576 心を量る

昔、張という大工がいた、その技の巧みを称え人々は“張師匠”と呼んでいた。張師匠には子がなく一人暮らしで、人々はその技が子に受け継がれないのを惜しみ、張師匠に弟子をとるように勧めた。それで張師匠は李という若者を弟子にして技を伝えた。李は聡明で「わたしは死ぬまで師匠の弟子として仕えます」と言い、張師匠の技をつぎつぎに習得してやがて李もまた“李師匠”と呼ばれるようになった。

 ある年、張師匠が病に倒れた。李は初めはよく師匠の面倒をみたがその世話が長くなるとだんだん面倒になり、師匠をおいて逃げ出してしまった。張師匠は死ぬまで弟子と約束したのに守らなかった李に自分の技を伝えたことを後悔した。しばらくして張師匠の病気は治ったが、また一人暮らしに戻り淋しくて張師匠は木の人形を彫り、心を込めて最後の一刀を刻んだ、すると人形は人間のように動き出した。それから張師匠はこの木の人形と仲良く暮らし始めた。

張師匠が動く木の人形を作ったことはすぐ李の耳に入り、李は今までの無礼を詫びる振りをして木の人形を作る技を盗もうと張師匠を訪ね、そっと木の人形の寸法を量り、家へ帰ってすぐ木の人形を寸法通りに作った。が、どうしても動かない。李は諦めきれず木の人形を盗もうと深夜、張師匠の家に忍び込み、木の人形を抱えて逃げようとすると、木の人形は身を翻し李の手を死ぬほど固く握って放さない。目を覚ました張師匠が気がついて「何をしているのだ」と李をとがめると、李は「わたしも木の人形を作ろうとして人形の寸法を盗み、寸法通りに作ったのですがどうしても人形は動かないのです」と言った。

「お前は頭を量ったか」「量りました」

「腰を量ったか」「量りました」

「足を量ったか」「量りました」

「心を量ったか」「ア、いいえ…… 心は量れません」

「それだ、お前には良心がないから心を量れなかったのだ」と張師匠が言った。

語り手 周永啓 三十七歳 漢族

流伝地区 新民農村

採録者 劉景陽 芦屯郷退職教師

                      (中国民間文学集成遼寧巻沈陽市巻中)

                                

注 原文は“量心”liang を“良心”liang とかけている。