506 うまく豚肉にありつく

 昔、ある地主が豚飼い少年に十数頭の子豚を育てさせた。豚飼い少年は辛い豚の世話を何とかこなして豚を太らせた。
 ある日、地主は豚小屋を見まわり、二百斤になった豚を見て「おい豚飼い、作男にこの太った豚二頭を屠殺させ、その肉を市場で売って来い」と言った。そこで豚飼い少年は作男に豚をさばいて貰うと、皮をすっかり剥いで市場で売り、売り上げ金を地主に渡すと、地主は当たり前のような顔をして金を受け取り肩をゆすって何も言わずに行ってしまった。

 それから数日して、地主は豚飼いにまた「今日も豚二頭の肉を市場で売って来い、わかったか」と言った。豚飼い少年は口では「わかりました」と言ったがどうも面白くなかった。それというのも、少年が地主に言われて作男に豚の屠殺を頼むと、二人の作男は「俺は忙しくって疲れているのに、一口だって豚汁を飲んだことがない」「そうだ、俺たちはいくら疲れったって、一切れの肉も食べていない」と言われているからだ。

 それで今日も作男に豚の屠殺を頼むと、年上の作男が「俺にいい考えがある、ああして、こうして……」と、豚飼い少年によくよく言い含め、それから豚をさばいてくれた。そして二人の作男は豚飼い少年と一緒に肉を担いで市場へ行き、「病死の豚肉を売るよ、誰か病気で死んだ豚の肉を買わないか」と売り声を立てた。肉を買いに来た人は病気で死んだ豚の肉と聞いてみんな買わずに帰ってしまった。夜になって作男たちと豚飼い少年はまた豚の肉を担いで帰った。
 豚肉の売上金を待っていた地主は作男たちが売れなかった豚肉を担いで帰ったので、すぐ「豚肉を売らないでどうしたんだ?」と聞いた、作男が「買う人がいなかったんでさあ」と答えると、地主は「屠殺したばかりの豚肉なのにどうして買う人がいないんだ、おかしいじゃあないか」と作男を責めた、だが作男は「旦那、嘘だと思うなら明日わしらと一緒に売りに行ったらいいや」と返答した。地主はどうも怪しいと思ったが何も言わず、心の中で、明日はわしがやつらの売り方をあばいてやると思っていた。

 翌日の朝、地主は作男と豚飼い少年を呼び起こし、「早く肉を売りに行け!」と怒鳴った。二人の作男と豚飼い少年はまた昨日の豚肉を担いで市場へ行った。地主は後ろで三人の様子をじっと見ていた。作男と豚飼い少年は豚肉をおくとすぐ「豚肉を売るよ、昨日売った豚肉を売るよ」と叫んだ。昨日売っていたのは病死した豚肉をだと知っている人々はその売り声を聞くと、振り向きもしないでみんな行ってしまった。地主は後ろでそっと見ていたのだが、確かに一人の買い手もいない、こんないい豚肉なのにどうして買い手がつかないんだと癪にさわっていた。日が落ちて暗くなり、二人の作男と豚飼い少年はまた肉を背負って帰った。

 地主が怒ったのは言うまでもないが作男と豚飼い少年の売り方の間違いを責めることはできなかった。豚飼い少年が「旦那、やっぱり売れませんでした」と言うと地主は怒った声で「わしも見ていた」と言った。「旦那、見ていたんですか、嘘じゃなかったでしょ、一人も買い手がいなかったんですよ」「もういい、その肉はお前たちで食べろ」

 そこで二人の作男と豚飼い少年は、肉を料理場に持って行き、火を起こし肉を焼いたり煮たりして大いに食べた。地主はもう何も文句をつけられず、ただ作男と豚飼い少年がうまそうに肉を食べているのを口惜しがりながら見ているよりしょうがなかった。                                        (姜淑珍故事選)