579 正直者
昔、祖先伝来の双振りの宝剣を何よりも大切に守っている老いた猟師がいた。猟師は死の晩年になってこの双振りの宝剣を三人の息子の誰に伝えようかと三日三晩考えた末、三人の中で最も正直な息子に伝えようと決めた。だが、誰が正直なのかどうやって決めるかと、また三日三晩考え、やっと一つの方法を思いついた。
老猟師は三人の息子を枕もとに呼び、宝剣を捧げ、「わしはやがて土にかえる、そこでこの祖先伝来の宝剣をお前たちに伝えたい、そしてお前たちがまた子孫に伝えてくれ。だが宝剣は双振り雌雄一対で離すことはできず、お前たち兄弟の誰に伝えるのがいいかわしはまだ決めかねている、そこでお前たちで話し合いお前たちの考えを聞かしてくれ、それからわしはまた考える」と言い、宝剣を枕の下にしまった。
三人の兄弟は早速、宝剣を誰が継いだらいいかと話し合った。長男は「俺は一番上の兄だから、伝来の家宝は先ず俺が継ぐのが当たり前だ」と言った。三男は「お父つあんに可愛がられた末っ子の俺が継ぐ」と言った。次男は「俺は兄弟の上でも下でもないが、俺にも継ぐ権利はある、家の財産は兄貴と弟で分け、俺が宝剣を受け継ぐのが一番いいんだ」と言った。こうして三人の兄弟は宝剣を誰が継ぐかと話し合っても決まらず、三人はまた老父の枕もとに行って父親の考えを聞くことにした。
老猟師は思い通りになったので笑いながら「わしは宝剣もお前たちも同じように愛しているが、宝剣は一番正直な者が継ぐのがいいと思っている。三人とも今から旅に出て三日経ったら家に戻り、旅の間に見た面白かったことをわしに話してくれ」と言って三人の息子を旅に出した。兄弟三人は雪の舞う野原に出て行ったが面白いことは何もなかった。
しばらく行くと長兄は「一緒に旅しても面白いことに遭わないから、それぞれに別れて行こう」と言って歩くのを止めた。それからも次兄と末弟は一緒に行ったが次兄は大きな木の洞を見つけると、末弟に別れようと言って木の洞に入った。末弟だけは何も言わずに歩き続け、お腹が空けば固い餅をかじり喉が渇けば雪を食べ、疲れれば雪のない処に腰を下ろして休み三日三晩歩き続け、四日目の朝家へ帰った。すると二人の兄はもう帰っていて老父が寝ている前で末弟の帰るのを待っていた。老猟師は三人がみんな帰ったのを見ると起き上がって「みんな帰って来たな、それじゃあ見て来た面白かったことをわしに話してくれ」と言った。
長兄がわれ先に口を開き「わたしが山の野原を行くと二頭の牛が尻尾を振りながら“俺お前”“お前俺”と互いに角を突き合わせて面白かったです」と得意そうに言うと、次兄は「わたしは兄さんよりもっと面白いものを見ました。二頭の熊が木に登って追いかけっこをして、枝が折れ二頭の熊がドンと音をたてて転げ落ち面白かったです」とにこにこしながら話した。ところが末弟は少しも動かず端っこに立ったままでいた。老猟師は「二人の兄は面白いものを見つけたがお前はどうした」と聞いた。末弟は頭を下げたまま老猟師の前に行き小さな声で「お父つあん、あたしには二人の兄さんのような運がなくて、野原を三日三晩歩き続けても少しも面白いことが見つかりませんでした」とうなだれて端っこに戻った。
老猟師は話を聞き終わると、笑いながら宝剣を末弟に与え「三男の末っ子が一番正直だ、長男次男の話は嘘だ。牛は角を突き合わせる時、尻尾を尻の間に挟むから尻尾を振ることはない。熊は冬は木の洞に入って寝ているもんだ」と言った。長男と次男は父の老猟師の話を聞いて呆然として自分たちの作り話を後悔した。
語り手 単和 男 六十五歳 漢族 農民
流伝地区 新民北部農村
採録者 黄春静 女 十五歳 漢族 新農中学学生
(中国民間文学集成遼寧巻沈陽市巻中)