蝙蝠はなぜ夜に出るのか
蝙蝠はなぜ昼間巣にいて、夜になってから出て来るのか。これには面白い話がある。
遠い昔、天にもとどく大樹の大森林があった。その空は百鳥の世界であり、その地は百獣の楽園であった。鳥と獣は仲睦まじく、何時も一緒に歌い舞い、喜び遊び、兄弟のようであった。
それがある日、突然どうしたわけか、この森の王は飛ぶ鳥と走る獣のどっちだという論議が持ち上がり、鳥と獣は森林の空き地で、双方の代表による弁論大会を開くことにした。鳥の王、鳳凰は雲雀を代表とし、獣の王、虎は猩猩を代表にした。
先ず雲雀が「我等には翼があり、広い海に天高く飛翔し、多くの見聞を広める、故に我等がこの森の王たることは当然だ」と弁じた。
猩猩は「我等の四肢は強健で、谷を越え山嶺に跳ね、四海を我が家となす、故に我等がこの森の王たることは不変の真理だ」と反論した。鳥と獣はそれぞれに己の理屈を弁じて譲らず、遂に弁論で解決せず、天と地に分かれた争いとなった。
さて、この時は飛ぶ鳥の一致協力が功を奏し、走る獣が敗れ、鳥が森林を占領し、森の王を奪取した。
鳥は祝賀会を開催し、喜び、歌い舞い、上機嫌になっていると、蝙蝠が鳳凰の前にやって来て、「聖明なる王さま、我等飛ぶ鳥が勝利しました、どうか私にも勝利の喜びを分けて下さい」と言った、鳳凰は蝙蝠が森の王の争奪に何の力も出さず、大樹の洞の中から見ていただけだと知っていたので、「お前は美しい羽がないから鳥の仲間に入れることは出来ぬ」と言うと、蝙蝠は急いで肉の翼を広げ「私には二枚の翼があり、空を飛べます、どうぞ私も鳥の仲間にして下さい」と哀願した。それを見た鳳凰は可哀相になって許してやった。
さて、さて、森の王の争奪戦に敗れた獣はしばらくして前の失敗を教訓に大反撃を試み、遂に鳥を打ち負かし森の王を奪回した。
獣は戦勝会を開き、歌ったり跳ねたり大喜びしていると、蝙蝠が虎の前にやって来て、「聖明なる王さま、我等走る獣が勝利しました、どうか私にも勝利の喜びを受けさして下さい」と言った、虎は自分たちが森の王の奪回のために鳥たちと戦っている時、蝙蝠は大樹の洞の中から見ていただけだったので、あっけにとられ、「お前には強健な脚がないから獣の仲間に入れることは出来ぬ」と言うと、蝙蝠は急いで爪を出して「私は脚があり地を走れます、どうか私も獣の仲間にして下さい」と泣きそうになったので、虎は許してやった。
ところが、何時の間にか、どういうわけか分からないが、鳥と獣は仲直りして互いに連合の歓迎会を開き、歌ったり踊ったりして楽しんだ。
そこへまた蝙蝠がやって来た、鳥と獣たちは今までの蝙蝠の態度がはっきり分かっていたので、鳥と獣たちはみんな怒り蝙蝠を取り囲んだ、蝙蝠はこれは形勢不利だと、慌てて大樹の洞の中へもぐり込んでしまった。
それから蝙蝠は鳥や獣たちを避けるようになり、昼間は出て来なくなったのである。
薛天智故事選 00.8.10