竜に乗り鳳を抱えた娘

 昔、馬家村に四、五歳の時に両親に死なれ、兄夫婦に育てられた娘がいた。
 兄は結婚する時、「俺には小さな妹がいるから、あんたには余計な家事が増えて大変だろうが……」 と新妻に言うと、新妻は「あたしは兄嫁なのよ、義妹に悪くするわけないわ」と言ったが、三日もすると態度が変わり、毎日、あっち、こっちへ出かけ、豚や鶏の世話、炊事、何から何まで小さな義妹にやらせた。
 そして少しでもやらないと「お前は何もしないで、皇帝のお后にでもなるつもりかい、でもその顔じゃね。フン、そんな運ありっこないよ」と嫌味たらたらに言うのだった。

 諺に言う“人は外見によらず、海は升で量れない”と。
 月日はたって、娘が二八の十六歳になった年、都の皇帝は“土の龍にまたがり、鳳を抱えた娘を后にせよ”という天帝の夢を見た。
 天帝を篤く敬う皇帝はすぐ大臣を遣わし、この“土の龍にまたがり、鳳を抱えた娘”を探させた。勅命を受けた大臣は担ぎ手八人の大きな駕籠に乗り、百人の兵を従えドラを打ち、笛を吹いて道を開けさせ、各地を巡り“土の龍にまたがり、鳳を抱えた娘”を探した。勅命大臣は多くの地方を巡り、兵も馬も疲れ果ててしまったが“娘”を探し出せず、もし“娘”が見つからずに都へ帰れば皇帝に首を刎ねられると焦った。

 ある日、勅命大臣の一隊は馬家村に着いた。馬家村の村長は村人たちに“犬は繋ぎ、鶏は小屋に入れておけ、子供を泣かすな”と布告をだしていたが、村の老若男女は都から勅命大臣が率いて来た兵馬の一隊を見ようと大騒ぎであった。勅命大臣の一隊がこの義妹の家の前を通り過ぎようとした時、突然、鶏が一羽、小屋から飛び出して、土塀へ駆け上がった。

 兄嫁が義妹に「早く捕まえろ」と怒鳴った、義妹は急いで土塀にまたがり鶏を捕まえ胸に抱くと、その時、勅命大臣が義妹のこの格好を見て、慌てて「止まれ、止まれ、お后がおいでになる」と叫んだ。兵士たちが「何処にお后さまが……」と聞くと勅命大臣は 「あそこにおいでになる」と“娘”を指し、「早くお后さまにお目見えするんだ」と命じた、数人の兵士たちが「畏れおおくも、お后さま」と“娘”の前に跪くと、義妹はその言葉にびっくり、何がなんだかわからず、夢中で土塀から飛び下りると、家の中に逃げ込んでしまった。

 勅命大臣も続いて家に入り、お付きの者に衣装、首飾りを取り出させ“娘”の髪を梳き化粧をさせると、その日のうちに“娘”を都へ連れて行ってしまった。  兄嫁は義妹の姿が突然見えなくなり、思いもしない夢の中にいるようにボウとしていた。 “娘”は皇帝のお后となった。 

            姜淑珍故事選                                  1999.11.15

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