三芳の婿選び

 ある夫婦に三人の娘がいた。長女は大芳、次女は二芳、三女は三芳と呼んだ。順に二歳違いでいずれも劣らぬ美しさであった。
 やがて娘たちは嫁に行くことになり、大芳は役人に、二芳は金持ちの若旦那に嫁いだ。二人の姉が続いて嫁ぎ末娘も嫁ぐ歳になった。三芳は姉たちより分別もあり親孝行で賢く、老父母は三芳が可愛いくてよい結婚をさせたいと思っていた。
 ある日、老母は老父に「お前さん、三芳の婿にはどんな人がいいかね」と聞いた、「身分の高い良家がいい」 「なに言ってんの、家には家の釣り合いがあるのよ、高い身分の家じゃ苦労するわ、お前さん、分からないの?」 「じゃどうすればいい?」 「あたしはどんな婿がいいのか三芳に聞くのが一番いいと思う」と老母は言い、三芳を呼んで「芳や、お前はどんな婿さんを選ぶつもりなの」と聞いた。

  三芳は顔をほんのり赤くして「お母さん、あたしはまだ考えてないわ」 「じゃ、母さんが考えてやる、大芳の夫のような婿はどうだい」 「あたし、官吏はいや」 「どうして?」 「汚い官吏ばかりで清廉な官吏が少ないから。大姉さんの夫だって分からないわ。あたし子孫三代まで後ろ指をさされ、唾をかけられるような苦労はしたくないもの」 「じゃあ二芳の夫のような婿はどうだい」 「あたし、金持ちの息子はいや」 「どうして?」 「金持ちの息子は家を没落させるから。中姉さんの夫だって分からないわ。あたしは夫が飲む買う打つと放蕩して貧乏になり、ある日突然籠を抱えて乞食になるなんていやだわ」 

  「三芳や、官吏はいや、金持ちもいやならどんな婿がいいの」 「拍子木は上にも下にもなるし、お日様はどの家にも照ります、だから貧乏金持ちに関係なく気の合った人をあたしは探して来ます」それを聞くと老父母は「いいよ、探しておいで」と言った。こうして三芳は若い男に扮装して婿選びの旅に出た。

  さて、初めの日に出会ったのは若い大工、体つきもしっかりしていて三芳も心が動き言葉をかけた、「もしもし、あんたは何を作っているんだ?」 「家の梁だ」 「どうしてノミの穴がそんなに大きいんだ?」 「この家は旨い物を食わせないから、いい加減にやってんだ」三芳は何も言わず、心の中で“この職人はひねくれている、この人の嫁にはなれない”とつぶやいた。
  翌日、会ったのは格好のいい商人で三芳も心が動き「もしもし、あんたは何をしているんだ?」と聞いた、「砂で落花生を炒っているんだ」 「でも砂を払わなければ砂が落花生につくよ」 「こうすると売る時に分量が増えるんだ」三芳は何も言わず、腹の中で“この商人は良心がない、この人の嫁にはなれない”とつぶやいた。

 三日目に会ったのはのろまそうな若い農民で、道端に立ってキョロキョロ周りを見ている、「もしもし、あんたは何を見ているんだ?」と三芳が聞くと「人を待ってるんだ」と答えた、「どんな人?」 「俺が畑を耕して帰るとここに包みが落ちていたんだ、中に百両の金貨、二百両の銀貨が入っている、そこでここに立って落とし主を待っているのだがまだ来ない」 「落とし主が来ないなら貰ったら」 「俺たちはそんな悪い事はしない」

 それを聞くと三芳は話を変えて「あんたの家族は?」と聞いた、「年寄りの母が一人だ」 「嫁さんは?」 「貧乏人の処へ誰が来るものか」 「このお金があれば貰えるじゃないか」と言うと、その若い農民は目を丸くして「お前は見かけによらず、そんなに腹黒い奴だったのか、もうあっちへ行け」と怒った。
 だが三芳は笑って「馬鹿だな、あたしはあんたをいい人だと思っているのに」と言うと、若い農民は足を上げて「余計な事を言うと、殴るぞ」とまた怒った。三芳はまた笑って「あなた怒らないで、あたしをあなたの妻にして下さい」と言った。
 「俺は男、お前も男、お前、俺たち貧乏人をからかうのはよせ」と若い農民が言うと三芳は帽子を脱いで女の姿に返り、若い農民を驚かした。 こうして、三芳と若い農民は結ばれ老父母と一緒に楽しく暮らし、上の姉の夫は官吏を辞めさせられ、中の姉の夫は貧乏になった。     

              薛天智故事選                             00.9.16.

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