502 塩の由来(一)
この世の初め、玉皇大帝のもとで張天師は人間の暮らしを司っていた。
ある時、張天師は人間の食べる物に塩気がなく美味しくないことが分り、天界へ上った時、塩の塊があったので、玉皇大帝にその塊を下さいと言ったが大帝はくれなかった。
張天師は大帝がくれないなら、人間の暮らしをよくするために盗んでやろうと塩の塊を四つ盗んで袖の中に隠して下界へ下った。ところがすぐ玉皇大帝は塩が盗まれたことを知り、「しまった、張天師に塩を盗まれた」と天兵を繰り出した。天兵が大挙して追いかけて来るのを見た張天師は“これはまずい、見つかったか、どうしょう”と袖に隠した四つの塩の塊を空から海の中へ放り込んだ。
天兵が追いつくと、張天師は「なぜわしを追って来るのだ」と天兵に言った。「何でだと、お前、天界の塩を盗んで逃げただろう」「わしは塩など盗んではいない」「盗んだ」「誰がそんなこと言ったんだ」「玉皇大帝の聖旨だ」「よし、それならわしは玉皇大帝に会う」
張天師は玉皇大帝の前に出ると「大帝、あなたはわたしが塩を盗んだと言って天兵を繰り出しましたが間違っています、わたしは塩を盗んではいません、見て下さい、わたしは盗んでいません」「盗んでいないなら、それでいい」「盗んでいないなら、それでいいでは済まされません、わたしは言われのない辱めを受けたのです、玉皇大帝はわたしが天界の物をみんな盗んでいるとでも言うのですか」「わかった、わかった、お前は盗んでいない、もういい帰れ」それを聞いて張天師は下界へ下った。
地上に着いた張天師は人々に「わしは天界の塩を盗んだが天兵に追いかけられたので、塩を空から海へ投げた、早く海へ行って塩をすくい取れ」と言った。「海の水と河の水は同じではないのですか」「違ったのだ」
人々が海へ行って海水を嘗めてみると塩辛くなっていた。だが塩の塊は海水に溶けてしまったのにどうやってすくい取ればいいのか分らない。張天師は人々に海水を天日に干して塩を取ることを教えた。それから人々は食べ物に塩味をつけられるようになったのだ。
(中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻上)