543 草で編んだ座布団
昔、毛という爺さんがいた。子供の頃は豚飼いで大人になると豚を売り買いして暮らし、長い年月の間には銀貨も貯まった。そこで草で座布団を編み、その草座布団の中に貯まった銀貨を隠し、何処へ行くにもこの草座布団を背負って歩いた。人はその中に銀貨が隠してあるなんて誰も知らない。
爺さんには息子がなく三人の娘がいた。年を取った爺さんはある日、三人の娘のうち一番親孝行な娘にこの座布団をやろうと思いつき、娘たちの嫁ぎ先を訪ねることにした。爺さんは“わしには銀貨がある、娘に何も遠慮することはない”と思いこの草座布団を背負って娘たちの家へ行くことにした。
爺さんは先ず長女の家へ行った。すると長女は子供に「おじいちゃんが来たからおっかさんはご飯の支度をするよ」と言って、臼を出して大麦を挽くふりをした。臼から挽かれた大麦は出て来ない。爺さんはそれを見てこれはわしに食べさせたくないのだと分り、すぐ長女の家を出た。
爺さんはつぎに次女の家へ行った。すると次女もまた子供に「おじいちゃんが来たよ」と言って黍をお碗に一杯持って来ると臼に入れ、油を臼にさした。これでは臼を回しても黍は油に滑って一生かかっても挽かれた黍はとれない。爺さんはこれを見て娘はわしに黍を食べさせるつもりはないのだと分り、三女の家へ行くことにした。
三女の家へ着くと、三女は髪を梳いていたが老父を見ると、すぐ立ちあがって火を起こし「お父さんよく来てくれたね、座って」と言った。けれども食べる物は何もない、貧乏で家族は多く、畑は狭いから蓄えた穀物もない、老父に食べさせるお碗半分のお米もないのだ。どうしょうと考えた三女は鋏でバッサリと髪の毛を切った。爺さんは娘が髪の毛を切ったわけがすぐ分った。三女は切った一束の髪の毛を街へ売りに行き、しばらくして焼餅を買って来ると、急いで湯を沸かし「お父さん、お昼でお腹が空いたでしょう、食べて」と言った。
爺さんは髪の毛を切った娘を見ながら焼餅を食べ涙を落とすと草の座布団を開き、「お前の姉たちは大麦を搗く真似をしたり、黍の臼に油を入れて空回りさせたりした、この銀貨はわしのために髪の毛を切ったお前に上げよう」と言った。
(四老人故事集)