姉と妹
昔、愛尼山の麓の村に両親と娘の姉と妹が住んでいました。ある年、無情な病魔が両親を奪ってしまいました。家には少しばかりの財産がありましたが、姉は心の汚い人で、財産を一人占めにしようと、妹を殺そうと思いました。
ある日、姉は妹を連れて山へ柴を刈りにいき、わざと夜暗くなってから家に帰りました。途中で妹は疲れて姉に「姉さん、わたし疲れたわ、少し休みましょう」と言いますと、姉はこれはいい具合だ、この機会に妹を殺してしまおうと思いました。そこで姉は妹に優しそうに「もう少し先に行って休むといいわ、あたしも疲れたから、あたし達は野宿して夜が明けてから帰りましょう」と言いました。
そして二人は、三方が崖になっている山の頂上に着きました。姉が「あたし達、ここで休みましょうよ」と言いますと、妹は「でもここは三方がみんな崖で、ここで寝るのは危ないわ」と言いますと、姉は「山ではこういう所で野宿するのがいいのよ、獣が来たらあたし達どうするのよ」と答えました。こうして二人はここに野宿しました。真夜中になって心の悪い姉は妹がよく寝ているのを見て、妹を万丈の谷底に突き落としてしまいました。
突き落とされた妹は高く積んだ稲の上に落ちました。その積んだ稲のそばに一頭の虎の巣窟がありました、妹が気がついた時、ちょうど兎が来て虎に「大王様、河辺りの家の娘の目が見えなくなりました。実はこの娘の目に朝露を三滴、たらしてやれば見えるようになるのですが、これを誰も知りません」と言っているところでした。虎は「それはいい、あとで娘の内に行って金をとってやろう」と言いました。
妹はこの事をしっかり心にとめておきました。暫くすると烏が飛んで来て虎に「大王様、よいことをお知らせいたします、瀾滄江の岸の大きな石の上に金の壺が埋められているのに、誰もこれを知りません」と言いました。「よろしい、外の者に言うな、金がなくなった時に俺たちで取り出して使おう」妹はこの話もしっかり心に覚えておきました。
夜が明ける時に今度は鹿が来て虎に「大王様、ある村の村人がみんなお腹をこわして、もう大勢死んでしまいまいました。実は三枚の紅毛樹の若芽を食べればすぐ治るのに、誰もこれを知りません」と言いました。「オ−、よしよし、村人がみんな死んでしまえば俺たちは自由自在だ」と虎は喜んで言いました。
妹はこの話もまたしっかり心に刻みました。 朝になって、虎が食べ物を探しに出かけると、妹は急いでそこから離れ、太陽がもうすぐ山に沈もうとする時、小さな河辺り着き、疲れて動けなくなり、そこに休んで水を飲んでいると、一人の老婆がそっと涙を流しているので、「お婆さん、あなたはどうして泣いているのですか」と尋ねますと、その老人は妹を見て悲しそうに泣き、とぎれとぎれに、娘は十六才になって目が見えなくなり、百人のお医者さんに診てもらったり、何百の薬草を飲んだりしても治らないのだと言うのでした。妹はそれを聞いてお婆さんがとても可哀そうになり、慰めの言葉を考えていているうちに昨夜の兎の話を思い出して、「お婆さん、心配しなくていいですよ、わたしが明日の朝早く娘さんの目が見えるようにして上げます」と言いました。老婆は信じられませんでしたけれど、妹を自分の家に連れて帰りました。
翌日、朝早く妹は目の見えない娘を外に連れ出して、朝露を娘の目に三滴、たらしますと娘の目はパッチリと開きました。妹はお婆さんの家に別れを告げて、瀾滄江の河辺のあの大石のそばの砂をかきわけて見ると、果たして金の壺がありました。妹はそれを持って行きました。あまり遠くまで行かないうちに、前から悲しそうな泣き声が聞こえてきました。妹が声のする方に行って見ると、村で人が埋められていました、死人は一人ではありません、大勢です。妹は一人の老婆に、村に何が起こったのか聞いてみました。すると老婆は泣きながら「わたし達は何の罪かわかりませんが、村人がみんなお腹をくだして、もうすぐ村人がみんな死んでしまいます、わたしの家で残ったのはわたしだけです」と言いました。「お婆さん、もう心配しなくていいですよ、わたしが行ってあなた達を治してあげます」と妹はお婆さんに言ってから、村の外の紅毛樹の若芽を沢山取ってきて、村人のみんなに分けて食べさせました。村人が食べ終わるとみんなよくなりました。村人は沢山の金銀を妹にくれましたが、妹は受け取りませんでした。
ところで、あの心の悪い姉は妹はもう死んだと思い、妹がお金を持って帰るとは思ってもいませんでしたから、驚いて妹にどうしたのかと聞きました、おとなしい妹は今までの事をすっかり姉に話しました。姉はその話を聞いて、自分も行って何か持って来ようと、翌日の晩、あの崖の上に行って自分から下へ飛びおりました、姉もまたちょうどよくあの稲を積んだ上に落ちました。暫くすると、兎がやって来て虎に「大王様、河辺りのあの家の娘の目が突然見えるようになりました」と言いました、虎は少しばかり不機嫌な声で 「そうか」と言うと兎を追い払いました。また暫くすると烏が飛んで来て虎に「大王様、駄目です、瀾滄江の岸のあの金の壺は誰かに持って行かれました」と言いました。虎は 「それはどういう事だ」と怒り、烏を怒鳴りつけようとした時、思いがけずまた鹿がやって来て、虎に「大王様、腹を悪くしていたあの村の者たちはみんな治りました」と言いました。
虎は怒って、鹿に大声で「どうしてこんないい事がみんな邪魔されるのだ、誰かが俺たちの話を聞いているんじゃないか、捜してみろ」と言いました。みんなで捜し回ると、鹿が積み上げられた稲の上で盗み聞きしている娘を見つけ、大声で「大王様、ここで人が盗み聞きしています」と叫びました。たちまち虎が駆けて行って、姉を噛み殺しました。
西双版納哈尼族民間故事集成 1992,12,22