石の人と石の馬
昔、王地主に雇われた王小という子供の豚飼いがいた。ある日、王小が豚の群れを山へ連れて行くと狼が襲って子豚をくわえて逃げてしまった。
王小は驚いて豚の群れを連れて戻ると地主は「何で戻って来たんだ」と言った。王小は泣きながら「狼が来て豚をくわえて逃げたんです」と答えると、地主は二つの目を真ん丸にし、顔をくちゃくちゃにして怒り、「このチビ、何言ってんだ、豚を太らせて狼に食べさせ、わしを困らせようと言うのか。誰かこのチビをぶっ叩け」と怒鳴った。
王小がわけを話そうとしても、王地主はまるでむちゃくちゃな屁理屈を並べ立て、水で湿した皮の鞭で体が傷だらけになるまで人に叩かせ、怒鳴り散らすと王小の鼻を押さえ「いいか、三日のうちに豚をわしに返せ、返さなければお前の命をとる」と言った。
こうして王小は無理やりに山へ豚を捜しにやらされた。もう豚は狼に食べられてしまったのに何処を捜せと言うのか。
王小は山を上ったり下ったり、暗くなって家に灯がつくまでぐるぐる山を回った。疲れて腹が空いてもあの狂暴な地主の所へは怖くて帰れないし、自分の家へ帰るにも両親が早く死んで帰る家もないのだ。
夜になって星が光り月が出て王小は大きな墓地に泣きながらたどり着いた。墓地の木の間には沢山の人の石像と馬の石像があった、王小は涙を落としながら風の当たらない寝場所を探そうと石人のわきを通り涙が石人に落ちた、するとアラ不思議、石人が本当の人になり、石馬のわきを通り涙が石馬に落ちると石馬が本当の馬になった。
そして王小の周りを囲み、「王小、王小何が悲しくて泣いているのだ」と聞いた、王小は泣く泣く今までのことを始めから終りまで話した、それを聞いた石人と石馬はみんな目を吊り上げて怒り「王小、王小心配するな、俺たちがその悪い奴を退治してやる。これからは俺たちの所に住めばいい」と言って、王小を四棟もある屋敷に連れて行きそこに住まわせた。
さて、話し変わって王地主は王小が十日あまりも帰って来ないので、狼に食べられたのだろうと思った。少しやり過ぎたかとも考えたが王小を可哀相だとは思わなかった。それよりまた豚飼いを雇わねばならぬことを悔やんだ。この時はちょうど五、六月の麦の季節で地主の二、三万坪の麦も黄色くなり、穂も大きくなった、今年は豊作だ、あと十日ほどで刈り入れだとホクホクして目を細め、あご髭を撫でて喜んだ。
ある日、王地主は麦の穂の具合いと色で刈り入れの日を決めようとまた上機嫌で麦畑にやって来た。ところが一目見てびっくり仰天、広い麦畑の至る処、馬の蹄の跡、麦の穂はまるで糞のように落ち、たてよこ十文字に踏み荒されている、王地主はもう少しで狂うほど怒り、すぐ十数人の男たちを集め麦畑を守り、荒した馬を捕まえようとした。
その晩、星が光り月が出ると、大勢の人と馬がワァーと麦畑に突っ込んで来た、麦畑を守る男たちは、ソレッと麦畑を取り囲み、人と馬を東、西と追い駆けたが捕まらない、ただ小さな鶏が面白そうにコココ、コココと鳴いているだけで、あの人と馬は姿を消していた。
翌日、朝早く王地主が麦畑を見るとまたさんざん踏み荒されていた。王地主は麦畑を守っていた男たちを世の中にこんな奇怪な事があるかと怒鳴り散らした。その晩、王地主は二十人の男たちを連れて麦畑を守った。星が光り、月が出るとまたあの大勢の人と馬がワァーと麦畑に突っ込んで来た、王地主が手を振ると男たちは麦畑を囲み、人と馬を捕まえようと東に西に追い駆けたが小さな鶏が面白そうにコココ、コココと鳴いているだけで、あの人も馬も姿を消していた。
三日目、王地主は怒り狂って、男たちを三十人集め、刀や槍を持たせ麦畑の窪地に潜ませた。星が光り、月が出るとあの人と馬がまたワァーと突っ込んで来た、王地主が号令をかけると三十人の男たちは一斉に刀と槍を持って飛び出し、人と馬に斬りつけた。ところが刀の刃はこぼれ、槍の先は欠けてしまった。
これは石人と石馬が王小の仇討ちをしたのだが、王地主はそれには気づかず、これはどう言う事かと心を震わして恐れた。
その時、王小が一頭の馬にまたがり王地主の前に来ると「お前は我ら貧乏人をよくもこき使ったな、今それを馬の蹄でお前にも味あわせてやる」と馬の手綱を引くと、馬は蹄を上げて立ち上がり嘶いて王地主を打ち砕いた。
それを見て王小は石人と石馬を引き率れて姿を消した。
薛天智故事選 00.12.7