木こりの王二小

 昔、長白山の麓の茅葺きの小さな家に母とその息子が住んでいた。息子の名は王二小、木こりである。
 ある日、王二小は山仕事をして昼に弁当をひろげ焼餅を食べようとすると、破れた着物を着た白い髭の老人が来て「お前さん、わしは何日も何も食べていない、哀れな哀れなこの爺にその焼餅をくれないか」と言った。王二小は心の中で“この爺さんに焼餅をやれば俺の食べる弁当がなくなる”と思ったが、見れば爺さんは腹を空かして立っていられない様子、「俺はしばらく仕事をすれば家へ帰るから、お爺さん食べていいよ」と言うと、爺さんは遠慮せず焼餅をムシャムシャ食べると、何も言わずに帰ってしまった。王二小も柴を担いで家へ帰った。

 翌日も王二小が山で柴を刈って、昼に焼餅を食べようとすると、あの爺さんがまた来て焼餅をくれと言う、王二小が「いいよ、俺はお爺さんより若いから大丈夫だ」と言うと爺さんはたちまち焼餅を食べ、また何も言わずに帰ってしまった。王二小は柴を担いで家へ帰ると母親に「おっかさん、明日は焼餅を二枚焼いておくれよ」と言った、「わかったよ、二枚焼くよ」と母親は答えた。三日目、王二小は何時ものように柴を刈っていると、爺さんがやって来た、「お爺さん、今日は焼餅を二枚持って来たから、お爺さんが一枚、俺が一枚だ」と焼餅をやると、爺さんはそれを食べてまた何も言わずに行ってしまった。  

 四日目、王二小が焼餅を食べようとすると、また爺さんが焼餅をくれと言う、王二小が一枚渡すと爺さんは「お前さん、わしは今日は二つの山を越え、お腹がとても空いたから二枚みんなわしにくれ」 「いいよ、みんなあげる、俺は家へ帰れば食べられるから」と王二小は爺さんに二枚やると、爺さんは二枚ともたいらげまた何も言わずに帰ってしまった。王二小は家へ帰ると母親に「おっかさん、明日は焼餅三枚焼いてよ、俺はこの頃、よく食べられるんだ」 「わかった、三枚焼くよ」と母親が答えた。

 五日目、王二小が焼餅を食べようとするとまた爺さんが来て、焼餅を二枚食べて行ってしまった。 こうして爺さんは毎日、王二小の焼餅を食べ、七七四十九日目に「お前さん、わしはこの山の後ろの小屋に住んでいるが、今日、ちょっと寄っていかないか」と言った。王二小は「でも、俺には年寄りの母親がいて早く帰らないと心配するんだ」と言うと、爺さんは「そうか、それならわしも帰る」と言って帰った。やがて年の暮れがきて王二小は爺さんに「明日は正月だからわたしの家で正月をしませんか、わたしの家は母一人ですから」と誘うと爺さんは「行かないよ、わしはやはり我が家がいい」と答えた。

 翌日は正月、母親が「二小、今日は山を休んで一緒に餃子を作っておくれ」と言ったので、王二小は母親と一緒に餃子を包んで茹でた。それから王二小は「おっかさん、俺たちはどうして食べていけるんだと思う」と聞いた、「馬鹿な子だね、お前が柴を売ってくれるから食べていけるんじゃないか」 「その柴は何処から取ってくると思う」 「山からだろう」 「そう、山がなければ柴も取れない」 「そうだね、山がなければわたしたち母子は生きていけないよ」と母親が言うと王二小は「おっかさん、俺たちが正月だから山も正月だ、山にも餃子を供えようよ、いいだろう」 「いいよ、早く行っておいで、餃子はお前が帰って来てから一緒に食べよう」と言った。

 王二小は餃子を皿に盛って、山の爺さんの家へ行くと爺さんはまだ寝ていた、王二小が「お爺さん、餃子を持って来ましたよ」と呼びかけると、爺さんは喜び「有り難い食べてしまうから皿は持って帰ってくれ」と言って爺さんは餃子を食べ、そして王二小に「わたし今までお前さんに食べ物を貰った、今日はお前さんにその礼をしたい」と言った。
 だが爺さんの家の中には小さな寝床とその周りに草が積んであるだけだ、王二小は心の中で “何もないのに俺に何をくれると言うのだろう”と思い「わたしは何もいりません、早く帰らないと、母が待っていますから」と断ると、爺さんは「いやいや、その積んだ草の中にあるから持って行ってくれ」と言った。
 王二小が草の中を見ると、汚い扇子と汚い帽子それに小さな木の皿があった、爺さんは「扇子はお前さんが行きたい所へ連れて行ってくれる、地面に十字を描きその上にこの扇子を置く、そしてお前さんが扇子の上に立ち目を閉じる、決して目を開けてはいけない、するとしばらくしてお前さんの行きたい所に着く、その帽子は被ると誰からもお前さんが見えない、木の皿は一文銭をのせ蓋をして開けると、皿一杯のお金が出てくる、持って帰ってくれ」と言った。

 王二小は家へ帰り、嬉しそうに「おっかさん、餃子を食べたら、いいことを話すよ」と言って餃子を食べ終わるとこのことを話し、一文銭を木の皿にのせ蓋をして開けると、皿一杯のお金が出てきた。扇子と帽子の二つも試してみるとその通りになった。
 母親は喜んで「お前、これは誰から貰ったんだい」と聞いた。王二小は今までのことをすっかり話した。母親と王二小は一晩で金持ちになり、翌日、「わたしたちはお爺さんのお蔭でお金持ちになったんだから、お爺さんを家へ迎えて来よう」と相談して、王二小が北山の爺さんの家へ行くと、爺さんも家もなくなっていた。金持ちになった母親と王二小は家を建て、畑を買い、王二小は柴を刈る仕事もやめた。

 ある日、王二小は母親に「おっかさん、お金ができたから人がいい所だという蘇州や杭州へ一度行って、いい布や着物、美味しい食べ物を買って来るよ、あの扇子があるから一日で帰って来られる」と言って帽子を持ち、地面に十字を描き、上に扇子を置くと扇子の上に立ち「蘇州へ」と言って目を閉じた。すると風の音がして空へ登っているようだった。
 しばらくして風の音がやみ、目を開けると蘇州であった。王二小は扇子をしまうと賑やかな街の中へ入って、まず着物を買って着替え、布を買い食べ物を買うと家へ帰ることにした。王二小はまた地面に十字を描きその上に扇子を置き、帽子を持って扇子の上に立ち、目を閉じると「家へ」と言った。するとまた風の音がしてきた。王二小は“あの爺さんは目を開けるなと言ったが、目を開けるとどうなるのだろう試してみよう”と目を開けると、とたんに王二小は森の中に落ち、帽子はあったが扇子はなくなり家へ帰れなくなってしまった。

 王二小は一日中歩いたが森から出られず、夜になると太い大きな木に登り、猛獣に食べられないように木の上で寝た。木の下には狼虎豹が群れをなして人間の匂いを嗅ぎつけ木を囲んで咆えたが王二小を食べることはできなかった、王二小はあの帽子を被っていたから猛獣には王二小が見えなかったのだ。
 こうして王二小は五六日歩いたがそれでも森から出られない、食べ物もなく着物も破れなお二日歩くと王二小は飢えて歩けなくなった。すると前の大きな木に赤い綺麗な実がなっているので、その実を二つ採って食べると甘くて美味しい、ところがしばらくすると、頭が痒くなってかくと、アッ、頭に二本の角が生えている、王二小は慌てて引き抜いたが抜けない、もう駄目だ、森から出ても化け物にされてしまう、見ると赤い実のなった木の前に黄色の実のなった木がある。
 こうなればどうなるかあれも食べてみようと王二小は木色の実も二つ食べてしまった。するとまた頭が痒くなって頭をかくと角がなくなっている。王二小はそうか、赤い実は角を出し、黄色の実は角をなくすのか、この実は何かの役に立つかもしれないと王二小は赤と黄色の実を二つずつ採ってまた歩きはじめた。

 何日か歩いてやっと森を抜けまた蘇州へ戻った。しかし何もかも失い、家にも帰れない。そこで王二小はこの赤い実を人に売れば食べた人は角が出て誰にも治せない、そこで黄色い実を食べさせれば角がなくなる。これは金になると考えた。
 その晩、蘇州で歌と踊りの芝居があり、この地方の一番金持ちの劉長者の娘が女中とこの芝居を見ていた。王二小は娘の前に行って「娘さん、果物はいかがですか」と赤い実を娘の前に出した、娘は匂いをかいで「いい匂い、みんな買うわ」 「二個しかありません」娘は女中にお金を払わせて赤い実を買ったが、すぐ食べたくなって食べてしまった。
 すると頭に角が生え、女中は驚いてすぐ戻り劉長者に知らせた。長者は駕籠を持って駆けつけ娘を乗せて家に帰り、名医を呼んだがどうしても角はとれない。そこで長者は『娘の病気を治した者は誰でも娘の婿にする』という高札を出した。

 王二小はこれを見て早速、長者の家へ行こうと思ったが、こんな姿では馬鹿にされると考え、あの帽子を被って姿を見えないようにして屋敷に入り、夜になってから娘の部屋に入り椅子に座った。だが王二小の姿は人に見えないから、まず娘に王二小がいることを気づかせなければならない。
 王二小は持っていたひまわりの種をだして食べ始めた。ひまわりの種を割る音を聞いた娘は鼠が何かかじっているのだと思ったが、椅子の下にひまわりの種の皮が落ちて溜まってくる、これはおかしい変だと気がついて娘は悲鳴を上げた、長者や雇い人は娘に悲鳴に驚いて駆けつけた。
 見るとひまわりの種をかじる音がして皮も落ちて溜まってくるのに人の姿が見えない、長者は「あなたは人ですか、神様ですか、出て来て下さい、もし人なら娘とあなたを結婚させます、神様ならお告げがあればお祭りいたします」と言った。そこで王二小は「私はあなたの娘さんの病を治しに来た人間です、あの高札が本当なら証文を書いて下さい」と言うと長者は証文を書いて机の上に置いた。

 王二小は帽子をぬいで体を現わし、証文を受け取ると、黄色い実を出して娘に食べさせると娘の角はなくなった。娘は大喜び、長者も喜んで王二小を客間に案内した、王二小はどうしてこの帽子を手に入れたか、どうして蘇州へ来たかなど今までのことをすっかり話し終わると「私の家には母が待っていますからここに長くはいられません。無理にとは申しませんが娘さんが私と結婚して帰ってもいいと言うなら一緒に帰ります。いやだと言うなら私に旅費を下さい、それでも結構です」と言った。

 長者は王二小がいい人で娘の病気も治してくれたし、それに治してくれた人に娘を嫁にすると高札出し、証文も書いた。もし娘を嫁にやらなければ、わしはこの土地で笑い者になってしまうと思い「約束は約束だ」と二人を結婚させた。若夫婦は何日かたって喜んで王二小の家へ帰った。家へ帰るとあの木の皿も帽子もなくなっていた。  

             中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻上                   1999.4.8