馬の卵
ある金持ちが哈尼山の麓の町の賑やかな三叉路の角に馬を売る店を開いた。金持ちはずるくて計算高かったから、すぐ金を儲けるようになった。
さて、この金持ちに実直で貧乏な娘婿がいた。娘婿は義父の家の下男で年中休みなく働かされていた。なかでも辛い仕事は年末にこの馬の店の厩を掃除させられることであった、厩にたまった一年中の馬の糞を掻き出して、田や畑へ担いで行くのである。これは臭くて汚くて死ぬほど疲れる仕事で、娘婿は毎年辛い思いをさせられ、どうしたらいいかと、いろいろ考えた末、ある年の暮れにいいことを考えついた。
その年の終わりに娘婿はまた厩の掃除に呼び出されると、二つの空の麻袋を肩にひっかけて義父の家へ行った、それを見た義父は少しおかしいと思ったが何も言わなかった。
やがて、娘婿は厩の掃除が終わると、何か一杯つめた二つの麻袋を肩に担ぎ腰を曲げて家へ帰ろうとした。義父は“何かわしの家の物を持ち出したのではないか”と疑い、娘婿を呼びとめ「オイ、何を担いでいるんだ」と問い質した。
娘婿はわざと言いたくないという素振りを見せて「お義父さん、別にいい物ではありません、馬糞の中から拾った物です」と答えた。すると義父はますます怪しく思い「ちゃんとはっきり答えろ」と責めた。娘婿は「麻袋に入っているのは何十日もたまった厩の馬糞を掻き出した時に拾い出した『馬の卵』で、わたしの家族はこれで一年暮らしているのです」と言った。義父はこれを聞くと娘婿に『馬の卵』という物をとられたことを悔やんだ。
そのつぎの年、義父はまた娘婿に『馬の卵』を持って行かれてはたまらないと厩の掃除をさせなかった。実は麻袋の中はみんなただの丸い石なのに欲張りな義父は『馬の卵』という物が本当にあるのだと思い、娘婿に騙されたのだ。それから『馬の卵』はこの町に笑い話として伝えられた。
西双版納哈尼族民間故事集成 1999.7.23