■ イスタンブールの旅 〜トルコのスナック・軽食類〜


 イスタンブールには街のアチコチに屋台や軽食店が並ぶ。いろいろあって目移りしてしまう程で、また軽食と言うにはボリュームも多くキチンと食事になるものがほとんど。多くは地方からやってきた人たちがその地方の伝統食を提供しているようだ。

 屋台には出勤途中のお父さんも学校帰りの子供も仕事中の警察官も立ち寄って、その場で立って食べたり歩きながら食べたり…お行儀は良くないけれど、とってもおいしそうに見えるのだ。

●ビョレッキ(ボレイ)

 ビョレッキ(ボレイ)=薄い小麦粉生地(ユフカ)を重ねて焼いたり揚げたりしたもの。いろいろなタイプがあり、この生地をパスタのように茹でて油脂を塗り、チーズや炒めた挽肉、ホウレン草等を挟んで幾層にも重ねて焼いたものを「水ビョレッキ」と呼ぶ。ちょっとラザニアに似ていなくもない。そう、麺ばかりで具が無いラザニアを想像するとかなり近いかな。

 朝食やおやつに人気があるらしく、街の至る所で「ビョレッキ・センター」や「ビョレッキ・サロン」を目にした。大抵はトルコオヤジのサロンで、店の造りは何だか香港や台湾の饅頭屋&場末の点心屋風。ウィンドウには巨大なビョレッキがデデンと置かれ、なぜかその中にはこれまた巨大な源氏パイ風の形や渦巻きも。それらは中国の葱餅(小麦粉生地で葱をクルクル巻いて棒状にした生地を更に渦巻き上にして焼いたもの)にそっくりなのだ!

 初めて食べた店では電子レンジで温め直したのを出してきたので、ユフカがゴワゴワしてヒドくまずかった。2軒目以降はどの店もおいしく、塩辛いトルコの白チーズ(羊乳)や挽肉等、味を変えては楽しんだ。不思議なのは、このビョレッキ、決して一つの塊では出てこない。必ず一口大にズタズタになって出てくるのだ。一度、どうしても写真を撮りたいから切らないでと頼んだが、やっぱり切られてしまった。何度か食べに行く内に分かったのだが、ビョレッキを切る専用の包丁もあるようで、とにかくコレは切って出すのが普通らしい。店内では店員が休む間もなくセッセと注文に応じて切り分けていた。一応ナイフとフォークが用意されているのだが…パン屋でパンを食べた時も一度だけだが、普通のパンがズタズタになって出てきたことがあった。ひとくちカットはトルコのサービスなのだろうか?

 生地ばかりのビョレッキだが、ちらりと肉が入ったビョレッキはなぜか日本のメンチカツの味がするのだった。それもウチの近所の山本肉屋の味!

●ピデ(トルコのピッツァ)

 ピデはトルコのピッツァである。トルコにピッツァというと妙な気もするが、もともとピッツァはアラブ圏の平焼きパンのピタパンが地中海を渡ってイタリアのナポリに伝わったもの。トルコへのピッツァはイタリア経由ではなく、アラブからごく自然に広まったのだと思う。

 名前は似ていても姿形はちょっと独特で、なぜか細長い船の形に作るのがトルコ風。考えてみれば丸くなくてはならない理由はないものね。羊肉や羊の白チーズ等をのせ、薪が燃える石造りのオーブンで焼き上げる。私は観光の中心スルタン・アフメット地区のカラデニズという店で食べた。店の作りは古く、またトルコオヤジのたまり場であるのがナカナカよい雰囲気。そしてピデは香ばしくてとてもおいしかった。一つ3,500,000トルコリラだから300円弱か。安い。店のおじさんのオススメに従ってミックスタイプを選ぶ。具はトマトやマッシュルーム、羊肉やら豪華でおいしい。そして肝心の生地がとても良い具合だ。このピデのおいしさは私の中ではナポリのピッツァに次ぐモノである。
 そしてまたまた不思議に思ったのは、ビョレッキと同様、ピデも食べやすく切ってあったこと。ズタズタではないけれど…。

●マントゥ(トルコの餃子)

 マントゥ=トルコの餃子は中国からやってきた料理だ。名前はもちろん「饅頭」から来ている。実際は饅頭と言うよりは餃子なのだが、イスタンブール名物ではなく、西部の料理だそうだ。

 トルコに出掛ける前からこのマントゥは気になっていた。どんな味なのだろう…ボスポラス海峡が見渡せるデートスポット:オルタキョイにあるマントゥ専門店マントゥ・エヴィという店で試してみた。

 マントゥは小さい。小指の先程度の大きさだ。どちらかというとイタリアのラビオリやトルテリーニである。が、生地はやはり餃子と同じように粉と水で、肉は羊肉である。何より特徴的なのは、茹でたマントゥにはたっぷりとヨーグルトがかかってくること。そして唐辛子粉を炒めた赤い油を回しかけ、ドライミントを振りかけることだ。予習の段で知ってはいたけど、食べてみるとやはり新鮮である。羊とミントというのはヨーロッパで一般的な組み合わせだし、ヨーグルトも水っぽくない濃厚なコクのあるタイプなのでとてもおいしい。唐辛子はあまり辛くない。

 このマントゥ、小さい程上手と評価されるらしい。私はもう少し大きい方が味のバランスが良いと思うけど…。ロシアのペリメニにもよく似ている。あちらはディルの香りとサワークリームで食べるのだが、店によっては醤油も用意されていた。トルコのマントゥに醤油が添えられる日は果たして来るのか?分からないが、トルコがアジアの果てであることを感じることができる料理に満足。

●ギョズレメ

 ギョズレメ=丸くのばした小麦粉の生地で具を挟み焼いたものはやはりトルコ西部の料理。マントゥ屋はギョズレメを置いていることが多い。どちらも中国大陸の小麦食文化に関係するものなのだろう。民俗衣装を着た女性が作る様をウインドウ超しに見せる店が多いので、イスタンブールの人々にとっても珍しい地方料理なのだろう。

 ギョズレメの生地は粉と水と塩のみで練り上げるだけで、発酵生地ではない。ちょうどインドのチャパティの様である。具は白チーズや炒めた羊挽肉、またホウレン草もポピュラーだ。私は白チーズとホウレン草を合わせて挟んでもらった。薄く丸くのばされた生地に具を挟み、丸い鉄板の上で何度か返しながら焼く。熱々が木の板にのせられてやってくるのをナイフとフォークで食べるのだ(本来は手で食べるのだろうか?)。少し唐辛子粉が入っており、時々ピリッと引き締めるのが良い。白チーズはかなり塩味が濃いのだが、ギョズレメではこれが味付け役となって丁度良い加減となり、おいしかった。2,000,000トルコリラ…200円弱なんて安すぎる。

●クムピール

 クムピール=ジャガ芋の丸焼きに好みの具を乗せたものは、デートスポット:オルタキョイ名物。オルタキョイの入口にズラリとならぶのはこのクムピール屋台だ。マントゥの昼食を済ませた後なのだが、来たからにはやはり食べてみねば…と挑戦してみた。ただの食べ過ぎ?

 作り方は簡単だ。まず赤ちゃんの頭程もある熱々のジャガ芋丸焼きを縦に割り開き、中身を軽くほぐしてバターと塩・ピザ用シュレッドチーズを混ぜる。後は目の前に美しく並ぶトッピングをのせてもらう。どの店も同じような(いや、全く同じだ)トッピングがズラリ。ヨーグルトやツナ、オリーブ、紫キャベツ、ポテトサラダ、トビッ子の様な魚の卵の塩漬け、マヨネーズ…。私が選んだのは黒オリーブとヨーグルトと紫キャベツ。アルミホイルと紙でお皿を作り、フォークを刺して渡される。

 重い!見た目も大きいが、持ってみるとものすごい重さ。1L以上はあると思う。こんなに大きなジャガ芋があるとは驚きである。熱いのを持って海沿いのベンチに腰掛け、風に吹かれながら食べるのは楽しいが、味の方は大したことは無い。おいしいけれど、ジャガ芋にイロイロ混ざっているだけ。チーズは羊ではないし…いかにも最近風で若者向けのボリュームスナックである。これでひとつ4,000,000トルコリラはトルコ餃子のマントゥ1人前2,750,000トルコリラと比べてちょっと高すぎると思う。流行りの食べ物というのはこういうモノかな。ま、話のタネには良いですが。



イスタンブールふたたび



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