悪事露見

 栄頭は四季を通して、野原に罠をしかけ、雉、野兎、いたち、野鴨などを捕っている。ある秋の夜、栄頭は家で酒を飲みおわると野原に罠をしかけに出かけたが、盃を何杯もあけたので、歩いているうちに酔いがまわり、道端に寝込んでしまった。
 ちょうどこの時、外の土地で商売をしていた陶四が中秋の節句に家に帰る途中、道端に死体を見つけ、びっくり、そのわきをそっと通り抜け、村に帰って役所に知らせた。役所の所長は死体があると聞いて、すぐ二人の役人を遣わし、陶四と一晩中、死体を見張せ、夜が明けてから調べることにした。二人の役人は歩きながら、陶四に「お前はなんだってこんな余計なことするのだ、俺たちは夜中に起こされきたのだぞ」と文句を言った。
 そこについて見ると、本当に死体が地面に横になっている。三人は真っ暗闇で、怖くて、ろくに死体も見張らず、近くでおしゃべりをしていた。

 栄頭は酒の酔いが覚めてきて、慌てて起きると罠を見に行った。けれども見張りの三人は誰も気がつかなかった。暫くして陶四が見てみると死体がない、急いで二人の役人を呼ぶと二人とも驚いて目の色を変えた。「死体がなかったら、明日何と報告したらいいんだ」と陶四が言うと、一人の役人が「後の高梁畑そばに、新しい墓があった、俺は来るときに見たが、埋めてから二日もたっていないだろう、あの死体を代わりにほじくりだして置けばいい」もう一人が「それがいい、そうしないと、あした俺たちが叱られる」そこで三人は、新しい墓の土を掘って、あっさりと棺桶をこじあけ、死人をひきずりだして、道端に置いた。死人も具合よく男であった。

 翌日、所長は法医を連れて現場に来た。法医が調べると死人の髪の中に一本の五寸釘が打ち込まれていた。それから調べが始まった。はじめに陶四が調べられ、「お前は何日村を離れていたか、帰る時、何人いたか、死人をどのように見つけたか、一部始終をありのままに話せ、少しでも嘘があれば、すぐに牢に押し込めるぞ」とただされた。
 所長は現場で死人の靴に少しも泥がついていないのを見て、死人が自分で現場に来て、被害を受けたのではないと判り、ここにきっとカギがあるとみていた。陶四はもともと悪いことはしたことのない真面目な人で、所長の言葉を聞いてびっくりして、死体を取り替えたその晩ことをありのままに話した。二人の役人もすぐボロをだしてしまった。
 この日、栄頭は市場へ捕えた野兎を売りに行くと、昨夜、道端にあった死体がなくなった、どうして死体を取り替えたのか、……殺人事件だなどと大勢の人がワイワイ言っていた、それを聞いた栄頭は、兎をさげて役所に行き、酔っ払って道端に寝ていたことを話した、所長は寝ていた所が死体のあった場所と同じなので、はじめの死体が酒を飲んで酔っ払った栄頭であることがはっきりした。それなら、幽霊の仕業か神の仕業か、陶四たちが掘り出した棺桶の中の殺された死人は誰なのか。

 所長は命令を下し、新しい墓は誰の家のものなのか調べさせた。やがて役人は一人の女を捕らえて来た。所長は「新しい墓はお前の家か、死んだのは誰か、どうして死んだのか、ありのままを言え」とただした。女は 「わたしは関家の妻で、夫は関清と申します、熱病で死にました」と言った、所長はそれを聞くと火のように怒り、鐘木を叩き大きな声で「大胆な女め、あくまでもシラを切る気か、夫を殺したのは誰だ、死人の頭に鉄釘を打ち込んだのは誰だ、まだ本当のことを言わないか、役人たち、拷問にかけろ」と怒鳴ると、これにびっくりした女は、本当のことを言わなければ大変だと、やっとありのままを話し始めた。

 この女は賭博が好きで、夫の関清がどんなに言っても止めず、時がたつにつれて夫婦の情がなくなってきた。ある時、女は負けがこんで、二歪子という賭博の悪友に賭金を代わりに払って貰った。それから、いつも負けると二歪子に代わりに払って貰った、女は運がつかないで、長い間勝てなかった、女は二歪子から金が貰う時はおおぴらにはできないでいると、だんだん二歪子は女に言い寄ってきた。女は脅かされて二歪子の言うことを聞くしかないと考えた。
 ある日二歪子は女に「お前関清をわざと酒に酔わせろ、これが俺たちに一番いい、そうしなければ俺は何でもかんでもみんな言ってしまうぞ」と言った、女は二歪子に脅かされて従うしかなかった。その晩女は関清と楽しそうに話した、関清は盃の酒を何杯もあけ寝てしまった、二歪子は関清が寝たのを見て部屋に入り、斧で鉄釘を栄頭の頭に打ち込んだ。

 所長は女が話し終わると、顔色を青くして怒り、二人の役人に命令して二歪子を捕らえさせに行かせた。間もなく二歪子は博打場から捕らえられてきた。二歪子は悪事が暴見したのを悟り事実を言って、拷問を免れるよりしかたなかった。二歪子の供述と女の言うことが同じだったのでこの事件の真相がはっきりした。二人の悪い男と女は死の牢獄に送られた。   

         姜淑珍故事選                                      93・4・8

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