台湾ニアミス

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それは木曜日の朝だったのである。 直属の上司であるエムシタさんからお呼びがかかった。 ミーティングならグループ員が呼ばれるはずである。 呼ばれたのは俺だけ。 …なんだろう?。

昼休みに本上まなみの画像を探しているのがばれたのか?。

恐る恐るミーティングコーナーに向かう。

エムシタさんの表情が険しい。 事態はかなり深刻そうだ。 なんだ?。もっとヤバイことしたっけ…。ま、まさか…。

業務中に自分のホームページの掲示板をチェックしてることがばれたのか?。

それとも…。

実験室に閉じこもっているのをいいことにcdmaOneからe-mailを送っているのがばれたのか?。

とにかく、何を聞かれてもシラを切りとおすしかない。 やれる!。今の俺ならやれる!!。 過酷な業務で暗黒面に取りつかれた俺なら、どんなヤバイ場面でもポーカーフェイスと二枚舌で切り抜けられる気がする。 ボディーブローで顔面のガードが開いたところを、右フックでぶっ殺す!!。 退いたら、デンプシーロールでとどめを刺してやる!!。
瞬時に応戦できるように、軽くステップを踏みながらピーカブースタイルの防御姿勢をとりつつ、 平静を装いエムシタさんが待つ席についた。

エムシタさんが切り出す。

エムシタさん: 「日曜日から、台湾に行ける?」(唐突)

 

俺、ノックダウン…。

 

秒殺じゃん。俺、瞬殺じゃん。

そう言えば俺、日曜日用事があるんだ…。残念、行けないよ…台湾。

日曜日は先週借りた「ハムナプトラ - 失われた砂漠の都」を返さなきゃいけないもん。

って言うか、

忙しくて、まだ「ハムナプトラ - 失われた砂漠の都」観てないし。

はっ…。

いかん、ショックが大きすぎて、逃避行動を取ってしまった。 脳がサスペンド状態になってる。 こういうときは、LAN接続してMagic Packetを投げてWake On LANしなければ…。

ってまた、逃避してしまった。

もっと冷静になれ、俺。
しっかし、冷静になってみると、今度はどんどん腹が立ってきた。

入社した年の8月には1ヶ月の残業が130時間超えてたし、10ヶ月に及ぶ超過酷な残業生活が終った1年目の冬には、 川崎に飛ばされるし、川崎でもやはり残業地獄が待ちうけてて疲労困憊の毎日だったし、1年4ヶ月後の入社3年目の春やっとの思いで生還したと思ったら、 1ヶ月半で今度は台湾かいっ。

 

エンジニアに休息の日々はない。

 

って、バカっ!!。 そんなシメで納得できるわけねーだろ。

エムシタさんの衝撃の発言後、この間約1秒。 脱力と逃避と怒りを感じた俺は、その内心とは裏腹にパーフェクトなポーカーフェイスで答える。

俺: 「あ、大丈夫ッスよ。このあいだパスポートも取ってきましたし。」

バカ…俺。もっとイヤそうな顔しろよ。

エムシタさん: 「うん、まぁまだ決定じゃないんだけど、心の準備だけしといて。」

なんだよぉ〜♪。驚かさせないでくださいよぉ。マジびびっちゃったじゃないッスかぁ(笑)。 まさか、まだ今の仕事の「いろは」も分かっていない若造に台湾飛べなんて言うなんて、そんな馬鹿な話があるわけないじゃないッスよねぇ。

心の準備どころか、心の中の俺はあっというまに饒舌になり安心しまくる。

それにしても、台湾って近いのね…。川崎よりも。
台湾出張は3日前に言い渡されるっていう噂が本当だったとは…。 川崎転勤のときはもうちょっと前に言い渡されたような気がするなぁ。 まぁ、俺は今回行かなくてすみそうだからどーでもいいけど(すっかり安心)。

 

ここまでの展開から想像されるエンディングを裏切り、俺の台湾行きは、とりあえずなくなった。 台湾との電話会議により、すでに台湾に飛んでいる課長とユーダさんとティーナカさんとエスヤさんに もう少し頑張ってもらって、俺は日本での生活をエンジョイ仕事を頑張ることになったのである。

まぁ、そりゃそうだ。 ここ1ヶ月ほど、日曜日しか休めてないし、毎日午前様だし、こんな体で台湾飛んだら死んじゃうよ…。

あばよ、台湾。


07.14.2000
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