金銀を口からだす娘

 昔、ある小さな村に老婆と姉妹の三人が住んでいました。老婆は妹娘の継母で、老婆と姉娘はいつも妹をぶったり罵ったりしていました。妹は一日中、女中のように、洗濯、炊事、豚の世話から薪割りまで家の仕事をみんなやらされているのに、姉娘は一日中、髪を梳いたり化粧をしたりしていました。老婆は姉娘のすることを何でもかなえてやり、妹には何にでも意地悪くするので、妹娘は思い切って家を出てしまいました。

 妹娘は何枚かの着物を持ってどんどん歩き、何処か知らない土地に着きました。すると前の方に乞食のお婆さんが現れて「娘さん、どうかこの哀れな一人ぽっちの婆にお恵みください、わたしは三日も何も食べていないのです」と助けを求めました。妹娘はこの哀れなお婆さんを可哀相に思って、助けてやりたいと思いましたが、食べる物は何も持っていません、どうしようと考えふと思いつき「お婆さん、待っていて、わたしは直ぐ戻って来るから」と言って、持っていた何枚かの自分の着物を市場に行って売り、お金に替えて何個かの饅頭を買って、自分は食べず、息を切らして戻り「お婆さん、どうぞ食べてください」と差し出しました、お婆さんは喜んで「娘さん、わたしはもうすぐ土に入る人間ですのに、有難いことです、あなたは優しいから、きっといいことがありますよ」と言い終わると、お婆さんの姿は見えなくなりました。

 妹娘がまた歩いて行きますと、小さな家がありました、軒下でお婆さんが座って糸を紡いでいます、見るとこのお婆さんは顔中ブツブツだらけで、びっくりしました、妹娘はこのお婆さんを見て、怖くて先に進めなくなりました。
 するとお婆さんは「娘さん怖がらなくてもいいよ、わしは醜くて、誰もわしを相手にしてくれないが、娘さん、わしのそばにいてくれるかい、ほかのことは何もしないで、ただ毎日そばにいてくれればいいんだよ」と言いました、妹娘は承知しましたが、毎日、何もしないのはすぐあきてしまいましたので、いろいろなことをしてお婆さんを助けてあげました。お婆さんはとても喜んで「お前さんにはきっといいことがあるよ」と言い終わるとお婆さんはいなくなってしまいました。
 この時から、妹娘は話すたびに口から金や銀が出るようになりました。妹娘はこの金と銀をみんな貧乏に苦しんでいる人にあげました。

 このことがだんだん一から十、十から百と伝わって継母の耳に入りました、継母はくやしがって、憎く憎くしそうに「あの小娘の奴、金儲けしやがって」と言いました、継母は可愛い姉娘に「宝貝、お前、あの娘を連れておいで、金や銀をみんな取り上げてやるから」と言いますと、姉娘はこれを聞いて、心の中でもう金銀財宝を手にいれたように喜び、面の皮を厚くして妹を捜して戻ってきました。
 継母と姉娘は、妹が一言話すと金や銀を出すのを見て、嬉しくなって、無我夢中で金や銀をみんな取り上げてもあきたらず、妹にどうしてそうなったのだと問いつめました。妹娘はいままでの事を話なさなければなりませんでした。 

 翌日、姉娘は包みを抱えて出て行きました。途中で姉娘は乞食の老婆に会いました、お婆さんは姉娘の前に来て「娘さん、この婆を助けておくれ」と懇ろに言いました、姉娘はこれを聞いて怒った声で「行け、行け、死にぞこないのお老いぼれババア、わたしゃ、金銀財宝を取りに行くのだよ」と言うとまた先を急ぎました。

 やがて前の方に小さな家が見え、その前で老婆が糸を紡いでいました。姉娘はこれが妹に金銀をくれた老婆だと思って、礼儀正しそうにして「お婆さん、わたしが毎日一緒にいてあげますよ」と言いました、老婆は姉娘を見て「いいよ、ここにおいで」と言いました。
 一日、二日、姉娘は文句も言わずにいたのに、話しても口から金や銀は出ません。そのうちに一緒にいるのが面倒くさくなってきました、姉娘は待ち切れなくなって老婆に「わたしが毎日いてあげるのに、話す時にどうして金や銀が口から出ないの」と言うとお婆さんは「娘や、もう出るようになるよ」と言いました、姉娘は大喜びで「それはよかった、もういいの」と言いました。

 老婆は「いいよ」と言いましたが、姉娘は話すたびに小さな蟇蛙が口から出るとは思いもしませんでした、驚いて「ワ−ワ−」と叫び、「悪い奴、死ね死ね」と怒鳴れば怒鳴るほど小さな蟇蛙がたくさん口から出てきました。姉娘が「わたしゃ、もう怒った」と大声をあげた時、老婆の姿は影も形もありませんでした。突然、空から人の声がしました「お前、覚えておいで、善には善の、悪には悪の報いがあるのだよ、善い人だけが金や銀が得られるのだよ」
 姉娘は驚いて気を失ってしまいました。  

        沈陽市巻(中)                                      1993年2月21日

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