面接交渉
 
2001.1.25 (2001.7.9)

   最近は年齢層を問わずに離婚する夫婦が増えてきているようです。夫婦二人ならば離婚してもあとはお金(財産分与や慰謝料)の問題となりますが、子供がいると親権者をどうするのかで非常にもめる事案がほとんどです。不幸にも親権者になれなかった親も、子にとって親であることは変わりません。そこで、離婚して親権者でなくなった夫・妻が自分の子供に会うための権利として「面接交渉権」というものが重要になってきます。今回はこの面接交渉権についてみてみます
その1  離婚に伴う子の親権者の決定

   離婚に伴う問題としては、大きく分けて
                    1)離婚できるのか
                    2)財産の分与
                    3)親権者の決定
という3つの事項があります。
   夫婦に子がいる場合には、離婚に際してそのいずれが親権者になるのかを必ず決める必要があります(819条)。離婚すれば夫婦は他人になりますので、父と母の双方が親権者であるとすると親権の行使が事実上不可能になることから、いずれか一方に決めることとなります。子からみればともに親(社会学的・生物学的な本来的な意味での親)であっても、法律的に親権を行使できるのは父か母かのいずれかだけになるのです。そして、親権者の決定は離婚するための必須要件となっているのです。
<親権>
 
   父母が未成年の子を社会人となるまで(成人するまで)養育するため、子を監護し教育し、子の財産を管理する親の権利義務を親権といいます。「親権」というからには「権利」なのですが、実際には親として子を養育する「義務」といえるでしょう。子の親には父と母がいるので、原則は父と母が共同して親権を行うこととなっています(818条)。
   親権の内容は、大きく分けて
          1) 子の身分上の監護教育権
          2) 財産上の管理処分権
の2つから成り立っています。監護教育は、文字通り子の養育という事実上の行為に関する事項で、管理処分権は子の法定代理人として財産管理をするのが主となっています。

<親権者・監護者>

   未成年の子に対する親権を有している者を親権者といいます。法律上の「親」といっていいでしょう。従って、養親も(生物学的には親ではなくても)「親権者」となります。
夫婦が離婚するときは,一方を親権者と定めなければならずないのですが、例外的に親権者の他に監護者を選任することもあります。監護者は、親権者にならなかった場合の他方の親がなることが多いですが、場合によっては第三者が監護者になることもあります。親権者は親権の2つの内容(監護教育権と管理処分権)を有しているのですが、監護者を選任した場合には、身上監護を監護者が担当することとなります。そのため、親権者は子の財産管理だけを行うこととなります。  
 民法第819条(離婚及び認知の場合の親権者)

父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
1  裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
2  子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母がこれを行う。但し、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
3  父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父がこれを行う。
4  第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によつて、協議に代わる審判をすることができる。
5  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によつて、親権者を他の一方に変更することができる。
 


その2  親権者でない親が子に会うためには

   離婚した場合には親権者が子を引き取ります(監護者が選任されれば監護者が引き取りますが、以後は監護者が選任されていない場合を前提に話を進めます)。そうすると、親権を得られなかった親は、子とは別々に暮らすこととなります。

   親権者でないからといって、社会学的・生物学的な意味での「親」の地位まで失うわけではなく、法律上も親子であることには変わりありません。子がそれなりの年齢で有れば、直接に子に連絡をするなりして会うという方法がありますし、子が中高生くらいになっていれば、会いたければ自主的に会いに来るということもあります。
   子が幼児であるとか小学生くらいであると、子に直接連絡をとるということもなかなか出来ないでしょう(電話をかけても本人にはつながらない、手紙は親が見せないでしまってしまうなど)。そこで、現実問題としては、親権を有する親に対して「子に会わせてくれ」と頼むことで子に会うということになるかと思います。しかし、実際には親権者でない親が離婚後に我が子に会うのは非常に困難なこととなります。
   離婚するからには大概は夫婦の仲は断絶破綻しているのであり、二度と顔も見たくないという場合が多いと思います。親権者となった親からすれば、そうでない親が子と会うことは、自分も子と会うことを意味するため非常に抵抗感が強いものとなります。特に、親権の帰属を裁判で争って離婚した場合などは、親権者となった親は、一旦子に会わせたら連れ去られるのではないかという心配と、自分が親権者なのだから会わせる必要もないという誤解などが複雑にからみあって、相手方(親権者でない親)からの申入れを頑なに拒絶することがまま見られます。
   このような現状のなかで、離婚して親権者でなくなった親が子に会う権利としての「面接交渉権」というものがクローズアップされてくるのです。
【監護者が指定されている場合は?】
 
    監護者が指定されている場合には、監護者が子の監護教育を行いますので、子を引き取るのは監護者です。親権者は親権(財産管理処分権)は持っていても、子とは一緒に生活していないということもあるでしょう。こういう場合には、親権者から監護者に対して面接交渉させろという話がでてくるのでしょう。
    通常は監護者が選任されないので、「親権者=子と生活する親」ということになりますが、監護者が選任されている場合に、親権者から面接交渉させろという裁判をしている例もあります。


   

その3  面接交渉権

   名称は仰々しいですし、なぜ「面接」「交渉」なのかその由来も今ひとつはっきりしないところがあるのですが、面接交渉権とは、離婚によって親権を失った方の親が、親権者に対して子に会わせることを要望する権利のことを言います。
   権利とは言っても、具体的に条文上の根拠があるわけでもありませんが、解釈上は血縁に基づく親子双方の自然権に由来する権利であり、裁判手続としては家事審判規則における子の監護(家事審判法9条乙類4号)に関する事項として扱われているといえるのではないでしょうか。
学説や家裁・高裁等の審判・決定例などをみてみると、面接交渉権の権利性については
    <否定説>
          1) 面接交渉権否定説
     <肯定説>
          2) 子の権利として認める見解(親の離婚後の子の福祉のために子に帰属する権利)
          3) 自然権説(親子という身分関係から当然に発生する自然権・固有権とする)
          4) 監護に関連する権利であるとする見解
          5) 親権の一権能としての監護の一部であるとする見解
などがあります。学説及び実務例からすると3)の親子という関係上当然に発生する権利であると把握するのが多いかと思われるます、5)の親権の機能の一つとして把握する見解も学説上は有力であるといえます。いずれにしても面接交渉権の権利性およびその性質については、いまだ見解に一致が見られないものであって、その理解は困難な問題であるといえます。
   学者の研究テーマとしてはともかく、実務家からすると、理屈はともかくどのような内容の権利が認められるのかが非常に重要になってきます。権利性を肯定する以上はそれに従って一定の権利行使が認められるべきでしょうが、その権利行使の範囲・程度はどのようなものなのかが一番の関心であるといえます。ところが、審判例などでは、権利性を認めるながらも、面接交渉権には限界があるのは当然のこと、全面的に制約される場合もあるとしており、理屈はともかく現実問題としては、ほとんど権利ではないというような扱いをしています。そこが益々面接交渉の実務をややこしくしているところといえます。
 家事審判法第4条(審判事項)

家庭裁判所は、左の事項について審判を行う。 
乙類四 民法第766条第1項又は第2項(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
 


その4  面接交渉に応じないという現実問題

   さて、実務上も面接交渉権の権利性それ自体は肯定しているといえますが、現実問題としては「会わせろ」ということに強制力はないとされています。つまり、「自分には面接交渉権があるから、お前のところにいる自分の子に会わせろ」と言ってみても、親権者の側でこれに応じない限りは実際に子に会うことは極めて困難となります。そのため、とりわけ離婚に際して、親権の帰属で大もめにもめた場合などでは、たいてい親同士の子を巡る争いが再燃し、最終的には調停などの裁判手続が再び始まることも珍しいくなくなるのです。
   このようになる背景には、(元)夫婦の問題と親子の問題とを切り離して考えることの出来ない親のある意味でわがままがあるといえます。
   親権者からすれば、せっかく裁判なりで勝ち取った親権なのに、それを無視するかのように相手方が子に会いに来るのは納得できないと考え、また、離婚した元夫・元妻とまた顔をつきあわせたり話をしなければならない事態への拒絶反応もあります。言ってみれば、面接交渉でもめている事案の多くの場合は親権者である親のわがままに起因しているといえます。元夫・元妻への嫌悪感から子を相手方と会わせないことが、この健全な育成にとっては極めて不合理な制約を与えているという事実は強く認識するべきです。
   現実問題として、例えば薬物常習者である元夫と子を会わせることが子の健全な成長・福祉に極めて深刻な影響を与えてしまうという場合もあります。その意味では、無制限に面接交渉権を認めるということに問題があるのは事実です。しかし、このような事情はむしろ少数であるといえ、基本的には親と子である以上自由に会って話をすることが出来るのが正常なあり方であると思われます。
【法律上の規定がないならば面接交渉を拒否できるはずでは】

    面接交渉権について、これをきちんと認めている法律上の規定はありません。それはそのとおりなのですが、法律で規定されていないから会わせる理由がないという話しも通じません。
   例えば、極端な話しでは、泥棒が自分の宝石を盗んだ場合に泥棒に対して返せと請求できるのはあまりに当然な話なのですが、これについても法律上の規定があるわけではありません。所有者であることからその所有権を守るために解釈上認められている請求権であって、法文上明確に規定されているわけではありません。法文上の規定がなければ従わなくていいというのであれば、盗んだモノを返す義務もないということになりますがこれもおかしな話です。
   面接交渉権についても、その権利性が所有権のように歴史上確立しきっているわけではないという事情はあるものの、法律上の規定がないから無視できるというものでないことは変わりありません。
 


その5  面接交渉を実現する方法

   現実問題として相手方が面接交渉に協力しない場合には、何らかの形で面接交渉を実現する必要が出てきます。
   基本的には相手方(親権者)とのねばり強い交渉ということになりますが、当事者間ではうまく行かない場合が多いでしょう。もともと、元夫・元妻への確執から面接交渉を拒否するということが少なくないのですから、交渉するための電話なども取り次がないということが多いでしょう。そこで代理人(弁護士)に中に入ってもらった上で交渉することが最初に考えられます。
   それでも相手が応じないときには、家裁の調停という手段が考えられます。あるいは離婚の際に調停で離婚している場合には、その離婚調停の際に干与してくれた家裁調査官を通じて相手を説得してもらい、時には履行勧告を裁判所から出してもらうということもあります。
   しかし、現在の裁判所の運用・判断では、面接交渉権を確保するのは非常に難しいといえます。まずは子の親権を争っている離婚訴訟において弁護士にきちんと相談して、自分が親権者になれない場合でも面接交渉権を確保するための布石を打つようにすることが重要です。離婚訴訟・調停で弁護士に依頼していなかった場合であっても、面接交渉でこじれた場合には弁護士に相談することをお勧めします。


その6  面接交渉義務 

   面接交渉にまつわる紛争がクローズアップされてきたのも比較的近年の話なのですが、更に最近は親が面接交渉してくれないという子の側からの悩みも顕在化してきています。子の立場からすれば、父母が勝手に離婚しておいて自分はその狭間で苦しんでいるという思いがあるところ、母が親権者に決まってからは父が会いにも来ないし電話もないという状況で父から見捨てられたという気持ちになっているのでしょう。離婚したからといって子にも会いに来ない親への不信、憤慨などが、面接交渉権のもう一つの側面である親の面接交渉義務という問題になっています。子に会いたいのに親権者が拒否していて会えないという親にしてみれば言語道断な話しといえるでしょう。
  最近では、親として子にきちんと会う義務というものも有るのではないのかという面からの研究も進められています。今後は、親から見た面接交渉の問題だけでなく、子からみた面接交渉の問題も表に出てくるようになるのではないかと思います。


 

その7  最後に

   面接交渉というのは、本来、離婚して子と別々に暮らすことになってしまった親が子と親子のつきあいを出来るように認められる権利であるところ、元夫婦間の憎悪や確執によってその権利が保全されないのが常態のようになってしまっているといえます。親権者になった親の方も、自分が相手方をどうこう思っているというところを取捨して、子の健全な成長のためには積極的に面接交渉に協力するべきでしょう。
   ただ、実際には既に述べたような現実問題を生じているのですから、離婚する際には弁護士に相談するなどして、子との間の行く末も考慮した離婚をすることが重要だといえます。


その8  追補 〜 FPIC

    面接交渉について、元家裁調査官が設立した相談室がありますので紹介します。
    社団法人家庭問題情報センター(通称FPIC  FamilyProblemsInformationCenter)では家庭の問題(親子・夫婦など)についての相談を受け付けていますが、その中で面接交渉の援助活動も行っているそうです。親子の交流に関する活動を幅広く行っており、予備カウンセリングを行った後で面接交渉の場を提供したり、面接交渉に立ち会ったりという援助を行っています。
    元家裁調査官ですので、面接交渉についてもプロ中のプロが担当するものといえます。弁護士もプロはプロですが、すべての弁護士が家事事件に精通しているとも限りませんので、場合によっては弁護士に依頼して面接交渉に立ち会ってもらうよりも有用かもしれません。相談は東京・大阪は60分5250円、90分7350円ですので、ここに相談にいくこともとてもお奨めです。
東京ファミリーカウンセリングルーム
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                                                  社団法人家庭問題情報センター内
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