占師が娘を嫁に出す
ある所に占師が娘と二人で暮らしていました。占師は金をため、娘に嫁入り道具を持たせて嫁に出してやりたいと思っていましたが、占やなんかでは食べるのがやっとで、幾らかの銅銭も残りません。
ある日、占師は娘にあとのことを言い含めて仕事に出かけました。夜になってひとつの村に着きました。占師は庄屋の屋敷を訪ね、「わたしは旅の占師で、こちらの村に泊まりたいのですが宿屋が見つからなくて」と言いますと、庄屋は二十才を過ぎた若者の家に泊まれるようにしてくれました。
この若者は父も母もなく独りで暮らしていました、これという財産はありませんでしたが食べるには困っていません、そして誠実な若者でした。若者は庄屋から回された占師を遠来のお客として粗末な食事ではありましたが丁寧に迎えました。
二人は寝る前にひとしきりのおしゃべりをしました、占師は「わたしはあちこち旅をして、旅先の家や墓などの占をしています」と言うと、若者は「へえ、家や土地を占うのですか、それではわたしのこの家や土地はどうですか」と聞くと占師は「庭に入ってすぐ気がつきましたがこの敷地はいいですよ、前は山で囲まれ後には河が見えて……、あなたはやがて栄えます、その日はそんなに遠くありません」と言いました、すると若者はまた「その日は何時ですか」と聞きました。
占師がすぐきます、みるみるうちです、あせらないほうがいい」と言うと若者は「あせらずにはいられませんよ、わたしはもう二十才を過ぎていますし、父母は早く死に、独りっきりで、幾つになったら所帯がもてるかわかりません」とつぶやきました、占師は「慌てない、慌てない、明日わたしがあなたを占てあげます」と言いました。
翌日、占師は若者に「両親の墓はどこですか」と聞きました、若者が自分の家の墓地に占師を案内すると占師はすぐ「ここはあまりよくありません、わたしがあなたの家の墓地を選んであげましょう。そうすれば運勢は変わります」と言いました、占師は実際にこの辺りを見て回っていましたから、すぐ若者に陽のあたる山の麓が曲がり水を抱えた川の流れの平な所で風を避け陽あたりのいい所を選んでやりました。
「ここを親の遺骨を埋めるお墓にしなさい、百日たたないうちに、人に媒酌を頼まなくても、娘が訪ねてきてあなたと結婚しますよ、わたしはあなたを騙したり、からかったりしません、待っていてごらんなさい」と言いました。
若者は占師の言うことがとても誠実なので、いい日を選んで貰い、線香、蝋燭、紙銭などを買い、食べ物、飲み物を用意して何人かの人に来て貰い、父親の遺骨を堀り起こして占師が選んでくれた場所に埋めました。
埋葬が終わるのを待って占師は「わたしはここに何時までもいられません、また別な所に行って占いをしなければなりません、百日ほどで戻ってきて、霊験が現れるかどうか確かめてみましょう、もし霊験が現れていなければわたしを笑い者にしてください」と言いました。若者は占師の言葉が誠実なのでまた占師を二日ひきとめました。
このことは一から十、十から百と十里八村の全部に伝わり、人々は百日の間に本当に霊験が現れて娘が若者の家に来るかどうかと見ていました。
光陰は矢にも似て、月日は梭の如く早く、占師は一か月、外を歩き回り家に帰りました。帰ると占師は娘にすぐ、ここからどのくらい離れているか、何という村か、そこにいる若者の姓は何、名は何、年は幾つで姿かたちはこうこうだとよく話しました。
「わかったら、お前はそこへ行きなさい、とても真面目な若者が間違いなくお前を待っている。お前はその村に着いたら、『わたしは父母が亡くなり、独りっきりになりました、家では暮らせないので、親戚に身を寄せることにしましたけれど、そこに着かないうちに暗くなってしまいました、宿をお願いしたいのです』と事情を話なせば、きっと人が出てきて、お前にこの若者と結婚を勧めるから」と言いました。
娘は父親の言う通りに親戚に身を寄せに行くという旅の姿をして一人で出かけました。
娘は村に入るとすぐ村の庄屋の家に行って 「わたしはつい先だって父母を亡くし、兄弟もありません、独りっきりで家族もなく、わたし一人では暮らしていけないので、親戚を頼るしかなく、伯父が住んでいる所を聞いて来ましたら、伯父は何処かに引っ越していませんでした。そうしてこの村に着いたら夜になってしまいました、ご面倒でもこちらで宿をしてくださる方を探して頂けないでしょうか、笑われてしまう話ですが、わたしは旅費も多くありませんので、そんなにお金もありませんが」と言いました。
庄屋は娘の様子を細かく見て、器量もいいし話を聞けば二十才をでたばかりだと言うので、「誰の家に泊まらせたらいいかな、そうだ、あの後家さんの家がいい、子供もまだ小さいし、あの家がいい」と考えました。
こういうわけで、庄屋は娘を後家の家に連れて行きました。この後家は産婆で人に嫁を世話したり、何でも余計なことをするのが好きで、この身寄りのない娘を見ると、すぐ「あんた、わたしがあんたにお嫁さんに行くところを探してあげるけど、どうかしら」と言いました、娘は「おばさん、もしわたしを嫁に貰ってくれる所があればいいですが、でもそういう人を探し出すのは無理でしょう」と言いますとこの後家さんは「そんなことないよ、わたしが探してあげる、ちょうどあんたに似合いの人がいるわ、この村にやはり独りっきりの若者がいるから、明日わたしが連れて来てあんたに会わしてあげる、もし会ってよければ、お互い苦しい運命だから、二人で一緒に暮らせば本当に似合っているじゃあないの」と言いました。
娘はこの後家さんの話からその若者が父親の話していた若者だと気がついて、娘は勿論心からそれを望みました。
翌日、若者が訪ねて来ました、若者は娘を一目見ていいと思いました、娘も若者が好きになりました。二人はいろいろ話し、後家さんも一緒に話してこの結婚がまとまりました。娘は「わたしは家も財産もありません、ただこの小さな包みを抱えて、あなたの家に行くしかできません」と言いますと、若者は別に何も言わず娘を家に連れて行きました、そしてあれこれ考え話の筋を通し、いろいろ決めたりやり繰りして、何人かの若者に手伝って貰い、ひとしきり忙しく動き回りました。そして料理を買い、椀や皿を借りて宴席を作り、村の庄屋や知り合い、その家族、隣り近所の人を招きました。
こうしている時にまた占師が来ました、家に入ってきて「あなた、今日は何事ですか、こんなに賑やかで」と聞きました、若者は「先生、お墓を替えて運がきました、先生が言っていたより早く、ふた月しないうちに本当に娘が来ました、わたしが娘を呼んできます、よく見てください」占師は娘を見るとすぐ「この娘さんですか、よかった、よかった」と言いました。
実は父娘で計画したことなので、互いに誰だか知らない振りをしました。若者は占師が何でも占うのを知っているので相性はどうかと、二人の年回りを伝えますと、占師はまた声を上げて「あなたたちはとてもいい相性です、これからこの家は栄えます」と言いました。
若者は「先生がお墓を選んでくれたからです、この御恩は尽くせません、先生もお年です、嫌でなければ、わたしと一緒に暮らしましょう、先生も家族がないから、これからはわたしの家が先生の安住の場所です」と言い、若者は娘に、「こうしてもいいかい」と聞きました、占師はもともと娘の父親です、娘に不満があるわけはありません、娘は 「あなたがするのに、なんでわたしに聞くの、先生がお墓を選んでくれなかったら、わたしもあなたの家に来られなかったわ、わたしたち二人が先生に感謝するのは、当然だわ、あなたがそうするなら、わたしは先生を父親として仕えるわ」二人はこう言って占師の前に膝をついて一緒にお辞儀をしました。
そこで占師は結婚式の主人になって、招待した人々の前に出て賑やかになり、夜中になってやっとお客が帰りました。それから一人の家が三人の家になり、父がないのに父が来て嫁がないのに嫁が来たと言い、占師はずっと一緒に暮らしました。
李占春故事選 1993・5・5