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<ナポリのバール・パステッチェリア>
ナポリの街に目立つのはバール兼菓子屋。タバコ屋兼バールというタイプも多い。カフェという名も見かけるが、バールの方が通りがよいようだ。いずれも決して派手ではない店の作りだが、どこか温かさが感じられるところばかり。カウンターで立ち飲み&立ち食いはとても安いが、座ると料金は4〜7倍になるのはちょっと高すぎる!それでも全体には安く、何を試しても独特の味わいがある。バールの利用者は男性客の方が圧倒的に多く、一応女性で東洋人の私が立ち飲みするにはちょっと勇気が要るが、負けずにカウンターに陣取って楽しんだ。
パン屋はあることはあるが、食料品店兼パン屋というタイプがほとんど。そしてそのパンは大きく、完全に冷ましたものがガラスケースに無造作に詰め込まれているか、ビニール袋に入れて吊るしてあるかどちらかだ。ナポリをはじめイタリアでは「焼き立てのパン」を食事の時に食べない。熱いパンはお腹に悪いといって必ず冷ますのだ(何人かに聞いたが皆同じ答えだった)。高級な店はどうか知らないが…とりあえず熱々のパンが食べたければバールの朝食の菓子パンを狙うしかない。また、揚げ物屋がたくさんあり、いろいろな揚げ菓子や揚げパンを朝から作っている。「グラッファ」というドーナツ状の揚げパンは生地のフカフカ感と粉の味が大変おいしく、巨大さに圧倒されながらもスイスイと食べられるおいしさだ。キケンな食べ物である。
◎カッフェ:ナポリのカッフェ◎
ナポリのコーヒーはコクがある。他の地方と違う味なのでやはりカッフェと呼びたい。砂糖をドッと入れてもすぐには沈まない…と何かの本にでていたが、本当か?…本当だった!!そのままよりも多めに砂糖を入れ、ククッと飲み干し、カップに残った砂糖をスプーンですくって食べるのがこんなにオイシイとは!感動である。
とにかく素晴らしい味だが、量が少ないのも特徴のようだ(小さいカップの1/5〜1/3程度)。カプチーノ等ももちろんあるが、カウンターのほとんどの人はカッフェを飲む。テラスでゆっくり過ごす人々には冷製の「カフェ・フレッド」やシャーベット状の「グラニータ」のカッフェ版も人気。朝はカフェに甘いパンをガブリとやるのがナポリスタイル。パンそのものはバターの少ないタイプで、詰めたクリームは粉っぽい。日本のクリームパンに似ている味のクリームだ。砂糖がまぶしてあったり、サクランボのジャムが挟まっていたり、軽くレモン風味に仕上げてあるものも多い。しかし、大振りなのでかじりつくのは大変なのであった。
ヨーロッパを始め、海外で過ごす時の朝食はパン屋やカフェ、その土地の典型的な朝食処でとるのだが、ナポリでももちろんそうした。バールでカッフェとコルネット(クロワッサン)だ。老舗の「ガンブリヌス」や現代風な「ルイーズ」他、少し大きい店は開店準備が遅く、8:00〜8:30頃ようやく席をつくるといった具合。店そのものはもっと早くから開くのでカウンターや持ち帰りには7:30頃でも大丈夫だ。
ナポリ滞在中のほとんど毎朝、ホテルから20〜30分も歩いて「ガンブリヌス」へ通った。途中、適当に立ち寄ったバールでカッフェを飲みほし、買ったパンをかじりながら歩くので、ここではテラスに座ってゆっくりとナポリ銘菓「スフォリアーテ」を楽しむ。焼き立ての「スフォリアーテ」とカプチーノはどちらも引き立て合う幸せの味だ。ラードをたっぷり使った菓子なので1コ食べるとかなり満腹になる。カプチーノはミルクのキメもまあまあで悪くない。ただのカッフェの方がコーヒーの味が楽しめるとは思うが、スフォリアーテにはカプチーノの方が良いような気がする。「ルイーズ」は「イリイ」社の豆を使っているらしいが、せっかくのナポリなのでナポリならではの豆を試したい。インディアンになったペコちゃん風(?)なイラストが付いたものをよく見かけた。これオイシイ!
◎ババ◎
「ババ」はイースト生地をシロップに浸した菓子で、フランスにも「サヴァラン」や同じく「ババ」という同様のものがある。ナポリの「ババ」は男性の性器(!)を模したというキノコ型タイプと、大きくリング型に仕上げたものの2種に別れるようだ。味は皆同じで、生クリームかカスタードのどちらかを組み合わせたタイプもある。一番おいしかったのは「スカトゥルキオ」のババ。生地の味と不思議に滴らないたっぷりのシロップがもう最高であった。強い味なのに飽きずに一気に食べてしまうおいしさ…。あぁまた食べたい!店内に席はなく、カウンターのみだがが広場にテントとテーブルがある。地元の人に人気らしい。とにかく混んでいる。「ルイーゼ」という小奇麗な店は菓子の種類は多いがババも他の菓子もあまり好みの味ではなかった。
ババはアルコールたっぷりを想像していたが、意外にそうではなく、生地の味もよく分かる菓子だった。しかし、イタリアって何かに浸してビシャビシャになった菓子が好きな国だなぁと思う。慣れるとどれもおいしいですが。
◎スフォリアテッラ◎
 「スフォリアテッラ」はナポリ独特の菓子。フランス菓子を勉強していた時に「ナポリタン」というパイ生地で作るちょっと変わった形のものを知ったが、その「ナポリタン=ナポリ風」はまさに「スフォリアテッラ」をフランス風に仕上げたものだ!とナポリで確認した。何処の国でもアレンジされると原形は何だったのか分からなくなるのだが(特に日本はネ)、「ナポリタン」もかなり変化していると思う。老舗「ガンブリヌス」では「スフォリアーテ」と呼ぶのだ、と物凄くカッコイイカメリエレに教わった。
「スフォリアテッラ」は粉を練った生地で詰め物を包み、オーブンで焼き上げたもの。詰め物はリコッタチーズとミルクで煮たセモリナ粉(硬質小麦)を混ぜて柑橘類の皮の砂糖漬けを加え、オレンジの花の香りをつけたものだ。
生地は「リッチャ」と呼ばれる独特の形が特徴のラードカリカリ系か「フロッラ」というよくあるタルト生地のようなビスケットホロホロ系かに別れる。私はリッチャばかりを食べていた。(フロッラは注意していないと見落としてしまう!それ程リッチャの形ってキョーレツに印象深いのダ!)「リッチャ」の生地はカリリとカタく、中華の春巻きや甘い点心に良く似ている。生地の塩味とラードの風味、そして詰め物の程よい甘さとたいていの場合焼き立ての熱々を食べるところが大変においしい。
一方、「リッチャ」を基にしたと思われるフランス菓子の「ナポリタン」はバターを折り込んだフィユタージュ(折りパイ生地)をクルクルと巻き、小口から切って軽くつぶして詰め物を挟む。そう、生地の油脂と層の作り方が違うのだ。そして、詰め物はクレームパティシエール、つまりはカスタードクリームである。全体に似ているのだが、最終的な味はもう全く違う。この「ナポリタン」とそっくりな菓子をナポリで見かけたので店の人に聞いてみるとそれは「チョコラート」だという。試してみると生地はバターの少ない粗いフィユタージュ(子供のオヤツ源氏パイに似ている)。そしてクリームは日本のクリームコロネに入ったチョコペーストといったもの。あまりおいしくはないが、イロイロあって面白い。
しかし、一般的なイタリア菓子の本で調べてみると、「スフォリア〜」はオーストリアやドイツのシュトルーデル風な菓子やフィユタージュを使った菓子、またはパイ菓子全般、とされている。となるとナポリのそれは亜種?よく分からないままであるが、とにかく個性的であり、素敵に美味しいのは間違いなく事実である。
それにしてもどの菓子もボリュームたっぷりで力強く、「味」を大切にしているものばかり。日本の様に美しさや流行だけが重視されたものは無し!やっぱり味でしょう、『味』!
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