■ ミラノ 

 '03年始めからアジアで猛威をふるっていたSARSの影響もあり、予約していた香港経由でローマへ朝到着の便を出発1ヶ月前にミラノ直行便に変更した。イタリアへは何度も出掛けているが、実はミラノは初めてである。ファッションや経済の最先端、いや、私にとっては何と言ってもミラノ風カツレツやオッソブッコ、そしてリゾット!期待に胸を膨らませて出掛けた。

ミラノのホテルとネット・カフェ

 初ミラノは3日間の滞在予定。旅のバイブル・地球の歩き方から選んだ駅から歩いて行ける安ホテル「ホテル・ネットゥーノ」は、不衛生で落ち着けないひどいホテルだった。その名に反し、部屋からはネットはおろか、電話すら使えないのであった。持参のパソコンはここではただの重石。ジャンルーカからの待ち合わせ場所の最終確認はメールで入ることになっている。ならばネット・カフェを利用するしか無い。しかし、数軒のカフェに出掛けても日本語入力が可能な機械を置く店は少なく、半日くらい探して歩いた。
 ミラノ中央駅向かって左手、アフリカや南米からの移民がウロウロするちょっと危ない地域に、ようやく使える店を発見した時はホッとした。ネット・カフェは1人旅の心のオアシスなのである。

街歩き・食事

 ミラノの街は都会である。鋪装された広い道路に容赦なく太陽が照りつけ、異様に暑い。稀に見る猛暑が6月中旬にやって来てしまった、とTVのニュースでも連日報道されていた。噴水で水浴びするのも当然という暑さ。道行く人は皆、ミネラルウォーターかジェラートを手にしている。この陽射しの中、帽子をかぶっている人はほとんどおらず、たまに見かけるのは100%日本人観光客である。2003年のヨーロッパは死者も出る程の酷暑なのだった。
 一番の見どころであるドゥオモも改装中で、美しい(らしい)ファザードがスッポリ隠れてしまっていてガッカリだった。楽しみに出掛けたのに修復中、というのはよくある話。いつ始まっていつ終わるかは、短期間の滞在者には分からないのである。もしかしたら現地の人々も知らないのではないか?

  

 他の街なら少し歩けばバールやパン屋があって、朝からワクワクと散歩が楽しめるのだが、ミラノはちょっと違う雰囲気。街並が新しいからか、何だか馴染めないのである。それでもいくつかの有名バールや老舗バールをハシゴしてカプチーノやコルネット(菓子パン)を試してみたが、コレ!というのには出会えなかった。まあまあおいしかったのは駅のすぐ側にあるパンツェラというバール。牛乳はロングライフミルクではなく、フレッシュな全乳である。バンコ(カウンター)でカプチーノを飲みながら店の様子を観察。バリスタ達は大きな塊のハムやチーズ、トマトをスライスしては焼き立てのパンに挟んでパニーノを作っている。どれもたっぷりで、とてもおいしそう。この店はレストランも備えた大型店だが、料理も丁寧に作っているに違いない。

 あまりの暑さに食欲が沸かず、あんなに楽しみだった北イタリア特有のバターたっぷりのリゾットやオッソブッコのことを考えるだけでムッと来る。こういう時は軽くピッツァにしようと、ガイドブックを頼りに店を探す。地元の人に人気というトラットリアに入ってみた。確かに混んでいた。メニューにはピッツァがズラリ。が、料理はレバーペーストのカナッペや、豆料理等、見おぼえのあるものばかり。ここはトスカーナ料理店なのだった。北海道で沖縄料理店に入るようなものかな。 ピッツァはどこの地域のものなのか、ナポリとローマ以外で食べたことがないので分からないが、縁はやや厚めで中央は薄い。かといってカリカリではない。全体にフワッと焼いてある。これはこれで香ばしさもあっておいしい。食べ応えも充分である。ナポリでもローマでも無い味。店自体がトスカーナ料理の店なので、ピッツァももしやそちら風?それともこれがミラノ風のピッツァ?ミラノピッツァはもっと薄くてクリスピーな生地かと思っていたので(日本でよくあるカリカリピッツァはそう歌っているところが多い)、ちょっと驚いた。


 ミラノには有名な揚げピッツァ(パンツェロッティ)屋がある。ルイーニという名のその店は、いつも揚げ立てのパンツェロッティを食べさせてくれるらしい。イタリアは揚げ物が多く、今までの経験から言えばどれも大抵おいしい。ドゥオモから近く、夕方の散歩を兼ねて出掛けてみた。 店の前は何度か通りかかっていたが、いつも立ち食いする人で一杯だった。店内はカウンターのみで椅子は無い。ピッツァよりも気軽なスナックの様だ。数種類のパンツェロッティの中から私はピーマンとモッツァレッラ入を選んだ。店員はケースに残っていた一つを手に取り「温める?」と聞きながら、返事も待たずに側にある電子レンジでチン。揚げ立てじゃないジャン!別にまずくはないけど、目の前で温め直されてしまうと…

 ミラノで食べるトスカーナ料理、電子レンジの温めが普通の出来立て(?)総菜屋…ガイドブックの情報はというのはその程度なのだ。何ごとにおいても。

コモ湖でリゾート??

 

 自然の中ならミラノに対するイメージが変わるかな、と、世界的に知られたリゾート「コモ湖」へ出掛けた。中央駅から急行で30分、緑に囲まれたコモ駅へ到着。湖まで徒歩10分。漢字の「人」という形をしたコモ湖。私が行ったのは左下の足先。遊覧船の発着所付近は遊歩道が整備されていて、軽い散歩が楽しめる。湖岸は入り組んでおり、対岸はすぐ近くに見える。広い広いと聞いていたのに…芦ノ湖より狭いナ、というのが第一印象。そして全体的に何かこう人工的でシックリ来ない。往復2時間の定期船に乗ったが、ずっと同じような風景に加え、暑いばかりであまり面白く無かった。

 コモ湖へ来たのは都会からの避難、のためだけではない。真の目的は「鱒のセージバター風味を食べること」である。船から降りるとすぐにそれをメニューに掲げる店を探した。名物料理なので、探すのに時間はかからない。湖畔にはいくつものレストランが並んでいる。店頭の黒板に、鱒のセージバターと書いてある「ラ・ダルセナ」という店に入ってみた。歩道につくられたテラス席に座る。
 一応メニューを眺めたが、私の心は決まっている。給仕を呼んで鱒のセージバターと、トマト味のパスタを注文した。暫くすると給仕はすまなそうな顔をして戻って来た。黒板に書いてあるにも関わらず、今日は鱒が無いからできないと言う。代わりにブランズィーノという魚を勧められた。この湖で捕れた魚、とのこと。魚は仕方ないとして、仕上げはセージバター風味に仕上げて欲しいと頼んだところ、ブランズィーノはローズマリー風味の方がおいしいと言う。では…魚は給仕の勧めに従うことにして、パスタをセージバター風味のトルテローニ(詰め物をした生パスタ)にする。

 トルテローニの中身はリコッタチーズ。茹で加減がやや足りなかったのは残念だが、たっぷりのリコッタとセージの風味が良い。バターで仕上げたパスタはおいしいが、後半にお腹にドンと来るものである。

 そして肝心の魚、ブランズィーノ。ただ焼いただけのそれは生臭く、ローズマリーの有無はあまり関係ない状態。皮もベッチャリ冷めている。これで合計23ユーロは高い。後で調べると、ブランンズィーノとはスズキであった。スズキっていつから湖に住むようになったのだ?私の不勉強も問題だけど。

 気を取り直して食後は近くのブルナーテ山へ。ケーブルカーで数分、コモ湖を見下ろす小高い山の中腹に出る。素晴らしい眺めを期待していたのだが、見晴しは悪くてガッカリ。ここのどこが良いのだ?少し周辺を歩いてみたが、特に素敵な場所は発見できなかった。すぐに麓に引き返す。滞在時間15分。とっても損した気分。

 湖を後に市庁舎近くのジェラート屋でピスタッキオとヨーグルトのジェラートを買い、ドゥオモの影でひと休み。暑過ぎて溶けるので、あわてて食べる。街は昼休みの時間となり、人通りが少なくなって来た。ブラブラしようにも店は軒並み閉まってしまい、夕方は4時か5時開店だ。他にすることも無いので駅でしばらく時間を潰し、3時半発のローカル列車でミラノに戻る。各駅停車はエアコン無し・窓全開が普通。空調が苦手な私でさえも耐えられない程の暑さは1時間続いた。ヤレヤレ。4時半、まだまだ陽の高いミラノ中央駅へ到着。そのままネット・カフェへ駆け込み、涼をとる。

 都会のミラノは退屈で、予定を切り上げてフィレンツェへ急ぐ。イタリア全土を回ったわけでは無いが、私にはフィレンツェが一番落ち着く街だ。





■ La Bonne Table
■ たびたびの旅