580 不思議な手拭
昔、小さい時から地主に雇われ、毎日、石臼で米を挽いたり、ご飯の支度をさせられていた珍妹という娘がいました。珍妹はお米を洗ってご飯を炊くとき、こぼれたお米の一粒一粒を拾って大事に取って置き、それが何時の間にか沢山たっまっていました。
ある日、乞食のお婆さんが来て「何か食べ物を恵んで下さい」と言いましたが、地主の夫婦は何もやらないばかりか、大声で怒鳴りつけました。見ていた珍妹はお婆さんが可哀相になり、そっとためて置いたお米を少し分けてあげました。それを知った地主夫婦は怒って珍妹を叩くと、三斗の稲籾を「お米に挽いて六斗にしろ、少しでも少なければお前の骨を折ってやる」と意地悪そうに言いました。珍妹は仕方なく、稲籾を背負って石臼小屋に入り石臼でお米に挽きました。挽き終わって升で量ってみるとお米は二斗しかありませんでした。三斗の稲籾がどうして六斗のお米になるでしょうか。
珍妹は悲しくなって泣いていると“トン、トン”と戸を叩く音がします、珍妹は地主のお女将さんかと思い涙を拭いて戸を開けると、よかった、あの乞食のお婆さんでした。「娘さんどうして泣いているのかね」とお婆さんが聞きました。珍妹は地主夫婦から「三斗の稲を挽いて六斗のお米にしろ」と言われたことを話しました。すると、お婆さんは「そんなことわけないよ」と言って一枚の手拭を出すと、二斗のお米の上に広げ「変われ、六斗の米に変われ」と唱え、サッと手拭をとると、二斗のお米の山は六斗のお米の山になっていました。珍妹が升で量ってみると、多くも少なくもなく丁度六斗でした。珍妹がお礼を言うと、お婆さんはこの不思議な手拭を珍妹に渡し「困ったことがあればこの手拭が助けてくれるよ」と言って出て行きました。珍妹が六斗になったお米を地主夫婦に出すと、夫婦は驚きながら量り直しましたが、一粒の違いもありませんでした。
翌日、地主のお女将さんはまた三斗の稲籾を珍妹に渡し「九斗の白米になるように挽け、できなければ追い出すぞ」と意地悪く言いました。珍妹は臼挽小屋で三斗の稲を白米に挽き、その上にあの不思議な手拭をのせ「変われ、九斗の米に変われ」と言うとたちまち九斗のお米になりました。地主夫婦は珍妹がまた三斗の稲から九斗のお米を出したのを不思議がり、そっと珍妹がどうするのか見ることにしました。夫婦は三日目にまた三斗の稲を珍妹に渡し「お米七斗の袋を二つ作れ」と言いつけて、珍妹が臼挽小屋に入ると夫婦は小屋の外からそっと覗いていました。珍妹は稲籾を白米にすると不思議な手拭をかぶせ、また「変われ、米七斗の袋二つに変われ」と言うと米七斗の袋が二つできました。
お米を挽き終わると珍妹は「フウー」と息をつき不思議な手拭で額の汗を拭くと、不思議、不思議、手拭で顔を拭くたびに珍妹は綺麗になって美しい娘になりました。この不思議な様子を小屋の外で見ていた地主夫婦はボウーとしていましたが、しばらくして気を取り直し小屋の中に入るとまるで強盗のように珍妹からあの不思議な手拭を盗りあげてしまいました。
地主夫婦は大喜びで家に帰り、倉の中の穀物の上に不思議の手拭をにせるとたちまち倉の中は穀物で一杯になりました。米櫃の中も白米で一杯になりました。それから夫婦は不思議な手拭で顔を拭くと綺麗な夫婦になると思い、夫婦は替わりばんこに休まず不思議な手拭で顔を拭きました。すると拭いたところに茶色の毛がつぎからつぎに生えてきてしばらくすると全身茶色の毛だらけになってしまいました。そして夫婦の腰は曲がり、頭の上に尖った耳、お尻に一本の太く長いしっぽが生えてきました。そして凶悪な夫婦は凶悪な二匹の狼になってしまい、村に住めなくなり、しっぽをまいて山奥へ逃げて行きました。
(中国幼児故事精選)
09年1月21日岩波文庫<日本のむかしばなしV>に「たから手拭」がある。