■ シエナ料理学院 〜蒸気機関車の旅〜

 11月10日、日曜日。学校の校外研修「トレーノ・ナトゥーラ」の旅に出掛けた。これは自然の中を走る蒸気機関車の日帰り旅行ツアーで、年に数本走る企画列車であるとのこと。今回は文流の高岡さんが皆にも、と予約して下さり、この企画に参加することができた。

 国鉄を退職した人たちの運営によるこの列車はシエナの駅からゆっくりと南に下り、モンテ・アンティコという街で機関車の機動部分を付け替えて昼食処のサン・ジョバンニ・ダッソ(アッソの街)という街に向かう。この街ではこの企画に合わせてなのか「白トリュフ市」が開かれるということで、もう行く前からワクワクなのであった。

 機関車に乗ったのは生まれて初めてだが、とても楽しかった。
 古い車両は良く磨かれており、重い窓と硬い木の椅子が素敵だ。決して快適な座り心地ではないけど、それもまた嬉しいもの。出入り口のドアは全ての席の窓のレバーの引き方を変えるだけでそこが大きく開くようになっている。便利だが危ない造りだ。9:10、イタリアなのに時間通りに発車。他の列車もこうあって欲しい。

 移動中はまさに「世界の車窓から」。あの音楽が流れてくればもうそのままだ。途中、ガイドさんがやってきて一生懸命このトレーノナトゥーラの歴史をしてくれる。土産物(CDとカレンダー)も売りに来た。また車掌さんも挨拶に回っているようで、黒い制服がキリリと決まって格好良い。皆との記念写真を快く引き受けて下さった。2時間程走り、モンテ・アンティコ駅で汽車は停まった。先頭機動部分を付け替え、方向転換するためだ。皆が車両から降り、それを見守るのだが、ナカナカ面白かった。どうやらこの作業が機関車の旅の見どころの一つらしい。イタリアにも鉄道オタク君はいるようで、巨大なレンズ付きカメラを構えた人がズラリと並ぶ。客車を外した先頭車は物凄い勢いでシュッシュシュッシュッと走り去り、軌道を変えてまた物凄い勢いで戻ってきた。そして水を補充して往路時の最後部に連結。汽車はアッソの街に向かって再び走り始めた。



 アッソの駅に到着。列車を降りて驚いた。こんなにたくさん人がいたのか!後で知ったが350人乗っていたらしい。乗客は長い列を作って坂の上にある街にゾロゾロ歩いていくのであった(足の悪い方の為にバスも出ていた)。駅の小ささと比例して小さい街であった。350人は行列を崩さぬまま、昼食をとる小学校に到着。事前に今日の昼食は小学校で、と聞いていたので「どうせビュッフェかなにかだろう。サンドウィッチや切り分けピッツァかな。」と思っていたのだが、それは全く違っていた。

 入口で予約の席番号を告げると案内係が席を教えてくれる。教室の机を全て取り払い、クロスのかかった丸い大きなテーブルが部屋一杯に並び、窓には青い素敵なオーガンジーのカーテンまで下がっている。確かに学校なのだけど、とても素敵な雰囲気にまとまっているのであった。

 そして素敵なのは装飾だけではない。カトラリーも皿も紙やプラスチックではなく、高級とは呼べないもののちゃんとした陶器やステンレスだ。グラスも紙じゃない。そして料理はセルフサービスではなく、緑の制服を着たカメリエレ達がちゃんと運んでくれるのだ。

 まずはクロスティーニ。大皿にたくさん並べられており、それを皆で回す。鶏のレバーペーストとウサギらしき肉のトマト煮はそれぞれおいしく、2つずつ食べてしまった。ワインも水も飲み放題。そして次はまたまたクロスティーニ。今度は温かい。鶏にペコリーノをのせて溶けるまで焼いたもので、これもナカナカおいしくて2つ。クロスティーニなのに6コも食べてしまった。

 パスタはオレキエッテのブロッコリーソースあえ。同席のイタリア人カップルの女性が「これはトスカーナじゃなくてプーリアの料理なのよ」と教えてくれたが、私もそれは知ってます。でも、このオレキエッテはブロッコリーだけじゃなく、白インゲンもドロドロになっていたのでこのあたりがきっとトスカーナなのだ、とひとり納得。フム、おいしい。

 ペロッと食べ終え、次はメインかー何かなーと隣のヒロさんと話していたら、なんともうひと皿パスタが運ばれてきたではないか!リコッタチーズのラビオリをトリュフとバターであえたもので、とてもおいしい。思わずお代わりしてしまう。さっきのオレキエッテはなくても良かったと思う程、このラビオリはおいしいのであった。胃袋の限界を考え、お代わりは1度にする。

 かなり満腹状態というところでいよいよメインの料理登場。何やら大きい肉と緑色のプリンのようなものが配られてきた。肉は仔牛のヒレを焼いたもの。仕上げは白ワインとバターである。付け合わせはホウレン草のスフォルマート(型焼き)。肉の種類はカメリエレ君が仔羊と言っていたが、あれは仔牛だ。それも結構大きくなった硬めの仔牛。それぞれ味は良かった。スフォルマートはイタリアにしては珍しく滑らかに美しく仕上がっていたのは驚きである。しかし、お腹が一杯過ぎて万全の体勢で食べられなかったことが悔やしい。一応完食したが…思い出すだけで背中まで食べ物が詰まった気分。

 ドルチェもすごかった。、強いアマレット風味のクリームがドッサリはさんである15B四方のミルフィーユ。どう見ても4人分以上の大きさなのであった。不味くはない。不味くはないが…これだけは食べ切れなかった。親切にも隣のヒロさんから「ほーら、違う味だよー」と差し入れを受ける。男なんだから自分で食べなさい!

 3時間近く掛けて食事を終え、近くのバールでカフェを飲みに行く。考えることは皆同じらしく、バールは大混雑。先に散歩することにした。まずは白トリュフ市へ向かう。街の入口にある小さな城の中がその会場だった。

 落ち葉が敷き詰められたちょっとテーマパーク風な室内に2箇所、小さな机が出ており、そこでこれまたパン籠程度のバスケットに白トリュフが入っていた。100gで100ユーロ。最初、ひと桁間違えて1Lで100ユーロと見て「安い!これなら買える。でもイタリア人には高いのかなあ」と思ったが、実はその10倍であった。やはり高いものなのだ。しかし、あまりにも小さいスペースなので(城というのも気付かぬ建物だった)、これが本当にトリュフ市なのか?と帰った後も疑う程。だれか買った人はいるのだろうか…。

 白トリュフ市の近くにはテントがあり、お土産屋が数店並んでいたが、品揃えはシエナの菓子とあまり変わらない。チーズはピエンツァ産のペコリーノがズラリ。ブラブラ眺めてからようやく空いたバールでカッフェを飲んでひと休みし、列車に戻る。

 帰りはあまりの満腹にほとんどの客は爆睡。私は椅子が硬すぎて眠れなかった。窓の外はもう暗くなっていた。昼は見えなかった機関車の火花が車窓をビュンビュン横切り、とても綺麗。列車は予定通り18:30にシエナに到着。皆様お疲れ様でした。
 初めての機関車と初めての街、楽しい昼食、と大大満足の1日であった。




本当に貴重な体験が出来ました。
高岡さんに心から感謝。ありがとうございました。


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