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1 アメリカのリニア 2
アメリカの高速鉄道 3
輪走行と浮上走行 4
中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
オバマ新大統領が列車でワシントン入りしました。
航空機と高速道路のアメリカで鉄道の復活があるのでしょうか?
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1 アメリカのリニア
G.スティクス(Scientific American
編集長):原論文(Scientific American 1992/8):訳文(日経サイエンス 1992/10)
米国は磁気浮上車リニアの技術基盤を築いたものの、その後は日独に水をあけられていた。
最近、研究開発の推進を巡って議論が活発化している。
コルム(Henry H. Kolm)は鉄道が嫌いで嫌いでたまらない。彼が発明したマグネプレーン(magneplane)という磁石で浮く車両が、無神経にも鉄道の列車と同等に扱われていることに腹を立てているのである。「マグネプレーンが列車のように客室を備え、ある種の軌道上を運行するのは確かだ。しかし、マグネプレーンは列車とは言えない。列車は1837年に発明され、それまでの馬車輸送に革命をもたらした偉大な輸送方式だ」。ループネクタイがトレードマークとなっている元マサチューセッツエ科大学研究者のコルムは、謙遜しながらこう見解を述べている。
67歳になったコルムは、子供のときからのオーストリアなまりで慎重に説明する。「私が発明したマグネプレーンは、今世紀か来世紀には完成する創造物だ。これは航空輸送を事業として世界で最初に始めた先駆者や、飛行家独特の感覚から古いビクトリア朝時代の交通手段である鉄道を放棄した、私のような先見性のある人間の考えである。マグネプレーンは並の飛行機よりすごい。走行原理として飛行機のような空気力学でなくて電磁学を応用しており、50トンの車両が走行面から最大15cm浮上する。いったん浮上すれば,列車の線路というよりボブスレーのコースといった方がいいような走行路を、昔のターボプロップ式飛行機の速度で乗客を乗せて走る。時速400キロ以上出せるので、この方式の都市間輸送は航空機と十分に競争できる」。コルムには、フランスのTGVのような高速鉄道は比較の対象にもなっていない。
ロジャーズ(Buck Rogers)やジョーンズ(Casey Jones)、コルムたちが研究した滋気浮上車(maglev:アメリカではマグレブというが訳文ではリニアとする)は、1960年代後半以降に米国で発明された数ある中で最も急進的な発明であるが、最近のリバイバル劇を演じるまでは、大学の書庫の中でほこりにまみれ、古い記録として残されるままになっていた。
ツイードのアイルランド帽と蝶ネクタイを愛用する論争好きの1人の上院議員が、コルムたちのリニアに魅了されたのである。ニューヨーク選出のモイニアン(Daniel Patrick Moynian)上院議員である。彼は1510億ドルにのぼる巨額のハイウエー予算(6年分)の中に、7億2500万ドルのリニア開発費を押し込むのに成功した。
このリニア予算はブッシュ政権への一種の挑戦である。すなわち、商業目的の民間技術開発に政府が介入・奨励するのはよくないとする根強い反対意見を、振り切っていかなければならない。ハイウエー予算の教書の中で、このリニア予算についての記述は、ありふれた文章で始まっている、「米国白身でリニアをできるだけ短期間のうちに設計し、建設することは米国の政策である」。
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| リニア開発者の一人コルム コルムはアメリカのリニア開発者の元祖の一人である。自分の自家用機に寄りかかっている。列車でなくいつもこの飛行機で技術集会に出かける。 |
リニア推進に熱心なモイニアン上院議員 ニューヨーク州選出のモイニアン上院議員は、高速道路の上にリニアを走らせようと考えている。この数10年間の狂乱的に建設された高速道路は都市住民から分断した碁盤目模様の遺物と見ている。 |
ハーバードの知性を持つニューヨーク育ちのモイニアン上院議員は、日本やドイツとのリニア開発競争で米国は負け犬であると見なしてきた。米国はリニア開発で先駆的な業績をあげたものの、1975年に米大統領府行政管理予算庁(the White House Office
of Management and Budget)がリニア開発の予算を見送ったため、米国のリニア開発が突然、停止してしまった、「あの役所は政策を決める会計事務所だった」と20年以上たった今もコルムは侮しがっている。その一方で、経済的ライバルである日本とドイツは1969年以来、リニア開発にそれぞれ約10億ドルを費やしてきた。その結果、米国とドイツの合弁会社が米国内にドイツ式リニアを建設するまでになっている。路線はフロリダ州オーランド空港からウオルトディズニーワールド遊園地までを結ぶ区間である。
ハイウエー予算の中に組み込まれたリニア支出はかなりの額であるが、さらに民間資金2億ドルが拠出されることになっており、これで米国は再度、リニア開発競争の戦列に加わることができるだろう。その際、現在、冬眠状態にある航空宇宙産業や土木建設企業の設計技術や製造技術を組み合わせて活用するとコルムは考えている。これらの産業はジェット戦闘機の製造と原子力発電所の建設が米国の優先課題であった時代に急成長したものの、現在は経営危機に陥ってしまっている。 「リニア」という用語は25年前のベトナム戦争のさなかに生まれ、すぐに時代をあらわす言葉となった。「戦争ではなく、リニアを!」。ある技術者はこう叫んだ。
ブッシュ大統領は昨年の12月、このハイウエー予算に署名したものの、連邦政府は新しい輸送技術開発のための多額の支出に関して、最終コメントをまったく出さなかった。それだけでなく、コルムの宿敵の行政管理予算庁を含む政府側は、今年の10月から始まる1993年度予算審議でリニア開発の歳出をカットするよう要求している。
リニアを推進しようとする動きを横で冷静に観察している鉄道事業者には、事態は従来とは違ったものになっている。破綻した国内の鉄道旅客輸送を再建するために施されたこの25年間の政策は失敗の連続だった、「政府の財布の紐がいつも固いことを考えると、この種の技術開発を進めても無用のハイテク技術に終わるのではないか、リニアは飛行機の変わり種である、しかも、ドイツと日本がすでに20年以上にわたって投資してきたのに、いまだに実用化されていない。リニアの実施事業者すらはっきりしない。それになによりも、より現実的な都市間の鉄道旅客輸送の改善に充てる資金がリニアに食われてしまう」と何人かの交通専門家は危惧する。
モイニアンはリニア推進の立て役者である。ハイウェーを管轄する上院小委員会の委員長として、この数10年間の異常な、時には無秩序な道路建設から米国を数ってくれるのはリニアであると考えている。「ハイウェー建設公団はウィルミントン市内を通る道路計画をあきらめ、ルイスビル繁華街から学校地区を通ってレノ市の中心部へと続くハイウェイを建設しているが、工事はまったく進んでいない。ニューヨークのニューバーグ地区では途中で打ち切られた道路建設現場が数多く見られる」とモイニアンは1960年に記している。
「ハイウェイの完成前にはそれほどでもなかった混雑が、完成後にはかえって激しくなっており、今後も事態は悪化する一方だろう。例えばマイアミからフオートローダーデールまでを結ぶ国道95号線は、2020年までに44車線が必要になる。フロリダはもうすぐ道路だらけになってしまう!」とモイニアンは訴える。
道路をいつまでも建設し続けなければならない状況から米国が脱け出すには今までとは違う何かが必要だ、とモイニアンは感じていた。「もう道路は十分につくった。次は、アイゼンハワー大統領時代からの遺産であるハイウエーをうまく活用する番だ。それにはリニアだ。ハイウエー脇に幅の狭い高架橋を建設し、そこにリニアを走らせ、8〜10車線道路の輸送量に相当する人間を速ぶ。高架橋の上は速度制限がない。リニアなら時速500 km も可能で、ポートマック市民が夕方から出かけてニューヨークのメトロポリタン劇場のオペラを観賞できるようになる」とモイニアンは演説する。
モイニアンがリニア計画を推進し始めたのは5年前である。彼はその当時、最終的には実現しなかったが、リニア予算を要求した。その後、リニア推進派が集まる研究グループを発足させた。そのメンバーの多くは過去のリニア開発で挫折を昧わった人々で、コルムもその1人だった。「リニアは我々の予想より早く実現する革命的な交通方式である」。研究グループは有利な報告をした。
1989年に出した同グループ(リニア技術支援委員会)の報告書では、「リニアはハイウエーと空港の混雑を緩和し,乗客1人、1km当たりのエネルギー消費を自動車の1/2、飛行機の1/4に減らすことができる。石炭火力発電、原子力発電、水力発電による電気で走るので、輸入石油への依存率が下がり、炭化水素などの汚染ガスの放出も減る」と述べた。
モイニアン上院議員はこの報告書を使って動きの鈍い連邦政府の官僚をつつき、米陸軍工兵部隊にリニアの計画書を作成させる予算として100万ドルを要求した。運輸省はモイニアンの問い合わせに対してそれまでまったく煮えきらない態度を取っていたが、突然土俵に上がってきた。運輸省は同省と陸軍工兵部隊とエネルギー省の専門家からなるリニア調査会(NMI:National
Maglev Initiative)を発足し、実現可能性の調査を始めた。
リニア調査会は来年の初めに報告書を出すが、調査会が混成部隊で曖昧な結論が予想されるので、モイニアンはそれまで待とうとしなかった。その代わりに、資金の豊富な6ヵ年のハイウエー予算の中に7億2500万ドルのリニア予算を押し込んだのである。リニア試作開発計画は、かつてのハイウエー予算の中にあったハイウエー技術促進研究計画よりも大きな資金が与えられた、「米国のリニア研究開発でこれほどの資金はかつてなかったことだ」と運輸省連邦鉄道長官でリニア調査会技師長のハーディング(John
T.Harding)は驚嘆している。
磁界による魔術
磁石の力で磁界の上をサーフィンのように浮かぶ乗り物は、古くから考えられている。ロケット開発の先駆者であるゴダード(Robert Goddard)が今世紀の初め、ボストン〜ニューヨーク間にトンネルを掘り、その中を半真空にして磁界の魔術で車を浮かせ推進させる構想を出した。
数年後の1912年、フランスからの移民で技術者のバチェレ(Emile Ba-chelet)は、現在のものに近いデザインのリニアの特許を世界で初めて取った。バチェレの試験車は重さが15 kg
あり、ニューヨーク州マウンドツァーノンの彼の研究室で実験中に壁にぶつかって壊れたこともあったが、交流電流を使って浮上する方式だった。しかし、重さ40トンの本物の車両を浮かすには、この方式ではあまりにも消費電力が大きかった。
それから50年後、ブルックヘブン米国立研究所の原子炉設計技師パウエル(James R.
Poweh)は、より実現性のある解決方法を見いだした。パウエルはあるとき、ガールフレンドに会いに週末にボストンまで出かけたが、その途中のスロッグズネック橋の袂でひどい交通渋滞にぶつかった。「橋を渡るわずか5kmの距離を進むのに4時間もかかった。それ以来、長距離を旅行するにはもっといい方法があるのではないかと考え続けた。これがリニアに着目するきっかけになった」とパウエルは話している。
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| リニア研究者 ソートンは1970年頃、コルムのリニア開発に協力した。現在、彼自身の方式を研究している。 |
リニア研究者 パウエル(左)とダンビー(右)はブルックヘブン国立研究所の研究者で、1966年に、超伝導磁石を用いたリニア方式を初めて論文で発表した。 |
パウエルはバチェレの研究については何も知らなかったが、彼も同極性の磁石が反発するという小学校で教わる原理を応用した。ブルックヘブン国立研究所の物理学者のダンビーでGordon.T.
Danby)と共にその考えを練り上げ、ガイドウエー上に並べたループコイルに電流を誘起させるために、車両に磁石を取り付ける方法を考えた。ループコイルの電流は磁石と同極性の磁界をつくるので、磁石とループコイル間には反発力が働く。当時ブルックヘブン国立研究所では加速器のビームの集束に超伝導磁石が使われていたが、この超伝導磁石をリニアに利用すれば大きな浮上方が得られると考えたのが、パウエルとダンビーの主な業績である。
超伝導磁石は車両の底面と両側面に取り付け、液体ヘリウムで絶対温度4度に冷却する。超伝導磁石が生みだす磁界は非常に強力で、40〜50トンの浮上力が発生する。超伝導磁石とループコイル間の相互作用は車両走行の安定化にも役立つ。
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| リニア同期モータ リニア同期モータは交流電流を使用する。すると車両に沿って移動する磁界の波が発生する。時間的に変化するこの磁界の波は車両の磁石に作用し、車両を推進させる。図は日本の試験車の方式である。その他のリニアも、大半がこのモータを用いている。 |
車両が浮上するには前か後に動いていなければならない。これにはリニア同期モーターを用いる。リニア同期モーターの電磁コイルはガイドウエーに設けるが、それは従来の回転式モーターの電極や固定子の役目を果たす。この電磁コイルに交流電流を流して交流磁界を発生させると、車両を浮上させるための超伝導磁石に前後方向の推進力も加わる。交流電流の周波数を変えて速度を、交流電流の犬きさを変えて推進力を制御する。パウエルとダンビーはこの研究成果を「磁力で浮上する列車による高速輸送」と題しか論文にまとめ、1966年に発表した。
これとちょうど同じ時期、国政レベルでは新しい陸上輸送技術を開発して瀕死状態の鉄道旅客輸送を再生させようとする機運があり、1965年の高速陸上輸送法が制定されたばかりだった。この法律は軌道に沿って走る空気浮上のホーバークラフトを開発の対象としていた。
しかし、パウエルたちのリニア研究が世間に知られると、ホーバークラフトからリニアに関心が移った。スタンフォード・リサーチ・インスティテュートは超伝導磁石で浮上する重さ0.5トンの試験車を製作した。 MIT(マサチューセッツ工科大学)のソーントン(Richad D. Thomton)と共同で製作したコルムのマグネプレーンは、中でも有名である。 80人の卒業生の協力と米科学財回(NSF)からの65万ドルの資金で、1973年の初めに2人はガイドウエーの中を走る1/25の大きさの模型を完成させた。こうした成果から米国はリニア研究で世界のトップに立った。しかしその時、行政管理予算庁がリニア予算を突然、止めてしまったため、日本とドイツが徐々に先行することになった。
1970年、日本の国鉄はパウエルとダンビーが考えたのとほぽ同様の方式のリニア開発を始めた。日本南西部の宮崎県に7kmの実験線を建設し、数次にわたり試験車を改良試作しながら長期間、試験を続けている。今は民営化されたJRの出資による(財)鉄道総合技術研究所が、さらに20億ドルの資金で山梨県に43kmの第2実験線を建設中である。これは将来、両側に延長され、20年以内には東京と大阪を結ぶ営業線になる予定である。
日本では、磁気浮上式鉄道の技術開発は少なくとも営業開始の5年前までに完成している必要がある。日本の技術陣が描いている磁気浮上式鉄道は、500 km/h のスピードで14両編成の列車が1時間当たり1万人の乗客を運ぶ。東京〜大阪間は日本で最も鉄道輪送密度の高いルートで、1964年に新幹線が開業しているが、磁気浮上式鉄道はその1/3の1時間でこの区間を走る。しかし、万一リニアの開発に失敗しても、その代わりとして2本目の新幹線がリニアの予定ルートを使って建設されることになっている。
昨年の秋、日本の開発はまだ実験段階であるかのような事故があった。最新の試験車MLU002型が火災で燃えてしまったのである。研究所はこの火災についてこう発表している。「火災はマグネシウム製の車輪が発火したためで、磁気浮上や推進装置の基本システムには問題はなかった。逆に、超伝導磁石の耐久性が証明された。火災から1時間後、消防士が鳶口を振り回しながら試験車に近づいたところ、突然、消防士の手から鉄製の鳶口がはずれ、超伝導磁石に吸いついた。超伝導磁石はまだ正常に作用していたのである」。
| 日独米各国のリニア試験車 1970年代につくられた日本(左上)、ドイツ(左下)および米国スタンフォード工科大学(右)のリニア試験車を示す。 |
速度が320 km/h以上で実用化に近いリニアにドイツ式がある。しかし1969年に開発を開始し、現在7番目の試験車となったドイツのトランスラピノド07型も障害に直面している。 ドイツ運輸省はいくつかの方式を試験した後、1977年に今の方式で開発を進めることを決定した。これはドイツの科学者ケンペル(Hermann Kemper)が1920年代に考えた方式を基本にしたものである。 ドイツ方式の列車は軌道の上に浮上するのではなく、列車の下部がT学型のガイドウエーを取り囲むような構造になっている。その取り囲んだ列車下部の内側には、従来式の電磁石が取り付けられている。この電磁石は上向きに吸引され、ガイドウエーの鉄レールから隙間が2.5cm以内となる。推進には目本の方式と同様、リニア同期モーターを使う。
ドイツ政府からは10億ドルに近い資金が投入され、さらにドイツの3企業の共同出資会社である国際トランスラピッド社からも多額の民間資金が捕われた。ドイツ政府はトランスラピッド方式の技術と安全性について一部は承認したものの、まだほかにも承認試験が残っている。 400 km/h で逆向きに走る2本の列車がわずか数10cmの至近距離ですれ違う時の、風圧の影響による車両の揺れの解析については、コンピューターシュミレーション以外はやられていない。
また、ドイツの地方自治体は財政負担をしてまで、トランスラピッド型リニアを誘致しようとしていない。ボン〜ケルン〜デュッセルドルフ空港〜エッセン市街を結ぶトランスラピッド計画に対し、地元の北ライン・ウエストファリア州は州財政からは1マルクの資金も出せないと拒んでおり、結果的にこの計画の推進を妨げている。環境保護グループもまた、地面から立ち上がるガイドウエーが周辺の景観に及ぼす影響と、車両からの騒音の問題から反対している。
トランスラピッドのドイツ国内での生命を保たせているのは、東西ドイツの統一である。旧東西ドイツの将来の平等を象徴する物理的な結合手段としてトランスラピッドを統一ドイツ再生のシンボルにしようと、モイニアン上院議員のように東ドイツ出身のクラウゼ(GUnther Krause)運輸大臣は考えている。東西ドイツの主要都市であるベルリン〜ハンブルグ間は、分断前の1930年代に現在の旅客列車より少し遅い160 km/h の弾丸列車で結ばれていた。この弾丸列車の21世紀版として50億ドルを投入してトランスラピッドを建設するのが、クラウゼ大臣の夢である。実現するには、政府資金のほかに、さらに民間資金も調達しなければならない。
ドイツがこの官民合同のプロジェクトを模索している間に、世界最初のリニア営業路線が米国に建設されようとしているが、これがたぶんトランスラピッドの実用化第1号となるだろう。フロリダ州のオーランド空港とウォルトディズニーワールド遊園地を結ぶ22kmの路線で、1996年に開通する予定である。フロリダ州選出のグラハム(Bob Graham)上院議員は日本、ドイツおよび米国企業が共同で参加するこの6億ドルのプロジェクトに、ハイウエー予算の中から9800万ドルを回した。完成後の運営はアムトラック鉄道公社が担当する予定である。
リニアの技術が経済的に成り立つかどうかを見る実験台として、フロリダのリニアは注目されるだろう、「フロリダを訪れる人々はバカンスの観光客だから、有名な乗り物に興味をもち、少々運賃が高くても問題にしないだろう。したがって、現状の技術でフロリダのリニアがうまくいかないとなると、今後の適材場所を見つけるのは非常に困難になるだろう」と議会事務局の元技術評価部長でリニア報告書を取りまとめたペイジ(Edith B. Page)は語る。
米国政府はリニアを自国で開発するのか、それとも外国から技術導入するのかについてリニア調査会で検討している。そのメンバーである陸軍工兵部隊、運輸省、エネルギー省および調査を請け負った民間企業数社による報告書は、1993年の春に公表されることになっている。分折範囲はリニアによる輸送事業の経営収支と経営事業者から、騒音や磁界の問題にまで及ぶ、米国独自のリニア技術は何なのか、すでに日本とドイツで試作された技術
をどのようにして追い越すのかについては、リニア調査会の4チームで研究している。
その1つにモイニアン上院議員の地元のニューヨークのグラマン社を主体としたチームがある。グラマン社は1960年代に流行したホーバークラフトの開発を行った会社で、そのほかの6企業と組んで1チームを構成している。リニア調査会の調査を請け負う前からグラマン社は、ワシントン〜ボルティモア間のリニア構想を推進する企業グループに参加していた。グラマン社のプラン(Richard J. Gran)はアポロ計画で月面に降りる着陸前のデジタル飛行制御システムの開発に携わったが、今回このリニア開発に着手した際、「技術的にはアポロの方がリニアをつくるより数倍も難しかった」と話している。
リニア調査会に提案しているグラマン社のリニアは、ドイツ式の電磁石と日本式の超伝導磁石の両方を使った複合式である。 ドイツ式と同様、車両はガイドウエーを包み込んで、軌道から外れないようにしている。低速から高速まで車両を浮上させるので、日本式のような着地用の車輪は不要である。周辺の磁界のレベルに対しても、日本式では車内の位置によってはペースメーカーに影響するかもしれないが、ドイツとグラマンの方式では最小に抑え込んでいる。 ドイツとグラマンの方式では、磁界は車両に取り付けた滋石の鉄心とガイドウエーの鋼材に吸収される。磁界の人体への影響は、運転するリニアによって違ってくるだろう。
グラマン社は出発点として以上の設計方針をたて、ドイツ式を基本にして改良を試みている。しかしながら、磁石の吸引力を利用した浮上は極めて不安定である。ガイドウエーの下面を包む電磁石は、励磁されると鉄のレールに向かって上向きに吸引される。電磁石がレールに接近しすぎるとレールに接着してしまう。逆に離れすぎると重力の作用で下に落ちてしまう。
トランスラピッド方式では列車とガイドウエー間のギャップを1cmに維持するしかない。高速で安全に走行するには、車両がレールをこすらないようにガイドウエーをガラスの表面のように滑らかに仕上げなくてはならない。しかし、このように精密な精度は風や温度変化あるいは振動で狂う可能性があり、調整頻度が増えて保守費用がかさむだろう。
このドイツ式による問題の対策として、グラマン社は日本式のような超伝導磁石に小型の電磁石を組み合わせ、精密な精度を避ける方法を提案している。電磁石の電流をデジタル制御で変化させて、車両とガイドウエー間のギャップを一定に保つ。超伝導磁石の強力な磁力によりギャップを5cmまで拡大できるので、ガイドウエーを精密に調整する必要がなくなる。「橋梁の保守精度ですむだろう」とグラマン社は話している。
リニア調査会のほかの開発チームにとっても、車両とガイドウエー間のギャップをいかにして大きくするかが、開発目標になっている。しかしトランスラピッド側は「良好な乗り心地を得るためには、車両とガイドウエー間のギャップを小さくする必要かある。グラマンもそのほかの開発チームも、我々のようにそのことを発見するだろう」と反論している。「トランスラピッドの方式は正しい。これ以外の方式は欧州では10〜20年前に放棄された方式だと国際トランスラピッド社長のワッカ一ズは主張している。

日本のMLU002型 MLU002
型はガイドウエイ側壁にあるコイルに作用する超伝導磁石をもつ。1991年に火災を起こして壊れた。磁石の磁界がコウルに反発力を生み出し、この力で車両をガイドウエイから10cm浮上させ、安定させる。 |
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ドイツのトランスラピッド07型 トランスラピッド07型は車両に超伝導磁石を利用している。営業運転に近い段階まできている。この磁石はガイドウエーの鉄レールを吸引し、その空隙を2.5cm以内に保つ。 |
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アメリカのマグネプレーン アメリカのマグネプレーンの超伝導磁石はガイドウエーのアルミシートに反発力を誘起させ、車両を15cm浮上させる。樋(とい)形の案内路であるため、45度までの車両の横傾斜が可能である。 |
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国産と輸入
リニアにかかる費用のうち80%はガイドウエーの建設費用であるため、軽量で、安価で、組み立てが容易な構造のガイドウエーを開発すれば膨大な投下資本を削減できるとして、リニア調査会の全チームはガイドウエーの研究開発に努めている。ベクテル社のチームは鉄道やハイウエーから原子力発電所までの建設プロジェクトに参加してきた会社であるが、リニア調査会チームの中で一番安価な方式を提案している。幅が1.5m、細長くて中空の箱桁をしたガイドウエーである。
資材と作業量を最小にすれば、1km当たりの建設費を600万ドル〜900万ドルに低減できるだろう。つまり、米建設会社が試算したトランスラピッドのガイドウエー建設費の半分に抑え、都市部のハイウエー新設費用より少なくできる。「複線ガイドウエーの建設費ぱ1200万ドル〜1600万ドルの範囲であり、米国が試算する建設費は高いのではないか。米国はガイドウエー建設の経験がなく、ただ設計用紙に図面を描いてコスト計算しているだけだから」とトランスラピッドのワッカーズ社長は断言している。「すべて米国製のリニアでなければならない、とすべての米国人が思っているわけではない。ドイツ製や日本製より良いものを望むのは間違っている。 20年以上の経験がある外国の研究に対して、リニア調査会ができるのは外観の改良程度だろう」とカーネギー・メロン大学のウハー(Richard A.Uher)が論争をしかけている。彼は1960年代の後半にウエスティングハウス社で高速鉄道の開発に携わった経験をもつ人物である。
ウハーは1980年代の中頃に、製鉄業界や労働組合および地方自治体で構成するリニア会社の設立にかかわった。この会社はトランスラピッドの技術ライセンスを得、ピッツバーグ周辺にリニア製造産業を育成する目的で設立された会社である。ウハーのグループはハイウエー予算の中で認められている資金を使い、ピッツバーグ空港から都心まで30 km
のリニア路線を建設したいと考えている。もし実現すれば、ピッツバーグとペンシルベニア州東部、オハイオ州、ウエストバージニア州、メリーランド州を結ぶ輸送計画の中の第1号路線となる。「どこでリニアの技術が開発されたかではなく、どこにリニアをつくるかが大事である」とウハーは話している。国産のリニアであろうとなかろうと、高速のリニアを利用すれば、休日に郊外ヘドライブに出かけるのとはまったく違った体験が得られるだろう。
最近つくられたハイウエー予算の中のリニア条項では、リニア建設用地としてハイウエー沿いの土地、または鉄道用地や公共用地の使用権が認められている。しかし、ハイウエーの曲線部は最高時速110 km/h で走る自動車向けになっている。 不快な遠心力の加速度を乗客に感じさせないためには、リニアは曲線部を通過するたびに減速と加速を繰り返すか、もしくはハイウエーのルートから1〜2kmほど離れる必要かある。
「ジェツトコースターのような乗り心地は駄目だと言うのなら、ハイウエーに沿ってリニアは走れない」とリニア調査会の参加企業のマーチンマリエッタ社の研究責任者であるカールトン(Steven G. Carlton)は話している。一方、軌道に横方向の傾斜をつけるか、車両を車体傾斜させれば、遠心力で生じる乗客の不快感は補償できると反論する専門家もいる。グラマン社は軌道に最大15度の傾斜をつけ、車両でさらに車体を9度まで傾けることを提案している。これにより、ニューヨーク州の高速道路のような立体交差のインターチェンジを除けば、ハイウエーから離れなくても400 km/h で走行できるとしている。
コルムのマグネプレーンは最も極端である(H.H.コルム/R.D.ソーントン「磁気浮上による超高速鉄道」サイエンス1973年12月号参照)。コルムのマグネプレーンは最大軌道傾斜角45度のコースを、ボブスレーのように滑っていく。まるで、方向舵と補助翼を同時に操作して垂直軸(ヨー)と進行方向軸(ロール)を中心にして運動する戦闘機のような走行である。「人間は体験すればすぐ慣れるものだ。もし、モーツァルトが200年ぶりに目を覚まして自動車に乗ったら、最初はまごつくだろう。しかし10回も乗れば、自動車を快適に感じるだろう」とコルムは話している。
マサチューセッツ州ケンブリッジにある運輸省ボルプ国立交通研究センターの研究陣は、団体用ジエット機を使い、機体を前後に25度傾けたときに体験する乗り心地を調べている。「素直に言って、1万m上空を飛ぶB747ジャンボ機とリニアの乗り心地は同じにはならないだろう。むしろ、乗客に嫌われないようにするためにどうすればよいのかを考えるべきだ」とボルプ研究センター操縦能力安全分析室長のサスマン(E.Donald Sussman)は話している。
乗り心地の問題のほかにリニアが出す騒音も課題となるが、騒音については「のんびりと屋外で庭や自家用車の手入れをしている沿線住民は、500km/hで走ってくる列車の突然の音にびっくりするだろう。最高速度で走るリニアが出す騒音は、線路から25m離れた場所で100ホンにも達する。これは大型トラックが近づいてくる時の騒音よりも大きい。市内に入ればリニアは300 km/h に減速するので、市内バスが通過する程度の82デシベルに下がる」とマサチューセッツ州レキシントンのリニア調査会コンサルタントのハンソン(Car1E.Hanson)は話している。
週末に孫に会いにいくためにリニアに乗る老夫婦がどの程度の加速度に耐えられるのかを決めるようなことが、過激な新しい輸送手段に対して守勢に立たされている連邦政府が盛り返すきっかけになるかもしれない。米国の都市間旅客輸送で鉄道の占める割合は、1%以下とごくわずかである。その結果、運輸省連邦鉄道局は旅客列車のための野心的な技術研究や開発計画について政策経験がほとんどない。役所の大半の時間は安全規則を厳しくすることに費やされている。
したがって、モイニアンが委員長を務める上院小委員会は、白身がもつ米国陸軍工兵部隊の管轄権に着目し、施工実績のリストを提出させた。「工兵部隊は有用なのだが、運用方法がまずかった。 1980年代の前半、なぜ工兵部隊は米国よりサウジアラビアでより多くの建設工事を設計し、工事監督をしたのか。なんと我々は46ものモスクをつくっている。制限つきの演習としては素晴らしいが、モスクの建設までは行き過ぎだ」。モイニアンは昨年の上院での演説の中でこう述べた。
モイニアンの構想は必ずしも順調に進んでいるとはいえない。129ページある運輸政策書を見ると、リニアはその中で1ページを占めているだけである。 1990年の運輸政策書には「一貫輸送」(Intermodalism : 異なった輸送手段がお互いに補完しあう意味で使う交通計画の専門用語。例えば列車と飛行機)の概念が取り入れられている。
しかしこの政策書を詳細に読んでも、数10年に及ぶこれまでの自動車と航空輸送主体の運輸政策から、当局が一歩外に踏み出す用意があるのかどうかまったくはっきりしない。政策書はむしろ、旅客収入で採算の合わないアムトラック(米国旅客輸送公社)の運営費の損失を補填することに反対を再表明している。老朽化した車両や線路への助成については言うまでもない。また、リニアの建設には民間投資が中心になるだろうと強調している。
高速鉄道計画はリニアも含め、どんな方式を採用しようとも巨額の資本支出を伴うため、現在の政策のもとでは経済的に正当化されるかどうかは疑問だ、と交通評論家は見ている。昨年提出された国会事務局の技術評価部の報告書では、都市間輸送方式としてジェット機、在来鉄道、新しい高速鉄道、プロペラ傾斜機(tilt-rotor aircraft:ヘリコプターのように離陸し、飛行機のように飛ぶ)などとリニアを比較している。その結果を見ると、トランスラピッドの車両とガイドウエーを用い、ボストン〜ワシントン間にルートを設定した場合、調査した各種輸送方式の中でリニアの建設費が74億ドルで最大となる。しかし、運転費ではリニアが最小となる。リニアの運転費はキロ当たり5.5セントで、ジェット機の約半分である。
「リニアの技術開発に10億ドルを費やしても、6年で営業に使える米国方式を開発するのは無理だろう。たとえリニアが完成しても、人々はリニアを利用しないかもしれない。人間はお金と使利さの2つで交通機関を選択する。リニアが大衆の自動車、中クラスの鉄道、ハイクラスの航空機に対して経済的に競争相手になれるかどうかはまだ明確でない」と前国会事務局技術評価部長のページは国会で答弁している(ページは最近、役所を退官してベクテル社のワシントン支社で慟いている)。
リニアであろうと高速鉄道であろうと、十分な乗客が集められるかどうかすら定かではない。科学技術会議の小委員会はかなり楽観的な仮定のもとで、高速鉄道で採算がとれるかどうかの調査を行った。利用者の多い航空路線で全利用者が高速鉄道に移転し、運賃が航空運賃と同じであるとし、高速鉄道の経済計算をした。その結果、建設費を含めて採算にのるのは、調査ルートの中で最も利用者の多いロサンゼルス〜サンフランシスコ路線だけであった。リニアは連邦政府の支援がなければ実現しないだろう。土地の無償供与が過去の鉄道建設を助けた。搭乗券税とガソリン税のほかに、空港とハイウエー建設のための政府借入金は数10億ドルにのぼった。
新しい輸送技術への資金の青写真は、1510億ドルのハイウエー法の中に見ることになるかもしれない。ハイウエー法は その大半にモイニアン議員の捺印があるが-1991年現在、「一貫陸上輸送効率法」という難しい名称の法律になっている。道路のために制定された税金のかなりの額を、州政府や地方自治体が他の交通分野に転用するのを認める先例のない法律である。法律ではガソリン1ガロンに対する14セントの国税の中の9セントまでを、ハイウエー建設ではなく、地下鉄から自転車道路まで転用できる。
前のハイウエー法では,1.5セントが公共交通機関に限定して認められていた。新しい法律では、州政府がリニアや高速鉄道の建設にハイウエー沿いの国有地を使用するのを認めている。州政府がこの自由裁量の資金を高速鉄道計画の軌道や車両に使ってもよい(リニア計画に民間資金を引き出すための先導資金として)という追加条項については、下院の2つの委員会で管轄権の議論が持ち上がり、最終的に削除された。きちんとした開発計画になっていないから資金を割り当てられないというのは、当局がリニア試作計画を潰そうとしているからではないかとリニア推進派は疑っている。
実際に、モイニアンに擁護されて危険なほどハイペースでできたリニア計画は間違いかもしれない。交通計画者はリニアを、宣伝のやり過ぎやばらばらな開発経緯のために認知されてはいないが将来発展する可能性を秘めた交通技術と比較している。運転手がいないゴムタイヤ式の四輪車でコンクリートの案内軌道を走る“ピープルムーバー”は、1970年にウエストバージニア州モーガンタウンに建設された。リニア同様、自動車の代わりとして生まれたものである。この方式の費用は当初1400万ドルと低額だったのが、1億1800万ドルにまで跳ね上がった。「実用化にはまだ多くの難問の解決に努めなければならないから、あまりに性急なリニア計画では失敗するだろう。もし10億ドルの輸送方式を試みて50億ドルかかり、誰もそれを使わなかったら、その輸送方式は今後50年間、復活することはないだろう」とワシントン交通局計画部長のベンジャミン(Peter Benjamin)は語っている。彼は都市交通省にいるときにモーガンタウン計画に参画した実績かある。
論争の結末
リニア開発計画を慎重なペースで進めるとしても、その使い方には新しい考え方が求められるだろう。ニューョークのペンステーション駅とワシントンのユニオン駅を結ぶような、都心直結型のルートを考えるのは正しくないと推進派は言っている。都心直結ルートでは、専門家が指摘するように、リニアは自動車や飛行機から乗客を十分に奪い取れないかもしれない。
「リニア開発陣は高速で本線から駅へ車両を分岐できる高速道路の出口のような分岐方式を開発すべきだ」とモイニアンのリニア計画書の中に記されているが、この1節は反対派への返答の一つになっている。リニアの乗客の大半は町の中心地の住民ではなく、郊外に住んでいる人々であるという現実に合わせるため、新しい分岐方式の技術が必要となっている。「鉄道はこの国の人口居住分布にマッチしていない。もはや市内から市内への人の移動はなくなっている。人は25 km 間隔のショッピングセンターからショッピングセンターに動いている」とコルムは言っている。
ほぼ全速力の車両が分岐できる電子式分岐方式は、これまでドイツと日本で試みられた、より原理的な電気機械式の試作品を改良することになる。巧妙な分岐装置の開発により、米国のリニアは飛行機や列車だけでなく、乗用車やバスの特性も併せもつものとなる。最大140人乗りまでの大きさのリニア車両が、次々と1分間隔で連続走行する。モイニアンはかつて主要都市内にまで通じるハイウエー建設を構想していたが、中核都市へのアクセスを必要とする地域に対して都心のビジネス街までの足としてリニアを提供すれば、彼の目的は果たせるかもしれない。
アルゴンヌ米国立研究所はリニア技術と交通計画の双方を研究している。同研究所は航空機に代わる交通機関としてリニアを有効だと見ており、1000 km以下の近距離航空路線の置き換えに役立つと考えている。「ハイウエー建設の次は浮上列車になると思われる。従来の交通計画の考え方でリニアを考えることはできない」とアルゴンヌ研究所技術員のブロー(Laur-ence E. Blow)は言っている。
リニアは、古参の政治家や交通の空想家、あるいは山積みの空想科字書に埋もれた引退間近い科学者や技術者を魅惑している技術である。しかしモイニアンが指摘するように、悪化した交通部門の生産性を改善するためには、技術革新はどうしても必要である「一貫陸上輸送」計画は既存のハイウエーを維持しつつ、新しい交通システムの改良や建設を支援することで、現状の維持と改良を図ろうとする新旧混在の計画である。この計画はまた、今後6年間のハイウエー予算1510億ドルの約半分を、リスクの大きいリニアプロジェクトに消費する計画でもある。
コルムは最近、米陸軍向けの電磁コイル銃の設計といった様々なことにエネルギーを捧げている。戦車の装甲を突き抜く武器類に対するコルムの飽くなき発明心は、原子力潜水艦にかかる経費の約1/3に等しいギャンブルに値するかもしれない。それ以上に、橋や道路の補修に細々とした資金を流す以上の能力が連邦政府にあるのが証明されるかもしれない。「この国はMBAに牛耳られている」とコルムは不平を漏らす。
しかしリニアの先駆者であるパウエルは、もっと屈折した言葉で語っている、「19世紀の米国全体の気質は新技術の実施を望み、その過程の困難を厭わない人の気質であった。人々はパナマ運河の建設に熱狂した。この種の気質はもう消え去った。何かが間違ってしまった。理由は何であれ、我々から困難に喜んで立ち向かう気力と意志の力がなくなりつつある」。 ************************************
1 アメリカのリニア 2
アメリカの高速鉄道 3
輪走行と浮上走行 4
中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
シートベルトのない列車
リニアは注意書きが多くて実証が少ない技術だが、高速鉄道はそうではない。日本の新幹線、フランスのTGVなどの高速鉄道は大きな事故もなく、300 km/h
近い速度で数十億人の乗客を運んだ実績をもっている。欧州では、東欧まで延びる欧州全域の高速鉄道網が計画されている。
リニアとは違い、TGVなら19世紀初頭の鉄道建設業者にも馴染みがあるだろう。 TGVは標準軌間の鉄道なので、現在のニューヨークのペンセントラル駅やワシントンのユニオン駅にも入線できる。TGVはまた,食堂車やサロンカーのような旧式のスタイルを維持している。シートベルトはどこにもない。
1996年にフロリダ州オーランドでリニアの営業が開始される予定になっているが、その一方で、従来からの高速鉄道方式の方がリニア方式より有利ではないかとの判断が強まっている。テキサス州は昨年、建設会社のモリソン・ヌードソン社率いるコンソーシアム(国際資本合同体)に高速鉄道用の路線を認可した。コンソーシアムにはTGV車両製作会社のGECアルストム社も含まれていて、2000年までにテキサス州の5都市を結ぶ高速鉄道の建設が計画されている。ただし、計画実現には、70億ドルにのぼる建設資金の大半をまず準備しなければならない。
従来からの鉄道方式は技術面でリニアよりかなり優位にある。 TGVは1990年に,列車で世界最高の510 km/hを達成した。日本の無人のML500型リニア試作車がもつ517 km/h の記録には及ばないものの、そのほかのどのリニア試作車よりも速い。 TGVの記録は試験走行によるものであるが、フランス国鉄は新しいTGV用線路を敷設し、多くのリニアが目標としている速度に近い400 km/h
の営業列車を走らせたいとしている。「その時にはリニアなら可能で、鉄道で不可能なものは存在しなくなる。さらに高速化が必要かどうかは、世論の自由な意見を取り入れて議論する問題だ。 400km/hから500 km/h
に速度を上げても、時間がわずかしか短縮されないのに対してエネルギーコストが急増するのだから」とペンシルベニア大学で交通技術を専門としているブチック教授(Vukan R. Vuchic)は断言している。
これに対してリニア推進派は、技術的信頼性に飛躍的な向上のある技術でなければと主張している。「確かに、在来鉄道は今まで誰も予側しなかったくらい高速に走れるようになった。しかし,鉄道技術はほぼ175年続いてきた進歩の限界に近づいている。300トンの列車が500 km/h
で硬い線路上を駆け抜けることは、それが毎日の営業運転なら、線路にとっても車両にとってもストレスが大きすぎる」とリニア支持者は言い張っている。「記録を打ち立てた時のTGVの乗客に、私は絶対なりたくない。レールの上で車輪がいかに踊っていたか、架線からどんなに火花が出ていたか、ビデオを見てみれば一目瞭然だ。このような状態で毎日走れるものではない」とトランスラピッド社の社長のワッカーズ(ManfredWackers)は話している。
リニアを乗客が金を払う乗り物に仕上げるまでには、まだ技術的に多くの挑戦課題かある。まさに公共交通機関にジェットコースターを持ち込むようなものだからである。しかし、コルム(Henry H.
Kolm)やリニア設計者は主張する。「リニアのもつ高速性が鉄道の高速化の実現で減殺されたとしても、リニアには鉄道技術者が知らない特性がたくさんある。急加速、急ブレーキ、急勾配での登坂能力、急カーブでの大きな横傾斜角度、高速道路の自動車間隔のように短い間隔で一車両単位の運転、車両と軌道が非接触であることから可能となる少ない保守費、などがそれだ。もし最終的に,この技術が営業目的で浮上しなくても、21世紀をテーマに2000年に開催される予定の博覧会がこの特許を買うだろう」。 |

TGVは510km/hを達成している。
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1 アメリカのリニア 2
アメリカの高速鉄道 3 輪走行と浮上走行
4 中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
2 アメリカの高速鉄道(High-Speed Rail: Another Golden Age?)
原文:Scientific American 1995/9 訳文:日系サイエンス 1995/11
著者 Tony R. Eastham(カナダのオンタリオ州キングストンにあるクイーンズ大学の電気・コンビューター工学科の教授である。
彼の研究上の関心分野は先端的な陸上交通システム、電子運転システム、機械や電磁気デバイスの設計などである。
1994〜1995年に東京大学の交通工学の客員教授として来日した。)

誰もが無意識に新幹線に抱く敬愛をこめて、私はそれを見つめていた。光の扇(富士)を背にして、音と物をまき散らす流星が怪物のようにぬっと姿を現した。
かっては連日、たえまなく鉄道が論じられていたと言えば(アメリカの)読者は驚くかもしれない。しかし鉄道旅行の黄金時代は、随筆家のモーレイ(Chris-topher Morley)がSaturday Review of Literature紙に寄稿していた1935年がその絶頂期であったといえよう。毎日、数10本の列車がニューヨークのグランドセントラル駅から、シカゴやセントルイスなどに向けて発車していた。大規模な鉄道網が全国に広がり、人、食料品、原料および工業製品が輸送された。英国のゴールデンアロー号、ヨーロッパのオリエント急行そしてアメリカのゼファー号のような列車は、スピード、馬力、快適さだけでなく当時の先進技術の実例になっていた。
それから60年たち,高速道路に加え航空旅行も世界中に普及した。この2つの輸送機関は成長を続けてきたが、今後もさらに発展していくように見える。この発展に関して疑問が起こる。巨大な亜音速の旅客機と”快適な”高速道路を走る新型自動車の世界で、鉄道旅行の役割は何なのだろうか?
多くの先進国では、その答えは鉄進が重要な役割を果たすだろうということである。これらの地域は今まで自動車を当てにしていなかった社会であり、システムと技術の改良により、鉄道輸送を劇的に発展させてきた。現在ヨーロッパとアジアの多くの地域では、200〜600kmの旅では飛行機より鉄道の方が好まれている。新技術による高速鉄道の利用は数10年前に始まっており、将来はより先端的な磁気浮上列車(リニア)も戦列に加わるだろう。鉄製レールと鉄製車輪の鉄道は現在、時速300kmまでの速度で運転されているが、リニアは10年以内に時速400〜500kmの運転を目指して開発と試験が行われている。
アメリカの高速鉄道計画は失敗続きで進歩に取り残されている。都市間と通勤を合わせた鉄道旅客輸送のシェアは現在、全輸送人・キロの2%以下になっている。鉄道貨物は今なお、それなりの輸送をしているが、ここでもトラックが支配的な輸送機関になっている。
しかし、大都市近郊の高速道路における交通渋滞とハブ空港におけるビーク時の飛行制限に、アメリカの交通輸送は脅かされているという認識が高まりつつある。交通輸送と経済成長を維持するには鉄道、航空および道路の問でバランスのとれた共同輸送が必要である。このようなことから鉄道の再生が提案されてきている。数100km離れた都市聞の大量輸送に関して、鉄道の技術改良、システム設計研究、ルート調査および計画実施に参加する事業者の評価に、これまで数千万ドルが費やされてきた。
見直される鉄道
アメリカ以外ではこの種の研究は長い経験の積み重ねで成功している。たとえば日本では、1964年に有名な新幹線が東京〜大阪間で開通した。その後、運転速度は時速210kmから時速270kmになり、東京〜大阪間553kmの所要時間は当初の4時間から2時間30分に短縮されている。新幹線の延長はいまや、東北地方の盛岡から九州の博多までの2045kmになっており毎年2億7500万人を運んでいる。同時に技術開発も続いており、進行中のプロジェクトの中には、JR東日本の「21世紀を目指した最先端のスーパー列車(STAR21)」があり、試作車が時速425kmの最高速度を達成している。
しかし、世界一速い営業列車はフランスのTGV(Train a Grande Vitesse)である。TGV大西洋線の最高運転速度は時速300kmである。パリがTGVネットワークの中心になっており、北に向かってリールと英仏海峡トンネルヘ、西にツールとルマンヘ、そして南にリヨンヘと伸びており、さらにスイスまで運転している。 1992年にスペインのマドリード〜セビリア間にTGVが導入され,1998年には韓国のソウル〜プサン間にもTGVが走ることになっている。
また、ドイツも高速列車ICE(lnter City Express)を持っており、現在この列車はハノーバー〜ビュルツブルグ間とマンハイム〜シュツットガルト間を時速250kmで走行している。日本やフランスと同様に、ドイツの方式も踏切を無くして列車の運行制御に新技術を用いることで、安全性を極限まで高めながら専用軌道を走行している。
スウェーデンの高速列車のX2000は幾分違った方法を採用している。この列車はストックホルム〜イエテボリ問456kmで時速220kmの最高速度を達成しており、曲線では車体を強制的に傾ける車体傾斜装置を使うことによって、既存の線路で高速を実現している。この装置は列車が高速で曲線を通過する時、乗客に作荊する不快な遠心力を軽減するものである。イタリアの高速列車ETR450も、ローマ〜フィレンツエ開で同様の運転をしている。
北米では、高速鉄道は大部分が机上の研究であり、それと世論を喚起するためにヨーロッパの技術のデモンストレーションに限られている。ピッツバーグ〜フィラデルフィア開、サンフランシスコ〜ロサンゼルス〜サンディエゴ間、ダラス〜ヒューストン〜サンアントニオ間のような回廊地域には、高速鉄道が適切であるという報告書は数多く出されている。しかし1つも建設されていない。それは採算がとれそうもないため連邦政府も州政府も補助金を出すのを渋っているからである。
アメリカ旅客鉄道公社(アムトラック)は最重要路線である北東回廊ルートの改良を計画している。このルートの一部分であるワシントンD.C.〜ニューヨーク間はすでに列車が時速200kmで走っており、競争相手のエアー・シャトル便より多くの乗客を輸送している。議会がこの予算を認めれば、1999年完了予定の線路設備の改良後は、新式列車はボストン〜ニューヨーク〜ワシントンD.C.間を時速225kmの速度で走るだろう。アムトラックとの契約を目指しているのは、TGV、X2000およびICE/フィアットの技術である。
リニア(浮上走行)の登場
高速鉄道の導入が有望な理由の多くは既存鉄道を技術改良することで対応できることにある。すなわち、高速鉄道プロジェクトの大半は既存の地上設備を十分使いこなすことによってコストダウンを図っている。これは高速鉄道に代わる革命的な交通機関であるリニアにはない利点である。リニアとは磁力で車両を支持し、案内し、推進する技術の日本語である(英語はマグレブ)。まったく新しい地上設備を必要とすることから、リニアは巨大な輸送需要が見込めるルートでのみ実現の可能性がある。そこでは大きな収入が見込めるので、高価な高架式の走行路の建設もコストの面からは許されるのである。
この障害があるため、リニアは長い揺藍期を過ごしてきた。最初の概念設計はおよそ30年前に、ブルックヘブン国立研究所の二人の物理学者によって発表された。パウエル(James R.PoweH)とダンビー(Gordon Danby)が、超伝導磁石で浮上した時速500km(300マイル)の列車を想定したのである。しかしそれから10年後、その研究開発のすべてがほぼ完全に日本とドイツに移動した。そこではそれぞれ、政府と民間の資金によって技術的に異なる方式に発展した。
リニアでは,走行路に沿って配置した推進コイルに交流電流を流し、そこに車両の磁石を封じこめる波動磁界を作る。推進コイルに流れる電流の周波数を変えることによって速度を制御する。要するに車両の磁石と走行路の推進コイルが1つの同期リニアモーターを構成し、回転運動に代わって直線運動を生み出しているのである。
浮上方式は2つある。 1つはいわゆる磁気反発式で,パウエルとダンビーが最初に提案し、その後日本に継承されている方式である。これは車両に超伝導磁石を搭載し,車両の走行により走行路上の地上コイルに電流を誘導させる。この相互作用であたかも走行路上を浮上走行する航空機のように車両は約15cm浮上する。日本の“リニアモーターカー”は低速では車輪で走行し時速約100km/hから浮上する。
もう1つはドイツで開発された磁気吸引式である。車両に搭載した従来方式の電磁石(常伝導磁石)が、走行路の下面に取り付けられた強磁性体によって上向きに吸引される。この方式は本質的に不安定であり、車両の磁石と走行路の間の空隙を1.5cmに保つには正確な制御が必要である。しかし、静止中でも車両を浮上させておける利点がおり、長距離の高速鉄道だけでなく都市交通や通勤輸送にも使用可能である。世界で最初に実用化されたリニアはこのタイプで、1984年に英国のバーミンガム空港のターミナルと最寄りの鉄道駅間に低速シャトルとして完成している。
日本の磁気反発式は鉄道総合技術研究所が大手企業と共同で開発を進めている。試験車の1つにML500Rがあるが,これは1979年に九州につくられた延長7kmの宮崎実験線で、リニアの世界記録である時速517km/hを達成している。山梨県に建設中の延長42.7kmの、システムの実証を兼ねた試験線で1997年から後継試作車による試験走行が開始される。複線上で実用車の断面をもつ車両の時速500kmでのトンネル通過試験を含めて、実用化に必要な試験が行えるようになっている。プロジェクトの推進派は2005年までに東京〜大阪間にこの方式を完成させたいと願っている。
ドイツの磁気吸引方式リニアである「トランスラピッド」の開発は、1960年代の後半からリニア開発共同出資会社が進めてきた。 1980年代初めにエムスラントに実験線が建設された。直線の両端にループをもった変則的な8の字形をした、延長31kmの走行線は,実物大の車両が運転時と同じ状態で走れるようになっている。先行試作車のTR07は時速400〜450kmの速度を定常的に出し,ほぽ5年間にわたる耐久試験が行われている。 ドイツ政府は最近ベルリンとハンブルグを結ぶ新線にこの方式の採用を決定した。新線の完成は2005年頃の予定である。
(注:2009年時点でドイツ国内のこの計画はまだ進んでおらず、代わりに中国上海の空港アクセス交通として2003/12に実用化されている。)
アメリカのリニア:そがれた活気
アメリカでは1960年代後半から70年代半ばまでの数年間、フオード・モータース社、スタンフオード大学およびマサチューセツツ工科大学で短期間の研究がなされただけで、リニアの開発は放棄された。しかし1980年代後半になってリニアが再び注目されるようになり、宇宙開発技術の中から極低温、パワーエレクトロニクス、空気力学、制御および車両工学といった関連技術をリニアに応用するために、政府によるリニア調査会(National
Maglev Initiative)が発足した。目標はアメリカの需要と条件に合う第2世代のリニア方式の設計であった。
研究を支えていた民間部門に開発意欲が起こらないまま1994年にこの政府資金はつきてしまった。その間に4つの革新的な磁気浮上方式が設計された。どれも製作には至らなかったが、この研究からいくつか興味深い発想も生まれている。その中には同期モーター推進の新方式と、車両と軌道間の空隙をさらに大きくする超伝導磁石方式などがある。 1994年からはアメリカのリニアの研究開発は再び以前の低水準に戻った。
これはリニアが社会の変化の犠牲になった例である。 20〜25年前は,リニアは600kmまでの人口過密地帯を結ぶ技術として最適であると考えられた。それは石油燃料のコストと有効利用に関心が集まっていた時期であり、時速450〜500kmのリニアは航空輸送に十分対抗できると見られていた。
ここで注意すべきことは最高速度がリニアより幾分低い“車輪とレール”の列車が存在するということである。この従来方式の鉄道高速化は多くの場合より経済的に実現できる。20〜30年前には車輪とレールの実用上の最高速度は時速250km程度と考えられていた。しかし高速鉄道は運転速度が時速300kmに速するまでに技術が進歩してきた。これらは車輪とレールの相互作用、空気力学そして高速走行時に架線から集電する技術が進んだからである。さらに衝撃的なのは車輪式の列車がなんと時速520kmの速度で走ったことである。これはリニアの最高記録を僅かだがオーバしている。この速度で旅客列車が走ればよいと主張する人はいないが、時速350kmは技術的にも経営的にも可能であると考えられる。
このようにリニアの速度と到達時分の利点は以前ほど魅力的ではなくなっている。最適な速度の車輪とレール方式に対して、リニアの速度向上効果は20〜30%程度であろう。航空輸送に勝てるような大きな輸送需要があるルートに対し、高速鉄道でなく基本的に新しいこの輸送技術をあえて選択する余地を持つ国はいくつあるだろうか。
もちろん、より高速のリニアであれば魅力が増す。しかし、このレベルの速度の主たる限界要素の1つは空気力学である。空気抵抗に打ち勝つのに必要な出力は速度の3乗で増加し、最も大きな騒音源の風切り音は出力の6乗で増加する。列車のすれ違いやトンネルヘの進入、進出時に引き起こされる動力学的な問題は速度とともに大きくなる。この対策として真空あるいは半真空のチューブ内にリニアを走らせることが提案されている。
世界に広がる高速鉄道
ニューヨーク、ロサンゼルスそして海の向こうの都市をこのようなチューブで結んだ究極の世界全体の輸送方式が数年前に提案されている。最高速度は時速2,000km/h以上であり、地球の引力を車両の加速と減速に利用して、駅と駅の間を下って上るようになっている。トンネルの建設と保守のコストを考えると、この構想は夢物語に終わってしまうと最後に記されている。
ニューヨーク〜ロサンゼルス間の所要時間を2時間にするには数10年かかるだろうが、リニアにとっても車輪とレールの鉄道にとっても重大な変化がこれから起こるだろう。 10年先には長距離のリニアの営業路線が実現するかもしれない。一方、高速鉄道の速度と快適性は着実に高まっていくだろう。ヨーロッパでは高速鉄道網が徐々に広がっていくだろう。同時に日本の整備新幹線の完成と韓国、台湾および中国の新線を含め、アジアでさらに多くの高速鉄道が建設されるだろう。
新しい高速鉄道技術では、アメリカは明らかに先導者ではなく追随者である。しかし、アメリカ政府は北東回廊のプロジェクトを始めることで、鉄道旅客輸送の再生が必要であることに気づくに違いない。たぶんそのためには新たな石油危機か、経済成長を妨げるような道路や空港の混雑といった何らかの要因が必要だろう。
テレビ会議とその他の通信手段は旅行の必要性を減らし、時間と金を節約するだろう。しかし、そのような通信手段でビジネス旅行の伸びが鈍るという確実な保証はない。ハイテク列車はアメリカにもやってくる。それには必要性と、より好ましい経済環境があるかどうかが条件である。通信は次善の策で,最善の策ではない。
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1 アメリカのリニア 2
アメリカの高速鉄道 3 輪走行と浮上走行
4 中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
3 時速300km/hでの車輪走行と浮上走行
八リソン(John A.Harrison)著 パーソンズ・ブリンカーオフ・クエイド&ダブラス社 新しい鉄道は高速、超高速、磁気浮上(リニア)の3種類に分けられる。高速鉄道はアメリカのアムトラックの北東回廊のように、従来の“鉄の車輪とレール”の技術を用い、最高速度は時速200〜240km/hの範囲である。超高速鉄道は時速290〜350kmの範囲で、車輪とレールの改良技術を用いている。高速での乗り心地が快適であるように、曲線の少ない線路が必要である。フランスのTGV、ドイツのICE、日本の新幹線などはすべて超高速鉄道である。
リニアは既存の鉄道とはまったく異なる。これは走行路に沿って車両を浮上、案内、推進させるのに電磁気力を用いる。目標速度は時速320〜500kmである。ドイツのトランスラピッドと日本のMLUが高速磁気浮上技術の実例であるが、ドイツ方式が中国上海の空港アクセスで現時点では世界で唯一実用化された。これをさらに拡大するのか、高速鉄道にするのか中国の今後の動向が注目されている。磁気浮上の特徴は同期リニアモーターの使用で、走行路の推進コイルに電気を供給して、そこに回転力ではなく推力を生じさせることにある。
高速の磁気浮上方式には磁気吸引式と磁気反発式の2つがある。 ドイツのトランスラビッドで用いられている磁気吸引式(下図の左)は、車両に取り付けた電磁石と走行路の下側の磁石の吸引力を利用している。日本のMLUに用いられている磁気反発式(下図の右)は,超伝導磁石を基本にしており、これで磁気吸引式より10倍大きい空隙を生みだしている。空隙が大きいと、走行路の施工精度を緩くできる利点がある。しかし現時点では磁気反発式は磁気吸引式より乗り心地が悪いため、さらに研究開発が必要である。
高速鉄道とリニアの比較 リニアの2つのタイプ
| 高速鉄道 |
リニア |
| 近い将来、時速330km/hが計画されている |
営業運転での最高速度は時速400km/h |
| 高速化のために曲線のない新線が必要だが、都市部での低速走行では既存の線路が使用できる |
地上設備の新設が必要。建設費は高速鉄道よりフ高いが、保守費はたぶん低い |
| 時速260kmの速度での騒音レベルは線路から25m離れた場所で85〜90デシベルである |
騒音レベルは同一速度の高速鉄道と同じかそれ以下、車輪騒音がないため低速ではより静か |
| 40年間の営業実績がある |
高速で営業中の路線はない |
| 座席当たりのエネルギー消費量は磁気浮上鉄道の最高速度の場合と同等である |
全体的にエネルギー消費は高速鉄道より少ない |
| 出典:アメリカ議会技術評価局 |
高速鉄道より加速力が大きく、急な勾配を登ることが可能 |
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米 鉄道で経済再生へ(2010/1/24 読売朝刊)
低公害で大量輸送 再整備で雇用創出
エネルギー価格の上昇や環境意識の高まりを受け、自動車王国の米国で、低公害で大量輸送が可能な鉄道の復権が進んでいる。オバマ米大統領は、来経済活性化の起爆剤として‥目路線の高速鉄道整備計画を打ち出石、今後、急ピッチで準備が進む予定だ。高速鉄道先進国の日本も、政府主導で新幹線技術売り込みのセミナーを開くなど、巨大なビジネスチャンスの獲得に本腰を入れ始めた。(ワシントンで、池松洋)
○売り込み競争
「日本は世界の高速鉄道のリーダーであり先駆者だ」
ラフード米運輸長官は、国土交通省とJRなどが21日にワシントンで開いた初の官民合同セミナーで、新幹線の技術を高く評価し、今春にも訪日して新幹線を視察する計画を表明した。
セミナーでは、国交省の馬淵澄夫副大臣やJR東日本の清野智社長のほか、JR東海や川崎重工業の幹部らが講演を行った。他国の高速鉄道と比較して軽量で省エネ性に優れている新幹線の長所をパネルを使ってアピール。運行管理から保守点検まで「一貫したシステム」を築くことで実現した新幹線の安全性や正確な運行の楡諾に加え、一部で在来線の軌道を走る秋田・山形新幹線の例を紹介し、在来線と新幹線の共存は可能と強調した。 |

自動車が主要な移動手段だったロサンゼルスでも、地下鉄網の整備が進んでいる(昨年11月に開業したリトルトーキョー駅、池松洋撮影) |
セミナーにはラフード運輸長官のほか、米上院議員や多数の鉄道業界関係者など、日米合計で約400人が参加し熱気に包まれた。日本側は「米側の関心の高さは期待以上」(国交省幹部)だったと手応えを感じている。
ただ、米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)も昨年11月に中国鉄道省と提携し、米高速鉄道の受往を目指す方針を表明するなど、ライバル企業も着々と準備を進めている。今後は欧州やアジア企業も巻き込んだ売り込み競争が過熱しそうだ。
○巨大プロジェクト
鉄道復権の起爆剤となったオバマ大統領の高速鉄道整備構想は、米西海岸のサンフランシスコ−ロサンゼルス間など、1,000km以内の大都市間を結ぶ計画だ。総延長約 13,700kmの高速鉄道整備に5年間で130億/(約 1兆2,000億円)の投資を見込んでおり、中国と並び世界最大規模の野心的な巨大プロジェクトとなっている。
オバマ大統領は「老朽化した高速道路や地方道、在来線の鉄道網で米国の成長が妨げられている」と指摘している。巨大事業による雇用剔出効果に加え、交通網の再整備で効率化を進め、米経済の再活性化を促す狙いもある。
○在来線も拡大
米国は20世紀初頭までに世界最大の鉄道網を築いたが |
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20世紀半ばには航空機や自動車に旅客輸送の主役を奪われた。しかし、ここ数年、州政府や自治体の中にも渋滞や公害防止を狙い、地下鉄や路面電車などの在来線の鉄道網を整備する動きが活発化している。
都市間輸送の96%を車に頼り、自動車社会として知られるカリフォルニア州でも、ロサンゼルスで昨年11月、鉄道網が延伸し、市街地の中心部にあるリトルトーキョーにも駅が設けられた。
このほか、首都ワシントンやシアトルなど6都市で市内鉄道網の建設や計画が進められるなど、市民の足としての鉄道の再評価が進んでいる。
実際に鉄道を利用する動きが広がっており、都市間の旅客輸送を行う全米鉄道旅客輸送公社の昨年10〜12月の旅客数は過去最高を更新した。
米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が昨年11月、263億ドル(約2兆4,000億円)で買収した大手貨物鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタフェのマット・ローズ最高経営責任者(CEO)は、読売新聞とのインタビューで、 「トラックと比べて輸送効率の高い鉄道の需要はこれまで堅調に伸びてきた」と指摘。「米経済が回復すれば、鉄道事業の将来は明るい」と強気の予想を示している。
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| 新幹線・リニア技術輸出 JR東海表明 米中心に受注活動(読売
2010/1/26)朝刊
JR東海の葛西敏之会長は25日、都内のホテルで記者会見し、新幹線と超電導りニアの技術を輸出し、海外市場に参入を目指すと表明した。米国に重点を置き、新幹線は4路線を有力候補として受注活動を始める。リニアも3路線を対象に、事業化の可能性を探る。
葛西会長は、「海外にトータルシステムを展開する」と述べ、車両だけでなく、軌道や信号設備などのハードから運行管理・保守点検の技術まで「上下一体」での受注を目指す。技術移転や技術指導でコンサルティング収入などを得るビジネスモデルを確立するが、開業後の運営には携わらない方針だ。
有望視されるのは、新幹線がタンパ〜マイアミ(フロリダ州)、ラスベガス〜ロサンゼルス(ネバダ、カリフォルニア州)など4路線。リニアはボルティモア(メリーランド州)〜ワシントンDC、チャタヌーガ〜アトランタ(テネシー、ジョージア州)などを挙げた。
米国を重視する理由について葛西会長は、「(在来線が高速鉄道と同じ線路を走る)欧州と違い、独立した高速鉄道を導入する余地がある」と説明した。
JR東海はこれまで、海外の高速鉄道事業には消極的だった。新幹線システムの安全性やダイヤの正確性は、「車両と線路、信号や運行のシステムがセットである必要がある」(JR東海首脳)との考えからだった。
高速鉄道を輸出する背景には、自動車や航空機よりも走行時の温室効果ガスの排出量が少ないなど、環境面で世界的に鉄道が見直されている事情がある。
JR東海の営業地域内に車輪方式の新幹線の建設計画はない。技術力を維持するためにも海外展開が得策と判断した。さらに、2025年の開業を目指すリニア中央新幹線の整備ノウハウにも生かせると見込んでいる。 |
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1 アメリカのリニア 2
アメリカの高速鉄道 3
輪走行と浮上走行 4 中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
4 中国の高速鉄道(毎日 2010/1/8 朝刊)
○料金在来線の7−11倍 夢の超特急 高値の花に
中国で高速鉄道網整備が急ピッチで進んでいる。最高時速350キロで走る旅客専用の武漢(湖北省)−広州(広東省)線が昨年12月26日に開業したほか、鉄道省は2020年までに時速200キロ以上の高速鉄道を1万8,000km整備する計画だ。利便性が大幅に向上し、「夢の超特急」の人気は高まるが、在来線に比べて高額の運賃に「金持ち用列車だ」との不満もくすぶる。
【広州で鈴木玲子、写真も】
――中国・武広線乗車ルポ――
「中国が生んだ奇跡」。武漢−広州高速鉄道(武広線)の開業を中国メディアはこう絶賛した。最高時運350キロの高速鉄道は20008年8月の北京−天津線(全長120km)開業に次いで2本目だが、武広線は1,069kmと圧倒的に長い。所要時間も在来線の11時間以上から約3時間に大幅短縮された。カーブを少なくするためトンネルと橋が全線の67%を占める。投資総額は1,116元(約1兆5,600億円)。武広線は北京−広州線の一部で、残る北京−武漢間は12年の完成を目指す。
車両は北京―天津線と同様に、東北新幹線の「はやて」をベースに日本側が技術供与した CRH2型と、ドイツの電機大手シーメンスが技術供与した CRH3型を使用。だが、中国は自国が知的所有権を持つ「国産」と強調する。
途中駅の長沙南駅(湘南省)から広州北駅まで乗車した。調和を意味する「和諧号」と名付けられた列車は長沙梱駅を午後7時半発車。車内の電光掲示板に「時速346キロ」と表示されると乗客から歓声が上がった。列車は、最高時速を348キロまで上げた。中国ではまだ珍しい回転式の座席を向かい合わせにし、家族連れがトランプに興じていた。
午後9時45分、終着の広州北駅に到着した。在来線で約9時開かかるのが1/4に短縮された。同駅は市中心部から北に約30キロ離れているが、今月30日には市南部の広州南駅が発着駅となる。
翌日、広州北駅を見下ろす陸橋に行くと、100人近い見物客であふれていた。地元の広東語より、中国の共通語で話す人が多い。郊外には工場も多く、出稼ぎ者の街であることを実感する。
湖北省出身の李飛さん(58)は駅に停車中の列車をフェンス越しに見つめていた。「あれに乗るとおじいちゃんの古里に帰れるんだよ」と抱き上げた3歳の孫に語りかけた。数年前、息子と共に出稼ぎのため広州に出てきた。毎年、音節(旧正月、今年は2月14日)の帰省を心待ちにしているが、高速列車での帰省は「料金が高すぎて話にならない」とあきらめ顔だ。
広州南駅I武漢駅開の運賃は1等780元(約1万500円)、2等490元(約6,600円)。在来線の最も安い運賃は68元(約900円)で、差は最高で11倍以上だ。高額料金にインターネットには「出稼ぎ者には1ヵ月分の生活費に相当する。乗れるはずがない」との不満も漏れる。
○航空業界割安運賃で対抗 |

武漢一広州開の高速列車の1等車、
回転可能な座席も好評だ

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一方、航空業界は割安チケットで対抗する。飛行時間は列車より短いが、搭乗手続きや空港への移動時間を合めれば高速列車と大差ないためだ。旅行会社の格安チケットには180元(約2,400円)のものも登場した。
中国の専門家の中には「高額運賃などが響いて乗客数が伸びなければ、債務返済に必要な収入は見込めなくなる」との意見もある。しかし、中国共産党機関紙「人民日報」(海外叛)は専門家の分析を取り上げ、「高速鉄道は中国経済の発展を推し進めるエンジンだ」と反論する。
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○世界の高速鉄道
世界各国で高速鉄道の導入が広まっている。40年前から新幹線を走らせてきた日本以外の国として
フランス:TGV
台湾:700T
EU:ユーロスター/タリス
ドイツ::ICE
スペイン:AVE
韓国:KTX
イギリス:IC225
スウェーデン:X2000
イタリア:ユーロスター/トレンビス
中国:CRH/トランスラピッド
アメリカ:アセラ・エクスプレス
ロシア:ヴェラロRUS
などがある。(注:青色はリニア)
これらの国ではさらに延長計画もあり、また新たに導入を検討している国は開発途上国も含め多数に上るという。
この世界の高速鉄道の最新の動向はリニアも含め
三浦幹男/秋山芳弘著の「世界の高速鉄道 ダイヤモンド社 2008/2初版」
に詳しく書かれている。
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○リニアに迫る海外の鉄輪(朝日 2009/4/4)
鉄道の速度競争が激化している。かつて東海道新幹線で世界のトップに躍り出た日本だが、その後、フランスやドイツが相次いで高速鉄道の開発に着手。営業時速320km/hを達成するなかで、日本ではいまだに300km/hどまりだ。
JR 東海が500km/hの超伝導リニア新幹線の建設を急ぐが、フランスの鉄道が574.8km/hの最高記録を出すに及び、「必ずしもリニアでなくてもいいのでは」との声すら漏れ始めている。(三嶋伸一)
「中央新幹線はリニアモーターカーとまだ決まっているわけではない」。ある国土交通省幹部は明かす。中央新幹線とは東京と大阪を甲府、奈良経由で結び、東海道新幹線を補う路線。73年に全国新幹線鉄道整備法基本計画で位置づけられた。同時に、旧国鉄が超伝導磁石によって浮いて走るリニアモーターカーの開発を進めたことで、リニアの路線とみられてきた。実際、JR東海が2025年にリニアによる東京と名古屋間の部分開通を目指している。
にもかかわらず鉄輪の可能性を否定しない国交省幹部は、フランスなどの高速鉄道の最高速度がリニアに迫ってきている点を指摘する。「リニアという未知の技術のリスクまで考えれば、大きな差はない」というのだ。フランスは新幹線の成功を追って、高速鉄道TGVの開発を続けてきた。 |
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07年4月、その最新型が最高時速574.8km/hを記録した。日本のリニアが03年に出した581km/hまであと6km/hに迫る。「鉄輪では300km/h台が限界」とした旧国鉄の技術者らの見通しをTGVはあっさり越えた。さらなる新型車両の開発を進めており、リニアの現記録を超えるのは時間の問題ともみられている。
これに対し、JR 東海の担当部長・寺井元昭さんは「試験コースでしか出せない最高速度はともかく、より現実的な営業速度ではまだかなりの差がある」と自信を示す。TGVの記録は下り坂で出た瞬間的なもので、車両も特別に用意した限界状況で達成されたものだからだ。実際に旅客を乗せて走る営業速度では、TGVが最高320km/hなのに対して、リニアは時速500km/h。しかも、加速性能はTGVの約3倍あり、それだけ最高速度を長く続けることができる。すでに限界に近いTGVに対し、リニアはまだまだ速度を伸ばせる潜在力がある。
ただ、専門家はリニアについてもさまざまな課題を指摘している。何よりまだ営業実績がなく、新幹線並みの過密ダイヤを毎日、続けていけるか分からない。山梨にある実験線では最大5両編成しか走っていない。JR 東海は13年度末までに実験線を延伸して12両編成を試し、整備や点検技術の向上を図るとする。最大の課題は経済性だ。日本と違う方式のリニアモーターカー「トランスラピッド」を開発するドイツは08年、ミュンヘンでの実用路線の計画を中止した。建設費が予想以上に膨らむことが分かったためで、これでドイツでの建設は難しくなったという。
JR東海は東京と名古屋間の事業費を5.1兆円としているが、南アルプスに長大なトンネルを掘るうえ、都市部は大深度地下を掘るしかなく、これだけでできるのか疑問視する声は多い。もし中央新幹線ルートをTGVの新型車両が目指す営業速度360km/hで走れば、1時間40〜50分とみられている。リニアとの差は40分余り。「時間の差は大切だが、最終的には運賃がどれだけになるかだ」とみる専門家もいる。
世界に遅れる日本の壁
一方、リニアモーターカーを実現することができなければ、日本の鉄道は世界の速度競争で立ち遅れる危険が追っている。JR東日本は2月、東北新幹線に11年春に投入する新型車両「E5系」のデザインを発表した。最高営業速度でTGV を40km/h超える時速360km/hを目指したが、発表値は320km/h。TGVと同じにとどまった。「騒音などの環境基準のハードルを越えられなかった」。開発に当たったJR 東田本研究開発センター次長の渡辺清一さんは説明する。
新幹線の環境基準は住宅地域で70db以下。これに対し、フランスでは計測方法が日本と違うため、90db前後でも基準を満たす場合もある。渡辺さんは説明する。「TGVを超える速度はいつでも出せるが、日本で走るにはさらなる技術開発が必要だ」。欧米よりも厳しい環境基準は、市街地を走ることが多い日本ならではの事情だ。JR東日本では、台車をカバーで覆って転勤音を減らし、車体の凹凸をなくして風切り音を減らした。最大の騒音源がパンタグラフ。その本数を1本にまで減らし、金具のすき開からビスの頭に至るまで、徹底した対策を施した。それでも今回、クリアできなかった。
東海道新幹線では、96年に実験車両が443km/hの国内最高速度を出したが、その後は伸びていない。営業速度は相変わらず最高270km/hのまま。64年開業の東海道新幹線はカーブがきつくて速度が出しにくい。加えて1時間に片道最大14本という世界でも類を見ない過密ダイヤが速度を抑える要因となっている。速度を上げるほど、緊急時にプレーキをかけた場合の停止距離は延びる。「これ以上引き上けると、14本入らなくなる」。JR 東海の担当部長・上野雅之さんは指摘する。
こうしたなか、川崎重工業は最高営業速度350km/hの新型車両「efSET」を09年度中に開発すると発表した。
新幹線を造ってきた同社がそのノウハウを投入し、騒音規制が緩やかな海外向け専用とすることで、TGV 以上の速度を目指す。川崎重工業がこうまでして海外を目指す背景には、世界の高速鉄道が350km/h以上を目指すなかで、国内だけでやっていては取り残される心配があるからだ。
「今後、鉄道需要が伸びるのは中国やインドなどのBRICS」。世界の鉄道事情に詳しい鉄道コンサルタントの佐藤芳彦さんは指摘する。「海外へ車両を売り込むときに最もPRしやすい性能が最高速度なのです」。TGVが新幹線のみならずリニアモーターーカーとすら速度競争を繰り広げるのは、しかたかな販売戦略があるからだ。「車両開発がJRなどの鉄道事業者主体の日本では、海外への売り込みはまだこれからです」。世界に遅れつつあるのは技術だけではない。
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アメリカの高速鉄道 3
輪走行と浮上走行 4
中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
5 カリフォルニアの高速鉄道
○ 2009/1/29の最新の読売朝刊ですが、JR東海葛西会長はアメリカに新幹線の売込みにでかけた記事が掲載されています。昨年、彼は東京〜名古屋〜大阪のリニアを自社で5兆円を出して建設することを発表しています。日本ではリニアを、アメリカでは新幹線をPRしていますが、彼はどちらの方が本当はいいと考えているのでしょうか?
昨年4月台湾新幹線に読売旅行のツアーで乗りました。日本の新聞ではこの開発にJR東海が支援していると報じられていましたが、電車の運転は全員TGV退職者のフランス人だという日本語のビラが車内で配られました。
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○ 新幹線など売り込み合戦
【ロサンゼルス=飯田達人】
米カリフォルニア州で、サンフランシスコやロサンゼルスなどを最高時速350km/hで結ぶ高速鉄道が実現に向けて動き出している。州住民投票で建設費の一部となる州債の発行が承認されたことや、オバマ政権が環境分野の公共事業への投資を重視していることも受けて、日本の新幹線など各国による売り込み合戦が本格化し始めている。
「新幹線は車や航空機に比べ、1人当たりの温室効果ガス排出量が圧倒的に少なく、地球に最もやさしい」
ロサンゼルスで26日に開かれた環境国際会議で、JR東海の葛西敏之会長が熱弁をふるった。ライバルとなる仏高速鉄道TGVなど欧州勢を意識し、「欧州の高速鉄道に比べ、新幹線は車体が軽く、安全性、耐震性にも優れている」と、世界に誇る新幹線技術を強くアピールした。
カリフォルニア州は2010年春までに採用する運行システムを決め、11年にも着工する。20年までの1期工事で、サンフランシスコとロス南部のアナハイムまでの750kmを開通させ、約3時間で結ぶ予定だ。さらに、30年までの2期工事で、北は州都サクラメント、南はサンディエゴまで延ばす計画だ。
1期工事の総工費約330億/(約2兆9000億円)のうち、99億5000万/(約9000億円)を州債発行で賄うことが昨年11月の住民投票で決まった。
同州は都市間輸送の96%を車に頼り、4%は航空機で、鉄道は1%にも満たない。環境対策に熱心なアーノルド・シュワルツェネッガー知事は「大気汚染が改善され、道路の渋滞も減る」と特に建設に意欲的だ。
不況の影響で同州財政は極めて厳しい状況にあるが、オバマ大統領が環境に貢献する公共工事に予算を重点配分する意向を示しており、州は連邦政府からの手厚い支援に期待を寄せている。
○ 2008/10/21読売夕刊
JR東海の現在の葛西会長、松本社長はどちらも法学士です。 |
○ 10年前に中国の朱首相来日時の新聞記事(2000/10/17
読売朝刊)
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中国高速鉄道 リニアに関心――朱首相、実験線に試乗
中国が検討中の高速鉄道(中国版新幹線)計画を巡って、日本と中国側の思惑の違いが表面化している。朱鎔基・中国首相は十八日、山梨県のリニアモーター実験線に試乗、中国の高速鉄道にも「リニア方式」を採用することに関心を示しているとされる。
一方、日本側は、「新幹線方式」での技術供与には応じる姿勢だが、日本のリニア技術の供与には消極的だ。日本は中国版新幹線を二十一世紀の日中友好のシンポルにしたいと期待しているが、鉄道の方式選定までには、紆余曲折がありそうだ。(佐藤公寛)
日本側「新幹線方式に」
中国版新幹線は、北京〜上海間の1300kmに、新たな旅客専用鉄道を建設する。最高時速350km/hで、所要時間は四時間半。現在運転中の鉄道よりも所要時間を約十時間短縮できる。中国側は計画を正式決定した上で、事業化調査を行い、海外からの技術供与などについて国際入札を実施する方針で、日本や欧州勢などの入札参加が想定されている。
そこで、鉄道の方式に、日本の新幹線のように線路上を鉄の車輪が走る「鉄輪方式」と、軌道から浮く「リニア方式」のうち、どちらを中国側が採用するかに焦点が集まっている。
中国側は今年六月、ドイツとの間で、上海市中心部と浦東国際空港を結ぶ30〜40km区間で、ドイツ方式のリニアの事業化調査着手に合意しており、関係者の間では、北京〜上海間もリニア方式に傾くのではとの憶測も出ている。
これに対し、森田運輸相は、「実験中の日本のリニア技術を中国に供与することはない」としている。
北京〜上海間の沿線人口は三億二千万人で、東京〜博多間の約四倍もある。同省は車両の大型化などが容易な新幹線の一時間あたりの輸送能力は約一万人で、リニアの二倍もあり、現状のリニアの技術では、これだけの大量輸送には適していないと主張している。
また、リニアの技術が軍事転用される懸念がある、とも言われている。
「どの部分が軍事転用される恐れがあるのか、詳細は把握していない](運輸省首脳)
というが、一般に、ロケットの発射台や、航空母艦から航空機を発進させる技術にリニアを応用することも考えられるという。
もちろん、日本側は中国が高速鉄道を整備すろこと自体には期待をかけている。高速鉄道がないまま、中国でモータリゼーションが進めば、酸性雨など大気汚染の影響を日本が受ける懸念があるためだ。運輸省は「技術協力をするにしても、中国の国内手続きで鉄道方式が採用されると決まってからの話で、日本政府が頭をドげて新幹線方式の採用をお願いするものではない」(運輸省首脳)としているが、中国側の出方が読みきれない中で、対応に苦慮しているのが実情だ。
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アメリカの高速鉄道 3
輪走行と浮上走行 4
中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
6 羽田−成田リニア
○気になる!羽田−成田リニアの実現は(2009/4/21
読売)
成田・羽田両空港をリニアモーーターカーで結ぶ構想を、神奈川県の松沢成文知事と千葉県の森田健作知事が相次いで打ち出した。
23日(2009/4/23)の8都県市首脳会議(首都圏サミット)で説明し、秋には共同研究の着手を提案したい意向だが、現在90分以上かかる所要時間を約15分に短縮しようというこの構想、果たして現実のものとなるのだろうか。
「国際競争力を高める国家プロジェクト。決して無駄な公共投資ではない」。
14日の定例記者会見で、リニア構想の調査結果を発表した松沢知事は、実現可能性について問われると、声を一段と強めた。
神奈川県の構想するリニアは、用地買収が必要ない大深度地下を走り、千葉、東京臨海副都心を通る約80kmを時速300km/hで結ぶ。
建設費は1兆3000億円。両空港を一体的に運用し、首都圏空港の機能を強化するのが狙いという。
リニア構想は2007年の知事選の公約に盛り込まれた。当時の選対幹部は、その理由を、「リニア実用化の基盤技術が確立した」と国が評価するなど、「単なる空想ではなくなった」ことや、「県政の課題でなくとも、政治家として発言していくことが重要と判断したから」と説明する。
知事選で同様にリニア構想を公約に掲げた森田知事は、衆院議員時代に羽田を選挙区としたことが発想のきっかけだったという。 |
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構想の背景にあるのは、一東アジアで大型空港の整備が進み、両空港の地位が下がっているとの危機感だ。
現在行われている拡張工事が終わっても、約10年後には再び発着容量が限界に達すると予測されており、「このままでは国際ハブ空港の立場を奪われる」(神奈川県地域政策課)という。
成田・羽田リニア構想は、最近、ほかでも取り上げられ、今年3月の自民党政務調査会の中間提言や、1月の公明党太田代表の発言にも、産業基盤強化策や景気対策として登場する。
ただ、建設費の負担や事業主体をどうするか見通しは立っていない。松沢知事は「自治体では難しい」、森田知事も「すぐに実現できるとは思っていない」。
東京都の石原慎太郎知事は「需要はどれぐらいあるのか」と、疑問を投げかける。
国土交通省は「事業規模は数兆円。現段階での実現は困難」との立場だ。成田空港と東京・日暮里を36分で結ぶ成田新高速鉄道が10年春に開業予定で、同省はさらに両空港間を50分台に短縮する検討に入っている。
新藤宗幸・千葉大教授 (行政学)は「政治家が夢を語るのは悪いことではないが、行政の長であれば、事業主体や費用負担などを明確にしてから提案すべきだろう」と話す。
○「羽田に新幹線」構想(2009/12/28 読売朝刊)
前原国土交通相は27日のフジテレビの番組で、羽田空港へのアクセスを良くするため、東海道新幹線の乗り入れ構想をJR東海に打診したことを明らかにした。
JR東海は運行ダイヤの制約などを理由に断ったというが、前原国交相は「まだあきらめたわけではない」と、実現に向けた検討を進める考えを示した。
関係者によると、前原国交相の構想は、羽田空港と数キロ離れた新幹線の車両基地(東京都品川区八潮)から線路を延ばし、空港付近に新駅を設けるというものだ。
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1 アメリカのリニア 2
アメリカの高速鉄道 3
輪走行と浮上走行 4
中国の高速鉄道
5 カリフォルニア 6 羽田成田 7
JR東海リニア
7 JR東海のリニア
○リニア 東京−名古屋「40分」 (読売 2009/6/22)
JR――安い!速い!直線で
長野県――経済活性化 迂回を
JR東海が首都圏−中京圏で2025年に開業を目指すリニア中央新幹線(最高時速500キロ)のルート選定作業が本格化してきた。JR東海は、候補の3ルートのうち南アルプス直下を貫通する「直線ルート」の建設費が最も安いとする試算をまとめるなど、直線ルートの優位性を強調している。これに対し、長野県などは、迂回ルートの建設が地元経済の活性化につながると主張しており、両者の″綱引き″は激しさを増してきた。(中部経済部中村紘子、経済部 山下福太郎)
ルート調整本格化
JR東海は18日、南アルプスを北へ迂回して伊那谷を通るル−トの建設費が5兆7400億円、木曽谷を通るルートが5兆6300億円になるとの試算を公表した。これは、07年12月公表した直線ルートの建設費(5兆1000億円)を1割以上も上回り、差額は同社の09年3月期の税引き後利益(1260億円)の4〜5年分にあたる。 |
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迂回ルートの建設費が高いのは、直線ルートより長い分、軌道建設や用地買収の費用がかさむためだ。1日当たりの運行本数を一定とした場合、往復に要する時間が長いためより多くの車両を確保する必要があり、費用も増えるという。
JR東海が直線ルートに傾いているのは、迂回ルートは地上走行(非トンネル)区間が長く、「用地買収に時間がかかって計画が遅れる恐れがある」(金子慎常粉)という面もある。同社の長期債務残高はピーク時の25年度に4兆9000億円に膨らむ見通しで、開業が遅れれば返済計画に狂いが生じかねない。
JR東海は、 一連の試算結果を「判断要素になる客観的なデータ」(松本正之社長)として自治体などに示し、直線ルート建設への理解を求める考えだ。
一方、首都圏と中京圏に置くターミナル駅以外の「中間駅」について、JR東海は、沿線の神奈川、山梨、長野、岐阜の4県に1駅ずつ設置する方針を打ち出した。同社は「1駅止まれば6分のロスが生じる」としており、東京―名古屋を最速40分で結ぶというリニアのメリットを生かすためには駅の数をなるべく少なくしたいという思感がある。
また、数百億円規模とされる駅の建設費は全額、地元負担を求めている。「運営はJR東海が行うので、駅が増えれば、人件費や修繕費などの維持・運営コストが毎年かかる」(JR関係者)という不満が根強いからだ。今後、設置場所を含めた沿線自治体との調整が焦点となる。
沿線自治体 駅誘致へ動き
ルート沿いの自治体の間には、同床異夢の面もうかがえる。
長野県の村井仁知事はJRの試算について、「巨大事業は当初の推計からふくらむケースも多く、評価しようがない」と述べ、建設費でルートを決めることをけん制した。長野県は1989年、試算で割高とされた伊那谷ルートを要望していくことで県内の関係市町村を一本化している。
直線ルートならリニアが走らない諏訪市の山田勝文市長も、「都市と地方都市をどう結ぶかを一番に考えるべきで、直線との差額負担に国の関与もあってしかるべきだ」と語る。
一方で、直線、伊那谷いずれのルートも通る飯田市の牧野光朗市長は「早期着工、飯田駅設置を訴えてきた。(試算で)数字が示され、計画がより具体的になってきた」と前向きに受け止める。
飯田市と東京とを直接結ぶ公共交通機関は、高速バスだけ。4時間以上かかり、リニアは地元の悲願。飯田商工会議所の宮島八束会頭も「いかに安く、短時間で建設できるかでルートは決まる」と早期決着に期待を膨らます。
こうした温度差に、村井知事は「どう調整したらいいのか、悩んでいる」と複雑な胸中を明かした。
山梨県は、営業線として活用される大月−都留間のリニア実験線の延伸工事も始まり、県内ルートの大半は決まっている。横内正明知事は試算発表を受け「ルートは長野で重要な論点」と隣県を思いやる一方で、「早期に円満な調整を期待する」とコメントした。
山梨での関心はルートより駅に移っており、「峡中」「郡内」など4地域が協議会をつくって駅誘致に名乗りをあげる。
これに伴い、200億〜300億円とされる駅建設買の地元負担をどう賄うかが課題となる。横内知事は、「県民を挙げてリニアに協力してきた。見返りに、建設費の一部をJRに負担させたい」と話している。
神奈川県でも駅の綱引きが始まっている。相模原市の加山俊夫市長は「具体的な場所について言う段階ではない」と慎重だが、JR相模原駅とJR・京王線橋本駅が候補地として浮上し、自治会などが誘致を求めている。岐阜県は7月にも、駅が設置される可能性が高い県東部の5市や観光協会などが研究会を設置する。駅の位置や観光などへの波及効果を話し合う。リニアを巡る自治体の動きは、試算が出たことで加速しそうだ。(長野支局中島健太郎、甲府支局 小谷毅彦)
リニア中央新幹線開業に向けた動き
1973/11 全国新幹線鉄道整備法(全幹法)で「中央新幹線」を基本計画に決定。東京都−大阪市の約500キロで、甲府市、名古屋市、奈良市を経由
1997/04 JR東海などが山梨実験線で超伝導リニアの走行実験を開始
2005/03 国交賞省の実用評価委員会が「実用化の基盤技術が確立した」と評価
2007/12 JR東海が東京−名古屋間を自己負担で建設すると決定
2009/06 JR東海が3ルート別の建設費公表。沿線自治体と本格的協議入り
○リニア新幹線 直線ルートが需要最多 JR東海試算の公表
(読売朝刊 2009年7月22日水曜日)
JR東海は21日、首都圏―中京圏で2025年の開業を目指すリニア中央新幹線の輸送需要(利用人数と乗車距離をかけ合わせた数値)について、南アルプス直下を通通する「直線ルート」が最も多いとする試算結果を公表した。
南アルプスを迂回する2ルートは直線より需要が7〜9%減るとしている。
一方、路線維持や設備更新費用は、直線ルートが最も少ないとした。
JR東海は、建設コストが最も少なく済むとして直線ルー卜を主張し、長野県など沿線自治体の一部は迂回ルートを要望している。
松本正之社長は21日記者団に対し「私たちは直線ルートを前提に進めていかねばならない」と改めて強調した。
○首都圏−名古屋間リニア2014年にも着工 R東海社長
(読売夕刊 2009/12/24木曜日)
JR東海の松本正之社長は24日、2025年に首都圏−名古屋市間の開業を目指すリニア中央新幹線について、2014〜15年に着工する考えを明らかにした。
JR東海が着工時期に言及したのは初めて。
今後、ルート選定や中間駅の設置場所などについて沿線自治体との調整を急ぐ構えだ。
松本社長は同日、リニア中央新幹線の需要予測、建設費用などを盛り込んだ調査報告書を前原国土交通相に提出した。
報告書では建設ルートを特定せず、実現可能な3ルートの建設費などの試算結果を列挙している。
だが、松本社長は、建設費が安く、開業後の所要時間が最も短い
「南アルプス直下を貫通する直線ルートしか取り得ない」
と述べ、沿線自治体との交渉が難航する可能性がある。
直線ルートの場合、東京都−名古屋市間は、所要時間が最短40分、中間駅設置を含めた建設費は5兆4300億円。
JR東海側による建設に向けた事前手続きは一区切りを迎え、国交省は今後、JR東海をリニアの営業・建設主体として指名するほか、整備計画などを決める手続きに入る。
○リニア新幹線開業前倒しで神奈川−山梨間先行か JR東海会長表明
(山梨日日新聞 2010/1/9)
JR東海の葛西敏之会長は8日、2025年に東京−名古屋間で開業を目指しているリニア中央新幹線で、一部区間の開業時期を繰り上げる考えを明らかにした。施設整備が整った区間からの開業を示唆していて、神奈川−山梨間が有力とした。山梨県内では上野原市秋山−笛吹市境川町(42.8km)のリニア実験線が13年度中に完成する見込みになっている。実験線区間は営業路線としての活用を想定していることから、県内が先行開業の対象となることがほぽ確実になった。
葛西会長は、名古屋市内で聞かれた中部経済界の賀詞交換金で記者団に対し「部分開業は初めからの既定方針。可能な区間から開業する」と表明。最も可能性のある区間として神奈川―山梨間を挙げた。開業の具体的な時期については明言を避けた。
JR東海の広報担当者は「経営面を考慮した際に、路線整備を終えたところから順次開業した方がメリットが大きいとの考えがある」と、葛西会長の発言趣旨を説明している。
リニア中央新幹線の開業に向けては、1997年から山梨県都留市のリニア実験線先行区間(18.4km)で、走行試験が行われている。2008年からは笛吹市や上野原市などの実験線一般区間(計24.4km)で、延伸工事に順次着手。現在、JR東海と独立行政法人鉄道・運輸機構が、10工区に分けて工事を担当し、9工区で着工済みとなっている。
JR東海は実験線の全線完成を13年度末までと設定。東京1名古屋間の開業目標より12年早くガイドウエー(鉄道のレール部分にあたる)などの整備が整う見通しだ。
一方で、国は実験線整備に当たり、「将来的な営業路線への転用を前提とする」としているため、県幹部は「先行開業となれば、対象区間になり得る」との見方を示した。 |
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リニア中央新幹線をめぐっては、JR東海が昨年12月に東京−大阪間の建設に向けた最終報告書を国に提出。14〜15年には着工し、25年に東京−名占屋間で開業する方針を示している。
ルートは国土交通省が交通政策審議会からの提言を受けて最終的に決心ける。ただ、南アルプスの迂回ルートを要望する長野県との調整が難航。JR東海は南アルプスを貫通するルーートの優位性を強調しているが、今後も長野県との協議を続けることにしている。
一方、JR東海が「一県一駅」としている中間駅の設置場所をめぐって、山梨県内では4地域の市町村が駅誘致に名乗りを上げている。開業時期が早まることで、市町村の国や県に対する要望活動などがさらに活発化することが予想される。
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