ワーキングウーマン――脱“負け犬”婚じわり増加、「40までに」が合言葉(生活)

(2005/03/01, 日本経済新聞 夕刊, 11ページより)

経済的自立後に選択
 働く独身女性の間で一月中旬、激震が走った。「未婚、子ナシ、三十代以上」の女性、いわゆる「負け犬」を標榜(ひょうぼう)していた女優の杉田かおるさん(40)が電撃結婚したためだ。意外な展開に予想を裏切られたり、励まされたりした独身女性は多かっただろう。しかし、芸能界に限らず、負け犬の肩書を返上する女性はこのところ目立つようなのだ。
 「周囲はとにかくびっくり。もう結婚しないと思われてたみたい」とほほ笑むのはメーカー勤務の金山志保さん(仮名、35)。二月中旬、結婚式を挙げたばかりだ。実は夏に出産予定で、育児休暇を取得した後は職場復帰し、フルタイムで働こうと考えている。
 転勤もこなし、仕事に打ち込んできた金山さん。結婚願望はあったが、一人で生きていく人生も考えたため、約一年半前にマンションを購入した。しかし昨年、長年交際してきた相手に「子供を産むのは年齢的にそろそろ限界」と切り出したところ、子供好きの彼は前向きに将来を考えるようになった。その後すぐに妊娠がわかり、入籍することにしたという。
 世間を驚かせたのは杉田さんだけではない。元マラソン走者で解説者の増田明美さん(41)は二月結婚、フジテレビアナウンサー、大坪千夏さん(38)も結婚の予定が報道されるなど、最近、三十五歳以上の女性の結婚のニュースが続いている。
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 明治大の安蔵伸治教授(人口学)は「女性が経済的に自立した上で結婚しようと思ったら晩婚化は進む。三十代以上の結婚は相対的に増えていく」と指摘する。二〇〇三年の人口動態統計の年齢別割合では、二十五―二十九歳で結婚した女性は一九九八年に比べ一・八ポイント減少したのに対し、三十―三十四歳は六・七ポイント伸びている。
 三十五―三十九歳と四十―四十四歳の場合は、それぞれ一・九ポイント、〇・四ポイント増えるなど比率は少しずつ高まってきている。
 なぜ、結婚適齢期がずれているのか。一番大きな理由は、結婚したいのにふさわしい人が現れない、というシンプルなものだ。安蔵教授は「男性は年齢が上がるとともに、保守的な価値観に傾きがち。家事や子育てを分担して働きたい女性の考えと合わないことが多いのでは」と解説する。ただ、例外がないわけでもない。
 PR会社に勤める沢田奈津子さん(同、35)は仕事を通じて知り合った男性と一月に結婚したばかりだ。夫は一人暮らしが長く、今のところ家事は進んでこなしている。「彼の家事能力などが低い二十代のころだったら、専業主婦になる女性と結婚したかったかもしれない」と考えている。
 通信会社に勤める館山江美さん(同、40)は昨年五月、職場で一緒に仕事をしていた男性と結婚した。仕事の忙しさをお互い理解しているので、家事は無理なくやっている。
 館山さんは交際を始めてから二カ月で結婚を決断。「不惑前にすべり込みたい、という気持ちもちょっとあった」と明かす。「結婚相手というより、人生のパートナーがほしかった。子供も授かれば産みたい」
 自由な生活を謳歌(おうか)している間は結婚は考えられなかった、と考える女性もいる。沢田さんと館山さんは独身時代に海外旅行や留学生活を満喫。沢田さんは「三十歳を過ぎて、気ままな生活にちょっと飽きてきたので結婚を意識し始めた」と言う。
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 日本青年館結婚相談所の板本洋子所長は「独身だと社会的に信用されない、という時代ではなくなったが、子供を持とうと思ったら結婚するのが今の日本では現実的な選択」。結婚情報サービス「オーネット」を展開するオーエムエムジーが二十五―三十四歳の独身女性に対し昨年八月実施した調査では、結婚したい理由として「子供など家族が欲しいから」と答えた人が四八・八%にのぼった。
 結婚事情に詳しいフリージャーナリストの亀山早苗さんは「以前、結婚適齢期はクリスマスケーキにたとえて二十五歳と言われた。それが大みそかの三十歳にずれた後、医学の進歩に伴い、今は四十歳までになんとかしようと考えている女性が増えている」と解説する。
 「三十代前半は二十代の続きのようなもの。そのころはまだ仕事から逃げたくて結婚したい場合もある」と亀山さん。「三十五歳を過ぎると、先に結婚した友人たちを見て結婚がすべてを解決しないとわかってくる。ただ、出産年齢のリミットもあるので、仕事と私生活を勘案して冷静な判断で結婚に踏み切れるのでは」と分析する。
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 いい相手に巡り合うまでは自分の意志で独身を選ぶが、出産を考えると四十歳までには結婚を決めたい。そんな心の揺れを原動力に、自分にふさわしいパートナー探しに懸命になる人が増えれば、三十五歳を過ぎても結婚適齢期ととらえられることは珍しくなくなるかもしれない。