■ NAPOLI 〜ナポリを食べる〜


 ナポリ風〜という名前が付く菓子や料理はたくさんある。
 その中でもナポリと言えばピッツァ。ピッツァと言えばナポリだろう。日本でナポリピッツァ協会の講習会に参加したことがあるが、それはそれはヒドイものだった。あのまずいピッツァは絶対ナポリのものとは違う!と勝手に思う私は今回の旅に大きな期待をしていた。下調べも入念に、そして胃腸を整え、いざ出発!
 私のナポリは「1日1ピッツァ」という目標を軸に名物料理や菓子を体調が許す限り(といっても無理はしないのだ)次々と食べ歩く、いつもの旅と同様、ダイエット中の人には決してできないモノなのである。



<ナポリで1日1ピッツァ>

 1日目。まずはナポリ到着後、すぐに向かった老舗「ブランディ」。この店で「ピッツァ・マルゲリータ」が生まれたのだ。しかし、サービスは悪くピッツァも冷め気味でガッカリ。周りを見るとフランス人やドイツ人等、そして遅れて日本人も数名…観光客ばかりだ。決して不味いわけではないが「フーン、こんなものか」と感じる。生地の食感は確かに日本にはなく、トマトの味も濃いのは良いのだが…期待し杉田のだろうか。そうそう、仕上げに回しかける油はオリーブではなく普通の植物油であるというのは確認出来た。この店を基準に他を比べるというのは意味があると思うのだった。

 2日目は昼に「マトッツィ」へ。ずっと前に雑誌ブルータスでピッツァ特集が組まれ、その企画で来日したピッツァ警察というピッツァの職人グループの一人がこの店の主人だった。店はバス停がいくつか並んだ交通量と排気ガスの多い一角に建ち、2階もあるが昼はテラス席が主だ。ガイドブックに紹介されているのだろう、日本人も数名座っている。ちょっと気になるが私もその1人だしネ!と席に着く。ここでも「マルゲリータ」そして野菜不足解消の為にサラダを頼む。5〜6分後運ばれたピッツァは熱々で生地の香ばしさ、モッツァレッラとトマトは量も多く、そしてそのバランスも程よく、昨日の「ブランディ」よりずっとおいしい。この店も油は植物油だ。サラダはたっぷりのルコラとトマト。レタスは水っぽいがオリーブがたっぷり添えてあり、悪くない。

 3日目。夕食にスパッカナポリ中央にある「ダ・ミケーレ」へ。向かいの「トリアノン」にするか迷ったが、夕方早くから営業しているのでこちらを選ぶ。店は狭いが、席はほとんど埋まっている。メニューは「マルゲリータ」と「ナポレターナ」のみ。それぞれにSMLがあり、飲み物はビールかコーラか水だ。ナポレターナも試したいが、今回は「マルゲリータ」の比較!と決めているので「マルゲリータ」。これはオイシイ!生地もソースもチーズもバジリコも焼き加減も全てがオイシイ!感動の味である。そしてピッツァはSで6,000リラ、水は1Pのガス入りが2,000リラの計8,000リラ。何かの間違いか?と思う程の安さと味で満足と感動にニヤニヤしてしまう。イヤ、ホント、素晴らしい味でした。ワラ半紙に包んだナイフとフォークが尚良し。

 4日目。ポンペイへ出掛け、帰りの列車が1時間以上遅れる。14:00過ぎ、ナポリに戻り遅い昼食を。「チーロ」という老舗レストランへ向かうが、ココではマカロニを食べることに決めており、ピッツァはパス。マカロニの「ジーティ」は大変おいしく、感動する。カメリエレとおしゃべりしてゆっくり食事。満腹。そして夕食こそピッツァと思っていたのに疲れてしまって食欲が出ない。目標はココで断念か…。

 5日目。日曜日。1本しかないアマルフィ行きのバスに乗り遅れ、ナポリの街で過ごすことになった。ヤケになってバールを2軒ハシゴ。昼食は「地球の歩き方」で絶賛されている「ポルタルバ」へ。近くに本屋がたくさんあるが日曜休みなので残念。本には「12:00から営業。安い!」と記されていたが、13:00にようやくオープン。石の門の下に作られた席に着く。観光客で一杯だ。ちょっとイヤな予感…サービスは遅く、ますます心配になる。値段も普通だ。前菜にカプレーゼ。ピッツァはモチロン「マルゲリータ」。カプレーゼはモッツァレッラがおいしくトマトもマル!だ。しかし肝心の「マルゲリータ」は…まず生地の焼きが浅く、それだけでダメ。そしてすぐ冷めた。釜から席への距離も問題だが、カメリエレ達の動きも問題だ。他のテーブルに運ばれる料理もタイミングが悪く、カップルなのに料理はバラバラに食べるはめになっていて気の毒。もうこの店には来ない。「地球の歩き方」のバカァ!ま、よくあることですが…。

 夕食。日曜午後なので店がほとんど閉まり、心細い程だ。スパッカナポリは2〜3人乗りのバイクがグルグルと路地を走り回り、コワイ。駅周辺は人が多いものの、物騒な感じは増している。店で食べるのをあきらめて開いている総菜屋で何か買おう、と駅の近くの菓子屋兼総菜屋「スフォリアテッラ」をのぞいてみた。また揚げピッツァか…それともパニーノか…ふと隣の店を見ると、そちらは総菜専門店らしい。間口は狭いが奥はテーブルやピッツァの釜も見える。立ち食いをしている客がいるのみだが、菓子屋はやめてここで食べることにする。レジのオバちゃんにピッツァが食べられるか確認し、席に着く。フツーの太ったランニング姿に眼鏡のオヤジが汗をフキながら店頭に並べるピッツァを焼いていた。「夕方の下着姿のオトーサン」的なそのオヤジはとてもピッツァイヨーロ(ピッツァ職人)には見えないのがおかしく、そして少々心配。「マルゲリータ」と「サラダ」、そしてガス入りの水を頼む。が!焼く姿こそイマイチだがごく自然にさりげなく作られたピッツァはとてもおいしくて驚いた。トマトの味が濃く、生地の塩は少し薄く感じられたが、熱々で良い。ごく普通のこんな店がこのレベルとはやはりイタリアはスゴイ。しかし、サラダはすっかり変色しちゃったレタスで作ったものがドン!とテーブルに。まずくはないが食物繊維の摂取だ、と言い聞かせ、レモンと植物油で食べた。しかしこの店、雰囲気もちょっとさびれて悲しい感じが良く、とってもイイのである。駅のすぐ側、「ダ・ジュリアーノ」という店だ。この日は1日2ピッツァ。満足。

 6日目。昼過ぎにナポリからフィレンツェに向かうことになっている。「ダ・ミケーレ」で感動のピッツァをもう一度食べるために、ユーロスターは昼食後の13:30を予約した。コーヒー沸かし等、イロイロ買い物して11:50、店に入る。イタリア人は昼食も夕食も遅い、と思っていたが、この店については当てはまらず、ちょっと早いかな…と心配して行ってみると客は既に一杯なのだった。水を頼むが「ないからコーラね」と勝手に決められたのは残念。しかし、ピッツァはやはりおいしかった。奥にも席があることを発見。この店広かったのね…そして意外なことにトイレもキレイだった。持ち帰る人も多いのか、釜の側には箱が山積みされている。

 計6枚のピッツァ・マルゲリータを食べた。飽きなかった。1ヶ月続けられるかは分からないが、2週間位挑戦することはできたと思う。いや、挑戦という程の気合いが要らない、ごく自然に受け入れられる味であった。今回は全てマルゲリータだったが、ナポレターナも食べたいし、他の店にも行かねばならないので、ナポリにはまた来る必要がある。



<ナポリのバール・パステッチェリア>

 ナポリの街に目立つのはバール兼菓子屋。タバコ屋兼バールというタイプも多い。カフェという名も見かけるが、バールの方が通りがよいようだ。いずれも決して派手ではない店の作りだが、どこか温かさが感じられるところばかり。カウンターで立ち飲み&立ち食いはとても安いが、座ると料金は4〜7倍になるのはちょっと高すぎる!それでも全体には安く、何を試しても独特の味わいがある。バールの利用者は男性客の方が圧倒的に多く、一応女性で東洋人の私が立ち飲みするにはちょっと勇気が要るが、負けずにカウンターに陣取って楽しんだ。

 パン屋はあることはあるが、食料品店兼パン屋というタイプがほとんど。そしてそのパンは大きく、完全に冷ましたものがガラスケースに無造作に詰め込まれているか、ビニール袋に入れて吊るしてあるかどちらかだ。ナポリをはじめイタリアでは「焼き立てのパン」を食事の時に食べない。熱いパンはお腹に悪いといって必ず冷ますのだ(何人かに聞いたが皆同じ答えだった)。高級な店はどうか知らないが…とりあえず熱々のパンが食べたければバールの朝食の菓子パンを狙うしかない。また、揚げ物屋がたくさんあり、いろいろな揚げ菓子や揚げパンを朝から作っている。「グラッファ」というドーナツ状の揚げパンは生地のフカフカ感と粉の味が大変おいしく、巨大さに圧倒されながらもスイスイと食べられるおいしさだ。キケンな食べ物である。



◎カッフェ:ナポリのカッフェ◎

 ナポリのコーヒーはコクがある。他の地方と違う味なのでやはりカッフェと呼びたい。砂糖をドッと入れてもすぐには沈まない…と何かの本にでていたが、本当か?…本当だった!!そのままよりも多めに砂糖を入れ、ククッと飲み干し、カップに残った砂糖をスプーンですくって食べるのがこんなにオイシイとは!感動である。

 

 とにかく素晴らしい味だが、量が少ないのも特徴のようだ(小さいカップの1/5〜1/3程度)。カプチーノ等ももちろんあるが、カウンターのほとんどの人はカッフェを飲む。テラスでゆっくり過ごす人々には冷製の「カフェ・フレッド」やシャーベット状の「グラニータ」のカッフェ版も人気。朝はカフェに甘いパンをガブリとやるのがナポリスタイル。パンそのものはバターの少ないタイプで、詰めたクリームは粉っぽい。日本のクリームパンに似ている味のクリームだ。砂糖がまぶしてあったり、サクランボのジャムが挟まっていたり、軽くレモン風味に仕上げてあるものも多い。しかし、大振りなのでかじりつくのは大変なのであった。

 ヨーロッパを始め、海外で過ごす時の朝食はパン屋やカフェ、その土地の典型的な朝食処でとるのだが、ナポリでももちろんそうした。バールでカッフェとコルネット(クロワッサン)だ。老舗の「ガンブリヌス」や現代風な「ルイーズ」他、少し大きい店は開店準備が遅く、8:00〜8:30頃ようやく席をつくるといった具合。店そのものはもっと早くから開くのでカウンターや持ち帰りには7:30頃でも大丈夫だ。

 ナポリ滞在中のほとんど毎朝、ホテルから20〜30分も歩いて「ガンブリヌス」へ通った。途中、適当に立ち寄ったバールでカッフェを飲みほし、買ったパンをかじりながら歩くので、ここではテラスに座ってゆっくりとナポリ銘菓「スフォリアーテ」を楽しむ。焼き立ての「スフォリアーテ」とカプチーノはどちらも引き立て合う幸せの味だ。ラードをたっぷり使った菓子なので1コ食べるとかなり満腹になる。カプチーノはミルクのキメもまあまあで悪くない。ただのカッフェの方がコーヒーの味が楽しめるとは思うが、スフォリアーテにはカプチーノの方が良いような気がする。「ルイーズ」は「イリイ」社の豆を使っているらしいが、せっかくのナポリなのでナポリならではの豆を試したい。インディアンになったペコちゃん風(?)なイラストが付いたものをよく見かけた。これオイシイ!



◎ババ◎

 「ババ」はイースト生地をシロップに浸した菓子で、フランスにも「サヴァラン」や同じく「ババ」という同様のものがある。ナポリの「ババ」は男性の性器(!)を模したというキノコ型タイプと、大きくリング型に仕上げたものの2種に別れるようだ。味は皆同じで、生クリームかカスタードのどちらかを組み合わせたタイプもある。一番おいしかったのは「スカトゥルキオ」のババ。生地の味と不思議に滴らないたっぷりのシロップがもう最高であった。強い味なのに飽きずに一気に食べてしまうおいしさ…。あぁまた食べたい!店内に席はなく、カウンターのみだがが広場にテントとテーブルがある。地元の人に人気らしい。とにかく混んでいる。「ルイーゼ」という小奇麗な店は菓子の種類は多いがババも他の菓子もあまり好みの味ではなかった。

  

 ババはアルコールたっぷりを想像していたが、意外にそうではなく、生地の味もよく分かる菓子だった。しかし、イタリアって何かに浸してビシャビシャになった菓子が好きな国だなぁと思う。慣れるとどれもおいしいですが。



◎スフォリアテッラ◎

 「スフォリアテッラ」はナポリ独特の菓子。フランス菓子を勉強していた時に「ナポリタン」というパイ生地で作るちょっと変わった形のものを知ったが、その「ナポリタン=ナポリ風」はまさに「スフォリアテッラ」をフランス風に仕上げたものだ!とナポリで確認した。何処の国でもアレンジされると原形は何だったのか分からなくなるのだが(特に日本はネ)、「ナポリタン」もかなり変化していると思う。老舗「ガンブリヌス」では「スフォリアーテ」と呼ぶのだ、と物凄くカッコイイカメリエレに教わった。

 「スフォリアテッラ」は粉を練った生地で詰め物を包み、オーブンで焼き上げたもの。詰め物はリコッタチーズとミルクで煮たセモリナ粉(硬質小麦)を混ぜて柑橘類の皮の砂糖漬けを加え、オレンジの花の香りをつけたものだ。

 生地は「リッチャ」と呼ばれる独特の形が特徴のラードカリカリ系か「フロッラ」というよくあるタルト生地のようなビスケットホロホロ系かに別れる。私はリッチャばかりを食べていた。(フロッラは注意していないと見落としてしまう!それ程リッチャの形ってキョーレツに印象深いのダ!)「リッチャ」の生地はカリリとカタく、中華の春巻きや甘い点心に良く似ている。生地の塩味とラードの風味、そして詰め物の程よい甘さとたいていの場合焼き立ての熱々を食べるところが大変においしい。

 一方、「リッチャ」を基にしたと思われるフランス菓子の「ナポリタン」はバターを折り込んだフィユタージュ(折りパイ生地)をクルクルと巻き、小口から切って軽くつぶして詰め物を挟む。そう、生地の油脂と層の作り方が違うのだ。そして、詰め物はクレームパティシエール、つまりはカスタードクリームである。全体に似ているのだが、最終的な味はもう全く違う。この「ナポリタン」とそっくりな菓子をナポリで見かけたので店の人に聞いてみるとそれは「チョコラート」だという。試してみると生地はバターの少ない粗いフィユタージュ(子供のオヤツ源氏パイに似ている)。そしてクリームは日本のクリームコロネに入ったチョコペーストといったもの。あまりおいしくはないが、イロイロあって面白い。

 しかし、一般的なイタリア菓子の本で調べてみると、「スフォリア〜」はオーストリアやドイツのシュトルーデル風な菓子やフィユタージュを使った菓子、またはパイ菓子全般、とされている。となるとナポリのそれは亜種?よく分からないままであるが、とにかく個性的であり、素敵に美味しいのは間違いなく事実である。

 それにしてもどの菓子もボリュームたっぷりで力強く、「味」を大切にしているものばかり。日本の様に美しさや流行だけが重視されたものは無し!やっぱり味でしょう、『味』!



<カプリの昼食/ナポリでマカロニ>

 ピッツァ中心の日々で他の料理をあまり味あわなかったのだが、それでも2つの店でおいしい皿に出会った。詳細はNAPOLI ナポリ参照

◎カプリの昼食・ジェラートサンド◎

 

 カプリでは「ジェンマ」という店で昼食をとった。地球の歩き方に載っていたのだ。大皿にたっぷり盛られた前菜が売りの様だが、プリモとセコンドを食べたいので今回はパス。プリモピアットには「バベッティのジェンマ風」、セコンドには「フリット・ミスト」を選んだ。バベッティは太めのリングイネ(断面が楕円形のコシの強いパスタ)だが、茹で加減も良く、ソースは魚介類の旨味とトマト・ルッコラの程よい風味が活きており、大変においしかった。「フリット」は揚げ物だが種類が多く、見ただけで満腹になりそうだ。パン粉は細かく、揚げ方もカラッとしているので意外にあっさりといただける。初夏が旬の「ズッキーニの花」が香り・歯応えともに良かった。この店は眺めも良く、サービスも感じが良い。

 食後はジェラート。ブリオッシュにはさんで食べるのはシチリアだけかと思ったら、ここカプリでも人気の食べ方だった。ブリオッシュというにはバターが少ないパン(イタリアのブリオッシュの特徴だが)に好みのジェラートをはさんでもらう。私はピスタッキオ(ピスタチオ)が好きなのでそれと、バニリャ(バニラ)。甘味と冷たさがあっさりブリオッシュの程よいバター味と塩味に良く合う。悪くない組み合わせだ。それにしても大きいな、コレ。ビッグマックに近い大きさであった。



◎ナポリのマカロニ◎

 

 ナポリの老舗「チロ」にてナポリのマカロニを試した。しっかり味わいたいのでココではプリモに「ジーティ・アル・ラグー・ナポレターナ」、セコンドに「パルミジャーノ」、サラダに「インサラータ・ディ・ポモドリーニ」。つまり「マカロニの煮込みソース和え」と「ナスのグラタン」「小さいトマトのサラダ」である。カメリエレ君に全てナポリ料理ですね、と誉められてちょっと嬉しい。

 マカロニは茹で加減も申し分ないが、それをあえたソースが素晴らしい。濃厚なトマトの旨味が最大限に活かされ、こんなに美味しいソースは初めてである。お代わりしたい味だ。そしてナスのグラタンは大皿でまとめて焼いたものを切り分けているので冷めているが、チーズのコクとナスの旨味がおいしかった。そうか…パルミジャーノは冷まして食べるのだな。サラダはトマトやルッコラのおいしさが決め手となっており、もう日本のサラダとは比較にならない味だ。イタリアの野菜はどうしてこんなにおいしいのだろう?いろいろアレンジした野菜料理も楽しく、またその辺で売られている不揃いのものをそのまま齧るのもとってもおいしいのだ。



1日目:ナポリ到着
2日目:ナポリを歩く!
3日目:カプリ島・青の洞窟
4日目:ポンペイの遺跡とナポリのマカロニ
5日目:ナポリの街をまた歩く!
6日目:ナポリからフィレンツェへ



■ La Bonne Table
■ たびたびの旅