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 哀しみ

なくした心に何かが残ってた
11月の空に白い線を引いて行った

 

 

紡ぎぐるまが
くるくるまわり
きのうのことや
あしたのことを
思い出す

 

 南風

毎日毎日、月は死に、生まれ変わります。
毎日毎日、太陽は死に、生まれ変わります。
きょうのあなたは、きのうのあなたと同じ人なのでしょうか。
あしたのあなたは、きょう私を愛したことを思い出してくれるのでしょうか。
眠りにつくとき忘れられたことが、目覚めとともによみがえるのでしょうか。

あしたのあなたがきょうのあなたでないのなら、
あしたの私がきょうの私でないのなら、
あしたのあなたとあしたの私が愛し合うことは
まひるに星がきらめくくらい
不可能に近い奇蹟なのではないですか

 

 

 海の中の小道

海の中の小道を沖に向かって
子犬と一緒に歩いて行く老婆

海の中の小道を海の中から
ぞろぞろと歩いてくる遠足の乙姫様

海の中の小道で砂に大きく字を書いて
助けを求めている海蛇

海の中の小道で海の神と陸の神が出会った
ここは誰の小道か?
風はどちらの味方をするでもなく
急ぎ足で通り過ぎた

雨はなぜ降るの
空の神様が海の神様に借りていた水を返すのさ
ほら
雨の中で乙姫様が踊っているよ

夕暮れの空が海に光を返しているよ

遠くの空に立つ光の柱
生まれたての神様が天に帰っていくよ

 


   詩はいつも

詩はいつも
心の岸辺に降りて行って
打ち上げられた言葉を拾う

魂の川上からながれてくる
綺麗で奇妙なことばの流木
拾うかやめるか
それともみんなで眺めるか

こころの裾をぱたぱたさせて
襟や背中にこびりついてる言葉をはがす

詩はいつもそこにあり見つけられるのを待っている

 

 

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  白樺

白樺の皮を剥ぐように
あなたの秘密も剥げないものかしら
でも寒そうな白樺を見ていると
あなたの秘密も剥いではいけないのだと思うの

 

 

  時の葉

時の葉の数を数えて
霜に折れる草の葉の数を数えて
霜柱を踏みながら畦道を行くと
薄茶色の低い山の向こうから
凍るような朝日が出てきた

 

  薬指

左手の薬指が
ピアノの鍵盤をうまく叩けないように
わたしは
あなたのこととなると心が乱れてしまう

 

  モクレン

モクレンの林の中を
下を向いて歩いていた

目の前が白くなった
強い風に
モクレンの林が揺れたのだ

こころの底が明るくなった

 

  坂道

晴れた坂道を下ると
途中で雨が降ってきた
坂道のせいではないのに
坂道がちょっと憎らしかった

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