562 道士と狆
昔、山の洞穴に一人の道士が狆を連れて修行に来た。狆は冬の陽を浴びながら道士の足許にうずくまり、七、八日道士と一緒にいるうちに自分も解脱して神になりたいと思った。
ある日、道士が洞穴で瞑想していると夜になって狼や虎が道士を食べようと牙を剥き出して迫って来た。だが、道士は構わず目を細めて見ているとやがて狼も虎も姿を消した。
翌日の晩、道士は何時ものように洞穴で瞑想していると、美しい仙女が洞穴の口から入って来て道士を見つめ、すりよると会釈して甘い言葉で結婚しようと持ちかけたが道士が相手にならないでいると出て行った。するともっと綺麗で美しい仙女がまた一人また一人と来て十何人にもなったが道士は少しも心を動かさず、何時ものように瞑想していた。
三日目には道士が夜中まで瞑想していても、狼も虎も仙女も来なかった。こうして誰が来ても道士を犯すことは出来なかった。道士は「今回、わしは狼も虎も恐れなかった、美しい仙女が言い寄ってもわしは心を動かさなかった、わしは神になれたのだ」と思った。ところが夜中になって“ボッ”と音がして洞穴の中に火がついて燃え、座っていた道士は怖くなって立ちあがって逃げた。だがそばにいた狆は燃え盛る火を見ると、その火の中へ飛び込んだ。 道士が逃げたあと、火は消えたが道士の足は冷え食べる物もなく、お腹が空いて道士は修行を果たせなかった。しかし狆は神になった。 (撫順市巻下)