猫と犬の不和

 もともと猫と犬は今のように喧嘩することはなかったのだが、こんな事が伝えられている。

 ある日、猫と犬を飼う家で、女房が大事にしていた耳輪をなくした。亭主はもしかすると女房が誰かと浮気して、その相手に記念にやったのじゃないかと、何時までも文句を言っていた。しかし女房は何処でなくしたかわからず、何処を捜したらいいかもわからなくて困っていた。

 ところが、この家の猫と犬は何時も女房のそばにいたから、言葉が話せなくても女房が川で洗濯していて耳輪を川の中に落としたのをはっきり見て知っていた。そこで猫と犬は相談して一緒に川へ耳輪を捜しに行った。犬は泳げるのであちらこちら川の中を捜し回り、お腹が空くと川の魚を食べたり、魚を捕らえて岸の猫にやったりした。猫はとても魚が好きで、つぎつぎと魚を食べていると、魚の腹の中から耳輪が出てきた、「アレ−」と、猫と犬は驚き、猫が「この耳輪じゃないか」と言うと、犬も「そうだ、早く持っていっておかみさんを助けてあげよう」と言った。

 猫が耳輪をくわえて犬と一緒に帰ると、門が閉まっている。犬が「お前は猫穴から入れるだろう」と言うと猫は「うん」と答えた。そこで犬は猫に「この手柄は俺とお前の二人の手柄だからな」とよく言っておいた。猫が家の中に入り、寝床の上に耳輪を置くと女房は猫が耳輪をくわえて来たので喜び、すぐ魚と御飯を猫にやって猫を褒めたが、外にいる犬は何も貰えない。猫が一人で御馳走を食べているので犬は二人の手柄なのに、猫は手柄を一人じめにしたと言って怒った。

 それでそれから犬は猫を見ると噛みつき、猫は犬を見ると避け、猫と犬は仲が悪くなった。  

            撫順市巻上                             1999.3.5


 <犬と猫と指輪>(日本の昔ばなしT・岩波文庫)    

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