561 乞食を婿に迎える
ある長者に十九歳の娘がいた、器量はいいし頭もよく、琴、将棋、書、画にも通じ、その名は百里四方に伝わっていた。だが誰も娘の結婚を媒酌する者がない。それは結婚の話をすると娘が気位の高いことを言うからだ。
ある日、娘は両親にこうして婿を決めると言い出した。それは家の門に一句の聯を張り出し、誰でもその聯に良い対句をつけた者を婿に迎えるというものだった、両親も承知して、翌日、門の壁に『当方の十九歳の娘、未婚。門塀に掲示した娘の書いた上聯に対の下聯をつけた者を当家の婿に迎える。趙之敬告示』と掲示を貼り出し、横に『黒白の間南北に分かたず』と書いた聯を出した。すると四方八方から大勢の人が集まって下聯をつけたが、誰一人として娘の意に適う対の聯をつけられる者はいなかった。
ある日、一人の乞食が通りかかり、この婿選びの掲示を見て対句をつけたいと申し出て家の中に案内されると『黒白は南北を分かたず』の聯に『青黄は東西に接せず』と対の聯をつけた。これを聞いた娘は手を叩いて褒め、乞食は高札通りにこの家の婿に迎えられることになり、即刻、式を挙げ初夜の床入りになった。だが、そこで初めて娘は迎えた婿が乞食であることを知り、がっかり、何も言わず乞食に背を向けて声も出さない。
するとそこに、小さな三毛猫が走って来た、娘は驚いて猫を蹴飛ばし、『子猫を足で蹴る』と言った。そばに静かに座っていた乞食は“よし、対の聯をつけてやれ”と思い『犬を鋼の鞭で打つ』とつけた。娘は心の中で上手いが言葉に心意気がないと思った。そして改めて乞食を見ると破れた衣服を着ているが額は広く顎は福々しく濃い眉で目は澄んで人相がいい、娘は少し心を動かし「あたしがまた一句上聯を出して、あんたが良い下聯をつければ初夜の床入れするけど悪ければここから出て行って」と言った、乞食は「わかりました」と答えた。
娘は真剣な面持ちで窓に近づき、両手で窓を開けると十月の月が空に高く光り、その前を雁の群れが列を作って飛んで行く、娘はその情景に感動して『雪の中を白い鶴が飛ぶ』と上聯をつけた、乞食はそれを聞き、しばらく考えたがよい対句が出て来ない、乞食は仕方なくそこから出ようとそばの籠に手をかけて立ち上がると、籠の中に丸く巻かれた青い縄があった、乞食はこれを見て喜び『籠の中で玉龍が舞う』と下聯の句をつけて娘に言った。
娘は乞食に下聯をつけられ、また乞食を離せなくなり、引くに引かれず、止めるわけにもいかずまた乞食に「あたしがもう一度上聯をつけて、それに下聯がつけられればあたしたちは夫婦になる」と言って『五朝門外に文武の吏官立つ』と上聯をつけた。乞食はこの娘は朝廷のことなど気位の高い聯ばかりつけるから、人々が知っている物乞いの下聯をつけてやろうと『十字路で婆さん爺さんと叫ぶ』とつけた。
娘はまたまた下聯をつけられ「あたしはこの人に嫁ぐ運命だ」とあきらめた。 (撫順市巻下)