569 太 陽 瓜
ずっとずっと昔、ある村に張百万という大金持ちがいた。張百万には百人の雇い人がいて、その中に苦という兄弟の羊飼いがいた。兄弟は毎日涙河の河辺に羊を放して草を食べさせていた。ある日、南の山から一匹の狼が現れて子羊をくわえて逃げ、兄弟がどんなに追いかけても子羊を取り返せなかった。仕方なく戻ると張百万は苦兄弟が子羊を焼いて食べたのだと言い、兄弟は皮の鞭で肉が裂けるまで叩かれ追い出されてしまった。
苦兄弟は天にも地にも行く所がなくなり、毎日羊を放していた涙河の河辺へ行って泣くしかなかった。兄弟の涙で涙河の流れが漲ると、河上から舟が来て乗っていた白い髭の老人が苦兄弟に「何を泣いているのだ」と聞いた。苦兄弟は自分たちに起こった不幸の一部始終を話すと、白髭の老人は「若者よ、泣かずにこの涙河に沿って遡って行け、飢えに耐え、日照り雨風を恐れず真っ直ぐ振り向かずに七七四十九日行くと山が見える。それが太陽山だ。太陽山には誰にも公平な太陽老人がいて一本の太陽瓜を育てている。お前たちはそれを手伝えばよい、この瓜はもう四百九十七年経ち五百年になると熟す、すると涙河の水は涸れるが、二人は食べるに困ることはなくなる。だがこの太陽瓜を育てるのは容易ではない。毎日太陽山の麓に流れる涙河の四十九の淵へ行って涙河の水を汲みその担いできた水に自分の指の血を一滴混ぜて太陽瓜にかけてやらなければならない。若者よ、食べ物着る物が欲しければ太陽瓜を育てに行け」と言うと白髭の老人は舟を揺らして涙河を下って行った。
白髭の老人が去った後、苦兄弟は涙河に沿って四十九日歩き、とうとう誰も見たこともない美しい太陽山に着いた。世の中で一番綺麗な花が咲き、世の中で一番綺麗な鳥が飛んでいる美しい山であった。そして太陽老人が石に座って太陽瓜についた虫を抓んでいた。太陽老人は苦兄弟を見ると兄弟の肩を叩き「若者よ、疲れたろう。先ず飯を食べ、それから人々がどうやって水を太陽瓜にかけているか見るがいい」と言った。太陽山の人々は蟻のように忙しく働いていた。
苦兄弟の兄は太陽山の人々が何をしているかを見ず、先ずなっている瓜の実の数を数え瓜が四十九あるのを確かめると、次は瓜を育てている人の数を数え四十七人だったので、自分たち兄弟をいれれば丁度四十九人で瓜は一人一個ずつ分けて貰えると考えた。
苦兄弟の弟は太陽山で働いている人々の群れに混じり人々がどうやって太陽瓜に水をやっているのかを見た。弟は人々が兄貴と呼ぶ毛むくじゃらの男についてどうやって涙河の七七四十九の淵で水を汲み、どうやって指の血を太陽瓜にかけるのかを習い、「あなたは太陽山で何年暮らしているのですか」と聞いた、すると毛むくじゃらの男は指で数えながら「アレ、忘れてしまった、もう三十年くらいだ」と言った。弟はそれを聞くと心の中で瓜はもう少しで熟すのに人々はもう三十年も育てている、それなのに俺はたった一日経っただけだ、それでいいのかと思い、弟は水桶を担ぎ一生懸命に水を運んだ、人が一回運べば二回運び、人が一歩進めば二歩進み、人が血を一滴たらせば二滴たらし、人が夜寝ている時もそっと起きて水を汲みに行った。
苦兄弟の兄は一生懸命な弟と違って、人に会うと水を忙しそうに運び、人がいないとノロノロ運び、道で赤土を拾うと水に溶かして血を混ぜたように見せかけた水を太陽瓜にかけ、太陽瓜と人々を騙した。そしてそっと太陽瓜を指で押したり鼻で匂いを嗅いだりして大きくて香りのいい太陽瓜を選んでいた。ある時、兄は太陽老人に「太陽爺さん、わたしは働きすぎて疲れました、太陽瓜が熟したらわたしに一番大きくて香りのよいのを下さい」と言った。太陽老人はそれを聞くと笑いながら「一生懸命に働け、汗水流して働いた者は誰にも良い実が授かる」と言った。
さて、天界の一日は下界の一年で、やがて第五百年目の七月七日になると太陽老人は瓜に水をやった四十九人を集め「太陽瓜が熟した。この四十九個の太陽瓜はお前たち四十九人が汗水流して育てたものだ。今こそ、この太陽瓜をお前たちに分ける。だがこの四十九個の太陽瓜は丸いの丸くないの、青いの黄色いのと一つ一つ大きさも違う、どうやって分けるかというと、この太陽瓜は自分の主を自分で探すから慌てずに待て」と言うと、太陽老人は太陽瓜に向かって「太陽瓜、太陽瓜、自分の主を探して行け」と叫んだ。
すると、突然、千本の花が太陽の光になって人々の目に刺さった。苦兄弟の兄は目を丸くし、死に物狂いであの一番大きな太陽瓜を見つめていると、瓜の茎は元から竜のようになって煌々と光り、四十九個の太陽瓜はコロコロと転がり始め、あの大きな瓜は弟の前へ転がって行き、自分のところには形の悪い小さな瓜が転がって来たので怒り狂った。
太陽老人は「今、お前たちが受け取った瓜はお前たち一人一人が瓜に尽くした働きに見合ったものだ」と言った。太陽瓜は宝の瓜で新しい衣服、美味しい料理、何でも欲しいものを言うとそれが瓜の中から出て来る不思議な瓜だ。だが苦兄弟の兄の太陽瓜からは破れた衣服、粗末な料理しか出なかった。兄は「太陽爺さんは誰にも公平だと言うが不公平じゃないか、どうして俺のはこんなものしか出ないのだ、お、俺は太陽爺さんにけりをつけてやる」と大声で怒った。太陽老人は白い髭をひねり、瓜の茎の根を抜いて振ると、瓜の葉は一枚一枚が紙になり、それが自然に集まって一冊の帳面になった。太陽老人はその帳面の四十八面を開くと、笑って「わしはお前の命を助けてやったのに、逆にわしに仇を返すと言うのか、この帳面にはお前が毎日瓜にかけたのは赤土の水だとはっきり書いてある、それなのにお前は一番大きくて良い太陽瓜を取ろうとした、お前の瓜がよくないのは当然だ」と言った。
苦兄弟の兄は恥ずかしくて何も言わずただ涙を流しながら自分の太陽瓜から出た粗末なご飯とおかずを食べた。 中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻(上)
語り手 張桂卿 主婦 故人 採録者の母
採録者 李世棟 男
53歳 撫順日報文芸部編集員付記 新賓県・李英林語り、李法生採録の<種瓜>はこの語りと同じだが結末は異なる。間違ったのは弟で弟は間違いを知り二年目に兄と同じ瓜を育て、後に兄弟は天界に昇る。