571 胡麻すり男

 人にへつらい、胡麻をするのが上手な男が得意の胡麻すりで役所の高官と交友を結ぼうと考えていたところに、新しい県長が赴任して来た。そこで男は県長の側近に賄賂を贈り、県長に会う手はずを整えた。県長に会うには大概まずこうするのである。男はさっそく貢物を持って行った。県長は男の持参した貢物を見て礼儀の厚い者だと料理を出した。男は県長のご機嫌をとり、調子よく馬が合えばちょっとした官職を得られ、このあたりで俺も羽振りをきかせられると考えた。

 さて、差し向かいで飲んで食べて話をかわすには互いに名前を呼び交わす、胡麻すり男は“県長様”と言えばいいが、県長は男の姓を何と呼べばいいかと「あんたの名前は」と聞いた、そうすれば男は張とか李とか、別の何とかの姓を言うだろうと思ったからである。ところが胡麻すり男はそれに答えず、席を立つとパタッと県長の前にひれ伏し「県長様、あなた様は民の父母、水の如く清く、鏡の如く明澄でございます、わたくしの名をご判断下さい」と言った。それを聞くと県長はびっくりして「あんたの名前をわしが判断すると言っても、わしはあんたの姓が張か李かも知らない」と言うと、男はカタンと頭を床に叩き「ハー、県長様のご判断は本当に神のようです、わたくしの名前までご存知だとは、わたくしは張とも李とも申すのでございます」と言った。県長は不思議に思い「あんたはどうして姓が二つあるのか」と聞いた。するとすぐ胡麻すり男は「わたくしの本来の名は李ですが、実の父親が死んだあと母親が再婚しまして、それから継父の姓の張になりました。だからわたくしは李とも張とも申すのです」と話した。

 それを聞いた県長はこの男は実に話が上手いと気持ちよくなって「まあ、座って」と席に戻し、胡麻すり男が座るとすぐまた「今年あんたは何歳かね」と聞いた、するとまた男は席を立ち、県長の前に「やはり県長様のご判断を」と伏した。県長が「わしがみるところでは、四十かそれとも五十か」と言うと、胡麻すり男はまたカタンと頭を床に叩き「アイヤー、県長様は本当に素晴しい、わたくしの年まで分かるなんて」と言った。県長は何か変だと思い「四十と五十じゃ十歳も違うが」と言うと男は「わたくしは本当は五十ですが嫁を娶る時、十年若く言っていますから四十でもいいんです、県長様はそれを見通すなんて、全く尊敬いたします」

 これを聞くと県長は心の中で“この男はいい、官職につけてやれば、きっとわしの一声で百倍の仕事をするだろう、だがまだ分からないことがある。名前は分かった、元は李、今は張、その理由も分かった。年齢も分かった、年を十歳少なく言って若い嫁を娶り四十というが実際は五十。その外はまだ分からない、この男のすべてを明らかにやろう”と思い、また「あんたの十二支は」と聞くと胡麻すり男はまた答えず、県長の前に伏し頭を床に叩くと「県長様、ご明断を願います」と言った。県長が十二支を数えながら、「あんたは子年生まれか、丑年生まれか」と言うと胡麻すり男は「アイヤー、県長様のご明断は神仙と同じです。わたくしは子年生まれで丑年生まれです」と答えた。県長はもう何も言わず、胡麻すり男の説明の言葉を待った。男は「生まれた時、わたくしは子年の終わりに頭が出、丑年の初めに足が出たのです、それでわたくしの生まれ年は一人で十二支の子丑の二つを占めているのです」と言った。県長は胡麻すり男にご機嫌をとられながら心の中で嬉しくてたまらず、床に伏している胡麻すり男の頭を上げさせるのも忘れ、次から次へといろいろ聞きまくった。

 語り手 李占春 男 五十八歳 蘇家屯区城郊郷金宝台村農民

 流伝地区 遼寧地区 特に沈陽一帯

 採録者 鄭友群 厳暁星 蘇家屯区文化館創作員

 中国民間文学集成遼寧巻沈陽市巻中