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第5編 相続 第1章 総則 第882条 相続は、死亡によつて開始する。 第883条 相続は、被相続人の住所において開始する。 第884条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知つた時から五年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様である。 第885条(1)相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する。但し、相続人の過失によるものは、この限りでない。 (2)前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によつて得た財産を以て、これを支弁することを要しない。 第2章 相続人 第886条(1)胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。 (2)前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。 第887条(1)被相続人の子は、相続人となる。 (2)被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その相続権を失つたときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。但し、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。 (3)前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その代襲相続権を失つた場合にこれを準用する。 第888条 削除 第889条(1)左に掲げる者は、第八百八十七条の規定によつて相続人となるべき者がない場合には、左の順位に従つて相続人となる。 第一 直系尊属。但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。 第二 兄弟姉妹 (2)第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合にこれを準用する。 第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、前三条の規定によつて相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。 第891条 左に掲げる者は、相続人となることができない。 一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に在る者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者 二 被相続人の殺害されたことを知つて、これを告発せず、又は告訴しなかつた者。但し、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であつたときは、この限りでない。 三 詐欺又は強迫によつて、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、又はこれを変更することを妨げた者 四 詐欺又は強迫によつて、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、又はこれを変更させた者 五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者 第892条 遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があつたときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。 第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければならない。この場合において、廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼつてその効力を生ずる。 第894条(1)被相続人は、何時でも、推定相続人の廃除の取消を家庭裁判所に請求することができる。 (2)前条の規定は、廃除の取消にこれを準用する。 第895条(1)推定相続人の廃除又はその取消の請求があつた後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によつて、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。廃除の遺言があつたときも、同様である。 (2)家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。 第3章 相続の効力 第1節 総則 第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。 第897条(1)系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。 (2)前項本文の場合において慣習が明かでないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。 第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。 第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。 第2節 相続分 第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、左の規定に従う。 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。但し、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。 第901条(1)第八百八十七条第二項又は第三項の規定によつて相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであつたものと同じである。但し、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであつた部分について、前条の規定に従つてその相続分を定める。 (2)前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定によつて兄弟姉妹の子が相続人となる場合にこれを準用する。 第902条(1)被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。但し、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。 (2)被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定によつてこれを定める。 第903条(1)共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定によつて算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額を以てその者の相続分とする。 (2)遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。 (3)被相続人が前二項の規定と異なつた意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に反しない範囲内で、その効力を有する。 第904条 前条に掲げる贈与の価額は、受贈者の行為によつて、その目的たる財産が滅失し、又はその価格の増減があつたときでも、相続開始の当時なお原状のままで在るものとみなしてこれを定める。 第904条の2(1)共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定によつて算定した相続分に寄与分を加えた額をもつてその者の相続分とする。 (2)前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。 (3)寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることができない。 (4)第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があつた場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。 第905条(1)共同相続人の一人が分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。 (2)前項に定める権利は、一箇月以内にこれを行わなければならない。 第3節 遺産の分割 第906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。 第907条(1)共同相続人は、第九百八条の規定によつて被相続人が遺言で禁じた場合を除く外、何時でも、その協議で、遺産の分割をすることができる。 (2)遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。 (3)前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、分割を禁ずることができる。 第908条 被相続人は、遺言で、分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間内分割を禁ずることができる。 第909条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずる。但し、第三者の権利を害することができない。 第910条 相続の開始後認知によつて相続人となつた者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。 第911条 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責に任ずる。 第912条(1)各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が分割によつて受けた債権について、分割の当時における債務者の資力を担保する。 (2)弁済期に至らない債権及び停止条件附の債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。 第913条 担保の責に任ずる共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、各□その相続分に応じてこれを分担する。但し、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。 第914条 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、これを適用しない。 第4章 相続の承認及び放棄 第1節 総則 第915条(1)相続人は、自己のために相続の開始があつたことを知つた時から三箇月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但し、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によつて、家庭裁判所において、これを伸長することができる。 (2)相続人は、承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。 第916条 相続人が承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを起算する。 第917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを起算する。 第918条(1)相続人は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産を管理しなければならない。但し、承認又は放棄をしたときは、この限りでない。 (2)家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、何時でも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。 (3)家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。 第919条(1)承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、これを取り消すことができない。 (2)前項の規定は、第一編及び前編の規定によつて承認又は放棄の取消をすることを妨げない。但し、その取消権は、追認をすることができる時から六箇月間これを行わないときは、時効によつて消滅する。承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様である。 (3)前項の規定によつて限定承認又は放棄の取消をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。 第2節 承認 第1款 単純承認 第920条 相続人が単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。 第921条 左に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。但し、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。 二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は放棄をしなかつたとき。 三 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかつたとき。但し、その相続人が放棄をしたことによつて相続人となつた者が承認をした後は、この限りでない。 第2款 限定承認 第922条 相続人は、相続によつて得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、承認をすることができる。 第923条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。 第924条 相続人が限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、財産目録を調製してこれを家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。 第925条 相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかつたものとみなす。 第926条(1)限定承認者は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産の管理を継続しなければならない。 (2)第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項、第二項及び第九百十八条第二項、第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。 第927条(1)限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、一切の相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。 (2)第七十九条第二項及び第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。 第928条 限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。 第929条 第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産を以て、その期間内に申し出た債権者その他知れた債権者に、各□その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。 第930条(1)限定承認者は、弁済期に至らない債権でも、前条の規定によつてこれを弁済しなければならない。 (2)条件附の債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従つて、これを弁済しなければならない。 第931条 限定承認者は、前二条の規定によつて各債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。 第932条 前三条の規定に従つて弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付しなければならない。但し、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。 第933条 相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合には、第二百六十条第二項の規定を準用する。 第934条(1)限定承認者が、第九百二十七条に定める公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内にある債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによつて他の債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなつたときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。第九百二十九条乃至第九百三十一条の規定に違反して弁済をしたときも、同様である。 (2)前項の規定は、情を知つて不当に弁済を受けた債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨げない。 (3)第七百二十四条の規定は、前二項の場合にも、これを適用する。 第935条 第九百二十七条第一項の期間内に申し出なかつた債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかつたものは、残余財産についてのみその権利を行うことができる。但し、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。 第936条(1)相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。 (2)管理人は、相続人のために、これに代わつて、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。 (3)第九百二十六条乃至前条の規定は、管理人にこれを準用する。但し、第九百二十七条第一項に定める公告をする期間は、管理人の選任があつた後十日以内とする。 第937条 限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第九百二十一条第一号又は第三号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産を以て弁済を受けることができなかつた債権額について、その者に対し、その相続分に応じて権利を行うことができる。 第3節 放棄 第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。 第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかつたものとみなす。 第940条(1)相続の放棄をした者は、その放棄によつて相続人となつた者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意を以て、その財産の管理を継続しなければならない。 (2)第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項、第二項及び第九百十八条第二項、第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。 第5章 財産の分離 第941条(1)相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後でも、同様である。 (2)家庭裁判所が前項の請求によつて財産の分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があつたこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。 第942条 財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定によつて配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先だつて弁済を受ける。 第943条(1)財産分離の請求があつたときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。 (2)家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。 第944条(1)相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求があつたときは、以後、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産の管理をしなければならない。但し、家庭裁判所が管理人を選任したときは、この限りでない。 (2)第六百四十五条乃至第六百四十七条及び第六百五十条第一項、第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。 第945条 財産の分離は、不動産については、その登記をしなければ、これを第三者に対抗することができない。 第946条 第三百四条の規定は、財産分離の場合にこれを準用する。 第947条(1)相続人は、第九百四十一条第一項及び第二項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。 (2)財産分離の請求があつたときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産を以て、財産分離の請求又は配当加入の申出をした債権者及び受遺者に、各□その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。 (3)第九百三十条乃至第九百三十四条の規定は、前項の場合にこれを準用する。 第948条 財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産を以て全部の弁済を受けることができなかつた場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行うことができる。この場合には、相続人の債権者は、その者に先だつて弁済を受けることができる。 第949条 相続人は、その固有財産を以て相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。但し、相続人の債権者が、これによつて損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。 第950条(1)相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。 (2)第三百四条、第九百二十五条、第九百二十七条乃至第九百三十四条、第九百四十三条乃至第九百四十五条及び第九百四十八条の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、第九百二十七条に定める公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がこれをしなければならない。 第6章 相続人の不存在 第951条 相続人のあることが明かでないときは、相続財産は、これを法人とする。 第952条(1)前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、相続財産の管理人を選任しなければならない。 (2)家庭裁判所は、遅滞なく管理人の選任を公告しなければならない。 第953条 第二十七条乃至第二十九条の規定は、相続財産の管理人にこれを準用する。 第954条 管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、これに相続財産の状況を報告しなければならない。 第955条 相続人のあることが明かになつたときは、法人は、存立しなかつたものとみなす。但し、管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。 第956条(1)管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。 (2)前項の場合には、管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。 第957条(1)第九百五十二条第二項に定める公告があつた後二箇月以内に相続人のあることが明かにならなかつたときは、管理人は、遅滞なく一切の相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。 (2)第七十九条第二項、第三項及び第九百二十八条乃至第九百三十五条の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、第九百三十二条但書の規定は、この限りでない。 第958条 前条第一項の期間の満了後、なお、相続人のあることが明かでないときは、家庭裁判所は、管理人又は検察官の請求によつて、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、六箇月を下ることができない。 第958条の2 前条の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、相続人並びに管理人に知れなかつた相続債権者及び受遺者は、その権利を行うことができない。 第958条の3(1)前条の場合において相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつた者の請求によつて、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。 (2)前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内に、これをしなければならない。 第959条 前条の規定によつて処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。この場合には、第九百五十六条第二項の規定を準用する。 第7章 遺言 第1節 総則 第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない。 第961条 満十五歳に達した者は、遺言をすることができる。 第962条 第四条、第九条、第十二条及び第十六条の規定は、遺言には、これを適用しない。 第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。 第964条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。但し、遺留分に関する規定に違反することができない。 第965条 第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者にこれを準用する。 第966条(1)被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。 (2)前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、これを適用しない。 第2節 遺言の方式 第1款 普通の方式 第967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によつてこれをしなければならない。但し、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。 第968条(1)自筆証書によつて遺言をするには、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印をおさなければならない。 (2)自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力がない。 第969条 公正証書によつて遺言をするには、次の方式に従わなければならない。 一 証人二人以上の立会いがあること。 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。 三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。 五 公証人が、その証書は前四号に掲げる方式に従つて作つたものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。 第969条の2(1)口がきけない者が公正証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述」又は「自書」とする。 (2)前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。 (3)公証人は、前二項に定める方式に従つて公正証書を作つたときは、その旨をその証書に付記しなければならない。 第970条(1)秘密証書によつて遺言をするには、左の方式に従わなければならない。 一 遺言者が、その証書に署名し、印をおすこと。 二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章を以てこれに封印すること。 三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。 四 公証人が、その証書を提出した日附及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印をおすこと。 (2)第九百六十八条第二項の規定は、秘密証書による遺言にこれを準用する。 第971条 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあつても、第九百六十八条の方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。 第972条(1)口がきけない者が秘密証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。 (2)前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。 (3)第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。 第973条(1)成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。 (2)遺言に立ち会つた医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかつた旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書によつて遺言をする場合には、その封紙に右の記載をし、署名し、印を押さなければならない。 第974条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。 一 未成年者 二 推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族 三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人 第975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書でこれをすることができない。 第2款 特別の方式 第976条(1)疾病その他の事由によつて死亡の危急に迫つた者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもつて、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合には、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。 (2)口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。 (3)第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。 (4)前三項の規定によつてした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。 (5)家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。 第977条 伝染病のため行政処分によつて交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。 第978条 船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。 第979条(1)船舶遭難の場合において、船舶中に在つて死亡の危急に迫つた者は、証人二人以上の立会を以て口頭で遺言をすることができる。 (2)口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。 (3)前二項の規定に従つてした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。 (4)第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。 第980条 第九百七十七条及び第九百七十八条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印をおさなければならない。 第981条 第九百七十七条乃至第九百七十九条の場合において、署名又は印をおすことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を附記しなければならない。 第982条 第九百六十八条第二項及び第九百七十三条乃至第九百七十五条の規定は、第九百七十六条乃至前条の規定による遺言にこれを準用する。 第983条 第九百七十六条乃至前条の規定によつてした遺言は、遺言者が普通の方式によつて遺言をすることができるようになつた時から六箇月間生存するときは、その効力がない。 第984条 日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によつて遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事がこれを行う。 第3節 遺言の効力 第985条(1)遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。 (2)遺言に停止条件を附した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。 第986条(1)受遺者は、遺言者の死亡後、何時でも、遺贈の放棄をすることができる。 (2)遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼつてその効力を生ずる。 第987条 遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨を受遺者に催告することができる。若し、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。 第988条 受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、承認又は放棄をすることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第989条(1)遺贈の承認及び放棄は、これを取り消すことができない。 (2)第九百十九条第二項の規定は、遺贈の承認及び放棄にこれを準用する。 第990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。 第991条 受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。停止条件附の遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様である。 第992条 受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第993条(1)遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物について費用を出したときは、第二百九十九条の規定を準用する。 (2)果実を収取するために出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度で、その償還を請求することができる。 第994条(1)遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。 (2)停止条件附の遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様である。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第995条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によつてその効力がなくなつたときは、受遺者が受けるべきであつたものは、相続人に帰属する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第996条 遺贈は、その目的たる権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかつたときは、その効力を生じない。但し、その権利が相続財産に属すると属しないとにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認むべきときは、この限りでない。 第997条 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条但書の規定によつて有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得してこれを受遺者に移転する義務を負う。若し、これを取得することができないか、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、その価額を弁償しなければならない。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第998条(1)不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者が追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責に任ずる。 (2)前項の場合において、物に瑕疵があつたときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物を以てこれに代えなければならない。 第999条(1)遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によつて第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。 (2)遺贈の目的物が、他の物と附合し、又は混和した場合において、遺言者が第二百四十三条乃至第二百四十五条の規定によつて合成物又は混和物の単独所有者又は共有者となつたときは、その全部の所有権又は共有権を遺贈の目的としたものと推定する。 第1000条 遺贈の目的たる物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。 第1001条(1)債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、且つ、その受け取つた物が、なお、相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的としたものと推定する。 (2)金銭を目的とする債権については、相続財産中にその債権額に相当する金銭がないときでも、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。 第1002条(1)負担附遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責に任ずる。 (2)受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者が、自ら受遺者となることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第1003条 負担附遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴によつて減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じてその負担した義務を免かれる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第4節 遺言の執行 第1004条(1)遺言書の保管者は、相続の開始を知つた後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様である。 (2)前項の規定は、公正証書による遺言には、これを適用しない。 (3)封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会を以てしなければ、これを開封することができない。 第1005条 前条の規定によつて遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処せられる。 第1006条(1)遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。 (2)遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。 (3)遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。 第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。 第1008条 相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨を遺言執行者に催告することができる。若し、遺言執行者が、その期間内に、相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。 第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。 第1010条 遺言執行者が、ないとき、又はなくなつたときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によつて、これを選任することができる。 第1011条(1)遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を調製して、これを相続人に交付しなければならない。 (2)遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会を以て財産目録を調製し、又は公証人にこれを調製させなければならない。 第1012条(1)遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。 (2)第六百四十四条乃至第六百四十七条及び第六百五十条の規定は、遺言執行者にこれを準用する。 第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。 第1014条 前三条の規定は、遺言が特定財産に関する場合には、その財産についてのみこれを適用する。 第1015条 遺言執行者は、これを相続人の代理人とみなす。 第1016条(1)遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。 (2)遺言執行者が前項但書の規定によつて第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第百五条に定める責任を負う。 第1017条(1)数人の遺言執行者がある場合には、その任務の執行は、過半数でこれを決する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 (2)各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。 第1018条(1)家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によつて遺言執行者の報酬を定めることができる。但し、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。 (2)遺言執行者が報酬を受けるべき場合には、第六百四十八条第二項及び第三項の規定を準用する。 第1019条(1)遺言執行者がその任務を怠つたときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。 (2)遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。 第1020条 第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、遺言執行者の任務が終了した場合にこれを準用する。 第1021条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。但し、これによつて遺留分を減ずることができない。 第5節 遺言の取消 第1022条 遺言者は、何時でも、遺言の方式に従つて、その遺言の全部又は一部を取り消すことができる。 第1023条(1)前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす。 (2)前項の規定は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれを準用する。 第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を取り消したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様である。 第1025条 前三条の規定によつて取り消された遺言は、その取消の行為が、取り消され、又は効力を生じなくなるに至つたときでも、その効力を回復しない。但し、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。 第1026条 遺言者は、その遺言の取消権を放棄することができない。 第1027条 負担附遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行を催告し、若し、その期間内に履行がないときは、遺言の取消を家庭裁判所に請求することができる。 第8章 遺留分 第1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。 一 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の三分の一 二 その他の場合には、被相続人の財産の二分の一 第1029条(1)遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定する。 (2)条件附の権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選定した鑑定人の評価に従つて、その価格を定める。 第1030条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によつてその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つて贈与をしたときは、一年前にしたものでも、同様である。 第1031条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、遺贈及び前条に掲げる贈与の減殺を請求することができる。 第1032条 条件附の権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第千二十九条第二項の規定によつて定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。 第1033条 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、これを減殺することができない。 第1034条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じてこれを減殺する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 第1035条 贈与の減殺は、後の贈与から始め、順次に前の贈与に及ぶ。 第1036条 受贈者は、その返還すべき財産の外、なお、減殺の請求があつた日以後の果実を返還しなければならない。 第1037条 減殺を受けるべき受贈者の無資力によつて生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。 第1038条 負担附贈与は、その目的の価額の中から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。 第1039条 不相当な対価を以てした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つてしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。 第1040条(1)減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。但し、譲受人が譲渡の当時遺留分権利者に損害を加えることを知つたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。 (2)前項の規定は、受贈者が贈与の目的の上に権利を設定した場合にこれを準用する。 第1041条(1)受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免かれることができる。 (2)前項の規定は、前条第一項但書の場合にこれを準用する。 第1042条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があつたことを知つた時から、一年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。相続の開始の時から十年を経過したときも、同様である。 第1043条(1)相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。 (2)共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。 第1044条 第八百八十七条第二項、第三項、第九百条、第九百一条、第九百三条及び第九百四条の規定は、遺留分にこれを準用する。 |