外壁補修工事顛末1

 私が管理する建物も竣工後17年の時を迎えた。
 鉄筋コンクリート造りの建物は10〜15年前後で屋上防水や外壁の補修を行わなければならない運命を持っている。
 
 更に阪神間に存在する1995年以前に作られた建物の大部分は阪神淡路大震災の傷跡を少なからず持っているのが現状です。
 私が管理する建物も基礎部の致命的な破壊はまぬがれたものの、外内壁に大きな傷跡を残してくれた。
 縦横に走る外壁のクラック。
 建物の1階から8階まで一直線に走っている亀裂。
 数年前から上層階の各部屋で雨が強い日には雨漏りが始まっていたが、雨水受けの大きなバケツを特注し、天井裏に設置するなどしてごまかしていた。
 住人からは「出来るだけ早い修理を」と要求されていた状態だった。
↓サムネイルをクリックすると大きい写真が別画面で開きます。
      

 本来ならもっと早急に補修工事を行うべきものだったのだが、当時はバブル崩壊後の不況が余儀なく押し寄せて資金繰りに余談を許さない状況であった。現在もだけどね(-_-#)
 さらに輪を掛けて先々代(私のじいちゃん)の他界による高額な遺産相続税の支払いが、私のオヤジの肩にのしかかっていたのである。
 「評価の見直し」対象外の時期に他界したので非常に高額です。 もう3ヶ月早く亡くなっておれば税負担はある程度軽くなっていたのですが・・・
 税を支払うために金をかき集め、自分の生活を切りつめて作ったお金は税へと消えていく状態が続いています。

 ここで上のように書くと「そんなに苦しいのなら売ってしまえばいいじゃないか」と言われる方がいらっしゃいますが、近年の不動産相場では物件を売却して借金と税金とを相殺しても全く追いつきません。
 しかも売却した翌年に課される消費税・所得税諸々で破産宣告を出さざるを得ないでしょう。
 「三代目で家が潰れる」という言葉をなるほどな〜と実感しています。

 ちょっと愚痴になってしまいましたが、今の不況下で経営者もサラリーマンも皆同じ状況だということはよくわかっています。
 私は先々代と先代が残してくれた資産があるので皆様よりもずっと恵まれていると肝に銘じて頑張っています。


 話が逸れちゃいましたので本題に戻します。(;^_^A

 それはある年の暮れのことでした。
 建物の保守をしていただいている業者がやってきました。
 業者:「オーナー、ビルの屋上の隅にクラックが入っているのをご存知ですか?」
 私 :「ええ、震災のクラックはビルのあちこちにありますよ。 もちろん知っています。」
 業者:「そうじゃなくて、1カ所たいへん危険な部分があるんですよ。」
 私 :「はあ? どこか崩れ落ちてるんですか?」
 業者:「まだ崩れてはいませんが、あれが落ちるとたいへんなことになりますよ。」
 私 :「えっ!? どこどこ?そんなヤバイ箇所があるの?」
 業者:「一度屋上から見てください。」
 私 :「わかりました、案内してください。」

 建物の管理者とは言え給水塔や排水口の点検以外は滅多に屋上には上がらない。
 おまけに高所恐怖症なので、高いところは苦手な私は外壁周囲を注意深く観察することを怠っていた。
 建物の屋上へ通じる階段は小さな子供や、空を飛ぼうとする不埒な輩の立ち入りを防ぐために頑丈な鉄柵で閉鎖されている。
 その柵を開けて屋上の目的の場所へと案内してもらった。

 建物の上層階はスロープとなっており下から見上げても見ることは出来ない。
 業者が指さしたセットバックした壁面を見て私はガクゼンとしてしまった。
 亀裂というような生やさしいものではない。
 コンクリートに走るクラックは「隙間」と呼ぶほどに口を開いており、1辺が1.5mほどの大きさの三角錐となって建物から浮き上がってしまっているのである。
 このコンクリートの固まりは建物の鉄筋だけで支えられているようで、鉄筋が腐食して力を失えばいつ落下してもおかしくない状態だった。

 下は一般の人が歩く歩道。
 もし、このコンクリートの固まりが落下したら・・・・と思うとぞーっとしてしまった。......\( ><)シ ぎょぇぇぇ

 もしかして、と思いビル外壁の総チェックをしてみると、有る有る、あちらこちらクラックと崩落が始まっている場所が・・・
 これは建物全体の補修工事を行わなければどえらい事になってしまうぞ。
 期間は・・・予算は・・・安全面は・・・住人・近隣へ迷惑をかけてしまう・・・
 大工事になるな〜・・・頭が痛くなってしまった。(-""-;)

 その年も押し迫っていたし今から資金調達を行うことは不可能なので、補修工事は翌年行わざるをえなかった。
 ひたすら、強い地震が来ませんよーに、落下しませんよーにと祈るばかりで翌年を迎えた。

上から見ると小さな
亀裂だが・・・

覗き込むと・・・
\(●o○;)ノ

ベランダの下の亀裂
崩落が既に始まっている

 十日戎も過ぎて本格的な新年の幕開け。
 さっそく工事業者と融資を行ってくれる銀行を探さなくてはいけない。
 こちらは簡単だ、めぼしい業者の中から適任と思える数社を選び出して声を掛けてみる。
 この不況だから業者は喜び目の色を変えて事務所にやってくる。
 合い見積もりを取るからと状況を説明して検討に入ってもらう。

 さて、問題は資金繰りの方だ。
 この不況のせいでご存知のようにどこの金融機関も貸し渋りの真っ最中。
 不動産資産があるからといってもおいそれとは貸してくれない。
 担保も一番抵当でないとヤダ!とのたまわれるところばかり。
 数億円の資産が有ろうが、長い取り引き経歴が有ろうが、個人保証を付けようが関係ない。

 銀行がダメならローン会社にしようか、リース会社で貸してくれるところは無いか、いろいろと訪ねて1ヶ月半・・・・・・・
 もうダメかなとあきらめかけていたところへメインバンクの「りOな銀行」が朗報をもたらしてくれた。
 公庫を通じ中小企業向けに特別に超低金利の融資を行う予算案が国会で可決される予定だとのこと。
 設備投資に限るとか、返済期間に上限があるとかいろいろと制限枠はあるものの私の会社はなんとかクリアー出来るらしい。
 もう、思わず飛び上がって喜んでしまった。\(^▽^)/

 融資の申し込みまでに工事業者を選び出し、工事総額を算出するまでにはそう時間がかからなかった。
 そして3月末に申請した融資金額が振り込まれ準備は整った。
 ここまでの流れは非常な幸運としか言いようがない。
 借金はまた増えちゃったけど、頑張れば何とかなるぞ。

 いよいよ工事の発注へと駒を進めました。

 続く

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