悪代官を懲らしめる

 今ではない、昔のことだ。
 ある県城に酷く食い意地のはった代官が赴任して来た。代官は任に着くとすぐ、この県城に住む者は誰も順番に代官に一日三度の食を供し、上等の酒で歓待せよと告示した。
 そして更に、これは朝廷の命による官を重んじることだ、朝廷の命による官を軽んじることは皇帝を軽んじることであり、皇帝を軽んじることは皇帝を欺く罪だ、この罪を犯した者は九世代に連なり財産を没収すると書き加えた。

 県城に住む人々はみなこの告示で、苦しみは頂点に達したが弱い力で凶悪な告示に逆らう事はできない。人々は仕方なく歯を食いしばって代官に食を供しなければならなかった。
 こうしてこの食いしん坊な代官は涎を垂らし連日八人担ぎの駕篭に乗り、東の家、西の家、こっちの家、あっちの家を回り、腹一杯飲んだり食ったりして半年過ぎ、県城の中に住む人々の家では食べ尽くし、県城の外に住む人々の家を回りはじめた。

 ある朝、代官は髪かたちを整え、今日は何処の家へ行こうかと思案していると、官邸の門の前に小さな馬車が来て、一人の身なりのいい若者が降りて来ると、代官にうやうやしく礼をし「代官さま、今日は馬車で我が家の宴にお出で下さい」と言った。
 代官が「わしは馬車はガタガタして嫌いじゃ、やはり駕篭で行きたい」と言うと、若者は笑って「代官さま、それはもったいない、馬車でガタガタ行けばお腹が消化されて空くから我が家に着けば沢山食べられるというものです、それに供を連れて行けば口が多くなります、我が家の料理は世間にない美味しさですから、供の者に食べられてはつまりません、それより代官さま一人で食べ、残った料理は持って帰り、奥方さまに食べさせた方がいいですよ」と進言した。

 それを聞くと代官は膝を叩いて「そうだ、そうだ」と頷いた。こうして代官は一人で馬車に乗り、一人で食べに若者と一緒に行った。 小さな馬車は県城を出て走りに走り、昼になると代官は腹がクウクウ鳴って、「お前の家は何処じゃ」と聞いた、若者は「もうすぐです」と答えたが、日が西に傾いてもまだ着かない、「まだ着かないのか」 「あそこを曲がったらすぐです」
 とうとう日は落ち、代官は腹がへって我慢できず「おい、半日たっても着かないなんて、お前、わしをからかっているんじゃないか」 「代官さま、代官さま、せかないで下さい、あの黒松の林を入ればすぐですから」そう言っているうちに林に入り若者が声をかけると、十人ばかりの若者が出て来て、たちまち代官を馬車から引きずり降ろし木の幹に縛りつけてしまった。

 代官は驚きブルブル震えながら「貴様たち、何をするんだ」と叫ぶと、若者たちは声をそろえ「食いしん坊な奴の口をこじあけ歯を抜いて尻の穴を塞いでやる、ざまあみろ、それでもまだ食う気か」と言った。
 若者たちは犬の糞をなすりつけた棒で代官の口をこじあけ、鉄のヤットコで歯を挟んで一本一本むしり取り、蝋を注いで口を塞ぐと代官は無残な死を遂げた。     

            薛天智故事選                               00.8.11

     はじめに戻る