書の作成の日付を証明してもらうことが必要になり、内容証明郵便の場合には、内容証明郵便の受理した日や相手に到達した日付が公に証明されることとなるので確定日付となります。
確定日付としては内容証明郵便の他に、公正証書の日付、登記所・公証人役場によって日付ある印章が押印されているときのその日付があります。非常に例外的なものとしては、私署証書の署名者中に死亡した者がいるときにはその死亡の日付をもって確定日付とするというものもあります(民法施行法5条)。
民法第467条(指名債権譲渡の対抗要件)
1 指名債権の譲渡は譲渡人がこれ債務者に通知し又は債務者が之を承諾するに非ざれば之をもって債務者其他の第三者に対抗することを得ず
2 前項の通知又は承諾は確定日附ある証書をもってするに非ざれば之をもって債務者以外の第三者に対抗することを得ず民法153条(催告)
催告は六ヶ月内に裁判上の請求、和解の為めにする呼出もしくは任意出頭、破産手続参加、差押、仮差押又は仮処分を為すに非ざれば時効中断の効力を生ぜず
| その3 内容証明郵便の書き方・出し方 | |
内容証明郵便の書き方は、最近では書店でもよくその手の出版物が出ていますので、特段弁護士を頼んだりしなくても内容証明郵便くらいは書くことが出来るでしょう。 形式的なものですが、「紙」を使って内容証明郵便を発送する場合には、用紙はB4(縦書き)かA4(横書き)が普通です。20文字×26行を1ページとして、B4の場合には袋とじにするので1枚の紙に20文字×13行が右左となります。手書きでも印刷でも構いませんし、専用の原稿用紙を使っても普通紙でも構いません。1枚の用紙に収まらないときには複数枚をホチキスで綴じて割り印(2枚の紙の重なっているところに判を押す)します。誤字などの訂正の場合には、その個所を書き直して同じく判を押します。最後の通知人氏名(自分の名前)の所にも判をおし、全く同じものを3通用意します。1通は相手方へ、1通は自分の控え、もう1通は郵便局が保存します。郵便局の窓口で、この3通が同じ内容であることを確認してもらい、職員がみている前で3通のうち1通を相手方の住所を記載した封筒に入れて提出します。 料金は、通常の郵便料金に加えて、用紙1枚目につき420円、2枚目以降は各250円を加算した額となります。 余談ですが、最近は郵便局の窓口もかなり親切になり、内容証明郵便の出し方とかも丁寧に教えてくれるようになりました。郵便局民営化論が出た頃から突如としてサービス業の意識が向上したようです。裁判所も民営化論とかでてくると益々窓口業務が丁寧・親切になるのかも・・・・ なお、現在はe内容証明という便利なものもあります。郵政公社のサイトでも郵便局でも専用のソフトが配布されています。一太郎などのワープロで文書を作成しますと、それがそのまま内容証明郵便となって発送されるのです。A4サイズのみですが、一定のスペースの中に収まる限り、字数の制限などはありません。なにより嬉しいのはインターネット経由での発送になるので24時間いつでも発送でき、しかもわざわざ中央郵便局(内容証明郵便はどの郵便局でも取り扱っているわけではないのです)に行かなくても職場や自宅のパソコンから発送できることは大きなメリットです。 |
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【どんな内容証明郵便でも自分で書けるのか?】
内容証明郵便を書くのは誰でも出来ることですから、ある意味自分でなんでも書けるということになります。何事も自分で解決しようという努力はいいと思います。但し、それが後日裁判などで証拠として役に立つものかどうかは別です。ちょっとした催告程度であれば自分でも書けるでしょう。また、司法書士の先生とかでもかなりの内容証明郵便を書くことができます。
しかし、法律関係がこみいっていたり、定型的な文面以外の内容証明郵便を出そうという場合には、自分で書くのではなく、やはり弁護士に相談してください。法律的な知識が不十分なまま見よう見まねで内容証明郵便を出すと、時にはそれが自分に非常に不利なものとなることがあります。弁護士に頼んでも、弁護士の名前を出さない内容証明郵便であれば大してて費用もかかりません。事案如何にもよりますが、特殊な事案とかでない限り、内容証明1通の原稿作成は報酬基準では3万円となっています。本当に基本的な内容のものはともかく、やっかいそうな事案の場合には弁護士に頼んだ方が後々裁判にでもなったときのことを考えると安全・効果的と思います。
| その4 内容証明郵便が届いたら | |
内容証明郵便が自分のところに届く、ということは個人の関係では非常に珍しいことです。企業などで金融、不動産関係の仕事をしていれば別に珍しいことではありませんし、債権譲渡通知などは会社で仕事をしていれば目にしたことはあるでしょう。 個人宛に内容証明郵便が届いた場合、そして、それが特に代理人弁護士名で出されているものの場合、迷わず弁護士に相談してください。知っている弁護士がいない場合には、各弁護士会の法律相談や、法律扶助協会の弁護士相談などに行ってください。特段の法律知識がない人が弁護士相手に交渉するのは正直言って至難の業です。法律相談程度ならば、有料の法律相談でも1回に5250円とかでやっていますので、自分の全財産を失うような羽目に陥る前に、法律相談窓口に行くことをおすすめします。 内容証明郵便が届く、ということは、それに対して相手が満足する結果を得られないときには訴訟に移行する可能性がきわめて高いといえます。たとえばいわれのない借金の返済を求めるような内容証明郵便が届いたとします。自分としては身に覚えがないから放っておく、あるいは「払わない」と返答するとします。そうすると次に送られてくるのはまず間違いなく「訴状」でしょう。内容証明郵便は、その背後に裁判提起が控えているということを認識する必要があります。現実に、私が内容証明郵便を出すときには、同時に訴状も作っておいて、指定された期日までに返事がなければ即訴え提起ということをすることも珍しくありませんし、弁護士としてはある種当然のことといえます。弁護士にとって内容証明郵便は、訴訟にしてもいいけれど、その前に任意の交渉で片が付くのであればその機会を相手方に与えよう、という趣旨で出す場合が非常に多いです。それだけに、内容証明郵便のレベルで早期解決を図る必要のある事案も多いといえます。 企業法務に携わっている人の場合には、内容証明郵便を受け取ることも、また出すことも大して珍しいことでもありません。従って、よくある内容証明郵便であれば特別な手だてをとる必要もないでしょう。通常の業務の中で処理できると思います。ただ、例えば第三債権者が個人名義となっている債権譲渡通知が来たときなどは、往々にして債権者が倒産して街金とかに債権譲渡されたときです。街金を相手に企業の担当者が交渉するのは正直言って大変ですし、頻繁に街金が会社に出入りするようになっては会社の信用にも関わります。また、日常的に受け取るような内容証明郵便とは違うものが代理人弁護士名義で送られてきたときには、会社の顧問弁護士に相談するべきです。下手な対応をするとどのような結果を招来するか分かりません。 内容証明郵便は侮れないものです。 |
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【内容証明郵便の事実上の効果は相手方への威嚇か?】
正直言って、結果的に威圧的効果が発生してしまうことが無いわけではありません。勿論、弁護士が内容証明郵便を出すときに、脅迫の手段として送りつけるわけではありませんし、そのようなことは弁護士倫理上も問題なのでやりません。しかし、現実問題としては、特に相手方が一個人の場合には内容証明郵便がある種の圧力を与えることは事実です。
内容証明郵便を送ったのに、適切な対応を取ってもらえなかった場合、弁護士としては当然に訴訟提起をします。内容証明郵便に「なお、本書面到達後1週間以内に返答無きときは、法的手続きを取らさせていただくことを併せて通知いたします」というような文言が最後に入っているのも、きちんと対応してくれなければ訴訟を提起します、という趣旨です。いわば内容証明郵便は裁判という本戦の宣戦布告状ともいえます。これを悪用すると、「訴えてやる、そうするとお前、裁判所に行っての争いだぞ、面倒だし負担も大きいぞ、嫌なら今すぐ耳そろえて金払え」という脅迫になりますので、弁護士の場合には、相手方がどういう人かをきちんと見極めて内容証明を出すことにしています。法的知識も何もない一個人にいきなり「法的措置をとります」などと書くと、それだけで十分に威迫効果を生じてしまいますので、そのあたりは十分に気をつけてはいます。現に、弁護士が出した内容証明郵便の記載内容が問題となって綱紀懲戒処分を受けた弁護士の例もあります。
しかし、仮に法的措置云々などと書いていなくても、弁護士名で内容証明郵便が届けば、それだけで十分なプレッシャーを与えることとなり、裁判を起こす前に債務を履行することもあります。ある種「やれるもんならやってみろ」と高をくくっている相手方には、それなりの効果があるといえるでしょう。また、弁護士名を出さずとも、内容証明郵便をだすことで「次は裁判!」というプレッシャーを与えて、不必要な訴訟を起こすことなく紛争が解決することもあります。
| その5 最後に | |
内容証明郵便というのは、弁護士にとっては必要不可欠なアイテムの一つです。しかし、一般生活においてはほとんど使われることがない道具でもあります。統計があるわけでもないですが、内容証明郵便を利用する場合はその殆どがなんらかのトラブルを控えている、あるいはトラブル予防のために行っていると考えていいでしょう。それだけに、よく判らない内容証明郵便が来た場合には放置せずに、速やかな対応をする必要があるのだという意識は持っていたほうがいいです。 |
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