566 欲張り長者と美女

 むかし、欲張りな長者がいた。長者は数え切れない土地や屋敷、大勢の妾や下女を持ち、もうない物は何もないのに少しも満足せず、何時も何かを欲しがり、欲しい物は何でも多いほうがいいと思っていた。

 ある晩、欲張り長者は神様の廟へ行って線香をあげ、神様に何でも欲しい物がすぐ手に入るようにと願った。すると翌日、長者が屋敷でぼんやりしていると、一人の美女が入って来た。長者が慌てて「お前はいったい誰かね」と聞くと、美女は「わたしは仙女、可愛い美女とも言うわ。あんたは神様に欲しい物が何でも手に入るようにとお願いしたでしょ。だからわたしが来たのよ」と言った。長者は喜んで「神様、有難うございます、わたしはちょうど可愛い女が欲しいと思っていたです」と言って、美女を膝のうえに抱きかかえると、美女は「わたしはあんたが欲しい物をあげようとして来たのよ、あんたの女になるために来たじゃないいわ」と言った、「お前、そう言わずにわしの女になってくれ、そうしてわしの欲しい物を何でも持って来てくれ。そうすればもっといい」と長者が言うと美女は「あんた、そんなに欲張るとあとで大変なことになるわよ」と言ったが、長者は「わしは金も女もみんな欲しいだ、何でもあればあるほどいいだ、あとでどうなったって怖くない」とうそぶいた。

 それから長者は何時も美女から離れようとせず、ある日、長者が「わしの可愛い子ちゃん、食糧がもっと欲しい、どっさり持って来てくれるかい?」と言うと、美女は「いいわよ、明日の朝、見てご覧なさい」と答えた。翌朝、長者が起きてみると、前の屋敷、後の屋敷、東と西の屋敷とその庭など、あらゆる処に食糧がうずたかく積み上げられて歩く場所もない。長者は驚いて「こんなに沢山の食糧を外に置きっ放しにして雨が降りやあだいなしだ、大きな倉庫を持って来てくれ」叫んだ。美女は「いいわよ、明日の朝、見てご覧なさい」と言った。翌朝、南の屋敷の東側に瓦葺の大きな倉庫が現れ、外にあった食糧がみんな入った。五日たって、また長者は「わしの金と宝物はまだ少ない、もっと持って来てくれ」と言った。美女は「いいわよ、明日の朝に持って来るわ」と答えた。翌日の朝、どの屋敷の中にも金銀財宝が一杯になっているのを見た長者は飛び上がって喜んだ。

それから十日たつと、王宮の兵士たちが欲張り長者の屋敷を三重に取り囲み、数百の兵士たちが屋敷の到る処を捜索、封印し、長者の屋敷中にいた者を全部縛り上げ、囚人車に押し込め王宮に護送した。それは十五日前突然、王宮軍の食糧倉庫から一万石の食糧が消え失せ、翌日はその食糧倉庫が一片の煉瓦も残さずなくなり広い空き地になってしまい、十日前には王宮、大臣の屋敷にあった金銀財宝が一夜のうちにすべて何者かに盗まれたので、王宮軍が秘かに盗賊の在りかを探り欲張り長者が盗んだと分かり長者を捕らえたのだ。

 長者の一族は王宮に送られ裁判にかけられた。欲張り長者は「これはみんなわたしの妾がしたことでわたしは何も知りません」と言ったが、あの美女の姿はなく、誰も美女を見た者はなかった。数日後、欲張り長者の一族は西の城門外で首を斬られた。

           中国民間文学集成遼寧巻 沈陽市巻(中)