その3. 特定目的会社


(1) 特定目的会社の概要

SPC(特定目的会社 Special Purpose Company)は、SPC法によって設立が認められた不動産証券化のための特別組織です。オリジネーター(元々の不動産の所有者)が不動産を証券化するに当たっては、まずその不動産をSPCに譲渡し、SPCが証券を発行することで一般投資家から資金を調達し、これを売買代金としてオリジネーターに戻すという手順で証券化が行われます。そして、SPCは証券化された不動産の管理を管理会社に委託して、賃料収入などから投資家に配当することになります。
SPCはオリジネーターからは不動産の受け皿会社であり、投資家からは証券発行者・投資先である。オリジネーターと投資家を「証券」によって結びつける役割を果たす会社である。しかし、そのSPCの「導管性」が徹底されるなど、実体は単なる「箱」とも言われる。オリジネーターが余裕する資産のうち、キャッシュフローを産み出す資産を証券化するにあたって、SPCがこれを買取り、自ら証券化することによって一般市場から投資を受け、それがそのままオリジネーターへの買取代金に充当される。オリジネーターからすると、金融機関からの間接調達ではない、市場からの直接調達を実現するための受け皿がSPCとなる。
<特定目的会社と特別目的会社>
 従前SPCという場合には「特定目的会社」(Special Purpose Company)と 「特別目的会社」(Specific Purpose
Company)の2つがあり、現SPC法によって設立されることとなるのは前者の特定目的会社を指していました。後者は、SPC法(旧「特定目的会社法」)と関係なく、通常の株式会社や有限会社を、定款などを工夫するなどして現行法の枠内で不動産の証券化に対応させた会社でした。特定目的会社は税法上も有利な扱いがあったものの、その設立手続が厳しく、実際の会社運営もかなり制約されていたために使い勝手が悪く、企業は独自に特別目的会社を設立して対応していることが多かったのです。現在はSPC法の成立(平成12年の改正)によって、簡易に特定目的会社が設立できるようになっており、単にSPCと言えばSPC法にもとづき設立された会社をいうようになっている。但し、最近の日経新聞などでもSPC法上のSPCと、特別目的会社であるSPCとを明確に区別しないまま記事にしているので、これらの記事を読む場合には注意が必要である。

SPCによる不動産の証券化の具体的な不動産所有権の移行や証券、資金の流れがどのようになっているかですが、これについては下の図にまとめておきましたので参考にしてください。



(2) SPCの実体・構成

SPCの実体・構成を簡単にまとめると次のようになるといえます。

(1) SPC法にもとづき設立される特殊な法人
      不動産の受け皿会社としての「形」を提供する
      SPCは一つの資産流動化計画につき1社という対応関係
(2) 届出を行った資産流動化計画に関する業務のみを行う
(3) 有限会社に組織形態が類似
      「特定社員」と「優先出資社員」から構成される組織
(4) の役員は、一人以上の取締役・監査役

(3) SPCの発行する証券

SPCの主要な目的は、
@ オリジネーターとの間の不動産売買(オリジネーターが直接金融を得るための媒介役)
A 投資家への利益分配

となります。既に@については見ましたので、ここでは投資家との関係でどのような証券を発行するのかをみます。

(1) 投資家が投資する証券は「エクイティ型の証券」と「デット型の証券」

エクイティ型の証券は、「優先出資証券」
デット型の証券は、株式会社で言うところの「社債」に該当するもの
しかしデット証券はABS(Asset Backed Securities)であり、その拠り所はSPCの有する特定の不動産にすぎない(一種のNonRecourseFinanceと言える)。そこでデット証券も名称は「特定社債」となるのである。

(2) 社債に転換社債(株式引受権付社債)などがあるように、SPCにおいても一般の株式会社と同様の複数種の特定社債を発行できる

<SPCが発行する証券の種類とその性質>
SPCの発行する証券の種類・性質

このようなオフバランスがされると、

@ 自己資本比率が増加する

A 固定比率(固定資産/自己資本×100%)が減少する
B 資本負債比率が減少する

とBSからは企業の体質が改善されたように見えます。また、利益を維持することができれば

C 総資産利益率が増加する

という点でも、効果が上がっているように見えます。本来不動産の証券化は資金調達手段として発生したものであり、オフバランス効果は副産物として出てくるものでした。しかし、現実にはオフバランス効果を得ることを主目的とした証券化がかなり行われています。

(4) SPCの設立

SPCはSPC法にもとづき設立されるが、資産流動化を目的としている特殊な組織であることから、低コスト化をはかるべく組織・資本面についての簡素化の措置と、税制上の優遇措置も取られている。具体的な設立手順は有限会社の設立に類似しているが、SPC設立の大きな特徴は次のようなものです。

(1) 資産流動化計画の作成
通常の有限会社の設立に従って定款を作成し出資の引受をする
(2) 資本
最低額は10万円
(3) 事前届出
SPCが設立された以降に、業務を開始する前に金融再生委員会に届出をする

(5)  SPCの配当

   SPCは二重課税を避けるべく特別に設けられた組織であり、配当するべき利益について課税されないための法規定が設けられている。

   二重課税回避のためには、SPCが登録を受けていることを大前提とし、下記の要件を満たす場合には配当に課税されないという優遇措置を受けることができるようになっている。基本的に問題となるのは、証券の引受人が機関投資家でない場合には50人以上おり、配当が当該年度の配当可能金額の90%を超えている場合にはだいたい優遇措置を受けることができると思われる。


要件(1)
証券の引受者
@ 50人以上のものを相手方にして証券取得の申込み勧誘を行った場合の特定社債券の発行価額総額が1億円以上であるもの又はその発行をした特定社債券が適格機関投資家のみによって引き受けられたもの
A 発行した優先出資証券が50人以上の者によって引き受けられたもの
B 発行した優先出資証券が適格機関投資家のみによって引き受けられたもの
要件(2)
事業年度にかかる利益の配当を対象とする
@ 流動化業務及び付帯業務を資産流動化計画に従って行っていること
A 他の業務を営んでいないこと
B 法に基づき特定資産の管理及び処分を第三者に委託あるいは信託財産として信託していること
要件(3)
当該事業年度終了時に同族会社に該当しないこと
要件(4)
配当が当該事業年度の配当可能金額(特定社債を発行している場合には政令で定める額を控除した金額)の90%に相当する金額を超過していること

(6)  SPT(特定目的信託)

SPC法ではSPCと共にSPT(Supecial Purpose Trust 特定目的信託)も規定しています。SPCとの相違は、SPTは特定資産の信託譲渡をうけ、その信託受益権(証券)をオリジネーターに交付し、オリジネーター自身がその信託受益権を投資家に販売するという点です。

(7)  SPC設立による証券化の具体的流れ

最後に、SPCの設立による不動産の証券化が実際にはどのような流れで行われているのかを簡単にまとめてみます。

1 事前調査
所有物件の評価を行い、それに基づいて証券化のスキームを検討するなどの計画立案をし、市場調査の上で証券発行の具体的な方法や数量を決定

2 資産流動化計画の作成
具体的に当該不動産を幾らと評価し、その評価に基づいてどの程度の証券を発行するのか(数量、種類など)、どれくらいの期間で消却するするのか、配当はどの程度とするのかなどの計画を立案

3 SPCの設立
資産流動化計画に基づいてSPC(SPT)の設立作業に入ります。最終的には登録された時点でSPCの具体的活動が始まる

4 不動産譲渡・証券発行
証券化する不動産の購入を行うとともに、投資家に募集をかけて証券を発行します。証券の引き受けがされたら、その中からオリジネーターに不動産の購入代金を支払います。

5 不動産管理・配当
管理業者に委託して不動産の管理を行い、賃料収入などから配当を行います。

6 不動産の売却・証券の消却
流動化計画通りに運用がされて、予定期間に至った場合には、証券を消却するとともに不動産を売却するなどの最終精算手続きを行います。

 
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「不動産証券化と賃貸借契約」
不動産の証券化