黒宝と白宝

 昔、黒宝という兄と白宝という弟がいた。黒宝夫婦は心が曲がり、怠け者の欲張りでずるい。弟の白宝夫婦は真面目で心が優しく、よく働き暮らし向きもよかった。
  だが、黒宝はそれぞれで暮らしたほうが得だと、白宝夫婦に分家させようと考え、それを女房に話すと「それは駄目、お前さんは欲張りで怠け者だから白宝を分家させては損をする、駄目」 「それは大丈夫だ、俺が得になるように印しをつけた籤で決める事にするから」と言った。
 黒宝は白宝に「おい白宝、俺たち兄弟も所帯を持ち、子供も生まれた。ここらでそれぞれに暮らすことにしようじゃないか」と言った、白宝の女房は「義兄さん、あたしたちはまだ若く独り立ちは無理です、一緒に暮らしてくれませんか、あたしたち夫婦が一生懸命働いて、義兄さんの仕事を少なくしますから」と言うと、黒宝は「駄目だ」と言って、ますます分家しようと言い張り、家の二棟と中庭を分ける籤を作り、一つは四方院の部屋、一つは四方院の庭と書き、黒宝はすぐ印しをつけた籤をひき家をとってしまった、白宝は庭の籤をひき「兄さんはいい籤をひいてよかった、俺たちのはよくない籤だったが、まあいいや、俺は新しく家を作ろう」と言って白宝夫婦は引っ越した。

 春の種蒔きに黒宝は人を雇ったが、白宝は自分で種蒔き行くと、畑に燕が“チィチィ”鳴いて倒れている、拾い上げると足が折れている、白宝は可哀相になって燕を高粱の皮でくるみ、家で養生させた。六七日すると燕は元気になって南へ飛んで帰り、燕の王に白宝に助けられたことを話すと、燕の王は「お前、その人の恩返しに来年の春、この瓢箪の種を持って行け、この種を蒔けば大きな宝の瓢箪がなるから」と言った。

 翌年の春、白宝が畑にいると、あの燕が来て白宝の肩に止まり、首を振り腰を屈めて一粒の瓢箪の種を口から出した。「お前、この瓢箪の種を植えろと言うのかい、よし分かった植えるよ」と白宝が言うと燕は飛んで行った。“山に青い瓢箪、畑に青い瓜”と言う、白宝は山が緑になったらすぐ植えて、秋になったら実がなるだろうと瓢箪の種を庭に植えた。
 この瓢箪は大きく育ち、葉は柳で編んだ籠のように大きく、やがて花が咲き、瓢箪の実は風船のように人の背ほどの大きさになると、横に膨らんできた。白宝が毎日、瓢箪の実をなでているうちに、早くも秋になって実は熟した。白宝の妻は「こんな大きな瓢箪をあたしたち二人では割れない、市場へ行って瓢箪を割れる人を雇ったほうがいい」と言った。

 白宝は市場へ行ってみたが、秋は何処も忙しく、みんな争って人を雇うから、なかなか見つからない、最後に来た二人はどちらも九尺もある大男で筋肉がもりもり盛り上がっている、これではどれだけ食べるかわからないから誰も雇おうとしない、白宝はすぐ「わたしはあんたたちを雇いたい、来てくれないか」と言うと、二人は「あんたは白宝さんかい」と聞いた、「どうしてわたしの名を知っているんだい」 「いや、人に聞いたのだ」と二人の男は答えた。

 白宝は二人を連れて家へ帰り、先ず食事を出すと食べない、「いいのかい、人や馬はお腹を一杯にしなければ働けないなのに」と言うと「わしらは先に瓢箪を見よう」と言って筒袖から鋸をだすと、鋸はたちまち一丈の大きさになり、二人は早速、火のような勢いで“ヨッシャ、ヨッシャ”と瓢箪を挽きだし、“ガサッ”と音をたてて瓢箪は二つに割れ、中からザクザクと金銀財宝が出てきた。
 それからまた白宝は食事の用意をして「お二人さん、食事をして下さい」と言ったが、何時の間か二人はいなくなっていた。白宝は急に金持ちになり、家を買い、畑を買い、大工を呼び、新しい部屋を建て、一月もしないうちに四合院を建ててしまった。
 兄の黒宝は弟の白宝がどうして財産を手に入れたのか、わけを聞こうと白宝の家へ行った、白宝は兄が来たので、食卓に美味しい物を並べてやった、「お前、金を儲けたそうだな」 「ええ」白宝は自分がどうして金持ちになったかを話した。黒宝は家へ帰ると妻にこの事を話すと、妻は「来年の春はあたしたちもやってみよう」と言い出した。

 翌年の春、燕が巣を作ると、黒宝の妻は蛇で燕をおどかし、巣から落ちた燕が足を折ると家で治してやった。秋になって燕は南へ帰り、燕の王に「白宝の兄と嫂は、わざと私に足の骨を折らせ、私が瓢箪の種を持って行くのを待っています」と言った、「よし、兄夫婦にはこの瓢箪の種をやれ」と燕の王は言った。

 翌年の春になって燕は黒宝にこの瓢箪の種をやった。秋になると瓢箪が三つなった、黒宝は市場へ行って弟がやった通りに最後に残った口曲がりと猫背の男を雇い「俺の家の三つの瓢箪を割ってくれ、金は欲しいだけ出す」と言った。
 すると頭から耳まで毛むくじゃらで口には四本の牙がある猫背の男と雷神のような口曲がりの男は「賃金は瓢箪を割ってから決めてもいいが、先ず、飯を食ってからだ」と言った、黒宝は「先に仕事をしてから飯にしてくれ」と言うと二人は“こいつけちな奴だ”と「よし、先に仕事をしよう」と言って、鋸で“ギ−コ、ギ−コ”と挽き出したがきれない。

 「これは駄目だ」と二人は針を出して突くと三つの瓢箪は半分に割れ、中から書き付けを持った男が一人ずつ出て来て「この書き付けはお前の祖父の借金の証文だ」 「この書き付けはお前の父親の借金の証文だ」 「この書き付けはお前の曾祖父の借金の証文だ、この三枚の証文の借金を俺たちに返さなければ、お前の命を貰う」と、祖先の借金の証文を持った三人の男が言った。黒宝は雇った二人の男に「お前たちは何だってこんな借金取りの男を出したんだ」と怒ると「俺たちだって瓢箪の中に何があるかは知らなかった、賃金をくれないなら、俺たちは帰る」と言って二人の男は帰ってしまった。

 さて、三人の男が持って来た書き付けには祖先の借金がこまごまと記されていて返さないわけにはいかない、黒宝は家を売り、畑を売って借金を返した。実はこの三人の男は狐の精で、心のよくない黒宝を懲らしめに来たのだった。  

          中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻上                   1999.4.23