夜逃げその3

 プロのカメラマンが住んでいた。
 料理本などに載っている出来上がり見本を撮影したり、建築物を撮影したりするカメラマンだったらしい。
 撮影対象が自然とか女性とかではないので部屋をスタジオにして仕事をしていた。

 家賃の支払いが遅れだしたのは1年も住んだ頃だったろうか。
 最初は少しずつ、だんだんと支払いにやってくる期間が延びてきた。
 気がつくと4ヶ月分ほど貯まっていたので早速督促状を作り矢のような催促。

 彼がやってくるたびにO月O日には持ってきますと言うのだが、その日が来ても連絡すら全く無し。
 書留で督促状を送ったりしたが持って行きます持って行きますと返事するだけで一向に支払う気配は無し。
 そうしているうちに6ヶ月分の家賃を滞納されてしまった。

 
 あまりにもひどさに完全に切れてしまった私は、
 「あんたが言うその日に1ヶ月分でも持って来んかったら鍵交換して閉め出してしまうからな!!」
 交換して閉め出すと言うことで脅しをかけたつもりだった(これは犯罪です。(^人^))。
 たいていこの時点で幾らかは持ってくるものなんだけどね。

 で、当日やはり来なかった。
 翌日の昼過ぎに鍵を早速交換。
 さすがに閉めだしまでされるとは思わなかったのか、カメラマンはその日の夕方あわてて管理室にやってきた。
 カメラマン:「管理人さん、スミマセン。 約束を守らなかったのは私ですから仕方がないです。 ちょっとした手荷物だけ出させてください。」
  私   :「ああ、手荷物出すぶんにはかまわんですよ。 中の物まで私はどうにも出来ないですからね。」
 小一時間ほどでカバンを持った彼が管理室にやってきた。
 カメラマン:「明日必ず家賃の一部持ってきます。」
  私   :「ほんまですか? 何回も裏切られてますからね。」
 カメラマン:「あてがあるんで大丈夫です。 じゃあ、明日。」

 そして、翌日、そのまた翌日、そして次の日も次の日も彼はやってこなかった。
 単なる脅しで鍵を交換しただけで、本当に閉め出すつもりは無かったのでどうしたものやらと困り果ててしまった。


 約1ヶ月経過した時、そのカメラマンの部屋の前を通りかかったとき、数通の封筒が郵便受けに差し込まれているのに気づいた。
 本来そういった封筒の中身は見ないのだが、今回は事情が事情で、もしカメラマンの知人からだったらその人に消息を問い合わせてみようという考えでその封筒を開封してみた。
 開けてみるとなんと!サラ金からの督促状。( ̄▽ ̄;)
 次の封筒も開けてみるとこれも別のサラ金からの督促状。
 いったい幾ら借りてやがったんだよっ!!

 ふと、そこで気づいた。
 もしかして、逃げた!?

 翌日、第三者(このカメラマンとの契約に立ち会った不動産業者)の立ち会いのもとに入室して室内をあらためることにした。
 入室してみても普通の状況。
 冷蔵庫や洗濯機などの大きな製品はそのまま。(もちろん電気の供給は停められていたが)
 最初はわからなかったのだが、よく見渡してみるとカメラマンの仕事の糧であるカメラ機器類が一切無い。
 そしてそこにあるはずであろう場所に衣類も無い。

 不動産屋:「こりゃ、逃げられたね。(゚∀゚)アヒャ」

 ・・・・・・・・orz
 


 契約書に記載された保証人のもとへ連絡を試みる。
 「NTTです。この電話は現在使われておりません・・・・」
 これもまた音信不通。
 こういう場合家主としては手の打ちようがない。
 法的には数ヶ月待った上で裁判所に残置物の処分の申請とかややこしい手続きを経ないと動かしようがない。

 そんなことはしていられないので、そのまま保管と言うことで放置。
 別のややこしい仕事が重なったためあっという間に6ヶ月経過。
 こちらの勝手な判断で処分を開始。
 仮にカメラマンが後日出てきて所有物に対して損害賠償を請求してきたときの対策のためにこれだけの期間が必要であった。
 その間も帳簿上では未収家賃と金利が雪だるま式に増えていく。
 
 この時点で帳簿上の被害総額約320万円!!
 
 尚、処分するとヤバイと思われるような重要な書類等は現在でも倉庫の段ボール箱の中で眠っている。
 毎月保管費用を加算させながら・・・・


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