安達高校研究紀要(2005)
地学部の研究活動(2004年度版)
地学部顧問 渡辺 公一
 
 理科関係者以外で、「地学」と言われても具体的なイメージがわかない人は多いのではないだろうか。しかし、地学=「地球科学」+「天文学」であり、地球や宇宙に関するあらゆる自然科学の分野を網羅している(私としては)魅力的な科目である。テレビの自然科学番組はその多くが地学分野である。どれだけ多いかは私の開設しているblog「cocolog版地学わいわい広場in福島」http://chiwa.cocolog-nifty.com/kow1/ で地学関係番組をどんどん紹介しているので試しにご覧いただきたい(宣伝(^_^;))。
 さて、今年度地学部には、やる気のある生徒が多数入部し、高文連科学専門部会生徒理科発表会(会津)や県北生徒理科研究発表会(福島)でその成果を発表することができた。ここにその活動の概要を紹介したいと思う。
 
研究内容
 
◎新潟県青海石灰岩中の紡錘虫化石の研究
・個体数密度の算出:2年生3名、化石の形態:1年生4名
 
 2003年の夏に私が新潟県と富山県の境から採取してきた、紡錘虫(フズリナ)化石を大量に含む石灰岩を試料として研究を行った。昨年度はこの中に含まれるフズリナ化石の分類に主眼をおいた。その結果5種類(Lepidolina hayasakaiSphaeroschwagerina pavloviTriticites schwageriniformis mosquensisSumatrina longissimaVerbeekina verbeeki)を見いだすことができた。なお研究資料は新潟県フォッサマグナミュージアムの学芸員の方にご協力をいただいた。
 今年度はさらに2つに分けて研究を進めた。一つはこの石灰岩中にフズリナ化石がどの程度の割合で含まれているかを計測するというもので、2年生3人が担当した。計測といっても、もとは堅い石灰岩である。直方体に加工した試料を1mmごとに削りながら塩酸・酢酸で処理しその面の化石数を記録していくという、時間のかかる大変地道な作業であった。研究方法も試行錯誤の連続だったが、なんとか3.5×3.5×1.0cm内にフズリナ化石数は約210個体、および化石本体の占める体積は53.9%と結果を出すことができた。
 もう一つはフズリナ化石の立体構造を確認するというものである。上記の研究でフズリナ化石の形態の把握が不十分であるという指摘があり、それをうけて化石1個体の形を見いだすというものである。作業は同様であるが、断面を数多くとりそれを重ねて1個体を作り上げるというものである。やはり多くの時間がかかりまた試料の紛失などもあって現時点で完成には至っていない。今後の課題として継続研究となった。
 
◎二本松・安達高校周辺の窒素酸化物(NOx)分布
→観測:全員 発表:1年生3名
 
 安達高校地学部では20年来行っている研究である。観測方法は、薬品を含ませたカプセルを観測地に24時間暴露し、吸収された二酸化窒素を比色計で測定するというものである。昨年度までは一般生徒に協力をお願いしてカプセルを配布しデータを集めていたが、残念ながら近年回収率がきわめて低くなってきた。しかしながら今年は部員が大幅に増えたので、部員のみでも広域観測が可能になった。今年度は2回の観測を実施した。なおこの観測では環境省の基準を超える地 ↑観測用カプセル 点はなかった。
・1回目。観測日=2004年7月7〜8日。部員の自宅周辺で観測を行った。しかし観測地点が広範囲にわたり、傾向を見いだすことができなかった。
・2回目。観測日=2004年9月8〜9日。前回の反省をふまえ、安達高校周辺2km以内に観測ポイントを設定し、集中的に観測を行った。JR沿線に比較的高濃度域が分布するようだが、例外もあり、今回の観測だけでははっきりしたことをいうことはできない。今後も同様な観測を継続してデータの収集を進めていく必要がある。
 
◎ペルセウス座流星群観測
→観測:全員 発表:1年生4名
 
 8月12日の夜から13日にかけて、学校に泊まりながら観測を行った。3時間で190個もの流星を観測することができた。公式に基づいて計算し直したところ、1時間あたりの流星数を約100個以上と見積もることができ、まずまずの結果を出すことができた。
結果は以下の通り。
観測時刻 実観測時間 個数 雲量 細微等級 修正F 合計 修正流星数
23:30〜0:30
 
23:30〜23:54 8 3 3 0.21 38.1 107.9
 
23:54〜0:20 22 1.5 4 0.425 51.8
0:30〜1:30 0:35〜1:25 57 1 4.5 0.54 105.5 126.7
1:30〜2:30 1:40〜2:30 55 1 4.5 0.54 101.8 122.2
 
 写真撮影にもチャレンジしたが、撮影できたのは計5個程度であり、目標であった輻射点(流星群放射の中心点)の決定にはいたらなかった。
 今回は全員が初心者であり、また流星数が多いこともあって各流星ごとの細かなデータをとることはできなかった。他の流星群でも観測を繰り返し、記録をきちんとできるようにしていきたい。また、安達高校周辺はそれなりに町の灯りがあり、暗い流星をとらえることが困難であった。光害の少ない適切な観測地を設定し、校外での観測ができるよう準備を進めていきたい。
 
◎月面の写真撮影
研究・発表:1年生3名
 
 月面の様子をとらえるということで、地学準備室の8cm屈折式望遠鏡にデジタルビデオを接続し、写真撮影を行ったものである。満月(8/31)、上弦(9/21)、下弦(11/6)の観測を行った。下弦は夜半過ぎに出てくるので学校に泊まりながら観測を行った。
 プリントアウトした月面写真をクレーターの模様を頼りに貼り合わせていくのだがこれがなかなか難しい。また望遠鏡の操作が大変で、月面の中央付近はどこを撮影しているのかよくわからなくなってしまい、撮影できなかった場所もでてしまった。上弦の時は天気がいまいちで、完全には撮影できなかった。3回目の下弦でようやく100%撮影することができた。
左:上弦(9/21)      中央:満月(8/31)      右:下弦(11/6)
高文連生徒理科研究発表会(会津)の作品展示会より
 
 以上の研究内容は10月3日の文化祭一般公開でも紹介された。「ちがくのススメ」と題し、地学分野の普及とともに普段の研究活動を主な展示内容とすることができたのは、顧問にとっても大変うれしいものであった。
 
指導の感想と今後に向けて
 
 今年度はたくさんの生徒が入部し良い雰囲気作りができた。年度当初、研究発表する生徒だけを会津に連れて行くと宣言したら、ほぼ全員が研究に取り組み成果を出すことができた。例年に比べても充実した活動内容になったと思う。
 現在地学部では継続研究の他、スマトラ沖地震津波の情報収集も始めた。周りの理解のもと、夜を通した天体観測も順調に行うことができている。今後も引き続き部員にはがんばって福島県でも貴重な「地学部」の活動を維持していただきたいものである。
(2005.3.3.)