第5章      労働者派遣法


第1項 労働者派遣の概要

   違法派遣が少なからず存在します。派遣会社としてきちんと登録されているのかの基本的な確認を怠らないようにする必要があります。また、派遣労働者の受入ができない事業場所であるにもかかわらず受入を敢行している会社はかなりあります。1年(3年)を超過しての派遣労働者の受入れには十分気を付けることが大切です。
       ex.  一般労働者派遣は許可・特定労働者派遣は届出、派遣受け入れ禁止業務(派遣法4条)、制限期間を超過する派遣、二重派遣

第2項  派遣法の基本構造
第2章第2項(2)

第3項  派遣先と派遣元

(1)

派遣元の派遣業登録などの簡略化

許可届出手続を簡素化することで労働者派遣をより使いやすくなりました(H15改正)。
   @ これまで事業所単位で求められていた許可・届出を事業主単位(会社単位)に変更
    ※ ただし、各事業所ごとにのみ必要となる書類提出(派遣元責任者の届出など)はその事業所所在の都道府県労働局に行うことも認められる
   A 許可届出先が公共職業安定所から都道府県労働局へ変更
   B 派遣元責任者の変更手続を簡素化(届け出期間を30日に延長・)
   C 派遣元責任者講習の有効期間を3年から5年に延長し再講習の時間を6時間から4時間に短縮

(2) 派遣先と派遣元が負う主な義務

   派遣労働者を送り出すのが派遣元、派遣労働者を受け入れるのが派遣先です。派遣労働者と雇用関係にあるのは派遣元ですから、雇用契約に基づいて種々の義務を負います。他方、派遣先は雇用関係はないものの実際には自己の指揮監督によって派遣労働者を使用するのですから派遣労働者に対して負う義務もあります。また、派遣先と派遣元とが労働者派遣契約を締結していますので、その契約関係から互いに対して種々の義務を負担します。
   これらの義務を挙げると相当な数になるのですがその中でも重要な義務と考えられるのはおおよそつぎのようなものです。

派遣元が負担する義務など
労働者派遣契約の締結にあたっての就業規則の確認
労働者派遣契約の解除にあたって講ずる派遣労働者雇用の安定を図るための必要な措置
適切な苦情処理
社会保険の適用促進
派遣先との連絡体制の確立
派遣労働者に対する就業規則の制定・明示
派遣労働者に対する不利益取扱いの禁止
派遣労働者に対する福祉の促進
関係法令の関係者への周知徹底
派遣労働者の個人情報保護
派遣先の負担する義務など
労働者派遣契約にあたっての就業規則の確認、就業条件の周知・確認など
派遣労働者の特定を目的とする行為の禁止
性別による差別禁止
契約に違反した場合の是正措置など
適切な苦情処理
苦情処理については派遣元と派遣先双方の共働に期待されている
社会保険適用の促進
派遣期間制限の確認・適正運用
派遣契約解除にあたって講ずる派遣労働者の雇用安定を図るために必要な措置

(3) 派遣労働者の安全衛生の確保

   平成15年改正によって、(2)記載の各義務だけでは不十分であった事項について、業務・義務や講ずべき措置が追加されています。これによって派遣労働者の保護が充実されることが企図されています。

@ 派遣元・派遣先責任者の業務の追加
→ 「派遣元責任者」「派遣先責任者」がそれぞれ派遣元・派遣先において安全衛生を統括し、派遣先・派遣元との連絡調整を行う
A 製造業務専門の派遣元・派遣先責任者の選任
→ 製造部門への労働者派遣解禁にともない、特に安全衛生を配慮する必要がある製造業においては、責任者を特別に選任することが必要
※ 製造業務に従事する派遣労働者100人につき1人以上を専門担当の責任者にする
(派遣先においては製造業務に従事する派遣労働者が50人以上いる場合から)
B 派遣先の安全衛生についての協力
→ 派遣先は、派遣元が雇入時に派遣労働者に対する安全衛生教育をするためにその教育の委託をうけた場合にはこれに応じて、必要な配慮や協力をする
C 労働者死傷病報告様式の改正

(4) 派遣先・派遣元が講ずべき措置

    また、すでに説明したように平成15年には指針(派遣先指針派遣元指針)の改定も行われています。

@ 労働保険・社会保険の適用の促進
→  時として派遣元は派遣労働者を適切な社会保険に加入させずに国民健康保険や国民年金に自己負担で加入させている場合もある。そこで、派遣労働者が労働保険・社会保険に加入していない場合にはその具体的な理由を派遣先及び派遣労働者に通知することを義務づけ、これによって適切な保険加入を促進させることとしている。
なお、派遣先は、派遣元から適切でない非加入の通知を受けた場合には、派遣される労働者について適切な労働・社会保険に加入させてから派遣させるように派遣元に求めなければならない。
所定労働時間が1週につき2日しかないため、などの具体的な理由を通知する必要
A 派遣労働者の福利厚生に関する均衡配慮
→  派遣労働者は派遣元の従業員であるため、派遣元の基準に従った福利厚生を受ける。しかし派遣先では派遣元と異なる(通常は派遣元よりも充実した福利厚生になっていることが多い)ことがあるため、派遣元は派遣労働者が業務を円滑に遂行する上で有用な物品の貸与や教育訓練の実施などについて、派遣先の従業員との均衡に配慮して必要となる措置を講ずる必要
B 派遣労働者の教育訓練・能力開発
→  自己の雇用している従業員ではなく、当初より一定の能力があることを前提に派遣労働者を受け入れるのが派遣先であるが、その派遣先においても派遣労働者の教育訓練・能力開発については可能な限り協力する必要
C 雇用調整により解雇された従業員のポストへの派遣の受け入れにおける注意
雇用調整により解雇した従業員がついていた業務ポストに、その従業員の解雇後3ヶ月以内に派遣労働者の派遣を受け入れる場合には、派遣先は必要最小限度の派遣の期間を定めるとともに、受け入れ理由を説明するなど適切な措置を講じて派遣先の労働者の理解がえられるようにしなければならない
正社員(従業員)を派遣労働者に安易(恣意的)に切り替えることを予防する措置

第4項  採用・派遣

(1)

派遣元の雇用

   一般労働者派遣業の場合には平時には雇傭の予約(法的な意味での予約契約に限らず、拘束力のない派遣労働者候補者名簿への「登録」が一般)のみ行い、派遣先が決定したところで1年の期間の定めのある雇用契約を締結するのが多い。特定労働者派遣事業の場合には常時雇用しているために派遣元(派遣会社)への登録=就職=雇用開始となります。いずれの場合であっても、派遣元と派遣労働者とが雇用契約を締結していない限りは労働者派遣を行うことはできません。

(2) 労働者派遣契約

   派遣先から派遣元に対して労働者を派遣して欲しい旨の希望が来たとします。派遣先に対して派遣する適切な派遣労働者がいる場合には、その労働者を派遣するための契約を派遣先・派遣元が締結します。これが労働者派遣契約です。
   たいていの場合には、派遣元(派遣会社)が労働者派遣契約の契約書ひな形などを用意していますから、労働者派遣契約の形式が問題となることは少ないと思います。ただ、数多く軽派遣会社の中には労働者派遣契約の内容がいい加減なところが無いわけでもありません。また、法律などで記載が決められている契約条項(必要的記載事項)だけしか記載されていない労働者派遣契約書では後々のトラブルを招きかねません。そこで、労働者派遣契約に記載して老いた方がいい条項なども下記に掲げますので、派遣会社と契約する場合に項目を照らし合わせるなどすることは有用です。有益的な事項の中には、契約としては当然含まれるべき事項(派遣会社への代金など)も含まれています。これらが法律などで規定されていないのは、契約条項の中で経済的なものについては当然に規定されるはずという当たり前の発想と、法律などで規定しなければならないのは派遣労働者の地位と権利の保護が中心であるからという理由だと思われます。

必要的記載事項
(派遣法26条、派遣規則22条、派遣元指針、派遣先指針)
派遣労働者が従事するべき業務内容
派遣労働者が派遣される事業所の名称、所在地、その他就業する場所
派遣先の指揮命令者に関する事項
派遣の期間と派遣就業日
始業及び終業の時刻と休憩時間
安全衛生に関する事項
派遣労働者の苦情処理に関する事項
労働者派遣契約解除にあたって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な事項
派遣元責任者、派遣先責任者
派遣労働者の福祉の増進のための便宜供与(派遣法施行規則22条)
休日等労働時間外労働の日数・時間数
派遣元事業主であることの明示(派遣元)
派遣を受ける期間の制限に抵触する日(派遣先)
26業務の場合には政令の号名、有期プロジェクト業務の場合、育児・介護休業代替業務の場合にはその旨を明記(育児介護休業の場合には休業する労働者の指名、業務内容、休業記の開始日・終了日も記載)
人数

その他有益的な記載事項
(当然規定されるべきだが法律などでは特段触れられていない事項も含む)
派遣料金
派遣労働者の規律秩序維持
残業、休日労働の有無
派遣先の情報保護・機密条項
派遣労働者の故意・過失による派遣先の損害に対する賠償規定
派遣労働者の交代変更の可否
派遣労働者の交代変更の条件・基準
派遣労働者の休暇取り扱い及び代替要因派遣基準
派遣労働者の引き抜き禁止条項
労働者派遣契約の解除規定

    法律などで取り決めが決められているものはともかく、有益的な記載事項については多少の説明をしてみます。
@ 「派遣労働者の派遣先での規律・秩序維持」は派遣先の指揮命令権に直結するために必要な事項です。 派遣労働者と雇用関係にあるのは派遣元であるため、規律・秩序維持に違反した場合であっても、直接に派遣労働者を懲戒処分できるのは派遣元となっているからです。そこで、規律・秩序維持の規定などを盛り込むことで、派遣先での規律違反などを原因として派遣元が懲戒処分をすることのトラブルを減らせます。
A 残業、休日労働の有無については後述します(第7項 (2) )。
B 派遣先の情報保護は、派遣労働者がスペシャリストでない一般事務などの労働者であっても派遣先にとって重要な問題です。取引先が第三者にオープンになるだけでも業務に支障を生ずる場合もあります。そこで、派遣先が派遣労働者に対して守秘義務を求めるための根拠規定を盛り込みます。これらによって派遣先が直接に守秘義務に関する誓約書を取ることも可能になると考えられています。
C 損害賠償規定は、いざトラブルが発生したときのことを考えて盛り込むことが重要だといえます。損害賠償額の予定・制限、損害賠償に関する派遣元の免責条項などが一般的に盛り込まれることが多いです。
D 派遣労働者の交代変更を派遣先が求めることができなければ派遣先の指揮命令権は有名無実となる危険もあります。直接に交代権限を持つのは派遣元なのですから、少なくとも派遣先が派遣元に対して「この派遣労働者は派遣先が派遣元に求めた能力を満たしていないので他の派遣労働者と交代させるように」などの要請ができるようでなければなりません。
E 代替要員派遣についても同様で、派遣元の債務、諸手続について規定することが通常です。
F 派遣労働者の引き抜き禁止条項については後述します(第16項(1))。

(3) 派遣期間
後述(第5項 派遣期間

(4) 業務内容

    旧26業務以外の派遣は「就業場所ごとの」「同一の業務」について3年を超過できないとされています。そのため、 派遣場所と業務内容の特定は必須になっています。労働者派遣契約にこれらの事項を記載することが法律上も明確にされている理由はここにあります。派遣労働者を受け入れる場合には、既に同一の事業内容について派遣労働者を受け入れていないかをきちんとチェックしておくことが必要となります。

事業内容の同一性の判断基準

@ 就業場所の同一性
会社における「課」程度の単位を想定(労働省国会答弁)
そのため、就業場所の要件についてはほとんどの場合「同一の業務」に吸収される
A 業務の同一性
同一業務とされるのは派遣先の組織の最小単位(「係」または「班」)が目安(派遣先指針)
最近は企業内における「班」「係」はその時々の事業状況に応じて柔軟に組織変更される傾向
業務の同一性については班・係の名称ではなく派遣労働者を指揮命令する者の同一性が一つの基準

(5) 派遣労働者の選定

<派遣法における労働者>
派遣者労働法における「労働者」は抽象的な労働者

    専門的能力を有する派遣労働者については需要が多く、派遣先は能力・スキル・経験などの本当の意味での「能力」を求めて派遣労働者を求めます。これに対して一般的事務などを行う派遣労働者については供給が多く、派遣先は正社員の代替要因としてコストダウンを求めるために派遣労働者を求めていることが少なくありません。また、均等法が根付いてきているとはいっても窓口業務では「若くて綺麗な」「女性」を求めたいという会社・事業主が依然として多くあるのが事実です。正社員で雇用すると「若い」という条件を満たすのは短期間なのでこれを派遣労働者で代用したいという理由で派遣会社に派遣労働者を求める事業主も相変わらずいるようです(「一般的事務職=若い独身女性」の認識が依然として根強いのが我が国の社会の実態です)。
    しかし、労働者派遣法における「労働者」は「この人」「あの人」という特定の人ではありません。従って、能力がないなどの理由でなければ「(女性秘書を求めていたのに)男性が来た」とか「(男性限定の部署にしていたのに)女性が派遣されてきた」という理由で派遣労働者を追い返すことはできませんし、「容姿が(採用担当者の好みではない)」などの理由は論外とされます。
    派遣先としては、性別、年齢、既婚・未婚、自宅・親元、など労働者の「個」を特定する希望は出せません。資格、経験などの「能力」「技術」「技能」に関する希望でどのような労働者を求めているのかを希望を出さなければなりません。派遣元もこれにしたがってどの労働者を派遣するのが適当なのかを選定することとなります。

<派遣労働者の選定における典型的な問題事案>

@ 派遣元が、派遣先の要求する条件に沿った派遣労働者を選考して派遣
           → 派遣先は派遣労働者に求める仕事内容を具体的に依頼する必要
                                ↓
               × 派遣労働者の特定条件
               ○ 派遣労働者に求める仕事内容

A 派遣労働者の選択権限は派遣元にしかない
          → 派遣先の選考は認められない(派遣法26条7項、派遣先指針、派遣元指針)
              ※ ただし法律上の努力義務
                               ↓
              「派遣先 > 派遣元」 の社会的力関係
               → 派遣先が暗示的に派遣労働者の不当な選択を求める
                    ex.窓口業務・秘書の「若い」「女性」(派遣先指針・派遣元指針)

B 脱法的な派遣先の選択
         ・ 派遣労働者候補者との事前面接
         ・ 派遣労働者候補者との事前業務打ち合わせ

C 紹介予定派遣における求人条件提示
        紹介予定派遣においては、正社員としての雇用を前提としていることもあり、
        求人条件提示の制限が緩和されます(→(16)参照)。

(6) 派遣労働契約

  派遣労働者と派遣元の間の雇用契約を派遣労働契約と言います。雇用契約という点では通常の正社員の雇用と特別の違いはありませんが、派遣労働者として雇用することを明記することが当然必要です。

(7) 労働条件通知(明示)書

   派遣元は派遣先への派遣労働者として選択した従業員に対して、当該派遣にかんする就業条件を明示する必要があります(派遣法34条)。派遣労働者に限る話ではなく、パート労働者、正社員、アルバイト従業員などに関係なく労働条件通知書(明示書)の交付が必要ですが、派遣労働契約の場合には特に注意が必要です。労働条件は労働者派遣契約の必要的記載事項や有益的な記載事項についてきちんと盛り込んでおくことが重要です。なお、書面での交付が必要です(派遣規則25条)。
    登録型(非常用型)の場合には派遣時に派遣元との雇用契約が締結されますから、個別に労働条件通知書(明示書)を交付することなく、派遣労働契約の中に労働条件を明記することで労働条件の明示(労基法15条)を兼用可能とされます。

(8) 就業規則

   派遣労働者と雇用関係にあるのは派遣元ですから、派遣労働者に適用されるのは派遣元就業規則となり派遣先の就業規則は派遣労働者に適用されないものです。そのため、派遣先の規律・秩序維持に必要な事項(派遣先の就業規則に規定されている事項)については、派遣先と派遣元が労働者派遣契約を締結するときに、派遣元が「労働条件通知書に記載して派遣労働者に周知徹底させ遵守させる」ことを取り決めておくことが必要になります。

(9) 派遣労働者の管理

    派遣労働者については、派遣先、派遣元ともにその雇用状態・使用状態を適宜管理することが必要とされています。派遣労働者の管理については項を改めて説明するものではありますが、詳細を羅列しても余り意味がありませんので就業規則や労働条件通知書通知などと並べてここで軽く触れておきます。

<派遣労働者の管理の基本事項>
@ 派遣先管理台帳の作成(派遣法42条)
A 派遣先管理台帳を1ヶ月に1回以上一定期日を定めて派遣元に書面で通知(派遣法42条3項、派遣規則38条)
B 管理台帳の保管義務(派遣受入終了から3年・派遣法42条2項)
C 派遣先責任者の選任(派遣法41条)
D 派遣元管理台帳の作成(派遣法37条・平成H15改正)
E 派遣受入期間の制限定職日についての通知・明示の義務化(H15改正)
※ 派遣受入期間に制限がある派遣業務について労働者の派遣を行う場合には、派遣先、派遣元は、つぎのとおりの通知・明示をしなければならない(違法派遣の予防のため)
(i) 労働者派遣契約の締結時
    派遣先は派遣元に対して派遣受入期間制限の抵触日を通知(派遣法26条5項)
(ii) 派遣開始前
    派遣元は、派遣労働者に対して、派遣先の派遣受け入れ期間の制限への提唱日を明示する
(iii) 派遣受入期間の抵触日の1ヶ月前〜前日まで
    派遣元は派遣先にたいして派遣の停止を事前通知する (派遣法35条の2)

   派遣労働者の従事する業務の種類については、派遣期間の制限における同一の事業を確定するため、可能な限り詳細に記載する必要があります。特に26業務以外は就業場所において派遣労働者が就業する最小単位の組織である係・班の次元の記載も必要とされていることに注意が必要です(業務取扱要領)。また、派遣労働者からの苦情処理については、派遣元への通知及び、苦情を理由とする不利益取扱いの禁止が規定されています(派遣先指針)。
    なお派遣先責任者は派遣労働者1人以上100人以下を1単位として、1単位につき1人以上選任することが必要ですから、かなりの派遣先では派遣先責任者を選任することが必要になると思います(就業場所における派遣労働者及び派遣先従業員の総数が5人以下の場合は選任義務免除)。この派遣先責任者を特定の人に任せきりにしておくと、場合によっては「同一の業務」の判断に影響を与えて、受け入れられるはずの派遣労働者の受入れが認められなくなるということもあります。派遣先としては、人事部担当者、総務部担当者という人ではなく、派遣労働者を受け入れる部課やプロジェクトチームの中から派遣先責任者を選任することが良いのではないかと考えられます。

<派遣先管理台帳の記載事項>

@ 派遣労働者の氏名
A 派遣元の氏名・名称
B 派遣元の事業所も名所
C 派遣元の事業所の所在地
D 派遣就業をした日
E 派遣就業した日ごとの始業終業時刻及び休憩時間
F 従事した業務の種類
G 派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に関する事項
H 派遣先責任者及び派遣元責任者に関する事項
I 労働者派遣の役務の提供の制限を受けない業務及び物の製造の業務について行う労働者派遣に関する事項
J 派遣労働者にかかる健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保健資格取得届の提出の有無

第5項  派遣期間

(1)

派遣期間の制限

   労働者派遣は、あくまで正社員の「補完」であって「代替」ではないというのが法の建前です。つまり、派遣労働者を何年にもわたって受け入れるのであれば正社員を雇用するべきという基本思想が根底にある制度なのです。

26業務以外 最大3年
派遣先当該事業所における同一業務の派遣受け入れ期間が3年

   なお受入可能期間は派遣先のみが把握しうるものです。そのため労働者派遣契約においては派遣先が派遣元に対して、派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知する必要があります(契約の成立要件)。また、労働者派遣契約の更新(派遣期間満了後の更新条項は無効)については例え3年の上限を超えない更新であっても無効です。継続させたい場合には新規に派遣契約締結が必要となります。また、労働者派遣契約の新規締結に伴ってこれまで派遣されてきた労働者と別の労働者が派遣されることもありますが、派遣先はそのことについて派遣元に不服を申立てることはできないと考えられます。

(2) クーリング期間

   同一業務に関する労働者派遣を3年以上継続することは原則として認められません。しかし、派遣法ではクーリング期間という規定を設けています。同一就業場所の同一業務であても、派遣労働者の受け入れを一時的に中止した後、中止期間が3ヶ月を超過した場合には、派遣の継続性を断絶するとしているのです。そこで「3年派遣受入→ 3ヶ月中止 → 更に3年派遣受入 → 3ヶ月中止 → また更に3年派遣受入が可能」という扱いが認められることとなります。
   一度派遣労働者を受け入れたら以後はどのような場合でも同一業務での労働者派遣を受けられないのは不都合であり、3ヶ月間の受入停止期間を設けられるということは派遣労働者の受入が無くても業務を遂行できる、つまり正社員としての雇用を必要とはしてないと考えられることから設けられているものです。ただし、このクーリング期間を脱法的に用いた場合に有効な労働者派遣を実施できるのかについては問題が残ります。

(3) 派遣期間の制限超過の判断

   派遣期間の制限を超過しているかどうかの判断は次の2点に注意して行うことが必要です。

@ 派遣労働者・派遣元の変更
派遣法における派遣労働者は「抽象的な労働者」
※ どの派遣元からの誰であろうと、派遣労働者は同じ
A 担当業務の変更
派遣労働者が就業するのが「同一の業務」か否かで判断
※  同一業務の判断については事業内容の同一性の判断基準を参照

第6項  給与

   派遣労働者への給与支払いは、派遣労働者を雇用している派遣元です。派遣先から派遣元への支払額は労働者派遣契約で定まるものです。派遣会社はこの両方の金額の差額を利益としているのですから、例え派遣先が派遣元に対して派遣労働者の給与よりも遙かに高額の代金を支払っていてもそのことについて派遣労働者は無関与、異議不可となります(派遣先の営業成績ということです)。派遣労働者に対して適正な給与が支払われていればそれ以上の文句を派遣労働者がいうことはできません。
   ちなみに、従前は派遣会社は派遣先から派遣労働者へ支払う給与の3割増程度の代金を受領していたことが多かったようです。しかし最近は(特に一般業務への派遣業務では)競争が激しくなっており、派遣会社が採算ラインぎりぎりまで労働者派遣契約による代金を減額するようになってきています。

第7項  就業時間

(1)

就業時間

   派遣労働者の就業時間は労働条件通知書に従うこととなります。派遣労働者の場合には雇用主である派遣元の就業規則よりも派遣先が要望する就業時間に意味があります。派遣先が派遣労働者の事実上の指揮命令者だからです(ex.派遣労働者の労働時間の管理は派遣先)。そこで、通常は労働条件通知書で就業時間を確定させることとなります。

(2) 時間外労働・休日労働

   派遣労働者に対して時間外労働や休日労働をしてもらいたい場合には、派遣元と派遣労働者の間の雇用契約(派遣労働契約)、派遣元の就業規則(36協定)、労働者派遣契約での取り決め、労働条件通知書すべてで時間外労働・休日労働の規定が整備されることが必要です。派遣先だけで時間外労働・休日労働を決められるものではないことに特に注意が必要です。派遣先としては、時間外労働・休日労働を派遣労働者にも求めたい場合には予め派遣元との契約時にこれらの規定がきちんと整備されているのかを確認しておくことが重要です。

<派遣労働者に時間外労働・休日労働をさせるために必要な手続き>
派遣労働者と派遣元
派遣労働者に対する残業、休日労働の服務義務を課す就業規則
免責規定としての36協定
派遣先と派遣元
労働者派遣契約における、派遣労働者に対する時間外労働・休日労働の規定
派遣先と派遣労働者
労働条件明示書における、派遣労働者の時間外労働・休日労働の規定
派遣先の指揮命令権に基づく時間外労働・休日労働の命令を根拠付ける

8.休日・休暇

(1)

休日

    法定休日は派遣労働者と派遣元の就業規則、雇用契約に拘束されるものですが、特段問題になることはないと思います。

(2) 有給休暇

    派遣労働者の有給休暇については派遣先も派遣元の頭の痛くなる問題を抱えることとなります。派遣労働者であってもほとんどの場合は6ヶ月以上の勤務継続で有給休暇を取得することとなります。「派遣のくせに有給なんか有るわけない」ということにはなりません。また、派遣労働者がいくつかの派遣先を間断なく回って就業している場合(ex.1年ごとにA社、B社、C社と連続して派遣されている場合)には有給休暇の日数も増えてくることがあります。どちらかというと派遣労働者は伝統的な愛社精神は持ち合わせず、自分のライフスタイルに合わせた所得確保手段として派遣を選んでいる人が少なくありません。長期終身雇用を前提としている正社員と比べてきちんと有給休暇を消化する人が少なくないのも派遣先、派遣元の頭を悩ませるところです。
    ここでは派遣労働者の有給休暇で最もよく問題となる事項を説明してみます。

@ 派遣労働者の有給休暇申請と代替要員派遣

   派遣労働者が有給休暇を取得して一番困るのは派遣先です。しかも下の説明のように派遣労働者に対しては有給休暇の取得時期を制限する手だてが事実上有りません。そこで、派遣労働者が有給休暇を取得することに備えて派遣先は派遣元に対して代替要因の派遣を求められるように労働者派遣契約などで取り決めをしておくことが不可欠になります。
   派遣元においても、派遣労働者に対して有給休暇の取得申請にあたっての適当な時間的余裕を求めることが必要です。事業主(雇用主)の都合による取得時期の制限(ex.一斉休暇に限定する、年度末の月は取得禁止)は認められませんが、例えば有給休暇取得の2週間前までに通知することを求めることまでは禁止されるものではありません。そこで、代替要因の選定と派遣の手続きに必要な一定期間を派遣労働家約(あるいは労働条件通知書)で規定しておくことが有益です。

<派遣労働者と有給休暇取得>
派遣先への派遣期間に関係なく、派遣元との雇用期間継続で有給休暇を取得
派遣元への有給休暇申請
派遣労働者の有給休暇取得によって影響を受けるのは派遣先
しかし派遣先は時期変更権の行使ができない
派遣先 直接の雇用関係ない
派遣元 時季変更の理由がないことが多い
※   時季変更権を行使してもいずれは有給休暇発生
労働者派遣契約における代替要因派遣条項の必要性

A  一般労働者派遣と有給休暇

   一般労働者派遣の場合には、派遣先からの希望に従って派遣するべき労働者を選定したところで雇用契約が発生します。派遣労働者も1回の派遣でその次はまたしばらく待機期間になることが珍しくありません。このような派遣労働者が派遣期間満了直前に有給申請をした場合で派遣期間満了までの期間より申請された有給休暇日数が長い場合には派遣期間満了までの有給休暇のみ発生すると考えます。契約期間が残り3日のところで5日の有給休暇申請があっても、雇用関係はその3日間で満了してしまうからです。2日分を補償しろという派遣労働者の請求には理由がありません。なお、この事例でも断続無く次の派遣先に行く場合にはその冒頭部分に2日分の有給休暇が入り込むことになりますので注意は必要です。
   基本的には、派遣期間満了の最後のところで有給休暇を取得されると派遣先も業務の適当な引継ぎを阻害されるなどの不都合を被ります。また、いくら派遣労働者の権利であるとはいっても、そのように最後の最後で有給休暇を全部消化する労働者ばかり派遣する派遣元では評判を落とします。派遣元・派遣先とも派遣期間の中で適切に有給休暇を消化できるような環境を整備することも必要になってきます。

第9項  派遣労働者の懲戒処分

   派遣労働者と雇用関係にあるのは派遣元です。また労働者派遣契約においては労働力の派遣を目的としており、特定の労働者に対する不利益処分権限を派遣契約で派遣先に委譲するのは労働者派遣法の趣旨に反すると考えられます。訓戒とか注意などの軽い懲戒処分はともかく、出勤停止、懲戒解雇などについては派遣元に保留されるべきものといえます。
   派遣先は派遣労働者の不当な行為によって損害を被るなどした場合には、その派遣労働者に対してではなく派遣元への債務不履行責任の追求で処理することが一般的になると考えられます。不法行為の場合に派遣先から直接損害賠償請求などを派遣労働者にできることとは別の話ですので注意が必要です。

第10項  退職・解雇

(1)

退職

   派遣労働者の都合による(派遣元からの)退職がなされると、従業員は派遣元との関係で債務不履行になります(←派遣労働契約は期間の定め有る雇用契約ですから期間満了までの間での解約は認められません)。従って、場合によっては派遣元は派遣労働者に対して損害賠償請求ができることもあります(損害賠償額の事前の決定は無効ですのでこの点は要注意です)。他方、派遣元は派遣先との関係では労働者派遣契約の債務不履行になってしまいます。やむを得ず派遣労働者が退職したような場合には代替要因を派遣するなどの適切な措置を講ずることが必要となります。
   派遣先としては、このような関係を理解した上で派遣労働者を受け入れることが有益です。

(2) 解雇

   派遣元の派遣労働者の解雇は、一般の会社と正社員の解雇法理に準ずるといえます。ただし、派遣労働者は期間雇用者(期間の定め有る雇用契約)ですから、現実には派遣労働者の解雇が問題となる場面は多くはないと考えられます。

第11項  労働者派遣契約の解除・解約

    派遣先と派遣元の間の労働者派遣契約が解除・解約された場合の法律関係は次のようになります。

(1) 解約

   派遣先からの解除・解約は基本的にできないと考えることがいいと思います。下の流れ図のとおりです。
   ところで、派遣先がやむを得ない事情によって労働者派遣契約を解約した場合、派遣労働者に対する解雇予告手当相当額の支払いで足りるという見解に対しては、主として労働者側の立場から異論反論がなされています。契約期間が満了するまでの間の60%の手当を支払うべきとの見解もかなり強いです。この点については判例においても確定的な判断がなされておりませんが、正社員の解雇の場合であっても30日分の予告手当の支払いで足りるという扱いとのバランスからみても、(旧)労働省の指針と同じ扱いで許されると考えて良いかと思います。

<派遣先の都合による労働者派遣契約の解約>

派遣元と派遣労働者の雇用契約は当然には終了しない
                                      ↓
派遣労働者の雇用契約が満期まで円満に終了するようにする必要
                                     ↓
中途解約は認められないのが原則(派遣先指針)
労働者派遣契約の内容によっては派遣先が派遣元に賠償義務
相当の猶予期間を持たせての解除の申入
派遣先の関連企業などへの就職斡旋
派遣先と派遣元の合意がある場合には、解約予告を30日前にするか予告手当相当分の賃金(30日分)の賠償で解約可能(労働省指針)
派遣元からの請求に応じて契約解除理由を明らかにする必要
義務ではなく指針に基づく努力規定

(2) 倒産

  派遣先会社が倒産したり、派遣会社が倒産したりということはどうしても起こってしまうことがあります。労働者派遣契約の中途解約は認められないといっても、派遣先・派遣元が倒産してしまったらそれどころではありません。あまり起こって欲しくはないものですが、相手方が倒産した場合などにどうなるのかの概略は把握しておくことが有用です。

派遣先の倒産の場合
@ 派遣先と派遣元の関係
就業場所の消滅により労働者派遣契約は解約せざるを得ない
※  当然解除になるのか(破産59条)については他論あり
A 派遣先と派遣労働者
事実上の就業不能
※ 派遣元が派遣労働者に何らかの対処をしない限りは就業義務は継続(実際上は無意味)
B 派遣元と派遣労働者
新たな派遣先への派遣
派遣期間満了まで平均賃金の60%を支給
30日の解雇予告又は30日分の予告手当で解雇
派遣元の倒産の場合
@ 派遣元と派遣労働者
雇用契約は終了(派遣労働者から解約申入可)
A 派遣労働者と派遣先
雇用契約が終了すれば、派遣先での就業義務も消滅
B 派遣元と派遣先
派遣先と派遣元の間の賠償義務の問題

第12項  派遣労働者の雇用

   労働者派遣は「代替」ではなく「補完」だと述べました。もし派遣期間を満了したのに以後も派遣労働者の受入が必要なのであれば、派遣期間満了後に派遣労働者が派遣先に雇用できるようにするべきだというのが派遣法の扱いです。同一事業所の同一業務について労働者を従事させる場合には、当該派遣労働者を雇用するべく努めるとされています(派遣法40条の3)。厚生労働大臣は派遣労働者の雇用を勧告することができるとされています。
   このような扱いによって派遣労働者の正社員としての就職の途を広げるという政策的な配慮がなされているのです。勿論派遣労働者の希望が前提です。このような趣旨に基づいて、派遣元による派遣労働者の派遣先への就職を禁止する規定は無効であると介されています。例えば「派遣労働者と派遣元との雇用関係が終了した後に派遣労働者が派遣先と雇用契約を締結することを禁止する」とか「派遣労働者と派遣元との雇用関係が終了した後に派遣労働者が派遣先と雇用契約を締結した場合には、派遣先は派遣元に対して損害賠償を支払う」などの特約を派遣元と派遣先の労働者派遣契約に盛り込んでいても、これらの規定が派遣労働者が正社員として雇用されることを阻害するので効力を持たないとされます。

第13項  労働組合・労働争議

    派遣労働者の労働争議には多少問題が起こります。労働者派遣の特徴である雇用主と指揮監督者の分離が、これまでの労働活動の枠でとらえきれない関係を作り上げているからです。派遣先(派遣元)にしても、派遣労働者の労働争議に対してどのように対応すればいいのか、そもそも対応しなければならないのかが問題となります。ここでは団交とストライキについて簡単に触れてみます。

(1) 団体交渉義務

  派遣先と派遣労働者には雇用関係がありません。団交に関する判例理論では、団体交渉義務を負う「使用者」を、基本的労働条件を現実的かつ具体的に支配決定できる地位にあるかいなかで判断していますが、派遣先がこのような「使用者」に該当するのかについては解釈が分かれています。派遣先には派遣労働者を具体的に支配決定する地位があるとして派遣先に対する団交を認める見解もありますが、この立場は派遣法の各種制度の存在とそぐわないものと考えられます。派遣法には派遣労働者からの苦情処理に関する規定が設けられていますが、これは労働者派遣の特殊性に鑑みて特に規定されたものといえます。本来は派遣元が責任を負っている改善義務などを派遣元と派遣先の共働で行わせようとしているものですから、派遣先には団交義務がないことが前提であると理解した方が素直です。
   また派遣先が団体交渉に応じたとしても現実の解決に直結しないことが大半です。労働時間と賃金という大きなテーマについては派遣先ではなく派遣元が対応するべきものです。従って派遣先は団体交渉義務を負う使用者ではないと考えるべきといえます。

(2) ストライキ

   派遣先と派遣労働者には雇用関係がありませんから(1)のように団交義務も認められないというべきです。では派遣先は団体交渉義務を負わないから派遣先でのストライキは適法な労働争議行為にならないとまで結論づけられるかですが、これは別の考慮が必要です。 派遣労働者の就業先は派遣先ですから、派遣先でのストライキを認めないとストライキそのものが不可能です。派遣労働者に対して憲法上保障されている労働者の人権を否定することとなります。従って、派遣先でのストライキは適法な労働争議行為となると考えざるを得ません。
    「派遣労働者のストライキ=労務提供の停止」は、派遣元の派遣先に対する債務不履行に同視されますから派遣先は派遣元に対する損害賠償、代替要因の派遣を要求することができます。こうでなければ、本来使用者ではない派遣先に無用の負担を強いてバランスを欠きます。
   なお、派遣法ではストライキが実施されている事業所への労働者派遣は禁止されていることにも留意が必要です(派遣法24条)。

第14項  個人情報保護

    的確な労働者派遣実現のため派遣元は派遣労働者の個人情報を保有することが不可欠です。これは他方で派遣労働者個人のプライバシー保護の要請を生じます。そこで派遣法では派遣元の派遣労働者の個人情報管理に関する厳格な義務を規定しています(派遣法24条の3)。個人情報保護法案が国会に上程される予定となっている現在においては極めて重要な事項です。
    派遣会社が登録している個人情報を第三者に有償譲渡するなどのトラブルがたまに起こっているようですが、そもそも派遣元といえども必要外な個人情報を収集することができないことは重要です。派遣先にしても、派遣元に派遣労働者の個人情報を求めることはできないことを念頭に置いておくことが必要です。

<派遣労働者の個人情報保護の例>
@ 派遣元が収集・保管・使用できる個人情報の限定(派遣元指針)
ex. 収集自体を禁止する事項
社会的差別の要因となる情報
思想信条に関する情報
労働組合加入状況
A 派遣元が派遣先に提供できる個人情報の限定(派遣元指針)
(1) 氏名、年齢、性別
(2) 社会保険など加入・届出の有無
(3) 担当業務の遂行能力に関する情報

第15項  労働者派遣に伴うクレーム処理

   労働者派遣は「雇用主と指揮命令者の分離」が特徴ですが、これは派遣労働者の地位の不安定を必然的に生じます。労働争議などでも多少触れましたが、実際の職場での改善要望がその場にいる人間(派遣先の上司)に言えない派遣労働者の地位を守る手配は労働者派遣の制度そのものを確立させるためにも極めて重要です。
  派遣法は派遣先に対する適正な就業のための措置を講ずる義務(派遣法40条2項)を課し、苦情の内容の派遣元への通知及び、派遣元と派遣先の共働(密接な連携)による適切且つ迅速な処理(派遣法40条1項)などの規定を設けています。派遣先と派遣元の連携による解決を予定している制度ですが(派遣元指針)、派遣先が常日頃より適切なクレーム処理を講ずることが求められているという認識が必要です。この点は、派遣元指針においても明確にされました(H15改正)。

第16項  紹介予定派遣

(1)

派遣先による雇傭制限禁止特約

   派遣先に対する派遣期間満了後の引き抜き禁止は派遣労働者の職業選択の自由を制限するものです。従って正当な理由ない場合には認められないものです(派遣法33条2項)。職業選択の自由が憲法上の保障である以上、それを制限できるだけの正当な理由は極めて限定的なものといえます。例えば派遣労働者が派遣元との雇用関係の中で派遣元の財産として保護されるべき特殊なスキルを取得している場合などが想定されますが、現実にはほとんど想定できない者と考えられます(業務取扱要領)。
   引き抜きに対する派遣先の派遣元への違約金支払規定を労働者派遣契約に規定することについては解釈が分かれていますが派遣法33条の趣旨から違法と考える見解が有力なようです。

(2) 紹介予定派遣

    労働者派遣は正社員の補完として認められる制度ですが、この制度を上手に活用することで労働者に対する適切な就職先の確保という積極的な機能を持たせることもできます。特に昨今の経済状況から思ったように就職できない失業者が増加している状況では、有る程度のお見合い期間を経て正式採用されるという扱いも非常に有用なものといえます。そこで労働者派遣では派遣元が、派遣先に派遣労働者を派遣する際に、予め派遣期間終了後に派遣先に職業紹介を行う制度が徐々に広がっています。これを紹介予定派遣と呼びます。
    もともとは欧米にみられるジョブサーチという制度を労働者派遣制度に取り込んだものといえますが、下のまとめのように我が国でもその有用性が徐々に認識されてきており、次の派遣法改正では法律上も明確な制度として規定されることが予想されます。

<紹介予定派遣発生の背景事情>

(企業側の要望)
予め能力や適正を確認した上での雇用を希望
有る程度の能力とスキル、経験を有する労働者を求める
希望する人材の獲得にかける費用の削減(求人事務負担<有料職業紹介料)
(就職希望者の要望)
就職形態の多様化(長期終身雇用形態以外の雇用形態の拡大)
従来の就職活動の限界(スキルアップをしつつ自分に適した職場に就職希望)
                              ↓
ジョブサーチ型派遣に対する社会的要請(企業、労働者ともリスクの少ない雇用の実現)
紹介予定派遣制度の創設

   紹介予定派遣とするためには、 @派遣労働者が派遣元に登録・雇傭される際に紹介予定であることを申し出、または同意すること、A派遣労働者に対して派遣終了時の労働者及び派遣先の意思にyり職業紹介が行われないこともありうることの明示の説明、B派遣終了時に求人休職の意思及び条件を派遣先及び派遣労働者に確認すること、が要件として必要となります。紹介予定派遣によって派遣期間満了後に正社員として採用した場合には、既に派遣労働者としての勤務実績がありますから試用期間の設定は認められません。
   平成15年改正前は、紹介予定派遣であっても履歴書の提出、事前の面接その他派遣先による人選は派遣先による不当な選定として認められていませんでした。これは派遣期間内でじっくりと派遣労働者の能力や人となりを見極めることができるので、、派遣先としては派遣労働者としての受入時点で事細かな情報を取得しようとしなくても大丈夫なはずだという立法趣旨によるものでした。しかしながら、紹介予定派遣においては、将来その派遣労働者を正社員として雇用することを念頭にしているものであり、最初から正社員で採用する場合には企業側が自由に人選できる(一定の制約はありますが)のにたいして、あまりに不都合であり、紹介予定派遣の利便性を疎外しているとの批判がありました。そこで、平成15年改正では紹介予定派遣についての見直しがはかられました。

<紹介予定派遣における求人条件提示制限の緩和>
@   派遣就業開始前または派遣修業期間中に派遣先が求人条件を明示できる
A   派遣修業期間中に求人・休職の意思の確認や採用内定を行うこともできる
B   派遣就業開始前に面接をし、または履歴書の送付をもとめるなど派遣労働者を特定することを目的とする行為についても可能とする

   いうまでもなく派遣労働者においても、雇用対策法・均等法などの規制は当然あり、年齢や性別を理由として派遣受け入れを決める差別的取り扱いは認められません。しかし、上記のような求人条件提示の制限緩和によって、紹介予定派遣では労働者派遣の基本である「労働力の派遣」ではなく「労働者の派遣」が認められるようになっているといえます。これは将来雇用契約を締結する前提での派遣であるため、本来の労働者派遣とはその性質が異なることを、派遣法が正面から認めるに至ったためといえます。
    他方で、正社員として雇用されることを期待して就業していた派遣労働者の雇用に対する期待を適切に保護する必要があるため下記の制限が設定されていることについては注意を要します。

@   紹介予定派遣の受入機関は同一の労働者については6ヶ月を超過してはならない
A   紹介予定派遣を受け入れたのに、派遣先が職業紹介を希望せず、または派遣労働者を雇用しなかった場合には、派遣元の求めに応じてその理由を開示しなければならない(派遣元は、派遣労働者の求めに応じて、派遣先から明示された理由を書面で明示しなければならない)とする。

   なお、派遣先が派遣期間内に派遣労働者に対して労働条件等を明示することは制度上認められません(職安法5条の3)。しかし、派遣期間の満了と同時に正社員としての勤務が始まるとすると、この「制度」は欠陥を持っているといわざるを得ません。そこで派遣終了時期と派遣先雇傭開始時期が直接している場合には、就労予定日の2週間程度には提示可能であるとの運用がまかり通っています。

第4章  パート労働法
第6章  おまけ
パート労働法・労働者派遣法入門