気のいい愚かな布売り
昔、卓嗄という気のいい愚かな男がいました。ある日、母親は卓嗄に市場へ布を売りにやりました。
母親は気のいい愚かな卓嗄が布を売るのに悪い人に騙される事を心配して、出かける時に「布を売る値段は少しぐらい高くても安くてもかまわないけれど、お客と喧嘩してはいけないよ、お客は穏やかに話す笑顔の人でなければいけない、三文二文安く売ってもいいよ」と懇ろに言い聞かせました。
卓嗄は母親の言葉を「布の値段は三文二文、布を売るのは笑顔の人」と簡単に覚えて出かけました。 卓嗄は市場に着くと、布を買いに来た人がまずにこにこした笑顔かどうかを見て、笑っていない人には売りませんでした、そのつぎに人がお金をだすと、なんでもかんでも「三文二文」と言い、三文二文でなければ売りませんでした。布を買う人はみんな「三文二文」では値段がいったい幾らなのかはっきりせず、買いたくても買えず、頭をふりふり行ってしまいました。 卓嗄は市場が終わっても布は少しも売れず、うなだれて元気なく家に帰って行きました。しばらく行くと、途中にお寺がありましたので卓嗄はそこで一休みしました。頭を上げて見ると、お寺の中の仏像がにこにこと笑顔で自分を見ています。卓嗄はそれを見て「これこそ、おっかさんの言った笑顔の布を買う人じゃないか」と思って、持っていた布を仏像の前に置いて、喜んで帰りました。
西双版納哈尼族民間故事集成 1992,12,28