雀と玉皇大帝
遠い昔、雀は鳳凰よりも美しい羽をもち、どの鳥よりも美しい声で鳴いた。それで天界の玉皇大帝は何時も雀を身近に侍らせ、歌わせたり踊らせたりして楽しんでいた。
さて、天界の女帝が地上に人を造ると、玉皇大帝は人が鳥や獣よりずっと優れているのを見て、いくいく人が天界に叛き、天界を制するようになるのを恐れ、人に野草や獣の肉を食べ、木の葉を身に着けることを命じた。雀はこの命令を聞くと、死を覚悟して玉皇大帝に「恐れ多くも天帝は天地を制し、天地で最も尊いお方で御座います。天帝はまた万物の中で人が最も聡明であることを御存知であるなら、人には五穀などを食べさせ、棉布の衣服を身に着けさせるのがよろしゅう御座います」と進言した。
玉皇大帝はこれを聞くと非常に怒り「わしにはわしの考えがあるのだ、小雀は余計な口出しをするな」と斥けた。雀は玉皇大帝が頑固で何も聞き入れそうもないので、一つの計りごとを考えた。
まず、雀は五穀やいろいろな種をしまってある天界の蔵の前に飛んで行き、美しい羽を振るわせ、澄んだ声で、蔵を守る天兵たちに「みなさん、みなさんはこの蔵をずっと長い間、守り続けて退屈でしょう、わたしがみなさんのために歌を歌い、舞を舞ってあげましょう」と言った。
すると天兵たちは一斉に「それはいい、早速、歌と踊りを見せてくれ」と喜んだ。そこで雀は子守唄を歌い、眠気を誘うゆったりとした踊りを舞った。やがて天兵たちはみんな、そこここに横になって眠ってしまった。つぎに雀は鍵を盗み出し、そっと蔵の錠前を開き蔵の中へ入り、高粱、大豆、粟、麦、米などの種を持ち出すと地上の人々に分けて配った。それから人は五穀を食べ、綿布の衣服を身に着けて暮らすようになった。
ある時、玉皇大帝は天界の神たちを率いて下界を視察し、人が五穀を食べ、衣服を身につけているのを見ると「わしが人にさせてはならぬとした事を人にさせた大胆不敵なやつは誰だ」と怒り出した。
神々は震え上がって一斉に玉皇大帝の前にひれ伏し、争って「これは私のした事ではありません、なにとぞご賢察下さい」と弁明したが玉皇大帝はますます怒り「どいつも、こいつも知らぬ、存ぜぬと言うのか、この糞垂れめ!」と青くなって目を吊り上げ、まさに神々を拷問にかけ真相をあばこうとした時、雀は自分が玉皇大帝の責めを一身に負おうと玉皇大帝の前へ飛んで行き「玉皇大帝、どうか怒りを静めて下さい、これは私がした事です、私を厳重に処罰して下さい」と申し出た。
玉皇大帝は即座に「お前は天界の逆賊、“家賊”だ、誰かある、こいつを八つ裂きにしろ」と裁断した。後に雀の別名を“家賊”としたのはこれが始まりである。 もともと神々は人に五穀を作らせないのは不当だと玉皇大帝に進言しようと思っていたのだが玉皇大帝の怒りを恐れ、どの神も言えなかったのだ。それを雀が一身を賭して五穀の種を人に配り、身を犠牲にして罰を受けるのに神々は感動し、玉皇大帝に雀を死罪にしないようにと哀願した。
玉皇大帝は雀を死罪にすればかえって神々が反発するかもしれないと考え、すんなりと「それでは神々の気持ちを汲んで雀の死罪をとりやめよう、誰かある、雀の美声と美しい羽を取り上げ、下界へ追いやり二度と天界へ戻れないようにしろ」と言った。
それで雀はどの鳥より美しかった声と、鳳凰より綺麗であった羽を失い、下界へ落とされ今のような姿になった。けれども人は雀に感謝して人家に雀を住まわせ、人の作る五穀を食べるのを許して今日に至っているのである。
薛天智故事選 00.7.6